今後も少しずつジオン側についても書けたら、と考えています。
そして今話では、レイのあの人と主人公が対面します。
入港と同時にノアの極秘基地司令のポプラン大佐から歓迎されつつ、ジムを開発部の技術者たちに引き渡したオレたちだが、何故かガンキャノンやガンタンクの受領には立ち会わずに基地奥深くの会議室へと連れてこられた。横にはビダン技術少尉も相変わらず神経質そうな顔をしたまま座っている。
他にはポプラン大佐とその副官、技術部中尉の階級章を付けた士官が2名、記録係らしい。そして保安部の下士官が5名、壁際にいる。やけに物々しいがまだ揃っていない人物がいるようで誰も話そうとはしない。一体なんだ?
「なぁ、ビダン少尉。今から何をするんだ?私としては出来るだけ早く艦へ戻りたいのだが。」
「司令が仰ったアイディアを主任に報告したところ、ぜひ直接会って話したい、といわれまして。私も艦でガンキャノンやガンタンクのセッティングをしたいというのに。」
「うん?主任?それはもしかしてV作戦の開発主任のテム・レイ主任のことか?」
そう問い返すオレの声とほぼ当時、会議室の扉から入ってきたのは中肉中背にやや猫背気味だが眼光の鋭い男だった。
「やぁ、遅くなりました。そちらがジムの名付け親の大佐ですね。はじめまして。私はテム・レイといいます。アナハイムから軍へ出向しており、階級は中佐となっています。確かコープ司令ですよね?ビダン君からいただいた報告書は読ませていただきました。大変興味深い。これまで開発計画に関わった軍人さんからは得られなかった視点をお持ちのようだ。ぜひ、その意見を詳しくお聞きしたいと思い、この場を設けさせていただきました。」
一気に話した正面の人物、間違いなくテム・レイだ。ということはやはりこのサイド7には主人公のアムロ・レイもいるのか!?
「はぁ、あくまで小官は現場での運用上の問題点や課題を指摘しただけですから。それほどの意見は申し上げておりませんよ。えー、レイ主任?」
「レイ、と呼び捨てで構いませんよ。その現場の視点こそ、ガンダムをいち早く戦力化するに当たって必要なことなのです。例えば運用兵器の精選、実弾兵装の導入、艦からの発進時や着艦時の安全確保の問題、整備に伴う装甲の取り付け方、ビームライフルの弾倉として大型のエネルギーCAPを用意すること、更にはガンダムとジムの部品共有について。他にもありますが、半月ほどの試験でここまで広範な附帯意見が届くとは思っておりませんでした。まるでコープ大佐は既にガンダムが戦った戦場を目にしておられるようだ。」
やばい、レイ主任の目がガンギマリだ。ビダン少尉とのデブリーフィングの中で原作知識も使いながら軽い気持ちで言ったアイディアを全部読み込んでやがるのか!?
Zやラプラス事変の頃のMS知識も踏まえて話したこともあるんだぞ!?
「あくまで、ジオンと戦うなかでザクIIに苦戦した経験から言った事です。技術的な裏付けもないので話半分に捨て置いていただけたら、と思いますが。また、ガンダムの部品については歩留まりが低い、ということをビダン少尉から聞いたもので。それならいっそガンダムの合格ラインに届かない部品はジムの指揮官機などのカスタムに使ってはどうですか、と軽い気持ちで提案しただけです。共通規格だと聞いたからですが、本当に可能なのですか?」
「そのご意見が貴重なのです!我々は合格しなかった部品を転用、など思い付きませんでした。大佐のご意見は、仮に話半分だとしてもV作戦の目標とする連邦のMSを完成させる上で、貴重極まる意見ばかりです。こんなことならやはりゴップ大将にお願いして司令の部隊をV作戦直属にしていただくべきでした!とりわけ私が詳しく聞きたいのはこの関節部の特殊コーティングという項目です!確かに関節部の消耗は我々も危惧していましたが、しかし大佐が・・・・」
ああ、なんかデジャブだな。レイ主任のこの勢い。すごく見覚えがある。うちの司令官と同じタイプやん。クレッチマー司令とテム・レイ主任が語り合うとすごく盛り上がるんじゃなかろうか。
等とやや現実逃避をしていたが、レイ主任のマシンガントークは止まらない。
結局、オレが試験報告に載せていただけでなく話し合いの中で更にいくつかのアイディア(というか原作の知識)を引き出させられてしまった。まあ、こちらとしてもガンキャノンやガンタンク、ガンダム、そしてジムの開発計画について詳しく聞くことが出来たので今後の試験予定をより効率的に修正することが出来そうだ。
というか、ゴップ大将にお願いしてV作戦直属に、ってなんだ?いつの間にそんな話が出ていたんだ?オレは全く知らないぞ?クレッチマー司令が拒否してくれていたのか?
そんなレイ主任との会議は4時間程で終わり、ホクホク顔のテム・レイ主任とへとへとになったその他大勢(オレは勿論、ビダン少尉もだ)という構図になったところでオレはひとつ、どうしても伝えておかねばならない事をテム・レイ本人と基地司令のポプラン大佐に話すことにした。
「司令、主任、本日は貴重な話し合いの場をありがとうございました。所で、お二人にどうしてもお伝えしておきたいことがあるのですが。」
「どうされました、コープ大佐?」
「おや、まだ話し足りないことが?」
疲れた顔に疑問符を浮かべるポプラン司令と、目をキラキラさせるテム・レイ主任。いや、レイ主任、まだ話し足りないんか?
「防諜体制、及び防衛体制についてです。」
「ほぉ?詳しくお聞かせ願えますか?」
さすがにポプラン司令は防諜・防衛の責任者として一気に顔つきが変わる。一方でテム・レイ主任の方が今度は疑問符が浮かんでいる。
「今回、我々は3タイプの試作型ジムをここ、ノアまで運んできました。ただ、正直に言ってこのノアの防衛体制は緩すぎます。来て驚きましたがいざという時の守備艦艇が配属されておらず、戦闘機も数機のみとか。しかも定時哨戒もされていないと聞きました。いくらルナIIの勢力圏とはいえ、ルナIIから離れたこのサイド7にジオンが奇襲でも仕掛けてきたらV作戦の成果を全て奪われることにもなりかねないのでは?」
「うぅむ。やはりコープ大佐もそう思われますか。私も常々、その点は危惧しておるのですが・・・」
「では、なぜ艦艇の配備や守備戦力の増強を願われないので?それに、哨戒をしておくだけでも奇襲を防ぐ事が可能になります。」
「コープ大佐、何を仰るのですか!そんな事をしては、ここ、サイド7が中立ではないと言っていることになるではありませんか!」
オレとポプラン司令との会話に割り込んできたテム・レイ主任がそう言うが、そもそもの前提を間違えている。
「レイ主任、その前提が間違いです。極秘裏に連邦の新兵器を開発している拠点が中立だなどと、認められる訳がありません。もし見つかればジオンは喜んでここを叩きに来るでしょう。」
「そんな!?だが、ここノアには民間人だって住んでいるんですよ?」
「主任のご子息も、ですか?」
「そ、それはっ・・・」
あ、やっぱりアムロくんもここにいるんだな。と、それはともかく、
「失礼ですが、ジオンから見ればそんなもの攻撃しない理由にはなりません。通常、完成前のコロニーに居住しているのは工事関係者です。その工事区画でMS開発がなされていれば、居住者も開発計画の関係者だと考えるのが妥当でしょう。よくて軍属、悪ければ偽装工作員と見なされます。攻撃しても問題にはなりません。事実がどうあれね。」
「そんな馬鹿なっ!?」
テム・レイ主任の顔が一気に強ばるが、原作と同じくやはり『中立』という言葉に幻想を見すぎだ。
「レイ主任、ですから私からもお話ししているように最低限の守備戦力は必要なのです。いくら極秘で進めていてもジオンにバレないという保証はないのですから。」
「更に申し上げるなら、レイ主任。貴方ご自身の存在も重大な危機です。」
「はっ!?わ、私が何か?」
「もし、明日にでもここノアコロニーをジオンの部隊が奇襲を仕掛けてきたとしましょう。V作戦の開発機体を守れたとしても、もし貴方が死んでしまったり、さらわれてしまったらどうするのです?開発計画は問題なく進みますか?もしガンダムやジムに不具合が出たとき、残された人員で迅速に対応できますか?」
「そ、それは・・・。対応は・・・出来るでしょうが、私がいる場合に比べれば遅れは出ます。」
ポプラン司令とオレとでテム・レイ主任に防衛体制の必要性を伝える。不具合の対応で遅れが出る、とレイ主任が返事をした時にはビダン少尉が何か言おうとしたが、目線で止めさせた。今はお前さんの意見を聞く場ではない。
「ならばその遅れを無くすためにも、防衛体制は必要です。貴方の安全対策もね。場合によっては既にここノアはジオンに目をつけられているかもしれないのですから。」
「コープ大佐、それはどういうことです?確かに、我々ノア基地からは哨戒などは出来ていない。だが、ルナIIからの定期哨戒でもジオンの艦艇は認められていないはずですが。内部でのスパイ対策も厳重にしています。」
ポプラン司令がオレの一言に敏感に反応している。この人も防諜・防衛については気を遣っているのだろう。原作では赤い仮面のすっとこどっこいに手酷くやられてしまったとはいえ。
「最初に申し上げた通り、我々の存在そのものです。中立を名乗るサイド7に連邦軍の艦艇が、しかもサラミス6隻というかなりの戦力がやって来て、しかも1隻はコロニーのビルダー側へ入港していった。もし見られていたらどうしますか?仮に見られていなくても、6隻の艦艇が接近している、というだけでも充分に興味を引きかねない事態です。当初、小官はそうなっても対応できるだけの戦力が秘匿されていると、考えていましたが・・・。」
そう返すオレに渋い顔をする司令。クレッチマー司令にも報告するが、この場でなんとか出来ることを考えねばならないか。
「ポプラン司令。これは第41任務部隊司令としての提案なのですが。」
「・・・っ!お聞きしましょう、コープ司令。」
「私の麾下に配属されている戦闘機セイバーフィッシュを当座の防衛戦力としてパイロットごとお譲りします。8機あれば、ムサイ1隻くらいなら抵抗できるでしょう。本来ならサラミスも1隻か2隻、防衛に置いておきたいが、さすがに6隻でやって来た哨戒部隊の数が減っていてはおかしいですから。これについてはルナIIに戻り次第、第4艦隊司令を通じて上層部にも意見具申をしてみましょう。」
「よろしいのですか?我々としては大変にありがたいが。司令の部隊がルナIIに戻られるまでに何かあっては。」
心配そうな表情でポプラン司令がそう言うが、原作の通りならあと少しでここはジオンに襲われる。一先ずでも何でも戦力を置いておいた方が良いのは間違いない。
「仮にジオンの部隊が来てもなんとかしますよ。これでも我が任務部隊は第4艦隊随一の精鋭と自任しておりますのでね。」
敬礼と共にそう答えると、今度こそオレは乗艦のミカサへと戻るために会議室を後にするのだった。
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地球を眼下に望む衛星軌道、一般には静止軌道と呼ばれる高度に位置どるジオン部隊があった。ムサイ1隻と補給のためにランデブーしたであろうパゾク級の2隻だけの部隊だが、そのムサイの艦橋では赤い士官服のジオン軍人がモニター越しに会話を行っていた。
「では、例の部隊はやはりサイド7方面へ?」
「ああ、どうやらそのようだ。1隻沈んだとはいえ、新しく補充を受けて既に1ヶ月。これまでの連邦なら6隻からなる有力な部隊を遊ばせるはずがない。既にサイド6やサイド5といった方面へ出してきそうなものだが、いまだにルナIIの近くから出してこようとせん。何か妙なことをしているのではないか、と気になってな。」
「もしや、以前お話にあった連邦の・・・?」
「可能性はある。連邦にすれば我が軍のザクに対抗する手段は必須だ。その開発計画にあの忌々しいロングランス部隊が組み込まれていても何ら驚きはせん。」
ロングランス部隊、第41任務部隊に対するジオン側の仮称だ。レールガンの長槍を突きつけてジオン部隊に手痛い損害を与える、としてその名がついた。
「となりますと、ルナII、もしくはサイド7への偵察が必要となりますが。ロングランスを相手取るとなるとさすがにファルメル1隻では手に余りますな。増援はいただけるのでしょうか?ドズル司令。」
画像越しでも分かるその巨躯こそ、通信の相手、ドズル・ザビ中将。宇宙攻撃軍司令の任にあり、ファルメル艦長であるシャア・アズナブルの上官に当たる人物である。
「ムサイ2隻からなる、哨戒部隊を間もなくそちらに回せるだろう。ザクIIも定数近い5機積んでいる。今回の補給で貴様のところに届けたザクIIと合わせればザク9機だ。それでなんとかしろ。指揮官は貴様だ。」
「ムサイ3隻ですか。有難い。シャア少佐、任務を承りました。」
「頼むぞ、V作戦の詳細についてもだが、それ以上にあのロングランスに一撃を加えてやれ。」
「それは難しい。全力を賭して任務に臨みますが、二兎を追って一兎をも得ず、とならぬように致します。」
「貴様が最善と考えることを行えばよい。成果を期待しているぞ。」
そう言い残すと通信は切られた。艦長席に座るシャア・アズナブルは仮面の下に見える口許に不敵な笑みを浮かべている。
「最善を、か。果たして司令が求めているのはV作戦の阻止なのかそれとも子飼いの部隊を打ちのめした連邦部隊の打擲(ちょうちゃく)か。やれやれ。難題を押し付けられてしまったな。」
「少佐殿。ドズル司令に無茶苦茶な命令をされたというのにずいぶんと余裕そうですなぁ。」
「なんだ、ドレン中尉は自信がないのかね?」
そう言いながらシャアは正面に立つ有能な艦乗りであり、自身の部下ドレン=アルバン中尉を見る。
ドレン自身は無茶苦茶、と言いつつもシャア同様に不適な笑みを浮かべているが。
「そんなことはありませんとも。少佐の腕にかかれば、ロングランスの艦であっても一溜りもないでしょう。我々はそれまで槍の一突きを受けないようにしておきますとも。」
「それでこそ、ファルメルの艦長だな。増援と合流次第、サイド7方面へ移動を開始するとしよう。まずは補給を終えなくてはな。」
「ご安心ください、少佐殿。補給はもう終わります。最後にあのザクIIを受領すれば終わりですよ。」
艦橋の窓越しにパゾクから運び込まれるザクIIを指差すドレン。それを見てシャアは再び大きく頷いた。
「よし、では次の戦いの始まりだ。連邦のロングランスと秘密兵器のMSとやらを探しに行くとしよう。」
赤い彗星と呼ばれた男が第41任務部隊に迫ろうとしていた。
ということで、レイのあの人の登場、でした。パパ・レイと赤い仮面のすっとこどっこいさんです。
シャアはファルメルを受領してから連邦の哨戒部隊を撃破しながらV作戦についての情報を探っていた、という設定で、地球軌道を中心に出撃を繰り返しています。
また、作者の好きなキャラクター、ドレン中尉も登場です。「ドレン」とはアルバニア系の名字、ということでアルバニアでよくある男性名を付けて、ドレン=アルバンというお名前にさせていただきました。
こちらも本作の独自設定ですのでご了承ください。