旧型サラミスで生きる1年戦争   作:カズkaz

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上級司令部との連絡も取れないまま、進路を変更した主人公たち第1001巡洋艦戦隊。
今話では遂にルウム戦役が終結します。
ジオンの残敵掃討から生き残れるのか。始まります。


8話 ルウム戦役④___そしてルナIIへ

ピッツバーグと合流後、散発的にやってくるジオン軍のムサイ級やザクを退けながら艦隊の後方へと進路を変更した我々、第1001巡洋艦戦隊だが、やはり救援しようとした後方のコロンブス改型戦闘機母艦や直掩部隊は甚大な被害を受けているようだ。

本来ならコロンブス改型が整然と隊列を形取っていた筈の後陣は見る影もなく、ほとんどの艦が沈むか被害を受けている。

救難信号もあちこちから出ており、我々はジオンを警戒をしつつも応えられる限りの救難信号に対応していた。

不幸中の幸いと言うべきなのは、連邦のほとんどの艦がやられたからかジオン軍部隊は前方へ移動したらしく、ほとんど接敵はしていない。

 

「艦長、コロンブス改型アネモネの残骸からの救助活動、完了しました。艦載艇、帰還します。生存者は10名のみだったようです。」

 

「了解。副長、次はどこになる?それと、戦隊の空気・医薬品の残量はまだ大丈夫か?」

 

 

「次は右舷前方のレパント型シュトゥットガルデンです。既に先行して3号艦載艇が横付けしています。推進機が全損していますが艦の前部は原型を保っています。なお、戦隊各艦の統計ですと空気はともかく、医薬品の残量は4割を切りましたのでそろそろ厳しいかと。」

 

メインモニターに映し出されたレパント型は後方こそ手酷くやられているが確かに前方は良く残っている。あれなら生存者も多いだろう。だが、そろそろ戦隊の各艦に加え、ピッツバーグまで使ったとしても収容限界が近づいてきている。もともとピッツバーグ以外は弾片被害しか受けていなかったので物資に余裕があったとはいえ、軍艦なのだから余剰物資などたかが知れているのだ。

その余裕も救助した人員によって急速に喪われつつある。

1つだけ朗報があるとすれば・・・

 

「艦長、ピッツバーグのミタス副長より報告です。お繋ぎしてもよろしいですか?」

 

「ん、ああ頼む。」

 

救助活動のため、戦隊もピッツバーグも速度を落としたことで、仮設とはいえピッツバーグとミカサを光ファイバーケーブルで有線接続を行うことが出来た。

戦闘中はレーザー通信と、最悪の場合は発光通信しかなかったのだが今は映像通信が行えている。

 

「ペール艦長、こちらピッツバーグのミタス中尉であります。ピッツバーグに収容した将兵の治療は一先ず完了しました。人員も補充でき、レーダー系についても仮とはいえ復旧ができております。」

 

「ミタス副長、それは有難い知らせだ。今は1隻でも戦力が欲しいところだからな。復旧作業の指揮、お疲れ様だった。」

 

「いえ、サラミスから救助した人員を優先的に本艦に収容させていただいたお陰です。助かりました。」

 

そう、朗報というのは他でもない。ピッツバーグの応急修理が完了したのだ。この辺り一帯で沈んだサラミス型の生存者のうち、軽症や無傷のものをピッツバーグへ、重症者を我々に、とすることで多数の死者が出ていたピッツバーグの人員補填とし、更に沈艦から程度の良い部品を剥ぎ取ってピッツバーグに無理やり取り付けることで一部とはいえ警戒・射撃レーダーを復旧させている。

 

「どうせ収容するのだ。まだ戦闘は続いているのだし生存者にも手伝ってもらわねばな。ところでミタス副長、先程の全方位通信はそちらでも受信出来ているか?」

 

オレの問いかけにミタス副長の顔が曇る。どうやら受信はできているようだな。

 

「はい、戦艦ネレイドのカニンガン提督からですね。撤退命令はともかく、まさかレビル提督が捕虜になっておられるとは。」

 

そう、ミノフスキー粒子による影響下で辛うじて受信出来たカニンガン提督からの通信で、オレ達はレビル提督の座乗艦アナンケの沈没と提督がジオンの捕虜になったらしい、ということを知った。前世での記憶通り、レビルは敵に捕まったということだ。

ならばここからは原作知識にもあった撤退戦ということだ。実際にネレイド座乗の第5艦隊司令であるカニンガン提督は次席指揮官として連合艦隊の全艦へ撤退命令を下している。ただ、問題は我々と主たる撤退先になるであろうルナIIや地球との間にはジオンの本隊がいるらしい、ということだ。

 

「カニンガン提督からは連合艦隊のうち指揮下の第5艦隊と第2艦隊は地球方面へ、第1艦隊と第6艦隊は月方面へ、との指示が出ていた。我々第1001巡洋艦戦隊とピッツバーグの第35巡洋艦戦隊は第4艦隊の所属だから脱出先としてはルナIIになるのだが・・・・・」

 

「分散して、全滅を避けるためだろうが・・・敵の艦隊のうち一部が連合艦隊の後方へ回り込んでいる。ルナIIへ向かうとなるともう一戦、厳しい戦いが起こることになりますね。」

 

渋い顔のままミタス副長が言うが、実際問題として我々だけでジオンの艦隊を抜くのは不可能だ。MS対策の陣形は目立つからムサイ級の艦隊の中に突っ込んでいけば集中砲火を浴びてしまう。

 

「第4艦隊や第3艦隊の残存艦は軒並みルナIIを目指すから、我々だけで突破するわけではないだろうがな。どこかしらで他の残存艦と合同しなくては。」

 

「ティアンム提督の第2連合艦隊、つまり第7・第8艦隊が支援に回ってはくれないのでしょうか?たしかあちらは被害をそれほど受けていなかった筈ですが。」

 

オレの呟きに反応したのはミタス副長と同じタイミングで通信を繋いだヤハギのリヒャルト艦長だ。隣の画面に映るウィンチェスターのリューデッツ艦長は懐疑的なのか顔をしかめている。

 

「リヒャルト少佐、それは難しいのでは?第2連合艦隊の前面にはサイド3、ジオンの本国があるんだ。いくら我々第1連合艦隊が大きな被害を受けているとしても敵の本国を突く好機をティアンム提督が逃すとは思えないが。」

 

「では、リヒャルト艦長は我々の独力で撤退をしなくてはならないとお考えですか?」

 

おずおずと聞き返すミタス副長。

 

「それよりも、上級司令部が軒並みやられていて統一指揮が取れないことが問題では?仮に他艦と合同出来ても、指揮系統がバラバラでは戦えません。」

 

そう言ったのは本艦のオットー副長。確かに今はオレを指揮官として統一指揮が出来ているが、本来ならピッツバーグは他戦隊だしな。更に艦が増えることは望ましいことばかりではない。

そんなしかめ面のオレに声をかけたのは指揮官打ち合わせのメンバーではなかった。

 

「艦長、打ち合わせ中ですが敵の反応です!」

 

「どこだ!?」

 

監視任務をしていた砲術長の報告に艦長4人は一気に戦闘指揮へ意識をうつす。

 

「戦隊右舷、メガ粒子砲の砲撃を確認!敵MSとレパント型2隻が戦闘を行いつつこちらへ接近してきています!距離は45000!」

 

「ずいぶん近いな!?第一種戦闘体制へ移行!3号艦載艇は今すぐ呼び戻せ!主機関出力をアイドリングから最大へ!戦隊針路、方位0300、上方2度修正!」

 

「「アイサー!!」」

 

一気に戦闘体制を整える艦の様子に手応えを感じる。疲れは出ているがそれ以上にクルーには自信がついてきている。新米を育てるのは100度の訓練よりも1度の実戦だ、というのは誰の言葉だったか。

 

また思考が横にずれつつも、ミカサ、ヤハギ、ウィンチェスターとその後方に控えるピッツバーグは即座に進路を変え、レパント型の支援に向かう。

 

「3号艦載艇、戻ります。シュトゥットガルデンより、25名の生存者を連れています。」

 

「メガ粒子砲、レールガン、各門エネルギーチャージ終わります。レールガンの残弾は各門58発です。ミサイルは斉射4回分!」

 

「艦の気密体制、確立しました。生存者は食堂に避難してもらっています。」

 

「機関部より艦橋・CICへ。主機関の出力正常。アイドリング中に整備できましたのでまたブン回せますよ!」

 

各部署からの報告を聴きつつも、意識は前方モニターに映る戦闘に集中する。どうやらレパント型はどちらも手負いだが戦闘は継続出来るらしい。2門だけのメガ粒子砲を連射しつつ、かなりの速度でこちらへ向かってきている。

 

「砲術、メガ粒子砲砲撃始め!MSを追い払えば良い!撃ちまくれ!レパント型に当てすぎるなよ!」

 

「通信!前方のレパント型に呼び掛けろ!こちらのメガ粒子砲はショットガンだ。驚かないように、とな」

 

どうやら接近する我々に気付いたのか敵のザクの動きが変わる。数は4機か。母艦のムサイ級も近くにいるか?

いや、艦砲射撃がないからMSだけかもしれんな。

 

「メガ粒子砲、射撃開始します。続いてピッツバーグ、射撃開始しました。」

 

「戦隊各艦に近付くMSが最優先だ!ピッツバーグにはレパント型の近くに威嚇射撃をして、MSをレパントに近付けさせるな、と伝えろ!」

 

ピッツバーグがある程度の自立航行が出来るようになったことで、戦術に幅を持たせられる。レールガンでは(弾が見えないから)威嚇にならないが、メガ粒子砲の砲撃ならザクにとっても良い牽制になるのだ。

 

「接近するMS1機に直撃!撃墜しました!」

 

「レパントにまとわりついていた2機もこちらに向かってきます!」

 

「対空砲、撃ち方始めます!」

 

どうやらザクはミサイルパンツァーを撃ち尽くしているようで、所持しているのはマシンガンだけだ。斧はあるかもしれないから接近する前に撃ち落としたいが、とりあえず脅威度はいくらか下がるな。

 

「接近中の1機に更に命中弾!敵MS3機とも撤退していきます!」

 

「警戒は続けろ!レパント型との通信確立できたか?」

 

「はい、レパント型ミンスクより返信。『来援ヲ感謝ス。コチラ第221防空戦隊司令ライエン大尉。残存艦ハ、ミンスク、ペトロブルグ』とのことです。」

 

「第4艦隊のお仲間じゃないか!よし、第221防空戦隊に本戦隊へ合同するように伝えろ。戦隊進路、方位0130へ変針。速度は第2巡航。」

 

 

なんとか敵を撃退出来た。残敵掃討のつもりがサラミス4隻と出くわしたから、あちらからしても及び腰になったんだろう。早めに退いてくれて良かった。

 

「艦長、ミンスクのライエン大尉よりレーザー通信です。秘匿情報があると・・・」

 

「秘匿?こんな乱戦の、しかも撤退戦をしようとする最中にか?まぁいい、繋いでくれ。」

 

秘匿のレーザー通信とは穏やかではない。いったい何事だ?

 

そう考えながら艦長席の小型モニターを観たオレは絶句した。そこにはミンスクからの通信文が出ているのだが・・・

 

『こちら、第4艦隊司令クレッチマー准将。貴艦ミカサへの移乗を求む。』

 

 

「なんでそうなるっ!?!?!?」

 

「「「艦長っ!?」」」

 

指揮権の問題を考えていたら、同格の戦隊司令どころか艦隊司令が出てきた件について・・・!!

 

思わずラノベのタイトルみたいなのを考えながら叫んでしまったオレは別に悪くないと思う。

 




ということでルウム戦役からルナIIへの撤退戦に場面は移り変わりつつあります。
なんとか部隊を維持しつつも救助作業をしていた主人公達ですが、描かれていないだけでこうした救助作業や残敵掃討は必ず行われていたと思います。
そこで助かった命もあれば、作中にチラッとでたシュトゥットガルデンのように途中で作業が切り上げられてしまった命もあるのではないかと。
そうした場面を少しでも描けていれば幸いです。

また、誤字のご報告、ありがとうございます。
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