本編では詳しく説明していませんが、主人公たちのミカサ、ヤハギ、ウィンチェスターの立体陣形は各艦の監視方向や、各砲の担当範囲、回避行動の舵の角度など細かな打ち合わせや機器の設定を事前にしている、と考えています。
では、お楽しみください。
マゼラン型戦艦フォレスタルの爆沈からは早かった。 艦隊の前方からいつの間にか現れたムサイ級巡洋艦の砲撃、更に四方から変幻自在に迫るジオンのMSによる肉薄攻撃はレビル提督旗下の艦隊が艦隊として迎撃をする暇を与えなかったのだ。各艦、各戦隊は各個に戦闘を開始した。
「砲術っ!上方30度、接近しつつあるMSに対して威嚇射撃だっ!近寄らせるな!!」
オレが出す指示に被せるように損害報告が届く。
「ヤハギ、左舷に至近弾!!迎撃したミサイルの破片です!対空砲に被害あり!」
「ウィンチェスター、敵のMSを追い返しました!ただ、第2主砲のジェネレーター過負荷に陥りつつあります。射撃速度を落とすとのこと。」
我々、第1001巡洋艦戦隊はまだ辛うじて持ちこたえている。艦隊の前方に大物(マゼラン型)が固まっていること、我々の後ろにも戦闘機母艦となっているコロンブス型が控えていることから、MSがその両者に分散してくれているのだ。
至近弾やらなんやらは多いが、まだ直撃は受けていない。乗組員の新米兵どもも、必死になって働いてくれている。
「ヤハギの対空砲はまだ撃てるのか!?確認を!」
オレの指示にあたふたと確認を取る通信兵。あいつ、確か初航海の訓練でテンパるとどもってたよな。大丈夫だろうか?
今すべきでは無いそんな考えが脳裏に浮かびつつも、指示を出していく。
「ウィンチェスターには過負荷になら無いギリギリで連射を続けるように言ってくれ、あまりに発射レートを落とすとそこから付け狙われるぞ。」
「艦長、ヤハギのダメージコントロール班より連絡です。被弾した対空砲は修理すればまだ撃てるとの事。既に作業にかかっています。およそ10分!」
「5分、は無理でも7分でやるようにと伝えてくれ!
その3分で沈んじゃ意味がない。」
「うちの艦長はお優しいですな。ヤハギ艦長のリヒャルト少佐は3分で、と指示されてますよ。」
「あいつ自身なら本当にやりかねんな。ミカサじゃ逆立ちしても無理だ。っと戦隊進路、取り舵いっぱい!今やられたマゼランを避ける!」
次第に爆発煙やらデブリやらで視界が遮られている。急速に量を増やすデブリの発生源(そしてその中に少なくない数の有機物があること)を考えないようにしながら、次の手を考える。何も手を打たないのは悪手でしかない。このままだと急に現れたMSにズドン!何て事にもなりかねないのだ。
「アナンケの司令部、もしくは近くに陣取っていた筈のカニンガン提督座乗のネレイドとは連絡がつかないか?」
「アナンケとは戦闘開始直後から連絡取れません。ネレイドは15分前に1度、ただその直後にお互いの位置関係が変わったようでまた途絶しています。」
テンパり気味の通信兵に変わって通信長が答える。
とはいえ、今も通信を試みながらであり、繋がり次第伝えるからあまり話しかけるな、オーラが出ている。
普通に怖い。あんま睨むな。
「了解した。次に砲術、前方から接近中のムサイに向け、本艦とヤハギで統制射撃。レールガンをお見舞いしてやれ。ウィンチェスターはジェネレーターを少しでも休ませるように伝えろ。」
「了解、目標前方2時15分の方向、ムサイ級2。右目標を仮称アントン。本艦目標へ。左目標を仮称ブルーノ。ヤハギ目標とす。レールガン統制射撃、弾数各門3発。撃ちぃ方、はじめー!」
小気味良い砲術長の指示と共にレールガンのプラズマ軌跡がムサイに伸びたかと思えば、次の瞬間には被弾穴から空気が抜け出しムサイは仲良く爆沈した。
さすが本艦の最大火力だな。まして近距離では外しようもないか。通信長と砲術長の表情が天国と地獄状態だ。
ホントに怖いって。
「艦長、通信が入っています。」
「っ!アナンケか!ネレイドか!?」
「残念、第35巡洋艦戦隊のピッツバーグからです。」
般若から、いや通信長からの呼び掛けにビクッとしたのは秘密だ。誤魔化すように叫ぶが、すげなく否定された。
「発ピッツバーグ、宛てミカサ。要約すると戦隊が1隻になったから助けてくれ、です。おまけにピッツバーグ艦長は艦橋被弾で戦死されたと。」
「最悪の状態じゃねぇか!!」
ルウムの悪夢はそう簡単には覚めないらしい。