百鬼夜行の鬼   作:龍玉

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筆が進む進む…。
あと後書きの方でアンケートのご協力をお願いします。結果によっては今後の描写内容が変わるので。
具体的には熱い展開か湿度が上がるかぐらいの違いです。期限は…原作が始まったあたりまでですので、気長にお待ち下さい。でも気分で早くなるかもです。


第九話 年越

 

「鬼さんとユメさんこんばんはー!一緒にお蕎麦食べよう!」

「こんばんは、お邪魔していいですか」

「おーもう来たのか、寒いだろうによく来たな。ユメもちゃんといるし上がって温まってけ」

「わーい!」

「ありがとう、鬼さん」

 

 百鬼夜行にも雪が降り始め、街並みが白く染まっていく年の終わりの日。二人は正月休みを得たことで、年越しの日は鬼の家で過ごしたいと鬼に強請った。

 最初は学生が男の家に来て大丈夫なのかと心配したが、すでにユメという前例がいたこともありアヤメに押し切られる形で二人を家に上げた。

 

 すでに鬼の家の構造に慣れたのか、猛ダッシュで広間に設置された炬燵に駆け込むアヤメ。そこにはユメの姿もあり、炬燵でぬくぬくしながらテレビを眺め、ミカンを頬張っていた。

 

「あ、アヤメちゃん!こんばんは」

「ユメさんもこんばんは!やっぱり今日は寒いね~。私もみかん食べていい?」

「いいよ~」

 

「こいつ、炬燵に入んの早すぎんだろ…。アヤメ、入るのは構わんが風呂は済ませたのか?」

「ううん、今日は鬼さん家で泊まるつもりだったからまだだよ。すぐに入るから少し待って~」

「オレの部屋のタンスになんで調停委員会の服あんだ?って思ったけどお前のせいかい。危機管理が無さ過ぎんか?」

「あれ私のじゃないよ。私もそっち側に入れたかったけど、私のはユメさんのところに入れてもらってるし」

「は?じゃああれ誰のだよ」

「ナグサ」

「嘘でしょ…」

「うん嘘。私のであってるよ。入れるところがなかったから、勝手に入れちゃったの。ごめんなさい」

「なんだそういうことか。なら新しいタンスを……あれでもなんでオレの部屋のやつ使ってんの?二人分の服が入っててもユメの使ってるタンスって余裕ある筈なんだけど…」

「……」

「アヤメさん?なんで目を逸らすのかな??アヤメさん???」

 

 あれれーおかしいぞーと冷汗を流しながら呟く鬼。素知らぬ顔をしながら炬燵に入るナグサ。ハイどうぞと言いながらミカンをナグサに渡すアヤメ。何も知らないユメ。今日も鬼の家は平和です。

 

 鬼の脳裏に不純異性交遊という文字が浮かび、うーんうーんと唸りながら夕食の準備をしている頃。二人は入浴も済ませて庭に振る雪を眺めていた。思い馳せるは過去のこと。鬼との出会いだった。

 

「私が初めて鬼さんと出会った時、ナグサが風邪ひいちゃってて寝込んでたよねぇ」

「そうだね…。あの時は一人で安静にしてたから、寂しかったな」

「私が顔見せに行ったら鼻水のせいでズビズビ言いながら泣きついてきたもんね」

「そ、それは忘れて…!」

 

 顔を赤くして懇願してくるナグサを笑って流しつつ、ナグサと一緒に鬼と祭りの提灯付けの手伝いをしたことを思い出す。初めて会った時は今とは違い、ナグサは鬼に怯えつつも交流を深めていった。そのおかげか、自分に自信が持てずアヤメの陰に隠れていたナグサが少しずつ並び立つようになった。

 

「ナグサはさ、鬼さんと出会って一番変わった気がするんだ」

「…うん。鬼さんが、私そのものを知ろうとしてくれて…私もそれに応えたいって思ったから」

「なんて言うかさ、鬼さんって時々子供っぽいけど大人っぽく見えるし、真正面から接してくれるよね。私達が構って~って言ったら一緒に遊んでくれるし、無理みたいなことも一緒になんとかしようってしてくれる。実際に今もやってるし」

「うん。だからアヤメに隠れてた私も、それに甘えられて…」

「今までで一番子供でいられた気がするよね。まぁ二年生になったらそういうのも難しいけど」

「……今ならわかる気がする。私は今まで、アヤメに依存してたんだって」

「……」

「アヤメは凄いから。一人でなんでも出来て、誰かの助けなんかいらないんだって思ってた……でも、違った。アヤメにだって出来ないことだってある。ユメさんのことを知って、やっと気づいた」

「…そうだね、私にだって出来ないことはある。どれだけ凄いって持ち上げられても、期待されても、等身大の私自身はただの人間なんだし」

「…今までアヤメに寄りかかってばっかりで、ごめん。私はアヤメのことをちゃんと見れてなかった」

「うん、許す。今度からはちゃんと私のことを見てよ?最近はナグサも強くなってるんだし、私も形無しだよ~」

 

 そう言いながら縁側の床に寝転んでしまえば、遠くから鬼がユメに料理指導している声が聞こえる。またドジを発揮したのか、「これ砂糖入れてね?」「ひぃん…!?こっちは塩が…!」なんて会話が耳に入る。どうやら失敗した料理は鬼がすべて食べることにしたらしく、作り直すようだ。別に不味くないなんていいながら食べているが、真実はどっちなのやら。

 

「もし、さ」

「?」

「もし鬼さんがいなかったら、私はどうなってたんだろうね」

「どうなってたって…」

 

 時々考えてしまうのは、そんなIF(もしも)の話。鬼と出会う前も出会った後も、アヤメは困った人がいたら助ける生活をしていた。小さなことから大きなことまで、自分の生活に支障が出ないかを判断しながら。そんな生活を繰り返していたからか、街の人はどんなことでも自分を頼るようになった。それは自分に頼ることなのかと思ってしまうことまで。

 

◇◆◇◆◇

 

 ある時、鬼との待ち合わせの時間を過ぎても手伝っていたことがあった。確か、店内でトラブルが発生したから助けてほしいと言われていた気がする。頑張って説得しようにも時間は刻一刻と過ぎ、やっと解決した頃に鬼が声を掛けてきた。いつもナグサと来ていたアヤメがいないことをおかしく思い、ナグサから事情を聞いたらしい。

 

 鬼は自分が手伝っていた時から近くで見ていた。そしてロボットの店員が自分に感謝した時に彼は聞いた。何故アヤメに任せているんだ、と。

 

「何故、とは…?」

「あのな、自分の仕事の範疇のことだろ?トラブル対応って。なのになんで部外者のアヤメにぶん投げてんだよ」

「そ、それは、彼女に任せれば私が対応するよりもスムーズに終わるからで「ふざけてんのか?」っ!?」

 

「自分がやるべきことなのに他人に放り投げて、理由はスムーズに終わるから?ぶっ飛ばすぞテメェ。自分一人でできること、自分に任されたこと、やらないといけないことを解決するから成長するんだ。そして失敗もまた、自分を強く鍛え上げる。一社長として言わせてもらうが、今のお前は社会人失格だ。恥を知れ」

 

 

「アヤメ、お前さんはなんで困ってる人の手を掴む?」

「なんで、って…」

 

 店から離れ、ナグサとはその場で解散した後も鬼はアヤメに聞く。何故なんだと。

 

「『自分がそうしたいから』、それは別にいい。自分のしたいことに従って動いてるんだったら、オレも文句はない。だが今日のお前さんは、本当に自分がしたくてやったのか?」

「……違う、けど…」

「断れなかったってか。もし今の自分が断ってしまうと、『次から周りの人は私のことを手伝ってくれないやつだ』って見てくるって思ったから。……そのまま進めば、お前はいつか潰れちまうぞ。あの人は完璧な百花繚乱紛争調停委員会の委員長になれるって勝手に推されて、最後には背負い込んだ期待と願望でドボンだ」

「でも、でもっ!みんなはそれを望んでるんでしょ…!?完璧な私を望んでる!ナグサだって、私よりも強くなれるのに私のことを持ち上げて、本当の私を見てくれない…!」

「……本当にみんながそう望んでんのか?そのみんなの中に、オレは含まれてんのか」

「っ!」

 

 立ち止まった鬼の視線がアヤメへと向けられる。どうなのかと瞳が問い質す。一心に向けられた思いがアヤメに届き、被りかけた仮面を剥がす。

 

「…入って、ない。鬼さんは今まで、私に全部任せることはなかった。頼ることはあっても、主体はいつも鬼さんで……」

「そうだ。オレはオレがやらないといけないことを絶対に人に任せない。頼ったとしても全部頼らず、頼った相手が出来る範囲までしか任せない。そもそもガキに仕事を放り投げる方がおかしいんだよ普通。それにアヤメ、オレがお前のことどんなやつだって思ってるか知ってんのか?」

「……わかんないよ、そんなの。人の心なんてわかるわけないんだから…」

「なら本心のまま言わせてもらうが、オレからしたらお前はただの背伸びしただけのガキだ」

「……」

「平均的な強さじゃないが、人並みに和菓子は好きだし人並みにファッションにも興味がある普通の子供。この前テレビで出てたメイクセットに目を取られるぐらいにはな。オレが黙ってプレゼントしたら次の日さらっと使ってたの知ってんだからな。「早めのクリスマスプレゼントだ!」って目の前で自慢してたけど」

「えっ」

 

 あれ鬼さんがプレゼントしてくれてたの?そういえば自分以外の生徒とか子供とかがプレゼントを貰ったって騒いでたけど、あれももしかしてと考えていると心を読んだのか肯定するように頷いた。

 

「クリスマスの真夜中に空を駆けながら

「HAHAHAHA!!オラァメリクリだ喰らえッ!!」って言いながらプレゼント爆撃をしたのはオレだ。お前らが寝静まった後にやったから誰も気づいていなかった」

「なにやってんの!?委員長も首傾げながらプレゼント持ってたから親御さんに貰ったんだって思ってたのに、あれ鬼さんがやってたの!?」

「当たり前だろうに。基本キヴォトスの中に親はいないもんなんだから誰かが代わりにやるべきだろう。おかげで徹夜する羽目になったぜ」

「徹夜する羽目になったぜって、もしかしてテレビでニュースになってたプレゼントの話って」

「オレ。元同僚に相談したら爆笑しながら手伝ってくれてな、出来る限りの範囲だが生徒と子供にプレゼント渡してやったぜ。そのせいでまたトリニティで正義実現委員会が出勤したらしいけど」

「思ってた以上に大掛かりだった!?」

 

 さっきまでの悲壮感なぞどこへやら、アヤメはくらっとする気分に襲われた。いつぞや彼を子供っぽい人だと誰かが言ったが、そんなもんで治まるものじゃない気がする。大人の悪だくみってこういうものだっけ。いやそういえばこの人百鬼夜行でかまくら作りまくったり祭りみたいな花火上げてたなそういえばあぁもうよくわかんない。

 

 そんな様子を見ながら鬼はクツクツと笑みを零し、懐から瓢箪を取り出した。中身はどうやら酒のようで、ほんのりと梅の匂いがする。それだけ気分が上がっていたのか、鬼が酒を口にするのは初めて見た気がした。

 

「アヤメ、オレはお前に子供として生きてほしいんだよ」

「子供として…?」

「そうだ。卒業して大人になるまでの間に色んなことを知り、経験し、時に誰かとケンカしても助け合ってでもいい。誰かを頼ってでもいいから、子供らしく生きてほしいのさ。まぁお前だけじゃなく、ナグサとか他の生徒にも願ってることだけどな」

「鬼さんの、願い…」

「まぁでも、百鬼夜行の人間がお前さんに頼りまくるっていう現状はマズいから何とかしないといけんがな…。よし、アヤメよう。本当に鬼気迫ってんなら別だが、今度から軽いことを頼まれたら断れ。オレの名前を使ってもいい」

「…いいの?私、色んなことで鬼さんの名前使っちゃうよ?」

「好きにしろ。それでお前さんの肩に乗った重りを外せるんだったら安いもんだ」

 

 その時の自分がどんな顔をしていたか、アヤメにはわからない。泣いていたのだろうか、笑っていたのだろうか、それとも鬼のいたずらに呆れていたのだろうか。もしかしたら全部だったかもしれない。だが心に決まったことはわかっている。

 

(この人と一緒にいたい。私の悩みをさぱっと片づけて、私なんかより遥かに強いこの人と。本当の私を見てくれていた、鬼さんに……)

 

「鬼さんってさ、彼女さんとかいたの?」

「あ?いた覚えはねぇな。元の職場に一人婆ァがいたけど殺意しか覚えてねぇ奴だし、そもそも生徒の数の方が多いキヴォトスで出来る気がしないな。外なら出来たかもしれんが…」

「ふーん…鬼さんってさ、背中を刺されて倒れそうだよね。気をつけなよ?」

「なんでだよ。というか誰にだよ」

「生徒に」

「ンなワケねぇだろ……ないよな?」

「ふふふ…!」

「えっ怖…何で笑ってんだよ…?」

 

◇◆◇◆◇

 

「…んふふふ」

「なんで急に笑ったの…?」

「別のこと思い出しただけ。やっぱり私にも限界があって、それがわかってなかったら潰れてたんだろうなって思うなぁ」

「……ごめんね」

「ん?あぁナグサのことを責めてるわけじゃないよ?私が背伸びしてただけのことだから」

 

 今度は完成したのか、「出来た~!今度はちゃんと塩と砂糖は間違えてないはず!」「間違えてたらまたオレの胃袋行きなだけだから気にすんな」「ひぃん…!ほんとごめんね…!」「だから気にすんなって」なんて聞こえてくる。そういえばユメさんは鬼さんのことをどう思っているのだろうか?少しだけ、いや結構気になる。

 

「ねぇナグサ、私……百花繚乱紛争調停委員会の委員長になろうって思ってる。この前委員長に呼ばれて、次は私がやらないかって誘われたから、今度なりたいって言ってこようかなって」

「アヤメが……大丈夫、なの?」

「多分無理」

「え」

「私一人じゃね。完璧な委員長になんてなれないから。だから多分、ナグサとか後輩の子達にも頼ると思う。……それでもいいかな」

「……うん。私もアヤメのこと、支えたいから」

「…えへへ、ありがと!」

 

「おーいアヤメちゃんとナグサちゃーん!ご飯できたよー!」

「冷めちまうから早く来いよー」

「はーい!ナグサ、行こっか!」

「うん!」

 

 四人で料理を囲みながら夜を過ごし、昨日あったことを話したり来年の予定を決めたりして年の終わりを待つ。友人や知り合いからの連絡を返しながら待っていれば……除夜の鐘が鳴った。また届いた「あけおめ」や「ことよろ」といった連絡に返答し、年越し蕎麦を啜る。

 そしてそれぞれがそれぞれに声を掛けた。

「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」、と。

 




「どうやってプレゼントの中身用意したんだよ」と疑問に思う方がいると思うのでここで設定投下。
鬼ぃさんが勤める『大和』はキヴォトス中の基本的な物流インフラを担っており、生産業系の伝手がたくさんあります。そのため女性が好きなものを中心的に集め、ゲマトリア脅威の技術で様々な学園へ飛びつつプレゼントで爆撃してました。黒服はなにをするのか最初は知らず、鬼に聞いてやっと計画を知りました。そして内容が「ガチダッシュしながら夜の2:00から5:00の間でできる限りの学園の生徒や子供にプレゼントで爆撃する(ちゃんと被害は出さず)」であると知りコーヒーを噴出して爆笑しました。

……え?なんでカイザーが牛耳ってたインフラを百鬼夜行の会社が担ってるんだって?まぁ長くなるのでここでは書きませんが、鬼ぃさんとカイザーの間では色々とあったんです。プレジデント直々に「鬼と『大和』に手を出すな」と会社全体に通告して今も絶やさないぐらいには。


あと地雷の撤去が出来ているように見えますが完全ではなく、最終的にはvol.「いつかの芽吹きを待ち侘びて」は起きます。「孤独に花を咲かせんとする君へ」は無いです。多分。
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