天神の加護と共に   作:キヨシ

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元々、五話は『迫る死』にするつもりだったんですが前回の話から唐突に主人公が死が迫るのは違和感があったのでこの話を挟みました。引き続き安心してお読み下さい♪


第五話 日々の中で思う

チュン、チュン………ガバ!トタトタトタ

 

土師菅公(はじ すがきみ)の朝は早い、日が登り始めたその瞬間から目を覚まし朝食の準備を始める………トントントン、包丁の音が鳴り響く催事場、未だに釜でご飯を炊く禪院家の調理法を見て最初はドン引いたものだが今や慣れたもの、手際よく食事を作って行くその様は料亭の料理人が如し!…まあ、それは大袈裟にしても手順良く三人分の料理を作っていく。

何故、三人分なのか?其れは禪院家に預けられて直ぐの出来事が理由で有る。少し時間を巻き戻そう。

 

菅公『う〜ん、よく寝た!今日から頑張るぞ!』

 

矢張り土師菅公の朝は早かった。父、清原との早朝訓練のお陰で朝早くに起きるのにも慣れていた。時間は朝の四時半、禪院家の中は静まりかえっている。誰も居ない屋敷の中、思わず探検したくなった菅公はトテトテと小さな足で廊下を歩いてみた。誰にも邪魔されずに歩けるこの瞬間が好きだった菅公は自宅でもよく早朝の廊下を歩いていた。すると何やら端の方の部屋から音がする、気になった菅公はコッソリと覗いてみた。

 

?A『一体何をしてるのよ、鈍臭いわね!』

?B『貴方達のせいで直哉様の朝食が台無しじゃない!』

 

真依『ち、違う私達は何もして無い!』

真希『そっちが足引っ掛けて来たんじゃねぇか!』

 

真希と真依が禪院家の女中と口論になっている、話を聞く限り“なおや”と言う人の膳を落とした事で揉めている様だ。しかし妙だった、床に落ちている膳の落ちた角度からして足を滑らしたとも見えるが足下には何か引っ掛かる様な凸凹は無い。明らかに背後から足を引っ掛けないと倒れない位置で二人は転けている。

 

女中A『何よ、口答えするつもり?出来損ないの癖に!!』

女中B『私達にあらぬ疑いを掛けないで欲しいわね!!』

 

菅公『(は?出来損ないは関係無いでしょ?)』

 

思わず声を上げそうになる菅公だが先に真希がその言葉に反応した

 

真希『その事とは関係ねえだろう!』

 

女中B『黙りなさい!アンタ達がやったに決まってるわ!!』

 

真依『わ、私達何もしてないのに、うぅ…グス』

 

女中A『泣いても駄目よ!この事は直哉様に報告するから!』

 

……いい加減、我慢の限界だった。『腑が煮え繰り返る』その時の菅公の感情を一言で表すならコレに尽きる。

 

菅公『…そこまでです。』

 

菅公は静かにしかし確実に怒りを滲ませながら四人に近付いていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

菅公side

 

僕は怒っていた、余りにも理不尽な物言いに。僕は気分が悪かった、余りにも薄汚い女中さんの言葉に。自分よりずっと幼い女の子が転んで膳の皿が割れたんだからまず考えるべきなのは真希ちゃんと真依ちゃんの怪我の具合なのに、この人達は自分の憂さを晴らす事しか考えて無い。

 

菅公『(ああ、僕が感じたこの家の“気持ち悪さ”はコレだったんだ)』

 

何て醜いんだろう、何て悍ましいんだろう、この家の人間は真希ちゃん真依ちゃん以外はこんな醜悪な人達ばかりなのかも知れない。

 

女中A『何よアンタ!邪魔しないでよ!』

女中B『この子、アレじゃないの確か五条家の親戚の』

女中A『あぁ、御三家全部に護摩を擦ってるあの家の子ね』

女中B『大変よねぇ、媚を売る以外能が無い家は』

 

菅公『だまれ』

 

そう言うと同時に僕は掌をそっと握り締めた計り知れない憎悪と共に。

僕の心の中は汚い感情で埋め尽くされていた『この人は今なんて言った?』『僕の父上を馬鹿にした?』『媚を売る事以外に能が無い?』

 

菅公『……あぁ、殺してやりたい』(ボソッ)

 

僕は二人に向けて手を翳し握り締めた掌を更に握り込んだ。

 

女中A•B『『あ、あがぁ!』』

 

【挿絵表示】

 

 

僕の握り込む掌と共に女中二人が喉を抑え苦しみ踠く。父上が得意とする拡張術式の一つ『窒阻苦(ちっそく)』自分の掌に電磁波を発生させ、相手の体内にある鉄分を操作し掌握した部分を破壊する。僕はまだ片手では二人分締め上げるのが精一杯だけど父上は最大三百人を絞め殺す事が出来る、土師家の当主が代々見せしめや処刑の為に使ってきた技。僕は今初めて敵意を持ってその力を行使していた。

 

女中A『た、助けて』

 

菅公『ん〜?よく聞こえなかったもう一度言ってくれないかな』

 

女中B『お、お願いします。あ、謝るから。オグほぉ!』

 

菅公『謝る相手が違うだろう』

 

僕はそう言って真希ちゃんと真依ちゃんの方は視線を向けた。

 

女中AB『『!?』』

 

僕の視線の意味を理解した女中二人は慌て始めた、しかし一向に二人に謝る気配が無い、どうやら見下していた相手に頭を下げるのが余程嫌な様だ……コイツら。僕の中の憎悪の炎が益々煮えたぎって行く。

 

菅公『そんなに死に急ぎたいようだね』グググッ

 

僕は呪いの籠った掌を更に強く握り締めた。

 

女中AB『『ア、アガァ(ブクブク)』』

 

二人は口から泡を吹いて倒れ込んだ。

 

菅公『(チッ最初から素直に謝れば良かったのに)』

 

そんな事を考えながら僕は真希ちゃんと真依ちゃんに駆け寄った。

 

菅公『大丈夫!?怪我は無い?』

 

真希『わ、私は大丈夫だそれより真依が!』

 

真依『う、うぐぅ』

 

真依ちゃんは転んだ拍子に手首を切っていた、その傷口から赤色の液体が垂れてきていた。

 

菅公『(不味い、出血量が多いぞ、急いで処置しないと!)真希ちゃん、台所から清潔な布と何か縛れる棒を持ってきて!』

 

真希『わ、わかった!』

 

妹の状態に呆然としていた真希ちゃんに声を掛けると我に戻った彼女は踵を返して台所へ走って行った。その間、僕は上着の袖口を破って傷口に当て真依ちゃんの腕を強く握って止血を行った。

 

真依『あぐぅ!』

 

傷口を強く抑えられた真依ちゃんが思わず悲痛な悲鳴を上げる。正直、僕も心も痛むが今止めるわけにはいかないので一定の力で抑え続ける。

 

菅公『ごめんね、真依ちゃん凄く痛むよね!直ぐに終わらせるからね!』

 

余りの痛さに悲鳴を上げる真依ちゃんだが振り絞った様な笑みで頷く。

 

真希『持ってきたぞ!』

 

真希ちゃんが僕が頼んだ物を一式揃えて持ってきてくれた。

 

真希『真依は大丈夫なのか!?助かるのか!?』

 

菅公『助けてみせる!どんな手を使っても!よし先ずは真希ちゃん、真依ちゃんの腕の出血位置を体より高い位置に上げて清潔な布で抑えて圧迫して、真依ちゃんは痛いだろうけど耐えてね。僕は出血位置の下を別の布で圧迫して棒で固定するその後、縫合を行う』

 

真希『縫合出来るのか!?』

 

菅公『……昔、母上にサバイバル訓練で散々習ったから』

 

嘘で有る、確かに母から縫合などの技術は一通り叩き込まれたが実は

実践した事は一度も無い!

 

菅公『(でも、やるしか無い!)』

 

ジジジジ!指先の呪力を研ぎ澄まし極限まで集中させて行く。

ツーーーーーーーー、そして指先の呪力を摘み糸の様に伸ばして行く、

更に目に呪力を集中させ、まるで顕微鏡の様に切断された傷口を拡大視して行く。其処にはパカリと切れた傷跡が見える。スゥー、僕は息を吸うと摘んだ糸状の呪力を一気に真依ちゃんの傷口に刺し縫い合わせていった。母上に教わった通りに雑念を祓い、一つ一つの動作を丁寧に反復して行く、腕を構成する凡ゆる器官を瞼に焼き付け縫い合わせる。そうして10分程経った。

カチッ、僕は自分の歯で呪力の糸を噛みちぎった。

 

菅公『ふぅ、詐術終了、血管、骨、筋肉、細胞、全て100%繋げたよ。真依ちゃんゆっくり手と腕を動かして見て』

 

 

【挿絵表示】

 

 

真依『う、うん』

 

頷きながら腕を回し手首を動かす真依ちゃん。

 

真依『ほ、本当だ!全然、痛く無いよお姉ちゃん!』

 

真希『よ、よかった』

 

ヘナヘナと床に座り込む真希ちゃん、無理もない妹が怪我をさせられた挙句に難癖をつけられて治療をする事も出来なかったんだから。でも、コレで二人とも無事でいられるのだから大円団だ……少なくとも今は。

 

菅公『一応伝えておくと僕が縫い付けた呪力の糸の強度にも限界が有るから完全に繋がるまでは無理な動きはしない事。重い物を持ったり、無理に引っ張る動きは絶対にしないでね』

 

真依『うん、分かった……でも』

 

菅公『うん?どうしたの?』

 

真希『私らこの家じゃ雑用係だからなぁ、無理矢理にでもさせられんだろう』

 

やっぱり禪院家はガチクズの集りでした。怪我した女の子に無理矢理、重労働させるなんて何世紀前から進化してないんだろうこの家?とは言え二人に拒否権が無い事も事実だしう〜ん………あ!そうだ良い事思いついた(笑)

 

真依『ねぇ、お姉ちゃん菅公君 変な顔で笑ってるよ』

 

真希『絶対、碌な事かんがえてねぇなアリャ』

 

変な顔とは失礼な100%善意からくる笑みだよ!そんな事を思いながら僕はコレからの事を説明する。

 

菅公『“今回の事はあくまで女中さん二人がしでかした事にする。あの二人が膳を落とし、偶々近くに居た二人が割れた皿の破片で怪我をして腕を不自由にした。その時、偶々通り掛かった僕が二人の今後の為に自分のサポート役をお願いした”と言う筋書きで押し通す事にする。そうすれば二人に火の粉が降り掛かる事は無いし怪我を治す時間も稼げる、どお?一石二鳥でしょ?』

 

笑いながら二人に問い掛けると真希ちゃんと真依ちゃんがおずおずと問い返した。

 

真希『良いのかよ、そんな事したらお前に罰が来るかもしれねぇぞ』

 

菅公『問題無いよ、修行預かりとは言え一応は土師家の跡取りだからね向こうも余り下手な事は出来ないよ』

 

真依『どうして其処迄良くしてくれるの?』

 

菅公『だって僕達 友達でしょう?“友達は助け合う”って母上が何時も言ってたから……え?もしかして僕って友達じゃなかった!?』

 

どうしよう、だとしたら今までの発言が全部恥ずかしいモノになる(涙)

 

真依『そ、そんな事無い!』

 

真希『私達、他人の善意に慣れてねぇから、どうしても疑っちまうんだよ』

 

菅公『よ、よかった〜、勘違いだったら僕唯の痛い奴になるとこだったよ〜アハハハ』

 

真希『結構、そんな感じだったぞ(笑)』

 

真依『ちょ、お姉ちゃん!?』

 

菅公『ぐはっ!?』

 

余りにも辛辣な言葉に僕は思わず倒れ伏した。

 

真依『大丈夫!?』

 

菅公『だ、大丈夫。僕の心に9999のダメージが入っただけだから』

 

真希『元々、幾つだよ』

 

菅公『一万』

 

真希『死に体だな』

 

真依『あははは……』

 

真希ちゃんのツッコミに真依ちゃんから乾いた笑いが響いた。

 

菅公『ま、まあ兎に角 今回の一件はコレで手打ちにしてもらえる様に僕が掛け合ってみるから二人は安心して養生に精を出してね』

 

真希•真依『『うん』』

 

菅公『じゃあ二人は僕の部屋の隣で休んでてくれるかな、直ぐに戻るから』

 

そう言って僕は自分の部屋から出て行こうとした

 

真希•真依『『おい!(あのぅ!)』』

 

菅公『ん?』

 

真希•真依『『有難う』』

 

菅公『ふふ、どういたしまして』

 

二人の可愛いお礼に思わず笑みが溢れた(可愛いと思ったのは内緒である)そして僕が部屋を出て直毘人当主に繋ぎを付けてもらうべく禪院家の人間を探していた時、背後に気配がした。

 

菅公『お早いお着きですね』

 

??『丁度、お前を探していた所だ』

 

振り返ると其処には筋骨隆々で頭髪の長い無精髭の男が立っていた。

禪院甚壱、禪院家専属部隊『炳』の隊員で有り禪院幹部に名を連ねる人物だ。

 

菅公『此方も幹部クラスの人間を探していたんですよ、丁度良かったです』

 

甚壱『お互い様と言うわけか、ならば話は早い。着いてこい当主様がお待ちかねだ』

 

そう言って僕を一瞥して廊下を歩いていった。

 

菅公『鬼が出るか蛇が出るか』

 

コレから始まる詰問と言う名の尋問に向かう事に思わずそんな言葉が溢れた僕であった。

 




お、終わった何もかも。まさかここまで時間掛かるとは 
何とか出来上がりましたもし良ければ皆さんご感想を下さい。
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