撤退しようとする彼らを主人公は止められるのか。31話どうぞ!
コロニーの基地司令部経由のレーザー通信によって送られてくる情報は混乱の極みだった。やれ、工廠が破壊された、やれガンタンクやガンキャノンも全滅した、ガンダムには子どもが乗っている(まさかアムロとは違うよな!?)、いや潜入したザクIIを撃退できた、敵を撃破した際にコロニーが傷ついた、挙げ句には命令権など無いはずの第41任務部隊に対して追撃命令まで送られてきた。相反する情報が次々とレーザー通信やミノフスキー粒子による妨害のなか、きれぎれの通常通信を通しても送られてくる。
「基地司令部はかなりの混乱状態ですね。下手をすると司令部がやられている可能性もあるのでは?」
「かもしれんな。こうなると信頼できる情報は派遣したMS隊からの情報のみになるか?ヒュー中尉はそのあたりしっかりしているとはいえ、ミノフスキー散布下の妨害状況ではこちらが得られる情報が制限されてしまうな。」
参謀長と情報の確認をしていくが、どれも確定出来るようなものではないために却って今後の方針や対策を考える邪魔になっている。どうしたものか。ガンダムが撃破されているとなると機体の鹵獲や情報の漏洩も考えなくてはならないが。
「司令、ヒュー中尉から港湾管理部を介してレーザー通信で一報が入りました!圧縮データで文字と画像のみですが!」
「有難い!メインスクリーンに出せ!」
すぐさま映し出された情報を見て、思わずオレは呻いてしまった。
「侵入した敵はやはり紅い彗星と真紅の稲妻。居住区の低機密工廠は破壊され、基地区画の工廠も探られた模様と。」
「搬送中のガンダムとガンタンク・ガンキャノンは組み立て区画からの出口を破壊されて出せず・・・機体が破壊や鹵獲されていないだけマシか?」
データを読み上げつつ参謀長とオレで現状を把握していく。敵は基地区画まで侵入してしまったのか。
「・・・!司令、出撃したガンダムについての部分を!」
「うん?どうした?って!ガンダムパイロットはレイ主任の子息!?なぜ民間人が!!?」
(アムロが乗ってんじゃねぇか!!なんでだ!?ホワイトベースに搬入済みなのになんでアムロが乗るんだよ!?)
「レイ主任のご子息、アムロ・レイくんですね。半月前からシミュレータでガンダムの操作経験あり?なぜ民間人がシミュレータに?」
参謀長はアムロの添付された短い情報を読んで疑問符を浮かべているがそれどころではない!
「参謀長、ヒュー中尉に至急レーザー通信!MS隊は直ちにガンダムの支援に付け!ジオンのエースに民間人の初心者相手では、ガンダムでも無理だ!助けに入らせろ!あの機体を破壊されたり奪われてはいかん!」
「あ、はっはい!」
参謀長もオレの指示で慌てたように通信科の兵に駆け寄り指示を出す。オレはそれを横目に航海長と砲術長に指示を出す。
「航海、砲術!敵のMSは潜入時と同じくコロニー外壁の点検作業口から脱出する可能性が高い!本艦とピッツバーグで出てきたところを抑えたい。主砲ショットガン射撃を連続10斉射出来るように準備。コロニー点検口を確認してどこから出てきてもどちらかの艦からのショットガン射撃が当てられるように配置を検討せよ。多少なら外壁を損傷させても良い。ただし、大気の流出は許さん。この距離だ。レールガンも直接精密照準でMSを叩けるだろう!弾種は軽量散弾!レールガンはコロニーには当てるなよ!」
「アイサー!ピッツバーグと連絡し、待機位置を検討します!」
「司令、コロニー外壁への直撃を許す、とはさすがに危険すぎます!ノアコロニーには一般人も住んでいるんですよ!?」
即座に承服した航海長と反対してきた砲術長。それぞれの職責からしても当然だろう。ましてジオンのコロニー攻撃を非難してきていた連邦軍人としては。だが、
「航海長、10分で検討、20分以内には配置に付かせよ。通信長と連携してレーザー通信の中継点も設置させろ!ピッツバーグとの連携は絶やせん。砲術長、ショットガン射撃の出力なら同一箇所に5斉射以上しなければ穴は空かん。それにヒュー中尉からの情報で既に市民は避難しているとの事だ。大丈夫だ。基地司令部にも通達して即座に補修班を回せるようにして貰う。」
「・・・分かりました!砲術の腕に賭けて、ジオンのクソども以外には当てぬようにします!」
「すまんな、砲術長。よろしく頼む。」
外道の命令を下している事は分かっている。だが、ジオンに、いやシャアにV作戦の機体を奪われたり破壊されたりするわけにはいかん。何としても食い止めねば。
「司令、ヒュー中尉から続報です!敵のMSは6機侵入、うち2機に損傷を与えるも残り4機は撤退に移ったとのことです!そして、ジムの機体一部と武装を鹵獲された?と!」
「なっ!ジムの機体と武装とは具体的には!?」
「はっ、はい!え~と、ジムの右腕部分、肘から先と治安維持用に開発されていたビームスプレーガンだとの事です!」
よりによって連邦に一日の長があったビーム兵器が鹵獲されただと!?しかもジムの右腕も奪われたのならガンダリウム合金についても知られることになるだと!?
「敵に鹵獲された兵器は連邦にとって、今次大戦を勝つために必要な技術を詰め込んだ貴重なものだ!ジオンに渡すわけにはいかん!何としても奪い返すか、データを取られる前に破壊せねばならんぞ!」
「「アイサー!」」
「航空長、通信長!ヒュー中尉にレーザー通信!MS隊は敵の撃破よりも鹵獲された兵器の破壊を優先するよう伝えろ!特にビームスプレーガンだ!ビーム兵器の小型化技術を守れ!」
「アイサー!/了解!」
「砲術長!もし敵MS隊が出てきたら即座に撃て!破壊よりも敵を動けなくすることを優先。数を当てろ!」
ひとまずヒュー中尉に連絡をして、MS隊をぶつける。敵が応戦して撃破出来れば良し。戦闘を避け撤退すれば艦の主砲で打撃を与えることが出来る。更に第22任務部隊と分艦隊で母艦も破壊出来れば猶の事良いのだが。
「参謀長、基地司令部にも連絡を。何としても鹵獲された兵器を破壊するか取り戻さねばならん。戦力を総浚えしてでも敵を抑える。派遣していた艦載機部隊もこちらへ廻してもらうように、と。」
「混乱していますから、ポプラン司令にどこまで伝わるか分かりませんがよろしいですね?」
「しないよりはマシだ!頼むぞ!」
今の時点で打てる手はうった。あとは出たとこ任せになるか。
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「ヒュー中尉!ミカサから入電です!」
「さすがコープ司令、こちらが現状を報告したらすぐに指示を出してきたか。ありがたい!」
ベイ区画で借り受けた管制室の一つを臨時の通信中継点として運用している運用支援員からの連絡に、オレは耳をそばだてた。
「ミカサより臨時MS隊ヒュー隊長へ。敵MS隊の撃退任務を変更。鹵獲兵器破壊を最優先とせよ。だそうです!」
「やはりそうなるか!ビーム兵器の情報はジオンには渡せんからな。」
そもそも、オレたちミカサMS隊は運用試験が主目的で戦闘は意図されていなかった。だが第41任務部隊のコープ司令は歴戦の武断派ともっぱらの噂だ。試験のため、ガンダムと共に赴任して直接会った印象は理知的な士官、という風だったが、いざ戦闘となるとやはり使える戦力はなんでも使うのだろう。オレたちテストパイロットにも出撃命令が出た。
ホワイトベースとV作戦機体の守備のために、とベイ部分からノアコロニーに入ったオレたち5機はしかし、コロニー内の混乱状態に思わず立ち竦んでしまった。
基地司令部は機能せず、ホワイトベースも状況を把握していない。これではどうにもならない、とまず通信中継点と情報収集のための通信隊を運用支援員を中心にして組織させた。そしてその時点で判明した事柄を第41任務部隊へ報告させたのだ。
その通信隊からの連絡、もといコープ司令からの指示に基づいてオレたちMS隊も動くことになる。
まず、機動性に劣るガンタンク2機を管制室とオレたち別動隊の通信中継としてベイ区画の守備も兼ねて配置した。(ホワイトベース隊のガンタンクは無力化されてしまっていた事も理由だ)そしてオレが乗るガンダムとガンキャノン2機の別動隊として、開発区画を迂回する形でジオンが侵入した経路となった居住区へ向かったのだ。ベイ区画と開発区画を繋ぐゲートとトンネルが搬入しかけの資材で半ば埋まっていた事とそのゲートの真ん前でガンダムやジムがザクIIと戦闘していた事が大きな理由だが、もう一つの理由はコロニー外壁にあるメンテナンス通路を使った迂回によって敵MS隊を挟撃できるかもしれない、と考えたからだった。
結果として俺たちは居住区のと開発区を隔てる隔壁ゲートを確保していたザクIIのうち1機を撃破し、もう1機もガンキャノンのキャノン砲の直撃を与えてゲートからトンネル内に追い込むように下がらせることに成功した。
ところがその追い込んだはずのトンネル内でジオンのMS隊、おそらく5機(しかもそのうち2機が紅い彗星に真紅の稲妻だという!!)が忽然と姿を消してしまったのだ。こちらが交戦していたのとほぼ同時に、あちら側でもガンダムやジムと戦闘していた紅い彗星らはトンネルに撤退したという。あちら側の出口からもガンダム達が追跡してきていたのだから、袋のネズミもとい袋のジオンとなるはずなのに、だ。
「確かにゲート内に押し込めることまでは出来た。だが追撃したオレたち3機と鉢合わせしたのは開発区側から進んできたホワイトベースのガンダムとジム1機のみ。どこに消えた?」
先程から何度も繰り返し考えていることだが、答えが分からない。ゲート内通路にはメンテナンス通路へ抜けるゲート等はない。本来なら消えるはずの無い5機ものザクIIがどこにいるか分からないのだ。ホワイトベース隊のガンダムに乗っているのは民間人なのでそもそも相談相手にもならない。仕方なくオレはジム01のパイロットであるサンダース伍長に通信を繋いだ。
「こちら、第41任務部隊ミカサ所属のプロトガンダム、ヒュー中尉だ。ジム01、サンダース伍長聞こえるか?」
「聞こえています、中尉。ご助力感謝します!」
「礼はいい。それより、追い込んだはずのジオンMS隊。消えてしまったが、ここのトンネルは一本道ではなかったのか?我々はノアコロニーの構造に疎い。伍長が知っていることがあれば教えてくれないか。」
短距離だがコロニー内にもミノフスキー粒子が散布され始めたらしく急激に通信状況が悪化している。手短かに要件を伝えると伍長はすぐさま返答してきた。
「はっ、このトンネルは基本的には一本道です。ただ、隔壁内の極秘工廠からの搬出口が何ヵ所かに偽装して設置されています。ジオンの侵入時、このトンネルも攻撃されて何ヵ所かある搬出口も全て破壊されてしまったはずですが、もしかするとその中のどれかをこじ開けて工廠へ入ったのかもしれません。」
「なっ!?その搬出口はどこにある!?」
「開発区画側のトンネル至近に2ヵ所、居住区の側にも1か所あります。ただ、居住区の側は搬出口だけでなくその奥の工廠区画も破壊されているとホワイトベースに情報が入っていましたから、おそらく敵が隠れたとすると開発区画側の搬出口かと。」
「直ぐにそこへ案内してくれ!」
機体を翻すジムについて、ガンダムを進めていく。レイ主任のご子息が乗ったガンダムも私の隣をスムーズに歩いてジムの後ろをついていく。操作は慣れたもののようだ。これで本当に14、5歳の少年だというのか?
「あー、アムロくん、だね?緊急事態でガンダムに搭乗して戦闘に参加することになってしまったが、本来の君は民間人、守られる側の人間だ。ここからは私たちが引き継ごう。君はその機体をホワイトベースに戻してきてくれるかい?」
出来るだけ、怖がらせないように気を付けながら接触通信を行うと、しかし予想に反して落ち着いた少年の声が返ってきた。
「ありがとうございます。プロトガンダムのパイロットさん。ですが、今は1機でも戦力が多い方が良いはずです。僕もシミュレータで一通りの操縦訓練はしていますから、後方からの援護射撃くらいなら出来るはずですから!」
あまりに真っ直ぐで、だが幼い意見を話す少年の声。だが、これは頭ごなしに否定しようとしてもおそらく聞きはしないだろう。
「オレはヒュー中尉だ。ヒューと呼んでくれればいいよ。分かった。ではこちらのガンキャノンと協力して後方からの射撃を頼む。ホランド少尉、アムロくんに指示を出してやってくれ。」
そういってガンキャノンのパイロットのアーサー・ホランド少尉に指示を出す。下士官上がりのベテランであるホランド少尉ならアムロくんに対しても無理の無い範囲での戦闘指揮をしてくれるだろう。
「了解しました。中尉。アムロくん、ガンダムをこちらへ。ガンキャノンの方が装甲が厚い。我々の後ろから支援射撃を行ってくれ。」
「分かりました!よろしくお願いします。えーとホランド少尉!」
なんだか厄介事を押し付けることになってしまったが、ホランド少尉もレイ主任には何度も技術的なアドバイスや機体へのパイロットの要望のフィードバックではお世話になっている。我慢してもらおう。
サンダース伍長のジムを先頭に、オレのプロトガンダム、2機のガンキャノン、アムロくんのガンダムを最後尾とした隊列で開発区側の搬出口を目指す。同じ色調の壁面が続き、どこが搬出口なのか一目では分からないが、サンダース伍長は機体をそこからベイへと移動もさせたことがあるのです位置は把握しているらしい。
「ここです、中尉!この機体からも特定のコードを入力すると搬出口を開くことが出来ます。ただ、ジオンの奴らがそのコードを知っているはずが無いんですが・・・」
そういいながら、伍長がコードを打ち込んだらしい。いきなりトンネルの壁面に亀裂が走ったかと思うと、滑らかに扉の部分が開いていく。MSの搬出用トレーラーも出られるようにかなり幅広の出口のようだ。そして・・・
「なっ!トレーラーが破壊、されている!?」
開いた扉の奥には空荷のトレーラーが停止している。しかしザク・マシンガンで撃たれたのだろう、穴だらけになっていた。近くには負傷者だろうか何人か倒れている工員や警備の兵らしい者もいる。
「大丈夫か!?ジオンにやられたのか!?」
サンダース伍長がスピーカーですぐさま呼び掛ける。倒れている者達の中に身動ぎするものがいた。どうやら生きているようだ。
ややあって、起き上がった1人の警備兵から切れ切れの無線で詳細が伝わってくる。
「すまない、ベイに増援を送ろうとトレーラーでMS用の交換部品や弾薬を運び出すために搬出口を開けたところでジオンと出くわしちまったんだ・・・トレーラーは破壊され、荷台に積んでいたガンキャノン用のシールドと実弾用マシンガンを奪われてしまった。」
「ジオンはどこに向かったか分かるか?」
「組み立て工廠の奥にあるメンテナンスハッチの方に向かったと思う・・・。あそこは閉鎖しているが、おそらく奴らの持っていたビームスプレーガンだと破られちまう。」
いかん、コロニーの外に出られてしまうか!?しかもガンキャノン用のシールドも鹵獲されただと?
「サンダース伍長!直ちにジオンの後を追うぞ!急げ!カーテルン准尉!ガンタンクを介してミカサに連絡!敵潜入部隊、コロニー外に脱出の可能性あり!メンテナンスハッチ233から310までのいずれかと思われる。対策を急がれたし!だ!」
「「アイサー!!」」
敵は思った以上に巧妙だ。さすがは紅い彗星と赤い稲妻ということか?いや、それだけではなく、連邦(われわれ)が油断していたということかもしれないな。コープ司令があれだけ警告をしてくださっていたというのに。
あの警告が無かったら、MS自体を奪われていたんじゃないか?
そう考えているとガンキャノンから降りて壁面の通信端末を操作していたカーテルン准尉が機体に戻ったらしく報告をあげてきた。
「中尉、有線でベイブロックと連絡が付きました!ミカサへの連絡も依頼済みです。それと司令部が混乱していた理由が分かりました。ポプラン司令が搬入作業の視察に出ていたタイミングだったせいらしいです。ポプラン司令が司令部に戻られたので以後は統制が戻るだろうと。」
「ありがたい。基地司令部が使い物にならんでは対策も出来んからな。メンテナンスハッチのことは伝えたか?」
「はい、まだどのメンテナンスハッチも開かれてはないと。非常ロックを掛けてもらいましたので無理やり開けようとしない限り敵がコロニーから出ることは不可能です。」
「ですが、敵はスプレーガンを鹵獲している。あれを使われたらハッチなんぞ持ちませんよ?」
脇から通信に入ってきたのはサンダース伍長か。奪われたことに責任を感じているようだな。
「それは仕方ない。だが、外にはミカサとコープ司令がいらっしゃる。素通りはさせないはずさ。俺たちは出来ることをしよう。アムロくん!移動するぞ後方からの掩護射撃を頼むぞ!」
「はっ、はい!!」
サンダース伍長から手短に聞いた彼の訓練ログはかなりのものだ。緊張していてもさすがに味方を撃つことはしないはずだが。
ジオンのMSが歩いたであろう通路を探りながらなので速度は劣るのだが、着実に追いかけていくしかない。
外からの抑えは頼みますよ、コープ司令!
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断続的に入る混乱した通信を半ば無視しつつ、ヒュー中尉からの通信を待っていたミカサ艦橋に、何度目かの報告が届いたのは9月16日も1500を過ぎようという時だった。
「司令、ヒュー中尉のMS隊から至急です。ジオンのMS隊は工廠区画へ侵入。ガンキャノン用のシールドと実弾マシンガンを奪取しメンテナンスハッチへ向かいつつあり。ハッチは233から310のいずれかと思われる。更に通信隊からの附帯報告で基地司令部にポプラン司令が戻られたとの事です。」
「了解した。航海長、ハッチの位置を確認してピッツバーグとの位置を調整!直ちに射撃できるようにしたい。砲術長も連携して準備。レールガン、メガ粒子砲、どちらも全力射撃できるようにせよ。」
「「アイサー!」」
ヒュー中尉からの報告は簡潔。敵は更に鹵獲品を増やして撤退の一手。こちらが押し留めなければV作戦の情報を持ち帰られてしまう。MS隊は追撃してくれているようだが、逃げる側の方が自由に進路を選べる分早いだろう。艦からの射撃でどこまで足止めできるか、だな。
「参謀長、第22任務部隊と分艦隊の戦況は?」
「それが、敵艦はかなりの手練れのようです。第22の艦載機は不用意に接近して5機を損失したと。リヒャルト少佐は距離を取って敵艦に打撃を与えようとしていますが、レールガン対策もされていて観測機を優先して攻撃されているようです。敵艦のダンスの腕前は相当なもののようですよ。むしろ第22のサラミスが1隻、被弾して撤退しています。」
「さすがにエースの乗艦というわけか。パオロ艦長の情報にあった、手練れの艦というのは間違いなくそいつだな。」
そう言いつつ、内心ではおそらくその艦の指揮はドレンが取っているのだろう、と考える。『旧式パプアの補給艦で燻っていた』等と嘯いていたが。要は叩き上げのベテラン船乗りと言うことだ。厄介だな。
「司令、本艦とピッツバーグの再配置完了しました。指定のハッチについては全て射撃可能です。ただ、ハッチ280から290にかけては直下への射撃となりコロニーへの被害も大きくなることが想定されます。よろしいですか?」
「先に述べた通りだ。ジオンにV作戦の技術をやるわけには行かん。躊躇するな。」
「基地司令部には通告をしておきますね。ポプラン司令が戻られたのなら対応してくださるはずです。」
「ああ、よろしく頼むぞ。」
砲術長か懸念を伝えてくるが俺の返答を聞いて重々しく頷く。更に参謀長が、通信長に指示を出してから報告をしてくる。それにも頷きながら返事をすると、一呼吸置いてオレは全艦へ命令を下す。
「第一種戦闘配置を即時下令。乗組員はノーマルスーツを着用せよ。敵のMSが至近から出てくることもあり得るぞ!対応を遅れぬように注意せよ!」
「「アイアイ!/アイサー!」」
ガンダムで良く聞く警報音がミカサ艦橋に流れ、乗組員は一斉に慌ただしく動き出す。オレも最初にノーマルスーツを着るために艦橋後方の予備室へ漂っていくのだった。
「ハッチ265にて発光確認!ビームスプレーガンの最大出力と思われます!続けてMSらしき機影を目視確認!数は現在4機!」
その報告が飛び込んできたのは第一種戦闘配置を下令してから20分ほどたった後の事だった。ミカサの右舷かなりの至近距離でビームの条光が下方から上方へと突き抜けていく。と、それに砲術長が素早く反応する。
「主砲全門射撃始め!レールガン2番、弾種榴散弾!撃ち方始め!散布界の位置を適宜調整し、敵MSを網に掛け続けろ!対空放火も撃ち方用意!こちらへ接近してきたら命令を待たずに撃て!航海長、艦の位置調整を頼む!」
「アイアイ、任されました。」
「ピッツバーグにも連絡!敵を左右から挟み込むぞ。航空長、コロニー防衛の航空機についても偵察に出ている機体があればMSへの攻撃の協力を要請しろ!派遣していた機体ならなおのことありがたいが。」
「了解しました!現在至近距離にいるのは2機のみですがよろしいですか?」
「構わん!すぐに要請を出せ!!」
基地司令部から派遣していた艦載機を戻すよう依頼していたが、混乱の中でまだ返事はない。コロニーから任務に出ている機体に依頼するしかないだろう。
「司令、敵MSが5機全て出てきました!先頭は赤い稲妻、3機目に損傷機、最後尾は紅い彗星のようです!」
「砲術より司令、撃ち方始めます!」
「よし!敵は全て撃ち落としたいが、まずは鹵獲品を抱えている奴を最優先だ!撃ち漏らすな!」
敵側もコロニーの外に連邦軍が待ち構えていることは想定していたのだろう。ハッチを出た瞬間から回避機動を取っている。ヒュー中尉から報告のあった損傷機も盛んに動き回っている。
「頭を押さえ続けるぞ!航海長、進路をα32δ41へ。最大噴射で加速だ!ピッツバーグにも連絡を!」
「アイサー!砲術長、進路と速度のデータを送ります。動的偏差にご注意を!外すと司令が煩いですよ!」
「心配しなさんな、航海長!司令のぶんまわしは毎度の事だ、慣れているよ!」
「おい、オレのせいか!?」
オレの指示にすぐさま対応しつつ軽口を叩く航海長と砲術長。それを聞いて笑う艦橋要員たち。紅い彗星が相手でも乗組員は落ち着いて対応している。2人とは長い付き合いだし、ネタにされたことは甘んじて受け入れるか。
「司令、基地司令部から連絡です。こちらのMS隊が追跡中、まもなくハッチから出てくると。それとホワイトベースに残りのV作戦機体を積めるだけ積んで、増援で出すと言ってきていますが返信はどうされますか?」
「ホワイトベースを?積み込みがそんなに早く終わりそうなのか?」
「どうやら、機体と最低限の武装のみならあと5分程で完了するようです。細々した装備は後回し、今は戦力が多い方が良い、とポプラン司令が判断されたようです。」
通信長からの報告にオレが質問を返すと、データを確認していた参謀長がすぐさま補足を入れてくる。それなら戦力として期待できるか?MS隊を受け入れるならどうせミカサだけでは足りないのだし、母艦は多い方が良いか。ホワイトベースにはメガ粒子砲だって搭載しているのだし。
「よし、それなら積み込み完了後、速やかに増援として送られたし、と返信しろ。我々の進路と速度も伝え忘れるなよ。MS隊には補給が必要ならミカサでもホワイトベースでもどちらでもいいから降りるように伝えろ!」
「アイサー!」
そう指示を出したところでミカサの艦体が揺れる。被弾した?
『左舷カーゴ・ベイ前扉に被弾、これは・・・鹵獲されたビームスプレーガンによるものです!気密が破られました!ダメコン班で対応します!』
CICの副長が驚きつつも即座に応急指揮を取ってくれた。しかし、空間戦闘でも鹵獲品をいきなり使ってくるか!
「航海長!ランダム回避運動はじめ!ビームの直撃を喰らえば装甲が持たんぞ!通信長、ピッツバーグにもランダム回避運動を下令!」
ビームの軌跡は断続的に艦の左右に走る。撃っているのは紅いザクII。つまりはシャアの奴か。こちらを牽制、あわよくばビームガンで沈めようというのだろう。
射撃管制もリンクしていないから恐らくは目視での射撃だろうに少しずつ艦の近くを掠めるようになってきている。1発目はまぐれだろうがもう少ししたら当ててきそうな射撃だ。嫌な奴め。そしてその牽制を利用して艦の横をすり抜けていきやがった。
「敵にばかり撃たせるな!砲術長、こちらも射撃を当てに行け!」
「了解、です!主砲、第8斉射撃ちます!」
そう言いながら撃ったメガ粒子砲のショットガン射撃による第8斉射は、しかし損傷機にいくらか当てたものの撃破するには至らなかったようだ。敵5機のMSは互いに支援しながらこちらの射撃を避けつつ、母艦の方へ向かっている。
こちらが頭を押さえるために速度を落とし気味だったせいですり抜けられてから短時間で距離は約70000まで引き離されつつある。ミカサとピッツバーグは追いかけながら射撃を重ねている状況だ。更にコロニーの外壁ハッチからヒュー中尉率いるMS隊が飛び出し、最大加速でこちらを追いかけてきている。敵MSは回避機動を取りつつなのでヒュー中尉達も追い付けはするだろうが、その頃には敵の母艦とかなり近づいてしまうことになるか?ホワイトベースもゆっくりとベイから出てきたようだ。
「上手くないな。なんとか敵を足止めして、母艦との合流を阻止して撃破したいが。」
また艦橋の至近距離を掠めたビームの軌跡にヒヤリとしつつ、考える。なんとか鹵獲された兵器を取り戻すか破壊し、更に敵を撃破したい。どうする?
「司令、意見具申よろしいですか?」
「なんだ、航空長?」
「MS隊が追い付くまでの時間稼ぎとして、艦載機による敵MSへの直接攻撃を実施したいと思います。ご許可をいただけますか?」
覚悟を決めた顔で具申を伝えてくるハイネ少佐。直接攻撃、となればまず間違いなく艦載機にも被害が出る。しかもたった3機(当初の2機に加え、戦闘開始後にもう1機哨戒から戻ってきたセイバーフィッシュも指揮下に入っている。)での攻撃だ。下手をすれば全滅だろう。
「航空長、それは・・・。分かった。ただし、被弾した機体はかならず下がらせら。」
断ろうとしたが、その顔を見て思い直す。確かに、今後の戦争の趨勢を変えかねないことを考えれば躊躇ってはならない。
「ありがとうございます。3機とも直ちに攻撃に当たらせます!」
宙域図にプロットされる機体のマークを見れば、これまで牽制として遠距離からの射撃をするのみだった艦載機の機動が大きく変わり、敵MS隊に肉薄する進路を取る。これで時間を稼げれば良いのだが。
(ヒュー中尉、頼むぞ。早く来てくれ。)
「砲術長!艦載機隊の攻撃に合わせて、主砲、レールガンは全力射撃!敵に艦載機へ集中させるな!そしてそろそろ当てて行くぞ!」
ノアコロニー内部での阻止は出来なかった。だが、戦闘はまだ終わってはいない!
31話をお送りしました。
更新が大変遅くなってしまい申し訳ありません。
前話でも書きましたが、しばらく仕事が忙しく更新が遅くなってしまいそうです。月イチ更新を目指しますので気長にお待ちくださると幸いです。