土師菅公が『迦具土』を倒してから十日、その情報は瞬く間に呪術界を席巻した。これまで何人も成し得なかった“神の調伏”。その尋常ならざる偉業は彼を一躍、時の人にした。呪術界ではそんな彼に『神殺し』の二つ名が付けられた。(なお、本人は厨二臭くてかなり嫌がっていた)。
そんな二つ名が付いて数日後、今日も遠方へ任務に向かう菅公の姿があった。東京都立呪術高等専門学校の敷地内、石畳の小道を歩く菅公の背中に、聞き覚えのある声が飛ぶ。
「よう“神殺し”、これから任務か?」
語尾を少し伸ばし、明らかに“神殺し”を強調して声をかけてきたのは、ポニーテールを揺らす禪院真希だった。
「真希!何回も言ってるけど、いいかげんやめてくれないかなその呼び名!」
菅公は足を止め、声を荒げて振り返る。
「何だよ、いいじゃねえか。折角、貰ったカッコいい二つ名だろう?」
カッコいいと言いつつ、その口調には明らかな揶揄いの色が混じっていた。実際、真希の口元はニヤニヤと歪んでいる。
「確かに迦具土を倒したのは事実だけど、そんな厨二臭い異名貰ってもちっとも嬉しくないの!!その二つ名呼ばれる度に顔に火がつきそうだよ」
菅公は「うぅ〜」と頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。そんな彼に追い打ちをかけるように、大柄な影が歩み寄ってくる。
「オッス!“神殺し”元気でやってるか?」
パンダが能天気な声をあげ、その横から狗巻棘も乗っかってくる。
「しゃ〜け〜」
完全に悪ノリの流れだった。頭を抱える菅公の横で、唯一、乙骨憂太だけが困惑したように助けに入ってくれた。
「皆んな、やめなよ。菅公君、いやがってるよ」
その温かい言葉に、菅公の瞳が潤む。
「うぅ、ありがとう乙骨君!僕の味方は君だけだよ!」
菅公は涙目になりながら、ガッシリと乙骨の両手を包み込んで感謝を伝えた。それを見た真希たちは「チェ、つまんねー」とあからさまに不満げな声を漏らす。菅公は満足そうに二人をキッ!と睨みつけ、威嚇してみせた。
そんな和やかな(?)やり取りの最中、頭上からひょうひょうとした呑気な声が降ってくる。
「やあ、やあ、皆んな今日も元気にしてるかな?」
アイマスクで目を覆った最強の呪術師、五条悟だった。しかし、その姿を視界に収めた瞬間、菅公の表情が一変する。
「グルルル〜!ハウ、ハウ!!」
犬歯を剥き出しにし、まるで縄張りを荒らされた犬のように吠えて五条を威嚇する菅公。
「えぇ!僕何かした!?」
流石に心当たりのない激しい威嚇に戸惑う五条。だが菅公は尚も低く唸り声をあげながら、ぷいっと背を向けてそのまま遠方への任務へと向かっていった。遠ざかる後ろ姿を見送りながら、五条は不思議そうに首をひねる。
「何だか今日はご機嫌斜めだったね〜。折角、僕がカッコいい二つ名考えてあげたのに〜」
それを聞いた一年の面々の頭に、同時に同じ思考が浮かんだ。
((((アンタのせいか…))))
言葉にこそ出さなかったものの、真希、パンダ、狗巻、乙骨の冷ややかな視線が五条に集中した。
菅公を見送った乙骨たちは、五条と別れて校舎に向かって歩いていた。「ん?」と乙骨が立ち止まり、空を見上げる。微弱だが、不穏な違和感が皮膚を刺した。
「どうした憂太?」
首元にマフラーを巻いたパンダが問いかける。
「えぇっと、何かちょっと嫌な感じが…」
不安そうに答えた乙骨に対し、三人は間髪入れずに返した。
「気のせいだ」
「気のせいだな」
「おかか」
矢継ぎ早に否定され、乙骨は思わず「えぇ〜!?ちょっと皆んな!」とか弱い声を上げて後を追いかける。
「だって憂太の呪力感知、超ザルじゃん」
あきれ顔で述べるパンダに、真希が口元を緩めて付け足した。
「まあ、里香みたいなのが常に横にいたら鈍くもなるわな」
「ツナ」と狗巻も同意を示すのであった。
◇
一方その頃、高専の校舎内。二階の廊下から学生たちの様子を見守っていた五条悟と夜蛾正道は、現在呪術界で最も懸念すべき重大事項について言葉を交わしていた。
「未だ夏油の動向は掴めん。やはりお前の杞憂じゃないのか?」
顎に手を当てながら五条に問う夜蛾正道。だが、五条の素顔に揺らぎはない。
「学長、残念ながらそれはあり得ないです。菅公と一緒に直接現場を確認しました。それに…僕が傑の残穢を間違える訳ないでしょう」
確信を持って答える五条の言葉を受け、夜蛾は重々しく落胆の息を吐いた。
「傑…」
かつての優秀な教え子の名を呟く。その直後であった。
高専全体を包む結界が、不自然な波紋を描いて歪んだ。強力な呪術的異物が、正面から高専の敷地内へ足を踏み入れようとしている。二人は瞬時にそれを感知した。
「ガッデム!!噂をすればだ、校内の準一級以上の術師を正面ロータリーに集めろ!!!!」
夜蛾正道は大声で叫び、自らも足早に廊下を駆け出していった。
正面ロータリーでは、校舎へ向かっていた一年生たちが足を止めていた。
「珍しいな」
「憂太のカンが当たった」
「シャケ」
異物の侵入に真っ先に気づいた真希、パンダ、狗巻の三人は、一瞬で緊迫した雰囲気を纏い、警戒心を露わにする。その時、上空の暗雲を突き破り、巨大な四つの羽根を持つペリカン型の呪霊が舞い降りてきた。背に乗っているのは、“変な前髪の五条袈裟”を着た男。
呪霊の姿を目にした真希たちは、いつでも戦闘態勢に入れるよう、警戒のギアをもうワンランク引き上げた。
「関係者…じゃねえよな」
薙刀のカバーを滑り滑り外しながら、低く問いかける真希。
「見ない呪いだしな」
パンダマークのついたナックルガードを嵌め直すパンダ。
「すじこ」
いつでも呪言を放てるよう、ハイネックのジッパーを下ろす狗巻。そんな緊迫した三人をよそに、乙骨だけが一人、のんびりとした声を漏らしていた。
「うわ〜、デッカい鳥〜」
「変わらないねぇ、ココは」
何かを懐かしむように呟く変な前髪の男。その横に降り立ったペリカン呪霊の口から、吐き出されるようにして数人の人間が降りてきた。胸元にハート型のニプレスを着けた半裸の変態男と、二人のギャル風の少女。
「えぇ〜、夏油様ここ本当に東京〜?田舎臭〜」
愚痴をこぼす黒ギャル風の少女、菜々子。
「菜々子、失礼」
人形をしっかりと抱きかかえた根暗ギャル風の少女、美々子がおとなしく嗜める。
「えぇ〜?美々子だってそう思うでしょう?」
反論する菜々子を見て、半裸の男ラルゥが手振り身振りを交えて急かした。
「ん〜も〜、さっさと降りなさい!」
「アンタ、寒くないの?」という心の中のツッコミが虚しく響く。美々子と呼ばれた少女が、警戒する一年生たちへ視線を向けた。
「アイツら何?」
言いながら、真ん中に立つパンダに目をとめる。
「うわぁ〜!パンダだ!!可愛い♡」
スマートフォンを取り出し、パシャパシャと写メを撮りまくる美々子。その拍子に、パンダの耳がなんだかうれしそうにピクピクと動いていた。
真希たちは一歩踏み出し、口々に突きつける。
「お前等こそ何者だ?侵入者は許さんぞ!…憂太さんが」
「こんぶ!」
「殴られる前に帰んな!…憂太さんに!!」
全員が異口同音に最後の責任を押し付けてきたため、流石に乙骨は「えぇ!?」と目を丸くして慌てふためいた。
そのわずかな隙を、袈裟の男は見逃さなかった。一瞬で距離を詰め、乙骨の手を優しく取る。
「初めまして乙骨君、私は夏油傑」
その瞬間、乙骨を除く三人の背筋に激しい戦慄が走った。
(((早い!?)))
乙骨の至近距離に構えていた真希たちが、まったく目視も反応もできなかった。手を掴まれた乙骨は、戸惑いながらもぎこちなく言葉を返す。
「は、初めまして」
「君はとても素晴らしい力を持ってるね?私はね、大いなる力は大いなる目的の為に使うべきだと考える。今の世界に疑問は無いかい?一般社会の秩序を守るため、呪術師が暗躍する世界さ。つまりね、強者が弱者に適応する、矛盾が成立してしまっているんだ」
腕を組み、朗々と自身の持論を語り続ける夏油傑。彼は更に言葉を重ねる。
「なんて嘆かわしい!万物の霊長が自らの進化の足を止めているんだ」
大袈裟な手振りで語る男に、乙骨は「はあ…」と気のない返事をするしかない。
「ナンセンス!そろそろ人類も生存戦略を見直すべきだよ。だからね君にも手伝って欲しいわけ」
親しげに乙骨の肩に腕を回す夏油。
「何をですか?」
思わず問いかけた乙骨に対し、夏油は極めて平然と、驚愕の一言を告げた。
「非術師を皆殺しにして、呪術師だけの世界を作るんだ」
((何言ってんだ!?))
あまりにも狂気じみた宣言に、真希たちは息を呑み絶句する。乙骨もまた、思考が停止したように固まってしまった。
「僕の生徒にイカれた思想を吹き込むのを止めて貰おうか」
冷徹な声が響く。夏油と乙骨たちの背後に、最強の呪術師・五条悟が敢然と立ちはだかっていた。その背後には、夜蛾学長をはじめ、冥冥や七海建人、猪野琢磨など、偶然高専に居合わせた強力な術師たちがずらりと顔を揃えている。
懐かしい親友の声に、夏油傑はゆっくりと振り返った。
「悟〜!久しいねぇ〜」
「まずその子達から離れろ、傑」
五条が刃のように鋭い圧を放つ。夏油は意に介さず、笑みを深くした。
「今年の一年は粒揃いと聞いたが、成程、君の受け持ちか。特級被呪者、突然変異呪骸、呪言師の末裔、雷神の申し子、そして“禪院家の落ちこぼれ”」
その言葉が落ちた瞬間、真希の額に青筋が浮かぶ。
「テメェ!!」
唸り声をあげ、薙刀を構え直す真希。しかし夏油は、ゴミを見るような冷ややかな視線を一瞬だけ真希に向けた。
「発言には気をつけろ、君の様な“猿”は私の世界には必要ないんだ」
その蔑みの言葉が完結しようとした、まさにその時だった。
天上の暗雲が狂ったように逆巻き、空間そのものが悲鳴を上げた。
ピガーーーーン!!!ズドーーーーン!!!
けたたましい爆音とともに、前触れもなく夏油傑の真上から、一筋の巨大な太刀筋のような落雷が垂直に降り注いだ。
「ぐっ!?」
直撃のコンマ数秒前、夏油は全身の皮膚を灼くような死の予感に従い、極限の足捌きで大きく後方へ飛んだ。彼が十数ミリ前まで立っていた石畳は、直撃した雷の衝撃波によって直径数メートルのクレーターへと姿を変え、赤黒い熱気を吹き上げている。
なお、衝撃波が及ぶはずだった乙骨やパンダたちは、五条の無下限呪術によるワープで一瞬のうちに安全圏へと回収されていた。
クレーターの煙の向こうで、五条が不敵な笑みを浮かべる。
「どうするんだ傑、今のその子に対する罵詈雑言に、雷神の申し子が反応したぞ」
その言葉の通り、高専の敷地外、数キロ離れた空すらも赤く染まりつつあった。真希を愚弄された怒りの残滓が、遠方の菅公の術式を自然発動させたのだ。
夏油は冷や汗を額に浮かべながら、ひょうきんに肩をすくめてみせる。
「いや〜、まいったね。彼を怒らせるつもりは無かったんだが」
一方、五条の横に並んだ乙骨の雰囲気が、はっきりと変化していた。怯えは消え、静かな決意と怒りがその瞳に宿る。
「ごめんなさい、夏油さんの言ってる事はまだよく分かりません。でも…友達を侮辱する人の手伝いは僕には出来ない!」
そのキッパリとした拒絶を聞き、夏油は深く溜息を吐いた。
「すまない、君を不快にさせるつもりは無かった」
「じゃあ一体、どう言うつもりで此処に来た?」
五条が威圧感を高めながら問い詰める。
「宣戦布告さ」
夏油は平然と笑みを浮かべ、両手を広げた。
「お集まりの皆々様、耳の穴かっぽじってよ〜く聞いて頂こう。来たる12月24日、日没と同時に我々は『百鬼夜行』を行う!場所は呪いの坩堝・東京・新宿、呪術の聖地・京都。各地に千の呪いを放つ、下す命令は勿論、鏖殺だ。地獄絵図を描きたくなければ死力を尽くして止めに来い。思う存分、呪い合おうじゃないか」
堂々たる宣戦布告。包囲する術師たちが緊張感を高める中、背後から菜々子の甲高い声が飛んだ。
「あぁーーー!夏油様、お店閉まっちゃう〜!」
一瞬で緊迫感が吹き飛ぶ。
「もう、そんな時間か〜」
呑気に答えた夏油は、五条たちに向き直る。
「すまないねぇ、悟。彼女達が竹下通りのクレープを食べたいと聞かなくてね、お暇させて貰うよ」
「このまま行かせるとでも?」
五条の全身から凄まじい殺気が放たれる。だが夏油は笑みを崩さない。
「止めとけよ。可愛い生徒が私の間合いだよ」
その言葉と同時に、ロータリーの地面から無数の気味の悪い呪霊の群れが溢れ出し、生徒たちの足元を埋め尽くした。
「それに、コレ以上長居すると“彼”が来てしまうからね」
真希への暴言を感知し、異様な速度でこちらへ引き返してきているであろう菅公の気配を感じ取り、夏油は速やかに撤退を選択する。ペリカン呪霊の足に掴まった夏油は、最後ににこやかな笑顔を浮かべた。
「それでは皆さん、戦場で」
浮上するペリカン。それと同時に、残された無数の呪霊たちが一斉に牙を剥き、乙骨や真希たちに向かって襲いかかった。
「ちっ、下級の群れか……!」
真希が薙刀を構え、パンダと棘が身構える。生徒たちの周囲を取り囲む呪霊の数は数百を超えていた。
その時だった。
空を裂いて飛来した“一筋の赤き閃光”が、正面ロータリーの渦中に着地した。
爆風とともに爆煙が巻き起こり、群がる呪霊数十体が初撃の圧力だけで粉砕される。立ち昇る煙の中から現れたのは、遠方任務から超人的な脚力で引き返してきた土師菅公だった。
菅公の瞳は、激しい憤怒に染まっている。右手には、特級呪具『緋蝕刃』が握られていた。菅公が呪力を通すと、柄から解き放たれた光刃が、ヴンと重低音を響かせて鮮烈な赤に輝く。
本来、菅公は通常の戦闘で術式『落落雷雷』を意図的に使うことはない。彼の真価は、冥冥のもとで徹底的に叩き込まれ体術と、覚醒した絶技――『緋蝕刃』の型、敵対する者を容赦なく根絶やしにするその苛烈な戦闘スタイルにあった。
「僕の大切な人を……真希を『猿』と呼んだ奴らはどこだーーーーー!!」
地を這うような菅公の問いかけに、答えの代わりに襲いかかってきたのは、巨大な爪を持つ一級クラスの大型呪霊だった。
「消えろ」
菅公の体が動く。
『緋蝕刃・二の型』。
剣尖と最小限の体捌きに特化した型。襲い来る大呪霊の凶悪な爪を、緋蝕刃の薄い刃先で滑らかに受け流す。軌道を逸らされた呪霊が体勢を崩した瞬間、菅公は一切の無駄がない円運動で首筋を一閃。あらゆる物質と呪力を切り裂く緋色の刃は、抵抗もなく一級呪霊の頸椎を滑り落ち、一撃で消滅せしめた。
「ウガアアアアッ!」
仲間の死に感応し、四方八方から無数の醜悪な呪霊群が菅公へ殺到する。
「一人たりとも……逃がさない。“私”に敵対するなら、皆殺しだ」
菅公は低く息を吐き、緋蝕刃を腰の高さで水平に構えた。
『緋蝕刃・六の型』。
攻防の調和を極めた型。迫り来る呪力弾や爪の嵐を、緋色の刃を高速回転させることで完璧に弾き返す。低音質なビーム音が連打となって響き渡り、攻撃を無効化された呪霊たちが一瞬硬直した。その一瞬の隙を逃さず、菅公は旋風のごとく踏み込んで刃を振り抜く。
朱色の軌跡が円を描き、群がっていた数十体の呪霊が一瞬で上下真っ二つに裁断された。切断面から赤黒い呪力が噴き出し、空間に溶けていく。
だが、夏油が残していった呪霊の数はあまりにも多かった。ロータリー全体を覆い尽くさんとする黒い波。それを見た菅公の身体から、突如として禍々しいまでの赤い呪力が噴き出した。
自身の更なる覚醒によって変質した、真紅の雷。
「真希を傷つけようとした奴らの手先なんて……全滅させる!!」
菅公は両脚に圧倒的な呪力を充填し、緋蝕刃を両手で深く握り直した。一切の防御を捨て去り、全神経と威力を攻撃のみに昇華させる最強の型。
『緋蝕刃・七の型』。
ドオッ!!
足元が爆発し、菅公の姿が消えた。目視不可能な超高速の踏み込みとともに、緋蝕刃から解き放たれた真紅の閃光が、ロータリーの空間そのものを塗りつぶす。
閃光の軌跡上に存在した数百の呪霊群は、切り裂かれたことすら認識できぬまま、赤き雷の熱量によって細胞の一粒子に至るまで焼き尽くされ、灰塵へと姿を変えた。
ドサリ、と最後の呪霊の残骸が高専の石畳に落ち、静寂が戻る。
ロータリーを埋め尽くしていた無数の異形は、ただの一体も残っていなかった。文字通りの「皆殺し」。圧倒的な殲滅戦であった。
「はぁ……はぁ……」
菅公は緋蝕刃の光刃を消し、静かに息を整えた。その背中に、ポニーテールを揺らした真希が歩み寄ってくる。
「菅公……!お前、さっきの雷……」
呆然とする真希に対し、菅公は振り返ると、先ほどまでの激しい殺気が嘘のように、いつもの少年の顔に戻って微笑んだ。
「ゴメンね、真希。僕の大切な人を愚弄されて………つい、プッツンしちゃった」
その言葉を聞き、真希は一瞬目を見開いた後、恥ずかしそうにそっぽを向いて鼻を鳴らした。
「……フン。余計なお世話だっつの」
だが、その口元にはかすかに笑みが浮かんでいた。
後ろで見守っていた冥冥が、口元を隠しながら優雅に微笑む。
「相変わらず見事な腕前だね、菅公。私の指導の成果が出ているよ」
「冥冥さん……!ありがとうございます」
五条悟も目隠しの奥で満足そうに頷き、乙骨たち一年生もまた、頼もしい仲間の圧倒的な強さに目を見張っていた。
12月24日、百鬼夜行。
来たるべき決戦の日に向け、高専の術師たちの間には、より一層固い絆と覚悟が満ちていた。
と言うわけでとうとう前髪さんが宣戦布告して来ました。いよいよ本格的にぶつかります。