では、どうぞ。
連邦軍の虎の子、RX-78とRX-79の宇宙空間での試験を始めて2週間が経った。
正直に言うと脱帽だった。初日の試験では出来の悪い操り人形にしか見えなかったのたが、毎日試験を繰り返すなかでその動きは徐々に洗練されていき、まるで人そのもののように動く場面も増えてきた。動きと動きがシームレスに繋がるようになっており、学習型コンピューターの情報蓄積の威力とはここまでなのか、と驚くばかりだ。しかもRX-78のコンピューターのデータをRX-79にも転用させることでRX-79シリーズについても動きが目に見えて良くなってきている。地上試験のデータやサイド7ノアの試験データも近々統合するとかで、それも合わされば更に効率化が図られるらしい。
そして、その成果と正比例して某技術少尉の鼻も高くなってきている。直接の上官にあたるハイネ少佐も若干やりにくそうにしており、そろそろ助け船を出してやらねばならないかもしれない。ただ、成果が出てきているRXシリーズだが、やはりというかRX-79の3タイプについては問題もある。
「ビダン少尉、やはりRX-79-03については性能的にザクIIに対する優位性は難しく、頭打ちになるのは明白なのではないか?」
試験後のデブリーフィングを利用した検討会でオレがそう話しかけると、少尉はあからさまに不機嫌になりながらも答える。
「確かに、ローコストモデルの03については多少動きが良くなったとしても、ザクIIと相対した際には反応性の遅れから先手をとられる可能性はあります。しかし、03の目的は治安維持を中心とした後方任務です。ハイエンドモデルの01の半分というコストパフォーマンスは広大な後方任務において必ず有効な機体となり得るものであり・・・」
「いやいや、少尉。待ってくれ。確かに、機体単体としてならガンダムがF$(フェデレーションドル)で1億$、RX-79の01が750万$だろう?それに対して02なら500万$、03なら380万$と聞いてはいる。だが、ガンダムも含めれば4種類の機体それぞれの生産ラインや部品の供給を考えれば、トータルのランニングコストはもっと高くなるのではないか?それに、後方任務というがもしそこにジオンが降下部隊でも送り込んできたら太刀打ちできない機体でどうするというんだ。兵の命は何物にも変えがたい。機種は01か02に一本化した上で、少数のエース機はガンダムに、というのが望ましいのではないかね?」
「MSは万能機ではありません。目的に応じて使い分けるべきなのです。無理に一本化する必要はありません!」
「ならばローコストモデルに乗る兵の命は万が一の場合は諦めよ、と?断じて容認できませんよ?」
オレや参謀長が用兵側の視点から話すがビダン少尉は納得していないようだ。確かに、機体を目的に応じて使い分けることの意義は分かるつもりだが、それとて最低限の性能がなくては話にならない。
「なぁ、少尉。戦場にあって我々軍人が命を懸けられるのは、乗る艦や兵器が信頼できるからこそなんだ。今の03には残念ながらその信頼を持つことが出来ない。例えばだが、ミドルモデルの02をもとに、武装を治安維持タイプにする、といった方法は取れないのか?それなら武装さえ替えれば万が一にも備えられる。」
「02をベースにですか?しかし、02はガンダムに較べれば安いとはいえ、性能が治安維持任務には過剰です。武装の持ち替えも手間ですし。」
「だが、そもそもガンダムとジムとで武装を共有できる事は、少尉が先ほどから言っているコストを抑えることにも繋がるだろう?」
デブリーフィングというより、兵器検討会のようになっているな、と思いつつ少尉と話す。V作戦の目的は連邦軍の要望するMSを過不足無く開発すること。そのためには質と数が揃わなくては意味がない筈だ。原作のようなジムの大量投入もそれが出来なくては意味がない。
「ガンダムの性能を活かすためには兵器も別の物を揃えるべきです。確かに基本的な設計や部品等は共通化すべきですしその方向で開発を進めてはいますが。と、それよりもジムとは?」
「その開発中の兵器についても質問がある。今日から試験が始まったプロトハンマー?というのはなんだ?これ、本当に使おうとしているのか?」
「もちろんです。近距離における敵MSへの攻撃用兵器として弾切れの心配が無い兵器は必要不可欠です。先週から試験を行っているビームライフルやビームサーベルなどはエネルギーCAPの構造上、弾切れとなってしまうと母艦に帰還しなければ再使用ができません。前線に出て、繰り返し攻撃できる兵器は必要です。それより、ジムとはなんですか?大佐?」
「いやいや、それならビームライフルを実弾も使用できるようにすればいいじゃないか!ザクIIのマシンガンだって実弾を使用しているだろう!それにパイロットの疲労を考えれば、弾切れになったところには一度帰還させる方が生存率は上がるだろう!」
「ビームライフルに実弾射撃の機能を持たせる?なるほど、それは確かに面白い。・・・って、そうではなく!!!大佐、先ほど仰っていた『ジム』とはなんですか!」
「そうだろう?ハンマーなんぞ実用性が低すぎる。そんな兵器を用意するより、実用性の高い兵器に武装を絞るべきだ。無駄な武装が多くてもパイロットの判断を遅らせるだけだ。絞った方が戦闘時の咄嗟の生存性に繋がるからな。って、ジムとはなにか?RX-79のことじゃないか。・・・・・・っと、あ。」
ビダン少尉との言い合いのようになってしまい捲し立てて話していたから忘れていたが、そういえば『ジム』の名称って実践投入される時に初めて分かるんだったか?
「RX-79の名称?ガンダムはレイ主任が勝手に名称決めてましたけど、RX-79はまだ決まっていない筈ですが?」
「あーーー、なんだ。ガンダムの量産機と聞いていて、何となくアルファベットの最初と最後をとると『GM』になるな、と。それで何となくジムと呼んでいたんだ。」
冷や汗をかきながら咄嗟に出任せを言う。可笑しくはないよな?
「なるほど、ジム。ジムですか。分かりやすい良い名前ですね。開発本部に名称を申請しても良いかもしれませんね。プロトタイプ03やハンマーに関しての大佐のご意見と合わせ、報告してみましょう。」
そう言うと、そそくさと荷物をまとめて立ち去る少尉。自分の興味があることに忠実に動いているのは良く分かる。って技術者ってこんなのしかいないのか?ハインライン大尉も同じ感じだしなぁ。というか、ハンマーに関してはすんなり受け入れたけど、ビダン少尉も内心ダメだと思っていたのかも?
「やれやれ、技術者とは困ったものですな。」
「そう言うな、参謀長。我々はまだマシさ。毎日あの少尉とやりあってるハイネ少佐の方が大変だろう。なぁ?」
「全くですよ。ビダン少尉、拘りが強くてパイロットにも当たりがキツいですから。何というか周囲の人全て下に見てますよ。そのリカバリーも必要ですし。あれで妻子持ちっていうのが信じられません。」
疲れたようにテーブル上の資料をまとめていたハイネ少佐に話を振るとしみじみと答えた。え、アイツあれで既婚者なの!?
「パイロットにもか。命を懸けて新兵器の試験に臨んでくれている者にもか?困ったな。私も彼らの働きを労っていたと伝えてくれ。にしてもビダン少尉、あれで既婚者なのか。リングもしていないしてっきり独身かと思ったが。」
「今年で9歳になるお子さんがいるそうですよ?確か男の子だとか。本当なら開発計画の関係でノアに移住する予定がルナIIでの試験任務の監督をすることになったから予定がずれた、と愚痴ってました。転校の手続きが面倒だ、と。」
「へぇ。愚痴も聞かされてるのか。本当にご苦労様だな、少佐。」
「まぁ、仕方ないですね。機体自体は本当にスゴいものですし。パイロット達には司令のお言葉伝えておきます。そういえば、間もなくノアに向かうのですか?」
疲れた笑みを浮かべつつも話題を変えるハイネ少佐。参謀長もいるしちょうど良いから伝えておくか?
「ああ、実はクレッチマー司令から出港前に伝えられていたんだが。今回の試験終了後、ノアで試験をしているガンダムタイプと、旧式化したガンタンクや鉄騎兵ことガンキャノンの宇宙空間での試験の支援をすることになってな。3日後に一度ノアに寄港する予定だ。そこでジムタイプを一度降ろし、代わりにガンタンクやガンキャノンを載せる予定だ。ビダン少尉が話したのか?」
「はい。試験を早く進めないといけないのに、と愚痴を良いながらですが。」
「やれやれ。一度少尉には釘を刺すべきだな。」
一応、機密事項で明日のブリーフィングまでは伝えてはいけないことになってたんだが。あの少尉、ちと注意が必要だなぁ。
「リューネブルク参謀長だけ残ってくれ。せっかくだし今後の予定を打合せしたい。」
「了解です。」
3日後、ガンダムとジムタイプの3機それぞれが模擬戦闘を行いながら任務部隊の進路はノアに向かっている。どうやらジムタイプの試験機は数が足りていないようで、ここからはジムのコロニー内での試験をミカサに積んでいた3機で行うらしい。変わってガンタンクやガンキャノンを積んでガンダムとの連携試験を行うのだが、ノアは表向き中立のコロニーということになっている。
いくらルナIIのお膝元で実質的に連邦勢力圏とはいえ、任務部隊のサラミス6隻が寄港して良いのか?と思ったのだがどうやらコロニーの正規ベイとは別に、試験を行っている秘密区画にも極秘のベイがあり、そちらに寄港するらしい。おまけに寄港するのはミカサのみ。他の5隻はノアの宙域の外で待機だ。
「しかしノアにここまで連邦の極秘施設があるとはなぁ。」
入港の手順を踏みながらしみじみとオレは呟いてしまう。まるでルナIIに入港するような感覚に陥るくらいの手厚さ。ノアの開発がそもそも連邦軍施設としてスタートしたと言われても不思議ではないほどだ。
「司令、入港完了です。間もなく基地司令が来艦されるとのことです。」
「なに?基地司令まで?本艦にか?」
「はい、V作戦の要を運んでくれた艦に敬意を払いたいと。」
「了解した。私もすぐに応対へ向かう。参謀長、ここを任せていいか?」
「はい、お任せください。」
まさか新兵器を運んできとはいえ、たかがサラミス一隻に基地司令が動くとは。それだけノアではV作戦が重視されてるのか。まぁ、主任技師のテム・レイがいるからなおのことかもしれんな。
そう考えながら、艦の乗降口へ向かうオレ。もしかするとテム・レイ主任にも会えるかもしれないと、心が騒いでいた。
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サイド3公王府
「兄者ーーー!例の部隊の詳細が分かったというのは本当かっ!!!」
「ドズルか。騒がしいぞ。そんなに大きな声を出さずとも、調査報告は逃げはせん。落ち着かんか。」
公王府において今やデギン公王本人を上回る権限を持ち、事実上のジオン公国の主となった男は静かにそう言うと大きな体躯の弟を見つめた。
「いや、兄者。それは無理だ!我が軍の精鋭を度々打ち負かした忌まわしい連邦の部隊について詳細が分かったと言うのだ。これが落ち着いていられるか!」
「やれやれ。部下を大切にするのは良いが、我々ザビ家の者として落ち着きを持たねば沽券に関わると言うのに。さて、これが調査報告だ。サイド6宙域での戦闘後、保護された連邦軍人の送還措置に伴って判明した情報だ。サイド6の行政府に潜り込ませていたスパイからのもので限られてはいるがな。」
そう言いながらデータを壁面ディスクに映すギレンと食い入るようにそれを見つめるドズル。
「第41任務部隊。第4艦隊の麾下部隊か。クレッチマーの部下ならあの戦闘機の使い方も頷ける。しかもサラミス型のみで6隻も集めるとはかなり強力で機動性の高い部隊編成だな。」
「それがな。どうも出自はいささか複雑なようだぞ?」
「どう言うことだ、兄者!」
ニヤリと笑いながら弟を見つめるギレン。ドズルは部下がやられているためそこまで悠長ではなく、噛みつくように聞き返す。
「落ち着けと言うのに。それはな。この部隊の指揮官がどうも航空の専門ではなく、しかも中核となっているサラミスも旧式の艦らしいのだ。指揮官はコープ中佐。旗艦はミカサ。先行量産されたサラミスらしい。ミノフスキー粒子を使う前の戦闘を想定していた艦らしい。」
「なんだと!?それでレールガンなんぞと言う兵器をあれだけ積んでいたのか。コープとか言う奴はそれを上手く活用したわけだな。敵ながら天晴れな奴だ。しかも航空機の運用も上手い。厄介な敵だぞ。兄者。早く仕留めておきたい。ここ半月ほどは哨戒に出てこないが、サイド6での戦闘で被害を与えたからなのか。」
ブツブツと呟く弟を見るギレンの目に、しかし油断はない。
「いや、修理は既に終了していると見られている。ルナIIを長距離監視している部隊からもこまめに出入港している第41任務部隊を確認している。ただ、哨戒はサイド7方面が多いようだ。連邦からすれば唯一勢力下にあるコロニー宙域だからな。訓練に使っているらしい。」
「だが、そこで戦力として回復されるのも面白くないな。あの宙域はジオンから遠い。手が廻らずにいたが、いずれ偵察させねばならんか。」
「細かな部隊運用はお前に任せる。だが、厄介な敵ならば早めに討ち取るのも方法の一つだぞ。ドズルよ。」
「分かっているとも。敵部隊の情報は宇宙攻撃軍の司令部に回してくれ。キシリア姉の突撃機動軍にもな。」
「ほう。キシリアにもか。お前がそこまで言うとは、敵をかなり高く評価しているのだな。良かろう。」
「ジオンのためにも厄介な敵は早めに排除したいからな。では、兄者。失礼する。」
ジオンでも第41任務部隊の対策は確実になされてきていた。
24話をお送りしました。
更新が遅くなり申し訳ありません。
今話では、初めての試みとしてジオン側の様子を描きました。後半部分がどうしても上手く書けず、更新が遅くなってしまった事、お詫びいたします。
ジオン側を描くかどうかも悩んでいるため、コメントでご意見を教えていてだけると幸いです。