原作との違いがだんだんと大きくなってきています。
では、どうぞ!
「ルナII管制宙域を抜けます。ルナII管制より通信。『貴隊の幸運と無事なる帰還を祈る』です。」
「了解した。感謝する、と伝えろ。」
「アイサー!続けて第4艦隊旗艦ヴィクトリーより全艦隊に通信。『各隊は事前指示の航路を取り、地球軌道へ各個に進入せよ。ジオン部隊への牽制を行い、無事なる帰還を望む。』とのことです。」
「受領信号をあげておけ。航海長、第2巡航速度にてランデブーポイントへ向かえ。艦隊の進路指示任せる。」
「アイサー!」
U.C.0079年9月6日21:47 ほぼ予想通りの時刻にルナIIを出撃した第4艦隊の各部隊だが、その内訳はかなりの戦力だった。
まず、主隊として艦隊旗艦ヴィクトリーに率いられたマゼラン型4隻、トラファルガー型3隻、サラミス型6隻のα部隊。地球軌道までは降下せず全体指揮といざと言う時の救援任務を行う。次にジャブローから上がってくる艦と合流することになる我々第41任務部隊のサラミス型3隻、ネルソン型3隻。更にサラミス2隻~3隻とネルソン型1~2隻から成る囮部隊が3部隊。マゼラン型1隻とネルソン型2隻から成る囮部隊も2部隊。これらはβからη部隊と割り振られている。
合計すれば7部隊でマゼラン型6隻、トラファルガー型4隻、サラミス型17隻、ネルソン型12隻の計39隻もの戦力を投入しているのだ。、これは第4艦隊の戦力のほとんどにあたり、再編中の第一艦隊やティアンム提督指揮下の第二艦隊もルナIIやサイド7近辺の哨戒や防衛任務に出てくれているらしい。
「クレッチマー司令も張り切っておられますね。フレッチャー参謀長が引き留めても直接指揮に臨むことを断固として譲らなかったそうですし。」
「V作戦の成否がかかっている、とお考えのようだからな。しかし、まさかジャブローの司令部の一部が防諜のみでサイド7を守ることが出来ると勝手に判断していたとはなぁ。レビル将軍もカンカンだったそうだし。」
そう、実はサイド7の防諜・防衛体制に大きな不備があった件だが、レビル将軍は当初は艦艇を含む守備隊の配置を指示していたらしい。だがジャブロー総司令部の参謀や将兵の中に、中立コロニーとしての看板があれば戦力を配置しなくても防衛が可能だと考えた者が複数いたらしい。(まぁルウムの惨敗で戦力が厳しかったから、減らせるところは減らしたい、という気持ちは分からなくもないが)結果として将軍の考えをねじ曲げ、艦艇をただの1隻も配置していなかったようなのだ。守備隊も軽装備の少数に抑えられている。具体的な数を指示しなかったレビル将軍にも不手際があるとはいえ、当然、ルナII司令のワッケイン准将やクレッチマー司令もその点には激怒した。トラファルガー型1隻、サラミス型2隻、ネルソン型2隻、の5隻の防衛艦隊の配置も近々出来るように第一艦隊と第二艦隊から艦艇を抽出することになっている。
「司令、ヴィクトリーのクレッチマー司令からレーザー通信です。ジャブロー基地より出撃の輸送艦艇はペガサス型強襲揚陸艦の『ホワイトベース』だそうです。コードネームは『ブルグミュラー01』です。」
「ホワイトベース、か。以前に司令からお聞きしていた新型の強襲揚陸艦と言うやつだな。その艦との合流が一先ずの我々の目的だな。指揮権はどうなる?」
「はっ、ブルグミュラー01の艦長は中佐とのことですので、ノアに入港するまでは第41任務部隊の指揮下に入るように、とのことです。艦の詳細についても送られてきています。」
「了解した。では航海長、ランデブーポイントに向けて任務部隊の進路を調整してくれ。」
「アイサー!艦隊進路、方位340、下げ舵4、第2巡航速度へ。」
「続けて任務部隊全体に第一種警戒体制を発令。ただし、艦載機による哨戒は重哨戒ローテーションを行う。航空長、指示を頼む。」
「重哨戒ローテ、了解しました。MS群については待機でよろしいですか?」
「あぁ、それで構わない。ただ、即応体制は維持しておいてくれ。」
「アイサー!」
さて、ホワイトベースが宇宙(そら)へ上がってくるということであれば、原作と同じようにシャア=アズナブルのファルメルも地球軌道付近にいる可能性が高い。ホワイトベースもシャアに追跡されて已む無くサイド7に連れてきてしまったはず。なんとかこの出撃でそれは防ぎたいが・・・。
今回の出撃で7つもの部隊に分かれ第4艦隊はほぼ全ての戦闘艦がルナIIを出撃したが、そのうちマゼラン型とネルソン型で編成されたζ部隊とη部隊の2隊はルナIIとサイド7の間を哨戒する任務のため、臨時で編成されたものだ。普段なら護衛のサラミス型も含まれるはずだが、今回は地球軌道に投入するため含まれていない。
残りの5部隊のうち、先程も述べたようにα部隊は高度を維持して後方に支援部隊として居座り、残りの4部隊が地球軌道のそれぞれ異なる地点に同時に進入していくことになる。そのうち一つが第41任務部隊なのだが、いずれもサラミス型とネルソン型から成る高速巡洋艦部隊。ジオンが部隊に気付いてもどれが本命か分かりにくくする狙いがある。更に言えばいずれかの部隊がジオンに襲われても、その隣の部隊(もしくはα部隊)が高速力にものをいわせて救援に駆けつけることだってできる。
ジオン側にもそれくらいの事は分かるはずなので手出しを躊躇わせられれば儲けものだ。
「あぁ、そうだ。ハイネ少佐、すまんが少しビダン少尉を借りるぞ。」
「はっ、MSは待機ですから問題ありません。現在は右舷カーゴ・ベイにてガンキャノンの調整をおこなっています。艦長室にお呼びになられますか?」
「ああ。それで頼む。副長、しばらく艦の指揮を預ける。」
『はっ、本艦の指揮をお預かりします。』
「参謀長、一緒に来てくれ。」
「はっ、了解しました。」
ビダン少尉は作戦開始前、ガンダム1機にガンタンクとガンキャノンを1機ずつの計3機を管轄していた。ところがノアで機体と共に積み込んでいた予備部品とルナIIにあった部品を使えば、もう一機ずつの改修型ガンキャノンとガンタンクが組み上げられる事が判明、出撃前からビダン少尉にはその監督を任せていた。ハイネ少佐から大方の組み上げが完了したと聞いたので、今後の作戦における投入の可否も含めて確認をしておきたいのだ。
「フランクリン・ビダン技術少尉、参りました。なんのお呼び出しでしょうか?まだ組み上げ機体の調整が終わっていないのですが。」
「ああ。まずは無理を言ってすまなかったな。貴官のお陰で戦力として投入できる機体が増えそうだ。感謝する。」
「はぁ。しかし、それだけならわざわざ呼び出しをする必要は無かったのではありませんか?」
「いや、むしろ本題はここからだ。組み上げ機体を戦闘に投入するとして、既存の機体と同様の働きが出来るのか、あるいは何らかの制限があるのかを知りたい。また、それ以外でも技術部の見地からこちら考慮しておくべき事柄があれば教えてくれ。」
怪訝そうなビダン少尉にそう伝えると、納得したのか不機嫌そうな雰囲気はすぐに消えた。むしろ目を爛々と輝かせている。なんだかノアで話したテム・レイ主任のようだ。こういうところはやはり技術屋の血が騒ぐのだろうか?
「なるほど、そういうことでしたか。それでしたら何点かお伝えしておきたい点があります。」
手早く壁面スクリーンを起動させる少尉。画面を指し示しながら説明を始めた。
「まず、ノアで積み込んだ既存機体ですが、宇宙空間での試験も行ったお陰で機体制御と宇宙空間の長距離射撃用のチューニングを行うことが出来ています。ガンキャノンは中距離からならザクIIの運動性にもある程度は対応できるでしょう。司令が仰っていたようにガンタンクは艦に固定して運用する方が良いでしょうが、ミカサのレールガンと連携させることも可能だと考えられます。砲術長ともデータリンクについては打ち合わせをおこなっておりますので即実戦も可能でしょう。」
「お、それは報告に聞いていなかったな。確かガンタンクの主砲は実弾で120ミリクラスだったな?射程はどれくらいだ?」
「カタログスペックならば240キロですが、実戦に耐えうる精度を求めるなら現段階では200キロを少し下回る程度でしょうか?」
射撃データを示しながら説明する少尉の声を聞きながら、脳内で艦のレールガンの射表を思い浮かべる。艦載機故の射撃時のブレは考慮せねばならないが、これなら確かにレールガンと連携させることも可能だな。弾速はレールガンより遥かに遅いが、その反面として射撃速度は高い。
「了解した。では次に組み上げ機体の方はどうだ?」
「そちらについてはやはり機体制御や射撃精度に難があります。既存機の制御プログラムをそのまま流し込んでいますが、やはり機体毎の微調整が済んでおりませんので誤差は出てしまいます。ガンタンクの方は艦に固定運用すれば長距離射撃はそこまで気にならないかもしれませんが。ガンキャノンは機体制御に不安があるのでザクIIの相手は厳しいと言わざるを得ません。」
「ガンキャノンも組み上げ機体の方は艦に固定して運用の方が安全か?」
「うーーーむ。難しいところです。カーゴ・ベイの中で機体の調整を進めていますから、時間があれば既存機体と大差ないところまで持っていくことは出来るかもしれませんが。あくまで時間があれば、です。」
「戦闘となる可能性が高いのは地球軌道に入ってからだろう。時間としてはあと1日半といったところだな。それで可能なところまで機体の完成度を高めてほしい。」
「1日半、ですか。それならばガンタンクは射撃管制、ガンキャノンは機体制御に集中して調整を行いましょう。既存機体と同様、とまでは行かなくてもそれでそれなりに使えるようにはなるはずです。」
かなり考えた後だが、そう答えたビダン少尉。不満そうな雰囲気はない。難しい仕事を任された事が嬉しいのか笑顔も出ている。
「ありがたい。大変だとは思うがよろしく頼む。」
そう言うや否や、席を立とうとする少尉をあわてて呼び止める。
「少尉、まだ話は終わっていないぞ!RX-78ガンダムについても確認しておきたい。」
「はっ、ガンダムですか?ガンダムは調整もしっかり行っておりますし、なんら出撃には問題ありませんが?」
「ああ、それについてはこれまでの試験でも機体の様子を見てきたから不安はない。ただ、今回の任務はV作戦の詳細をジオンに知られないため、V作戦を守るためのものだ。そこでガンダムを出撃させてしまっては元も子もない。そのため、今回の任務でガンダムの出番はないと思ってほしい。それどころか、カーゴ・ハッチをオープンさせた時にガンダムが見えてしまうことの無いように仮壁をガンダムの前に設置してほしい。」
「そんな、せっかくの機体を使わないのですか!?」
「もし、ガンダムもジムも量産体制が整っていれば、出しても良いかもしれん。だが、今はまだその段階に無いんだろう?数が揃う前に新兵器を出してしまい、敵に対応策を立てられてしまえばどうする?」
「それは・・・、そうかもしれません。」
悔しげにしつつも、オレの言葉を受け入れたビダン少尉。ただ、念のためにもう少し話しておくべきか。
「勿論、本艦や第41任務部隊が全滅するような事態に陥りそうなら、ガンダムを出す事もあるだろう。だが連邦のためには出来うる限りガンダムを隠さねばならない。万が一のために出撃の準備はしておくが、出さない方が連邦にとっては良いのだ。分かっていてほしい。これは、貴官たち技術士官の努力の成果を守るためでもあるのだ。」
「・・・。了解しました。司令の仰る通りですね。カーゴ・ベイの偽装も整備員に指示を出しておきます。では、失礼します。」
ビダン少尉が敬礼をして艦長室を出ると、オレも参謀長もしばらくは無言だった。
「どうやら、了解してくれたようですね。」
「・・・。そうだな。だが、先程はああ言ったが、連邦の確実な勝利を求めるなら、仮に第41任務部隊の全艦が沈むことになってもガンダムは出さない方が良いんだが。さすがにそれを民間出向の彼に言うことは出来なかったよ。」
「それは確かに、言いづらいですね。彼にガンダムを秘匿して命をなげうて、というのと同義ですから。技術屋にしてみたら自分達の努力の結実を見せずに、というのは認めがたいでしょう。」
苦笑しつつもそう話すオレと参謀長。軍人と民間人との考え方の違いは大きい。軍人にとっては自らの命も場合によっては効果的に使うことが求められるのだから。
「まぁそうならないように努力するのがオレ達の使命だな。さて、艦橋に戻るか。参謀長、ジオンの哨戒部隊の情報を精査してくれるかね?」
「職業軍人として、尽力せねばなりませんからね。了解です。1時間程お待ちください。」
U.C.0079年9月9日08:00 地球軌道に到達した第41任務部隊を含む第4艦隊の各部隊はそれぞれの進路を取りながら地球の周辺に展開する複数のジオン哨戒部隊に攻撃を開始した。目的は間もなくジャブローから上がってくるブルグミュラー01ことホワイトベースをジオンに見られないようにすること。またそれと同時に地球軌道からジオンの部隊を一掃することでジオンの注意をサイド7から地球周辺に逸らせること。ジオンからすればレールガンを使った地上部隊への攻撃を警戒せねばならなくなるので、地上の戦線にも好材料となるかもしれない。(第4艦隊がほぼ全力出撃したのはこの地上攻撃、というのも目的に含まれている。)
もっとも、β部隊の符号を与えられた我々第41任務部隊はホワイトベースとの合流が主目的のため、ジオン哨戒部隊との交戦は出来るだけ行わないことになっている。実際に、入念な事前諜報により、ホワイトベースとの合流地点はジオン部隊が定期哨戒を行っていない宙点が選ばれている。イレギュラーがなければ接敵はないはずだ。
「α部隊よりレーザー通信。γ部隊、ジオン部隊と接敵。敵はムサイ級2隻、ボギー01と呼称。続けてδ部隊も接敵。敵はチベ級1隻、ムサイ級1隻と輸送艦3隻。ボギー02と呼称。α部隊よりδ部隊へ増援を送る、とのことです。」
通信科員からの報告を聞きながらサブスクリーンの状況図にその内容が反映されていくのを見つめる。哨戒を行う部隊や地上への補給物資を届ける部隊など、常時地球軌道にはジオンの3~4部隊が入れ替わり立ち替わり展開している。我々以外の部隊の目的はそれらを積極的に狩っていくことだ。
「他部隊は想定通り、接敵し始めましたね。」
「むしろ、接敵しなければ我々が合流する場面を目撃されかねん。想定ではもう1部隊いるはずだが。ε部隊はまだ接敵していないのか。」
「間もなく接敵すると思われますよ。それより、ブルグミュラー01は予定通りに上がってくるのでしょうか?」
「さて、ジャブローを発進した段階で一報が入るはずですが。新型の強襲揚陸艦とのことですが、まさか単独で大気圏を脱出出来るとは驚きですね。」
「ミノフスキー粒子を利用したミノフスキー・クラフトシステムを採用した、とのことだが本当にそんなことがミノフスキー粒子で出来るのかどうか。開戦からこっち、連邦も新兵器だらけだな。」
ミカサ艦橋の雰囲気は悪くない。ほどほどの緊張感はあるが、将兵は落ち着いて任務に当たっている。このまま、ホワイトベースを無事にサイド7にまで送り届け、V作戦の成果を守り抜きたいものだ。
「司令、地上から高強度レーザー通信です!『白馬は舞い上がった!』繰り返します。『白馬は舞い上がった!』符号一致、ブルグミュラー01がジャブローを発進した模様です。」
緊張した声で通信長が報告する。いよいよか!
「艦隊全艦にレーザー通信!『白馬はパドックを出でり』ならびに第41任務部隊全艦に第一種戦闘配備を発令!航空長!戦闘機の発艦ローテを戦闘態勢へ。ガンタンクとガンキャノンも即応態勢で待機!」
「「アイサー!」」
「司令、α部隊よりレーザー通信。ε部隊がジオンの哨戒部隊と接敵したとのことです。ムサイ級3隻。敵をボギー03と呼称します!」
これでジオンの部隊は3つ。事前の哨戒・諜報で確認していた部隊はこれで全てのはずだ。次はホワイトベースと無事に合流してサイド7まで護衛だな。原作通りならサイド7への道中でシャアの部隊に目をつけられてしまったはずだ。第1艦隊や第2艦隊からの哨戒部隊もいるとはいえ、気を引き締めていかねば。
「通信長、下方警戒を厳にせよ。間もなくブルグミュラー01が上がってくるだろう。艦影を見逃さないように。航海長、ブルグミュラーが上がって来次第、球形陣を取る。本艦は打ち合わせ通りに陣形後方だ。艦速の調整に留意してくれ。」
指示を出してすぐ、レーダーの監視も行っていた通信長が報告を上げてきた。
「司令、レーダーに感あり。大型艦が上昇してきています。おそらくブルグミュラー01かと。レーザー通信を発信しますか?」
「いや、まだ大気圏下方の段階だ。まだ良い。地球の低軌道帯を抜けてから連絡を取れば十分に間に合う。ミノフスキー・クラフトシステムでの大気圏離脱なんて連邦軍人でも経験したことのある者なんてほとんどいないんだ。いまはそちらに集中させておこう。ブルグミュラー01の高度が200キロを越えたらレーザー通信。現状と我々の指揮下に入ることを確認させよ。」
「アイサー!」
現在の第41任務部隊の高度が300キロ、以前の低軌道帯での戦闘時より更に100キロ程高度を取っている。他の部隊はおおむね高度250キロ~180キロあたりで戦闘をしているから、我々は頭一つ高い宙域で待機している訳だ。ちなみにα部隊も高度は350キロ程を維持しつつ、必要に応じてレールガンなどで支援砲撃や艦載機の派遣を行っている。
およそ1時間後、レーザー通信にて情報交換を行った大型艦はやはり『ブルグミュラー01』のコードネームが付けられたホワイトベースであり、艦長はパオロ・カシアス中佐が勤めることが分かった。こちらの指揮下に入ることも了解し、更に1時間をかけて第41任務部隊の球形陣の中央にホワイトベースが位置した。
「よし、α部隊にレーザー通信!『白馬は大地を駆けり』だ。続けて艦隊速力を第二戦速へ。地球軌道を脱出する。ブルグミュラー01にも伝えよ!」
「司令、α部隊より受領信号を確認。続けてクレッチマー司令より『白馬を騎士の元へ届けよ』と。発光信号です。」
「了解した。受領信号をこちらも返しておけ。司令、後は頼みますよ!」
クレッチマー司令のα部隊、更に他の3部隊はこれからしばらくジオンの目を地球軌道に引き付けるため、軌道帯での戦闘を継続することになる。順調に行っても残り5日、長引けば10日に渡る戦闘任務で、おそらく次々とやってくるジオン哨戒部隊や増援部隊を撃退しつつ、地上へも攻撃を行うのだ。かなりの大仕事であるがジオンにサイド7への戦力投入をさせないためにもぜひ頑張ってもらわねばならない。
「司令、ブルグミュラー01のパオロ艦長より通信が入っています。」
「繋いでくれ。」
そう言いながら正面上部のメインスクリーンを見れば、50後半に見えるやせ形の男性士官が映し出された。
「お初にお目にかかります。特務艦ホワイトベース艦長のパオロ・カシアス中佐です。此度の護衛、心強く。誠に感謝いたします。」
「護衛を務める、第41任務部隊司令兼旗艦ミカサ艦長のウィリアムズ・コープ大佐です。目的地までは必ずご無事にお届けします。安んじてお任せください。」
お互いに敬礼をしつつ、現状について手早く伝えていく。
「早速ですがパオロ艦長、現状についてお伝えさせていただきます。先のレーザー通信でもあったように第4艦隊は現在、地球軌道にてジオンへの牽制攻撃を実施中。注意を地球軌道に引き付けるとともに、サイド7への防衛戦力を派遣するための準備を進めています。我々第41任務部隊は貴艦の護衛を行い、続けてサイド7周辺宙域に待機し、駐留部隊が準備できるまでの時間を稼ぐ予定です。サイド7に到着するまで、ブルグミュラー01は我々の指揮下に入る事となっていますが、バンチ1コロニーノアに入港後はノアの司令部の指揮下に移っていただくことになります。」
「了解しました。しかし、まさかサイド7に防衛戦力がほとんどいなかったとは。ルナII司令部の対応に感謝致します。また、第41任務部隊にはV作戦の機体が既に積まれているとか。運用のノウハウについてもぜひ、ご教授いただきたいと思います。」
パオロ艦長は落ち着いた雰囲気でそう話す。確かにホワイトベースはこれからガンダムやガンキャノン、ガンタンクにジムも搭載することになるから、こちらで試験運用するなかで判定している注意事項やうまく運用するために準備しておくべき事を伝えておく方が良いかもしれない。
「そうですね。人員の交流についてもサイド7に向かう間に行えるものは実施しましょう。とはいえ、道中は哨戒部隊もいるとはいえジオンに襲撃される可能性もあります。あくまでその範疇で、となりますがよろしいですね?」
地球軌道からサイド7の管制宙域までは順調にいって約4日ほど。我々第4艦隊に加え、第1艦隊と第2艦隊からそれぞれ哨戒部隊が派遣されているが穴はある。シャア率いるファルメル隊やランバラルの部隊ならその穴を突いて攻撃を仕掛けてくることだって出来るかもしれない。警戒しておくに越したことはない。
「もちろんです。とにかく、此度の援軍は大変心強い。コープ司令、誠にありがとうございます。」
「礼はV作戦の成果を、無事にジャブローまで送り届けたときにお受けすることにします。今はまだ、道半ばですので。予定どおり、我々はここから直接サイド7を目指します。警戒を厳に保つようになさってください。」
「それもそうですな。了解いたしました。それでは失礼致します。」
パオロ艦長のその言葉と共に通信が切れる。
まずはサイド7へ。そしてそこからジャブローへ。なんとしても無事にガンダム達とテム・レイ主任を送り届ける。更に言えばその子息たるアムロ・レイ少年も。せっかく関与できる立場になったのだ。原作の展開になんてさせるものか。
そう決意を新たにしながら、オレは改めて指示を出していくのだった。
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ホワイトベース艦橋
「それでは、失礼致します。」
その言葉と共に通信を切ると、待ちかねていたように横に立つ人物が話しかけてきた。
「お疲れ様でした。艦長。しかし、あれがかの有名な『キュイラッセ(胸甲騎兵)・コープ』ですか。とてもそんな猛将には見えませんでしたね。」
「これこれ、ブライトくん。我々を護衛してくださる相手に対してそのような言い方は失礼に当たるぞ。」
私がそう窘めると、彼、副官であるブライト・ノア中尉は慌てたように両手を胸の前で振りながら謝罪してきた。
「こ、これは失礼いたしました。しかし、物静かそうでとても猛将、と呼ばれる世評の方には見えなかったものですから。」
「確かに。コープ大佐は理性的な士官のようだな。だが、だからこそ冷静に、そして合理的に判断して戦闘を進めることが出来るのだろう。でなくては連邦宇宙軍でもずば抜けた戦果をあげる事など不可能だよ。君も見習うならば私のような予備役上がりの老兵ではなく、彼のような優れた士官を手本としたまえ。」
「そんな!艦長は素晴らしいお方です。私は艦長のような、優れた士官になりたいと思っております!」
「はっはっはっ、そうかね。ありがとう、ブライトくん。だが、コープ司令を手本とすべきなのは間違いないぞ。」
「なるほど。ですが、そんな優れた司令が率いておられる第41任務部隊に護衛していただけるなんて光栄ですね。」
艦橋につめる、他の士官たちも頷いている。やれやれ、もしかして分かっていないのではないか?
「それだけ、私たちの任務は重大で、しかも危険が大きいということだ。ジオンからすれば戦力化する前の最新兵器を無効化出来るかもしれないチャンスなのだからな。だからこそ、このホワイトベースのような、最新鋭艦を与えられているのだ。」
艦橋を見渡す私につられてか、何名かの士官も艦橋内を見ている。
「旗艦ミカサより指令、サイド7への進路を取ります。加速開始。」
「第41任務部隊、サンジャシントより哨戒機発艦します。」
きびきびと任務に従事する精鋭の士官たち。何より、従来の艦からは考えられない単独での大気圏離脱。
「これは素晴らしい艦だな。ブライトくん。さすがはミノフスキー・クラフト搭載の最新鋭艦だ。予備役上がりの私には眩しい限りだよ。だからこそ、任務の遂行を果たさなくてはな。」
無邪気に「はいっ!」と返事をするブライト・ノア中尉の声を聞きながら、コープ司令との会話を思い返す。ジオン部隊からの襲撃がある、という確信に近い予想があるようだった。ジャブローでこの任務を命じられた時に考えていたよりも、今回の任務は危険が大きいのかもしれない。注意しておかなくては。サイド7ノアには計画の中心人物であるテム・レイ主任もいるのだから。
パオロ・カシアス中佐はそう考えを改めるのであった。
いよいよ、原作の主人公艦、そしてブライト艦長ことブライト・ノア中尉も登場です。
原作では本来ならルナIIを経由してサイド7を目指したホワイトベースですが、今回は少しでも早くサイド7に辿り着くため、進路を直接サイド7へ向けています。
また、the Originではホワイトベースに乗艦していたテム・レイ主任は、今作ではサイド7で試験に携わっていることになっています。今作と原作との違いですのでご注意ください。
そして次話ではいよいよ、あの赤い仮面が出てきます。お楽しみに。