旧型サラミスで生きる1年戦争   作:カズkaz

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主人公の考えていた作戦の説明回です。
感想を頂いていた中には予想されておられた方もいらっしゃいました。
捻ったことできずすみません。
お気楽にどうぞお読みください。


4話 出来ることを考えろ③

「戦隊の3隻で立体陣形を、ですか?」

 

すっ頓狂な声を出したのは副長で、画面越しに面白そうな顔をしてるのがヤハギ艦長のリヒャルト少佐、いまいちピンときていないのか不思議そうな顔をしているのがウィンチェスター艦長のリューデッツ少佐だ。 さて、どう説明しようか、と考えながらオレは戦術コンピューターで組んだ素案を中央モニターに表示する。

 

「立体陣形といってもそれほど凝ったことをする訳じゃない。そもそもぶっつけ本番で今から陣形を組むんだ。下手すりゃ3隻がぶつかって自滅してしまうからな。」

 

そういって表示したのはミカサ、ヤハギ、ウィンチェスターが進行方向から見て同心円上に並びそれぞれの艦底部を円の中心に向けている姿だ。円の上部にミカサが位置し、そこから120度の角度をつけヤハギ、更に120度の角度をつけてウィンチェスターが位置している。対空砲の死角となる艦底部をお互いに守り、尚且つ有視界での監視を全周囲に実施しやすいように、と考えた末の陣形だ。

 

ただ、連邦宇宙軍の艦隊陣形展開規則では厳密に言うとこの陣形はしてはならないことになっている。

連邦軍は多国籍の士官や将兵が在籍するため、可能な限り、分かりやすい基準をもとにした陣形や作戦を採るように、と推奨している。いくら英語が共通語として使われてはいても、ネイティブではない士官からすると一分一秒の判断が求められる際に誤解や勘違いの要因となりうる可能性はできるだけ排除したいからだ。

そのため、宇宙艦隊では太陽系黄道面を基準として、天頂方向と天底方向が常に上下となるように艦を運用すべし、と定めているのだ。

 

これは艦隊の運用効率から言えばせっかくの無重力下で非効率な艦隊陣形をとることになる場合がある。が多数の国出身の士官が運用する艦が混在する艦隊において複雑な運用、それこそ上下左右が頻繁に変わるような指示を出すことは重力下で進化してきた人間には負担が大きすぎることから、ある意味で合理的な判断とも言える。

 

では、そんな通常してはならない、とされる陣形を我々が行うことについて問題がないのか、と問われればこと第1001巡洋艦戦隊については可能、と答えることが出来るだろう。

 

それはこの戦隊が訓練用として用いられることが多かったからでもある。新任の士官や将兵を鍛えるために3隻の艦幹部はそれぞれのエキスパート(ただし、司令部からはやや扱いづらいとされた人物)が集められている。

かくいうオレも航海術の成績は、士官学校首席だったし、副長は砲術課の下士官から戦技優秀の表彰を何度も受けて遂に士官へ取り立てられたという実績を持つ。

ヤハギ艦長も士官学校はオレの一つ下の代で航海術の首席だった人物だし、ウィンチェスター艦長は航宙機運用のスペシャリストだ。

乗組員に新兵が多いとしても、なんとか陣形を組むことはできるだろう。

 

「更にミノフスキー散布下で迅速に情報共有が可能なよう、データリンク用のワイヤーも接続しておく。こちらは偵察機器のものを流用すれば数百キロ単位の長さであるから、個艦で回避運動をとっても問題ないだろう。」

 

戦術コンピューターを操作しながら説明するオレにリヒャルト少佐が質問してくる。

 

「しかし先輩、もとい先任、今回の戦い、そこまで無茶をして特別な陣形をとる必要が本当にありますか?

戦力比はこちらが圧倒的に有利、仮にジオンが反撃をしてくるとしても後陣の我々まで被害を受ける、しかもMSでしたか?に襲われる、というのはちと考えにくい気がするのですが。」

 

ニヤニヤとしながら質問してきているが、確かに原作を知らなければMSなんぞというポッと出の兵器がそこまで有用とは思えないだろう。だが、

 

「リヒャルト、ニヤつきながら質問するとはいい度胸だな。まぁだが質問の内容は確かに気になるものも多いだろう。

これを見てくれ。」

 

面白がって質問してる可愛い後輩は後で絞めるとして、コロニー迎撃戦での記録を呼び出す。

 

「先のコロニー迎撃戦では少数ながらジオンのMS、なんでも『ザク』とか言うらしいが、確認されている。問題はこれらの兵器が状況に応じて即座に武器を使い分け、対艦、対空、更にミサイルの迎撃と柔軟な運用を行っていたらしい、ということだ。コロニー迎撃は遠距離から行っていたので艦隊とMSが接近しての戦闘は無かったが、もし近付かれると艦の対応速度を遥かに越える可能性がある。」

 

「懐に入り込まれると厄介だと?」

 

リューデッツ少佐の確かめるような声音に頷きながら、想定(といいつつ原作で知っていることだが)を話す。

 

「至近距離でバズーカを打ち込まれたり、そこまで行かなくても奴らのマシンガンをVLSにでも打ち込まれてみろ、艦なんぞ一溜りもない。おまけにアンバック機動で不規則な機動を得意とする、というデータもある。」

 

 

そこまで説明すると各艦の幹部たちからも納得した声が出始めた。もう一押しだな。

 

「なんにせよ、用心するに越したことはない。それに準備もせずにいきなり対処しなければならないのと、心積もりをしておいていざその時を迎えるのとでは雲泥の差だ。各艦は念のために備えて準備を進めておいてほしい。」

 

オレの締めくくりの一言を聞いて、第1001巡洋艦戦隊の方針は決まった。なんとか準備が間に合えば良いが、

 

艦の望遠カメラではサイド5ルウムのスペースコロニー群がだんだんと大きくなってきているのが見えた。

 

 




仕事が忙しく、平日は不定期の更新となりそうです。
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