ではどうぞ。
『ホワイトベースからガンダム出撃』
その報告を聞いた瞬間、オレの中で雷が落ちたような衝撃が走った。これだけ手を尽くしても原作と同じような展開となってしまったのか、という諦観にも似た思いが浮かびかける。だが、次の瞬間にはその思いを否定した。ホワイトベースもパオロ艦長ら首脳部もはまだ無傷で、コロニー外にはオレたち増援がいる。原作より戦力ははるかに強力なのだ。シャアによる襲撃なんぞ返り討ちにしてやる。というか、原作ではそもそもガンダムは輸送途中でホワイトベースから出撃したのではなかったか。いかんいかん、冷静になれオレ。
「予定変更!コロニーのベイ側まで到着次第、ガンダムとガンキャノン、ガンタンクの全てを出撃させる!ガンダムには近接戦闘装備!コロニー内戦闘だ。外壁を傷つけるなよ!それと、敵の母艦が仕掛けてくる可能性がある!第22任務部隊と共同で敵を叩くぞ!」
すぐさま指示を出した。こちらの虎の子、MS隊は全てコロニー内へ突入させよう。仮にシャアが潜入していたとすれば数は多い方がいい。
「通信長、基地司令部かホワイトベースと連絡はつくか?」
「先程からミノフスキー濃度が急激に上昇し始めており、通常の通信は使えません。レーザー通信でならコロニー経由で連絡は取れるはずです!」
「それで構わん。内部の詳しい状況と、こちらからMSを5機(プロトガンダム、ガンキャノンとガンタンク各2機)を送り込むことを伝えろ!誤射でもされては叶わんからな。」
「アイサー!それと第22任務部隊よりレーザー通信です!敵の母艦と思われるムサイ級を確認。デブリ帯に隠れていたようです。どうやらムサイ改造型らしく、艦型が通常と異なるとのこと!索敵データも送られてきています。」
そう言ってからサブモニターに映し出されたムサイ級の画像。望遠画像をレーザー通信で送ってきたからだろう、画質はかなり悪いがそれでも通常のムサイよりもかなり格納庫部分が大型化されているらしいのは分かる。
「こりゃ、ミノフスキー濃度上昇はこいつのせいだな。それに敵のMS運用数は通常よりも多そうだな。第22任務部隊の対応は?」
「レーザー通信によると距離を取ってレールガンで迎撃を行うと!」
「よし。こちらもMS隊をコロニーに送り込んだら向かうと伝えてくれ!参謀長!先の戦闘と同じく部隊を2つに分けるぞ!ヤハギのリヒャルト少佐の指揮で、ヤハギ、ウィンチェスター、サンジャシントは第22任務部隊の増援に向かえ。敵艦を確実に沈めるんだ。ピッツバーグと本艦はコロニーへの救援に向かう。敵がもしコロニーから出てきたときに対応できる戦力が必要だからな。」
「了解しました。ヤハギらは今この時点で回頭させてはいかがですか?コロニーに近付いて減速させるのも勿体ないです。今なら速度を生かしてそのまま方向転換が出来ますが。」
「ああ、そうだな。リヒャルト少佐に直ちにレーザー通信。分派部隊の指揮を取るよう伝えよ!」
「司令、少しお待ちください!MS隊をコロニーに突入させ、サンジャシントも分派となると本艦の艦載機がからになります。もし敵の潜入部隊が有力なMSを有していてコロニーから出てきた場合対抗できませんよ?」
慌てたようなハイネ航空長が会話に入ってくる。こういう時に意見をすぐに言えるようになったのはいい成長だな。ベイにたどり着くまでまだ少し余裕はあるし、こちらの考えを伝えておくか。
「確かに危険ではある。だが敵がコロニーから出てくるならうちのMS隊も追いかけて出てくるだろう。プロトガンダムのテスパイであるヒュー中尉はそのあたりの戦況判断も的確だ。本艦とピッツバーグがベイ外で睨みを効かせることも分かっているのだからすぐに出てきてくれるさ。それまでなら本艦たちだけでも耐えられるだろう。」
「しかし、危険がある以上、ガンタンクだけでも残しておく方が。もしくは、サンジャシントからセイバーフィッシュを引き受けることも。」
「そうだな。だが、今回は2つの理由から却下だ。まず一点、ガンタンクは対艦戦闘には有効だがMS相手なら主砲のショットガン射撃の方が有用だ。コロニー内部の拠点防護に回す方がいい。2点目だが、おそらく敵母艦には手練れの直掩MSがいるだろう。第22任務部隊はMS戦闘に不慣れと聞いている。いくら艦の数で圧倒的でもMSにひっくり返されないためには対MS戦闘に慣れたリヒャルト少佐の助力は必要だと思う。確実に敵母艦を沈めなくてはならん。よって今回の意見具申は採用できん。最悪、本艦が沈んでもV作戦の詳細な情報と機体を守れたら良い。連邦のためにはな。」
「・・・っ!!・・・了解しました。差し出口を申し訳ありませんでした。」
驚いたような表情のあと、それでも意見を飲み込んだようにそう返答するハイネ少佐にオレは笑って更に付け加える。
「とはいえ、だ。ここまでの戦力があるんだ。そう易々と沈められるつもりはないし、ジオンに情報をくれてやるつもりもない。勝つぞ!ハイネ少佐!」
「はい!了解しました!あ、それとMS隊発信準備完了です!ビダン少尉はレールガンを搭載したがってますが却下しておきました!」
「お、おう。了解した。(ビダン少尉はコロニー内でレールガンなんぞ何に使うつもりだ!?よくやった、少佐!)」
やり取りをしつつも発信準備を進め、更に変なビダン少尉の希望を却下していた少佐に感謝しつつも若干引いてしまったオレに苦笑しながら、参謀長が話しかけてくる。
「話がまとまったようなのでリヒャルト少佐の部隊は転針していただきますね。」
「ああ、それで構わん。リヒャルト少佐には必ず敵を沈めるよう念押ししておいてくれ。」
すぐさま通信長のところへ移動し指示を出し始めた参謀長を横目に、ミカサとピッツバーグの位置を再度確認する。ベイ至近まではあと10分程だが、減速する際にMS隊は発進させてしまおう。その後すぐにベイから10キロで相対静止状態へ。
もし相手がシャアならエアロックや、最悪の場合コロニーの外壁を破って出てくる可能性もある。(陸部分は無理でも採光用の海(窓)部分なら破れる)全周警戒が必要だろう。
「ヤハギ以下、転針します!」
「ヤハギへ発光信号送れ。『勝ッテ帰レ』」
左舷後方へ去っていくヤハギら3隻に短く敬礼をしつつ指示を出す。ここからはノアコロニーの内部のことだけ考えよう。
「やらせはせん。やらせはせんぞ。ジオン。」
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「ガンダムはなぜ出撃したんだ!?誰が乗っている!?」
ベイ内部で未だ動くことの出来ない自艦を歯痒く思いながら、急に右舷カタパルトデッキから飛び出していった新型MS『ガンダム』の姿を目にして、思わず私は叫んでしまった。
(なぜ新型のMSがいまここで出るのだ!?いくらザクIIが現れたからと言って、ここで最重要機密のガンダムが出てしまっては意味がないではないか!?)
私、パオロ・カシアスはホワイトベースの艦長席の肘掛けを強く握りしめながらそう後悔する。あれほどコープ司令から助言されていたというのに!
「艦長、大変です。ガンダムの搭乗者は民間人の、それも子どもだそうです!?」
「子どもだと!?どう言うことだ!?」
慌てつつも格納庫デッキと連絡を取っていた艦載長(ミカサでの航空長に相当。MS搭載が主となるため暫定的にこの呼び名となっている)がそう報告してくるがより混乱が深まるばかりだ。
「はっ、それがザクIIの発見に伴い、急遽レイ主任とそのご家族らがカタパルトハッチから艦内に避難されたまではよかったのですが、先程の至近への着弾でレイ主任がご家族、ええっとご子息を一時的に近くにあったガンダムのコックピットに避難させたようなのです。それがどういうわけか、ご子息が動かして出撃してしまったと・・・」
「・・・っな!?レイ主任のご子息だと!?全くのど素人が最重要機密に乗っていると言うのか!?」
よりにもよってなんでそんなタイミングて、なんでそんなところに避難させたんだ!レイ主任!!?
「艦長、大変です!?基地司令部より連絡が!?」
「ええい、今度はなんだ!?」
「侵入していたジオンのMSですが、シャア・アズナブルと、ジョニー・ライデンのパーソナルマークを確認したと!」
「なっ!?!?!?赤い彗星に深紅の稲妻だと!?ルウムのエースオブエースじゃないか!?いかん、すぐにガンダムを呼び戻せ!!」
「それが、ガンダムに通信が繋がりません!というか通信に気付いていないのかもしれません!」
「あぁぁぁぁ!!テム・レイ主任にすぐ艦橋へお越しいただけ!!なんとかしなくては!我が軍の最重要機密が!!希望となる新兵器が!!」
思わず声を荒げて指示を出す。まさかジオンのエースが二人揃ってこのコロニーに襲撃してくるだと!?なんでそんなことになるんだ!
「カシアス艦長!ご冷静になさってください!いま、基地司令部経由でコープ司令から連絡が来ました!あちらのMS隊を5機全てこちらへ回してくださるそうです!少し持ちこたえれば必ず増援が来ます!」
普段なら慌てるブライト中尉と嗜める私、と立場が逆なはずなのに今はどうだ。ブライト君の方が落ち着いているようじゃないか、いかんぞパオロ。落ち着け!!!
「あ、ああ。すまないブライト君。そうか。コープ司令には誠に感謝してもしきれん。よし。こちらも打てる手は全て打つぞ!搬入を終えていたはずのジムシリーズはどうなっている!?」
気持ちを切り替えつつ、艦載長へ問いかける。
「あ、はい!ジム03は周辺監視任務のために出撃を準備していましたのですぐに出せます。01号機と02号機はまだ搬入後の点検が済んでおらず、武装も間に合いません!」
「くっ、ひとまずテスパイに03号機だけでもすぐに出撃をさせるんだ。残りの2機は早く準備できる方からで良い。出せるように!」
「は!03号機にはホセイ曹長を搭乗させます!01号機があと5分で出せそうですのでそちらにはサンダース伍長を!」
「よし!それと、まだ搬入が済んでいなかったガンタンクやガンキャノンについても、動かせるものはすぐに戦闘に加わるように指示を出せ!」
ジムをなんとか2機は出せる。だが民間人の乗ったガンダムの支援には少なすぎる。少しでも機体を多く出さなければならん!
「ええ!?ですが、艦長!最初の攻撃で搬入中の機体は出入口が破壊され動かせないと連絡が!」
「まだ工廠には別の機体が残っているかもしれんだろう!急げ!組立中のガンダムとジムも動かせるなら出撃だ!」
「は!はい!」
通信科の人員が大慌てで司令部や工廠と連絡を取り始めたところで、艦橋へテム・レイ主任が連れられてくる。入り口でブライト中尉が案内役を交代し、私の元へ連れてくる。さて、なぜご子息をガンダムのコックピットに乗せたのかを問い詰めねばならん。
「レイ主任、来られたな。さて説明していただこう。なぜガンダムに貴方のご子息が乗っておられるのか?」
「これはカシアス艦長。ご挨拶が遅れました。ジャブロー以来ですね。さて、アムロ、ああ、私の息子についてですね。あの場合は最適だったからですよ。」
「最適?何を仰っているのです?あれは、ガンダムは我が軍の最重要機密兵器なのですぞ?けっして子どものおもちゃではない。なぜ、貴方のご子息をコックピットに入らせたのです!?」
「襲撃の瞬間、ガンダムの搭乗訓練をしていたパイロットは全て工廠側へ行っていました。ここで組み立てていたもう1機のガンダムとハイエンドタイプのジムをこちらへ移動させるためです。ホセイ曹長やサンダース伍長はまだガンダムの搭乗訓練は受けておりません。あの場で、ガンダムを動かして襲撃に対応出来たのはアムロ、私の息子だけだったのです。」
「はっ?貴方は何を言って?」
「正直に言えば、私も何を言っているのだろう、と思います。ただ、これは事実なのです。先月、第41任務部隊のコープ司令と私はこの基地で会議を持ちました。その際に、コロニーへの襲撃の可能性と私や開発部の家族を狙われる可能性について指摘されたのです。基地司令のポプラン大佐とも相談の上で、それ以来家族らは基地の中で保護していました。今回のホワイトベースで、V作戦の機体と共にジャブローへ避難するために。そこまではよろしいですな?」
確認するようにレイ主任がこちらを見つめてくる。私が頷くとレイ主任は続きを話し始めた。
「その際に、アムロは、私の息子はパイロット待機室に設置していたガンダムのシミュレーションに誤って搭乗してしまったのです。そしてわずか半日ほどで、テストパイロット全員のスコアを上回りました。」
「・・・・・・は?主任、何を?」
「ですから、テストパイロット全員のスコアを遥かに上回り、最高スコアを更新したのです。私も当然何かの間違いだと思いました。そこで設定を変えたり、シミュレーションの状況を変えたりしながら何度もアムロにシミュレーションを受けさせました。結果は難易度をあげても、多数対一の戦闘状況に臨ませても、最高スコアを更新し続けました。」
「まさか!?そんな!テストパイロット達は、連邦三軍の中から、選抜してきた精鋭なのですよ?そのスコアをただの少年が?」
信じられず問いかけるが、レイ主任は苦虫を噛み潰したような表情で頷いた。
「無論、シュミレーションと現実は異なります。だからアムロには、息子には決してホワイトベースの停泊するベイ区画から離れぬこと。艦の掩護射撃が受けられる範囲で迎撃のみ行うことを伝えています。ですが、今、このコロニーに居るなかでおそらくはアムロが最も優れたガンダムのパイロットなのです。だから私はあの場で息子をガンダムのコックピットに座らせました。息子もこの艦を、正確にはこの艦に乗る友人たちを守るためにガンダムを動かすことを了承しました。」
レイ主任からの話に戦闘中という事も忘れ、思わず呆然としてしまう。そんなことがあるのか?ただの少年が?確か、レイ主任のご子息は15歳かそこらだったはずだろう?その少年に戦わせると?
「話は分かりました。主任。しかし、貴方は一人の父親として実の息子を戦闘に送り出したというのですか?死ぬかもしれないのですぞ?普通ならそんなことは認めないはずでしょう?」
「当たり前でしょう!!!」
「!!!」
「私が喜んで息子をガンダムに乗せたとでもお思いか!?私はそんな事、考えもしませんでした!息子達を出迎えたタイミングで爆発音を聞き、すぐに艦内へ避難するように言いました!だが、アムロは、あの子は格納庫にあるガンダムに気が付くと自分から乗ると言い出しおったのです!いくら止めても聞きもせず!最後は殴ってでも止めようとしました!だが、あの子はみんなを守りたいから、と決して聞き入れようとはせず。仕方なく、迎撃のみで艦から離れぬことを条件に乗せたのです!」
「・・・それは。」
「私だって可能なら今すぐにジムにでも乗ってあの子を追いかけたい!だが、私はMSの操縦が上手くありません。機の整備も含めた責任もある。本当ならあの子の前に出て、なんとしてもあの子を守ってやりたいのに!!」
「レイ主任、失礼なことを申し上げました。事情は分かりました。主任は格納庫の指揮室から、MSの掌握をお願いいたします。ジムについては03号機と01号機を出撃させます。ガンダムの支援と防護に当たらせましょう。間もなく、第41任務部隊からもガンダムを含めたMS隊の増援が来ます。それまでの辛抱です。」
「第41任務部隊、ではコープ司令が?」
「そうです。よろしいですな?」
「わ、分かりました!直ちに!」
私がブライト君に主任を指揮室へ案内するよう伝えるのも待てないように艦橋から出ようとするテム・レイ主任。それを慌てて追いかけるブライト君の背中をみながら、私はふと脳内であることを思い出していた。
「アムロ・レイ君か・・・。新たな人類、ニュータイプ。まさかジオンの奴が主張する人材が我が軍の側に現れたとでも言うのか?」
私は戦闘の最中にあることも一時忘れ、そう呟いたいた。
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ノアコロニーの中は急速に混乱の度を深めていた。突如として居住区と開発区を隔てるコロニー隔壁の近くに出現した5機のザクIIは周囲の工場(実は連邦の開発施設の一部だった)を破壊しながら隔壁の方へ近づいていき、その奥へ入り込もうとする。するとコロニー公社の施設であるはずの隔壁の各所からMSに向かって攻撃の砲火が飛んできた。既にコロニー全域には非常警戒とシエルターへの避難を指示するアラームや放送が繰り返し流され、平和だったはずのサイド7ノアコロニーは一瞬で戦争の最中へと叩き込まれていた。
「ライデン大尉、そちらからの攻撃でゲートを破壊できそうか?」
「やってみましょう。迎撃砲火はかなり制圧出来ましたので近づけるでしょう。」
そんな戦争の中を悠然と歩く人形、ジオンのMSザクIIだ。それを駈るのはジオンのエースオブエースとして勇名を轟かすシャア・アズナブルとジョニー・ライデン。
居住区にある工場は当然ながら、機密になるようなものは置かれておらず、なんらかの部品らしきものは多数発見したもののそれがいったい何であるかはデータを探っても分からなかった。そして隔壁の各所から撃ち込まれる迎撃の砲火の激しさは、あの向こうになんらかの秘密が隠されていることを示唆するには充分だ。シャアもそれを感じたし、ジョニーだって分かっている。だからこそ5機のザクは連携しながら隔壁のゲートを破壊しようとしていた。
「デニム、スレンダーは後方警戒を。ライデン大尉はホペック中尉と共に前方の啓開を頼む。」
「了解しました!」
「こちらも了解だ。・・・よし、隔壁を破った。内部へ侵入する。ホペック付いてこい!」
「はっ!大尉、お気をつけください!」
隔壁を破壊していたライデン大尉のザクIIが隔壁の向こうへ消える。続いてホペック中尉の機体もだ。私も機体を操作してその後に続く。デニムとスレンダーは隔壁の左右に陣取って警戒体制に付いている。さて連邦のMSはどんなものか。月面のスミス海で戦ったようなMSモドキでなければよいのだが。あんなものでは興醒めもいいところだからな。
ずいぶんと長い隔壁のトンネルを潜り抜けると隠された連邦の基地区画に出た。先行していたライデン大尉はホペック中尉と手分けして手近な工場らしき建物から順に中を確認していっているようだ。
「だが、ゆっくりはしていられんな。ほぅ、ガンタンクか。ずいぶんな旧式が出てきたが。さて。」
先行する2機を確認しつつ、私は奥の工場の屋根越しに見え始めた機体に注意を向けた。ガンタンク、コロニー内での制圧戦闘を主眼に無限軌道とMSの上半身のような構造を組み合わせた機体だ。私がムンゾを脱出する時に乗ったのは初期型だったが、あれはその最新型か?
「大尉、連邦のガンタンクが出てきたぞ。私は迎撃に移る。貴官らは調査を進めてくれ。」
「了解です。数が多いようなら支援に向かいます。仰ってくださいよ。」
「大丈夫だ。ガンタンクごときには遅れはとらんよ。」
そう言いながらマシンガンで牽制射撃を行う。敵は慌てたように停車し、そこから後ろへ下がり始める。緩慢な動きだが従来機よりも機敏なように感じる。V作戦というのは既存の機体の改修も行っているのか?
ビル越しに曲射射撃をしてきたガンタンクの数はおそらく4機、散布界にこちらを収めるように統制射撃を行っているらしい。周囲で爆発する砲弾の威力からするといくらザクIIでも直撃するとマズいな。
「大尉、連邦はガンタンクで曲射をしてきている。そちらの工場にも当たるかもしれん。直撃せぬよう気をつけろ。」
それだけを伝えると一気に距離を詰めていく。遠距離用の機体など、近接戦に持ち込めば脆いものだ。
「っ!!まさか、スミス海の人形か!」
ビルを回り込もうとしたところで急に砲撃を浮け、咄嗟にバックステップで避けるがその射撃方向を確認すれば見覚えの有る人形。連邦のMSが2機佇んでいた。細部やカラーリングは異なるが、肩部にキャノンを背負いザクマシンガンのような武器と大型のシールドを有する月面のスミス海でミノフスキー博士の亡命阻止作戦の際に交戦した機体らしき奴だ。
「ガンタンクと同じ旧式の機体。だが、スミス海で戦ったときよりも機敏に動き、攻撃の照準も早い。やはり改修機か?V作戦というのは機体の改修を行うのが目的だと?」
考察を口にしつつも、ザクIIのマシンガンで敵機を狙う。ヒートアックスにはまだ少々遠い間合いだからだが、敵はその砲弾をシールドで防ぎ、更に機動によって避けてみせた。
パイロットの腕も良いようだが、やはり機体自体の動きも良い!
「だが、まだまだ私には追い付けん!」
敵機の射撃を避け一気に距離を詰めるとヒートアックスで機体の頭部を横なぎに攻撃する。一機目は容易く頭部を破壊できたが、2機目は飛び退いて距離をとった。そこをガンタンクが直射で攻撃してくる!私はもう一度機体を後方へ下げると今度はガンタンクの側へマシンガンで牽制射撃を行う。確かガンタンクは装甲が厚く、これくらいでは撃破はできない筈だが、それにしても怯む様子もなくこちらへ腕部のマシンガンを向けて攻撃してきたのには驚いた。
「ほぅ。肝の据わったパイロットのようだ。こちらの牽制は効かんか。だが!」
機体を左右に大きく揺らし、狙いをつけにくくさせるとガンタンクへ距離を詰める。ヒートアックスの狙いは機体の本体ではなく、砲撃を行ってくる厄介な主砲!
「残念だが、肩の主砲2門さえ無力化すれば、ガンタンクは怖くないのでな。」
手前にいた2機のガンタンク主砲を切り落とし、MS機体との間にガンタンクを位置させるようにして再び距離をとる。ガンタンクも慌ててこちらへ砲身を向けようとしてくるがさすがに無限軌道では即座に振り向くことなど出来ない。その間に私は機体を工場の影に潜り込ませた。
「中佐殿、ずいぶんと楽しそうな事をされていますな。我々も混ぜてくださいよ。」
「ライデン大尉か。工場の調査はどうだったのかね?」
「連邦の奴ら、きっちりしてますよ。データは全て消去済みで、復元も難しそうでした。何らかの武器を作っていた工場なのは間違いないですが、現物は無し。データからの類推も出来ない、となれば実機を奪うしか有りませんね。」
私の質問に機体を寄せてきながら答えるライデン大尉。その後方では背後を警戒しながらホペック中尉も向かってくる。どうやら中尉も調査はからぶりだったようだ。
「やれやれ、外(宙域)警戒といい工場のデータといい、連邦の手腕は大したものだな。そこまで厳重に守るV作戦、気になるというものだ。」
「とりあえず、あの敵機をやっちまいますか。ガンタンクはともかく、肩に短砲身を担いだ奴はなんです?中佐はご存知のようでしたが。」
「あれか。開戦前に月面の極秘任務で出くわしたことがある。ガンタンクの系譜のようで、遠距離支援が主体なのだろう。動きは鈍くザクIの敵ではなかったが、あれはその改修機のようだ。ザクIIの動きに対応してきていた。気をつけろよ。」
簡単な説明と共に分かっている情報も伝える。『了解!』と短く応えたライデン大尉とホペック中尉はタイミングを合わせてビル影から飛び出すと距離を詰めてきていた人形へ攻撃を仕掛ける。敵は肩のキャノンを撃ちながら距離を詰められないように下がり、そこをガンタンクが支援砲撃を加えてきている。
「連携も上手い、か。単なる開発だけではなく運用試験もしていたのか?」
私もビル影から機体を飛び出させ、マシンガンで人形の方へ攻撃を加えた。我々の機体色で3機いることは分かっていたのだろう、即座に射撃に対応し、シールドを掲げてきた。だが、敵機がそう対応してくることはこちらも分かっており、本命はその間に距離を詰めてのヒートアックスによる攻撃だ。
「これでどうだ!!っと、ビームだと!?」
ヒートアックスを振り上げ攻撃しようとした瞬間、敵機後方のビル越しに眩い光の奔流が機体カメラを襲う。咄嗟に機体を傾けて避けることはできたが、いまのタイミングは幸運が重なってたまたま避けられたに過ぎないだろう。
「まさか、連邦はビーム兵器を携帯可能な機体を開発したのか!?」
ビル影からゆっくりと現れたトリコロールのMSはビーム兵器らしきものを片方の手に持ち、反対側は盾を装備している。ガンタンクと人形もその機体と連携するように後方へ下がり陣形を建て直した。
「中佐、これはちと不味いですよ。奴さん、ビーム兵器を保持してやがる。」
「分かっている。大尉。2人は私の支援をしてくれ。私があの連邦の新型に仕掛けてみよう。」
新型MSの登場に私と同じく距離を取ったライデン大尉からの通信にそう応え、私は改めてモニターに映る新型を観察する。
スミス海の人形よりもスタイリッシュで機敏そうな外見。頭部のレーダー類がかなり充実しているのも性能を物語っていそうだ。トリコロールなどという目立つ塗装も性能ゆえか?
なにより、手にしているビーム兵器が驚異だ。先程の射撃は直撃したビルを跡形もなく溶かし破壊している。艦砲なみか?なんという出力をMSに持たせるのだ、連邦軍は。
「だが、MSを使った戦闘についてはこちらの方がノウハウを持っている。見せてもらおうか、連邦のMSの性能とやらを!」
大尉らの掩護射撃のもと、私自身もマシンガンを射撃しながら敵機に近づいていく。スラスターをふかせ左右に機体を動かしながら接近するがガンタンクと人形は弾幕を張ることに決めたらしくやたらめったら撃ってきている。そのなかで新型のみはビームを撃つこと無くこちらを狙い続けている。
「確実に狙って当てようとしている?舐められたものだな、紅い彗星と言われたこの私が!」
ヒートアックスに持ち替え、一気に敵機に迫って振りかぶる。避けるかと思った敵機は、だがしかしシールドを使ってこちらのアックスをいなすようにして(シールドがヒートアックスに耐えるだと!)背中から何かを取り出そうとする。何だ?
「ビームの剣っ、だと!!?」
ヒートアックスをいなされた時点で嫌な予感を感じて機体を後ろに下がらせたが、敵が上段から大きく振りかぶった白い筒はいきなりビームを剣のように展開して切りかかってきた!
避けようとした機体の制御のためにやや後傾したザクIIの表面装甲が容易く斬られただと!?
「中佐、下がってください!ソイツは危険ですよ!」
新型と私の機体の間に飛んできた射撃はホペック中尉機からのものだ。
見れば掩護射撃をしていたガンタンクと人形の方は損傷したのか撤退しつつある機体が半数、もう半数も損傷させたらしく動きが鈍い。それをライデン大尉機が更に追撃しているようだ、さすがエース。
「すまない、中尉。助かった!だが、やられっぱなしでは、性に合わん!もう少し援護をしてくれ!」
斬られたのは腰部のスカート装甲。この程度はなんという事はない。ヒートアックスをいなして避けたということは直撃すれば脅威だということでもある。ならばやりようはある!
「可能なら鹵獲したいが、撃破してしまってもやむをえまい。あの新型はかなりの脅威だ。」
ホペック中尉のマシンガンによる掩護射撃もシールドで防いではいるが機体自体に着弾したものもあまり効いているようには見えない。装甲もかなり高性能なもののようだ。
「だが、やりようはある!」
どんなに装甲が強くともレーダーセンサーや関節部を攻撃すれば良い。それに相手のパイロットはどこか実戦に不慣れなように感じる。新人か?ならばなおのこと好都合というものだ。
機体に負荷はかかるが、敵のビームの狙いを付けさせないように激しく機動させながら距離を詰める。私の機体のザクマシンガンも使い捨てるつもりで射撃を加えていく。敵の新型は奥に有るであろうベイエリアから離れたくないのか、動きが消極的だ。こちらは自由に動けるのだからそれを利用して敵を翻弄してやろう。更にビームの威力が高すぎるのでコロニー内での射撃も自由には出来まい。
「パイロット君には悪いが、その機体貰い受けるぞ!」
後少しでヒートアックスの間合いに入るところで機体を一気に飛び上がらせる。新型からは背後に擱座したガンタンクがあるから撃ちにくかろう。頭部を叩き割って機体を鹵獲してやる!
だが、後少しで新型の機体にヒートアックスが届く、というところでそのヒートアックスを敵の新型のビームが撃ち抜いてきた。まさか!?狙って撃ち抜いただと!?
刃部が溶け落ちたヒートアックスを投げ捨て、距離を取るためにバックステップで距離を取ろうとするが、そこで更にベイに繋がるとおぼしきゲートから2条のビームがザクと新型の間の空間を薙いだ。
「まさか、更に別の機体もあるのか!?」
新型を注意しつつ、ゲート部を拡大すると奥から歩き出て来たのは目の前のトリコロールの新型機を簡素化したような2機のMSだった。
だが同型らしきシールドを持ち、やや異なる形のビーム兵器をこちらに向けてきている。
「量産型、か?なるほど目の前の新型はフラッグシップや指揮官機のようなものか。ますます脅威ではないか。何としてもデータを持ち帰らねばならんな。」
後から出てきた量産機らしき2機は連携しながらこちらへ距離を詰めてくる。目の前のトリコロール機を守るような動きだ。
「ほぅ。やはり目の前の機体は特別なようだな。だが、更に新型が増えたとなると鹵獲は難しいか。」
ヒートアックスが無くなり、マシンガンも残弾が乏しいので1度ライデン大尉とホペック中尉の機体の近くまで下がる。
「中佐殿、大当たりですな。新型が3機も出てきたじゃないですか。だが、いささかこちらが不利ですよ。どうします?」
手持ちのヒートアックスをこちらへ手渡しながらライデン大尉が通信を寄越してくると、反対側からはホペック中尉がマシンガンの新しいマガジンを差し出してくる。
「後から出てきた新型の方が動きはぎこちなさそうですが、あのビーム兵器は脅威です。どうされますか?」
「うむ、だが敵はあのトリコロールカラーの機体を守ろうとしている。そこを突けばあの量産型らしき方は撃破できるかもしれん。私がもう一度仕掛ける。二人はトリコロールカラーの方を狙ってくれるか?」
「「了解!」」
改めて新型を確認すると、トリコロールの新型機を奥へ下がらせ、後から出てきた量産型がこちらへビーム兵器を向けてきている。後方からはトリコロール機もビームを撃ち込んできている。戦闘開始からはかなりの数を撃っているはずだがまだ弾切れにならんのか。
こちらもライデン・ホペック両機からマシンガンによる掩護射撃の中、距離を詰めていく。トリコロール機を狙うように私の機体からも射撃を行う。
慌てたように量産型の2機がシールドを構え直し、マシンガンの弾を防ぎながらこちらへビーム兵器を撃ち始めた。ビームの射線が細い。しかも一繋がりではなく断続的なビームだ。なる程、ビーム兵器も量産型というわけか。
「せっかくのビーム兵器だが、撃つ前にビーム兵器の銃口がどこを向くか確認すれば狙いが一目で分かるぞ!これならば避けることは難しくない!」
量産型のビームを避けながら距離を詰め、一気にヒートアックスで敵に斬りかかる。トリコロール機を守ろうと必死なようだが、悪いな!私の狙いは貴様ら量産型の方だ!
ヒートアックスの斬撃は狙いどおり量産型の右腕関節部を叩き折り、ビーム兵器を握ったままの前腕部が地に落ちる。すかさずそれを回収した私は、
「撤退だ!大尉、中尉、引き上げるぞ!」
指示と同時に敵へ煙幕弾を投げつけ、機体を翻すと先程通ってきた隔壁の破口へ機体を走らせたのだった。
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「サンダースさん!大丈夫ですか!!」
撤退していく紅いザクIIが煙幕によって見えなくなると、僕はすぐに通信で目の前に立つジム01号機のパイロットであるテリー・サンダースさんへ呼び掛けた。
「ああ、心配するなアムロくん。右腕を破壊されたが、オレは怪我ひとつ無いよ。もっとも新型を傷付けてしまったから主任に怒られそうなのが怖いが。」
「父さんもきっと分かってくれますよ!ガンダムを守るためだったんですから!それに、せっかくガンダムに乗せて貰ったのに僕は、なにも出来ませんでした。怒られるなら僕こそ!」
「怒られるのは間違いないだろうが、ソイツは違うぞ、アムロくん。」
新たに通信へ入ってきたのは、ジム03号機のリュウ・ホセイさんだった。
「忘れているようだが、君はまだ民間人だ。民間人が軍の機体に乗って出撃したことについては大目玉を喰らうだろうが、むしろこの中で機体を傷付けずに生き残ったことは大したもんさ。サンダース伍長が怒られるのは新兵器であるジムの右腕を敵に鹵獲されてしまったからさ。」
「リュウさん・・・。でも!」
「なにより、君はまだ15歳の少年だ。そんな君が戦いの場に出なくてはならなかったのは、俺たち大人が不甲斐ないからだよ。よくぞ生き残ってくれたアムロくん。」
サンダースさんがそう言ってくれて、やっと僕は戦いに身を投じていたことに気付いた。さっきまでは無我夢中でシュミレーターと同じ感覚で乗っていたが、あの紅い機体がもしガンダムへ斬りかかっていたら、僕は死んでいたかもしれないんだ。そう考えると急に震えが出始めた。そう、死んでたかもしれないんだ。
「・・・あの、2人とも助けにきてくれてありがとうございました。」
「良いってことさ。さぁ、ホワイトベースに戻ろう。主任もきっと心配されているよ。サンダース伍長、お前も一緒に帰艦しろ。オレはガンタンクとガンキャノンの擱座機の救援に向かう。」
リュウさんに声をかけられて、僕はガンダムを操作してジム01号機を支えるようにしながらベイへ向かうゲートへ機体を歩かせるのだった。
ノアコロニー内部での戦い、前編をお送りしました。キリの良いところまで書こう、とするとどうしても長文になってしまう。もっと文章力が欲しいです。
そして今作ではジムの右腕とビームスプレーガンを鹵獲、という形になりました。シャアからすれば、交戦データと兵器の実物があれば戦果としては十分という判断を下したようです。
ちなみに、搬入中の機体が出入口を破壊され出撃させられない、としたガンタンクやガンキャノンですが、今作では民間人区画と基地区画とを分ける隔壁の中に組立工場や最重要工廠が隠されていた、という設定になっています。やけに長い隔壁のゲートトンネルの秘密は、その厚みを利用した工場群が隠されていたから、というものでした。そして搬出入のための出入口は隔壁のゲートトンネル内部に隠されていました。これらは、ジョニー・ライデンが隔壁を破壊した際にトンネル内のセンサーが爆発を関知してロックをかけたり、破壊の余波で開かなくなったりして使えなくなってしまっていました。
次話では、ノアコロニーの戦い(後編)をお送りします。おたのしみに。