百鬼夜行の鬼   作:龍玉

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アンケート偏ってますねぇ…。そんなに湿度が高い話が好きなんですか?自分はどっちも好きです。
あと今日はちょっと短めです。


第十話 正月

 

────チュンチュンチュンチュン……

 

「ん…ふぅあ……ナグサ?朝だよ…」

「ん…」

 

 布団から抜け出して横で寝ていた幼馴染を揺らす。どうやら太陽が顔を出してからそこまで時間は経っていないようだが、早く起きなければ鬼とユメが作ったおせちが食べられない。

 「適当に作っただけだから早めに食わないとすぐ無くなるぞ」と言っていたから、遅れてしまったら本当に無い可能性がある。どうやら鬼の知り合いの何人かが食べにくるらしく、量もそこまで作れていないと呟いていた。

 

 アヤメがナグサの反対側に目をやれば、すでに二人分の布団が空となっていた。折角の年越で泊まったんだから川の字で寝ようと頼めば、滅茶苦茶渋そうな顔をしながら鬼が了承したので嬉々として布団の準備をした。恐らく二人でおせちの準備をしてくれているのだろう。

 

「んーっ…はぁ!いい夢見れた気がするなぁ。ナグサはどうだった?」

「みんなで焼き鳥を食べてた…」

「いつも通りだなぁ」

 

 目をショボショボさせながらナグサも布団から這い出し、パジャマから外出用の着物へと着替える。布団は朝ごはんの後に片づけるので今はこのままにしておく。

 ちなみにだが、アヤメは昨夜にちゃんと夢を見ることが出来た。頂点が白く染まった青い大きな山を背景に燃え盛る鬼が空を飛び、桃色の煙を燻ぶらせるキセルを持った狐耳の少女が笑っていた。意味が分からなかった。山は見たことが無くなんで鬼が燃えながら空を飛んでいるのかも理解できないし、狐耳の少女に関しては本当に誰?

 「やはりあやつは退屈せぬな」なんて言っていたような気がするが、少し記憶が曖昧だ。

 

 まぁ悪い夢ではなさそうだったから良いとして、早く行かなければご飯が少なくなってしまう。ナグサを連れて鬼の家を歩き、広間へと向かう。

 

「おはよー!おせちまだ残ってるかな」

「おはようございます、少し遅れちゃった…」

「おう、おはようさん。おせちはまだ残ってるから落ち着いて食えよ。お雑煮はどうする?餅入れるか?」

「入れる!」

「私は無しで」

「はいよ。ユメーお雑煮頼んだ!一個は餅入りで」

「はーい!」

 

 ユメへと声を掛けた鬼は掛け布団を抱えており、おせちが用意された机とは別にある炬燵に向かう。その机には『雑談兼休憩用』と書かれており、すでに何人かが炬燵の魔の手に捕らえられていた。一人はいつぞや昼寝をしていた鬼を枕にして寝ていた少女だったが、もう一人の子は学校ではあまり見ない生徒なので恐らく中等部の子だろう。

 

「ツバキ、炬燵に入ってるだけじゃ風邪ひくかもしんないからこれ羽織っとけ。カエデは…カタツムリになってる…」

「んぅ…ありがとう~…すぅ」

「鬼さ~ん、炬燵から抜け出せないよ~」

「安心しろ、出なかったらミモリと二人がかりで引っ張り出すだけだ。ゆっくりしたけりゃしときな」

「ありがと~」

「すごいふにゃふにゃになってんな…」

「お師匠殿、イズナも炬燵から出られません…」

「イズナはいつの間に炬燵に入ったんだよ、さっき来たばっかじゃねぇか」

「おせちがおいしゅうございましたぁ」

「そりゃよかったよ」

 

 位置的に見えていなかったが、どうやら反対側に久田イズナがいたらしい。やはり人は炬燵に惹かれてしまうのだろう。

 おせちに箸を伸ばしながらそう考えていると、厨房側からユメとは別の声が聞こえてくる。共にお雑煮の準備をしているようで、和気藹々としている。

 

 そういえばナグサはなんのおせちを食べているのかなと目を向けると、何故かツバキと呼ばれていた少女を凝視していた。いや、彼女を見ているのは正しいが、少し語弊があった。ナグサが見ていたのは彼女の顔とかではない、ある一部分。アヤメもまたそちらへと目を向ければその理由が分かった。

 

 彼女がうとうととうたた寝をしている机には二つの山が乗っていた。その光景たるや、アヤメもまたその一部分を凝視してしまう。

 自分には無いものを持つ年下の後輩に嫉妬する先輩。なんと醜いことか。暇になっていたのか知らないが、ツバキの頭に生えた耳をモフモフしていた鬼がその視線に気づくと呆れたように息を吐き、袖口からハリセンを取り出してアヤメとナグサの頭を軽く叩く。

 

「あいたっ」

「食事中に何処見てんだクソガキども。さっさと食べな」

「はーい…」

「……ねぇ鬼さん」

「あ?なんだナグサ」

「鬼さんって胸とお尻どっちが「影鬼」あっ逃げた!」

「ナグサ、早く食べて追いかけるよ!ていうか初めて見たんだけどあれなに!?」

「知らない…!」

 

 ナグサの質問を遮るようにして鬼が両手の人差し指と親指を合わせ、三角形を作り出しながら手を広げる。すると鬼の影が足元で円を作ったかと思えば、鬼が影の中に落ちて姿を消す。水面のように水滴が上がり、ついには影すら形を失くした。

 あの鬼私達の質問から逃げたと気づいたアヤメとナグサは口にしていたおせちを飲み込み、銃を背負って飛び出そうとして────

 

「二人ともー!お雑煮できたよ~」

「「はーい」」

 

 鶴の一声ならぬユメの一声で座布団に座り直した。入れてくれたものをほったらかしにして飛び出すなんてことしたら、ユメが悲しんでしまう。それは絶対にしてはいけないと考えながら、お雑煮をゆっくりと味わうのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

「おー……!結構人がいるんだねー」

「まぁな。百鬼夜行の中心と遠すぎず近すぎずってところだし、そこそこに来る人はいるのさ。どうする、オレは神主さんへのあいさつついでに甘酒飲みに行くが…」

「あ、私も飲みたい」

「なら私も飲みたいかな」

「あいよ」

 

 お雑煮を食べ終え、戻ってきた鬼を相手にナグサとコンビを組んで戦うも二人仲良く地面に埋められた後、シャワーを浴びた二人を連れて鬼が初詣にやってきた。家にいる組はすでに参拝していたらしく、仲良く炬燵でゴロゴロしている。

 鬼が神主と挨拶を交わしている間に甘酒を購入し、ちびちびと飲みながらしばしの間待機する。

 

「…そういえばこの神社は何を祀ってるんだろう」

「確かに聞いたことないかも。んー…鬼さんなら知ってるんじゃないかな?」

「なんだ、なんか用でもあったか?」

「おっ、噂をすれば!ねぇねぇ鬼さん、ここってなんの神様を祀ってるの?」

「ここか?ここは確か学業の神だったか。高校受験の時は今以上に人が来るんだよ」

「そうだったんだ。じゃあ私も学業成就を祈ろうかな~」

「私は、どうしようかな…」

「まぁ他にも司ってるだろうし、好きにしたらいいんじゃないか?オレは特に祈ることは無いが」

「え、じゃあなんで付いてきてくれたの?」

「付き添い」

 

 飲み終えた甘酒をゴミ箱に投げ捨てつつ、参拝客の列に並んで雑談を交わす。鬼の言う通り学業が有名なのか、中等部や高等部になったばかりの生徒らしき姿が多い気がする。ちらほら生徒ではない姿も見えるが、やはり少数のようだ。

 

「鬼さんって神様を信じてない感じ?私はどっちでもないんだけどさ」

「信じてないっていうか、このキヴォトスに今はいないって考えてるだけだ。キヴォトスの外にはいるもんだとは考えているが…」

「キヴォトスの外?あまり行ったことがないから、よくわからない…」

「まぁ生徒が外に行くこと自体珍しいからな。あったとて卒業して就職先を探すためだとかだろうし」

「…ねぇ、鬼さんって神様がいる感じで喋ってるよね。もしかして会ったこととかあるの?」

「…………よく会ってるからな」

「すごっ」

「お前さんらも会ってんだぞ?気づいてないだけでな」

「私達も…?」

 

 ナグサとアヤメが二人して思い出そうとするがまったく見当がつかず、推理している間に列の先頭にやってきた。鬼から渡された小銭を賽銭箱へと投げ入れ、一心に願い事を心の中でつぶやく。

 

(アヤメ達が元気で過ごせる一年に……)

(アヤメを支えられるようになります……)

(みんなで楽しく過ごせますように……)

 

「……こんなもんだろ。おみくじでも引いて帰るか」

「賛成!誰が一番良いのか比べようよ!」

「私、大凶引いちゃいそう…」

 

 おみくじを引いて用も済み、鬼の家へと帰路につく。今年もいいことがあるようにと祈りながら。

 

 ちなみにおみくじの結果は鬼が凶、アヤメが末吉、ナグサが大凶という散々な結果となった。本当に大凶を引いてナグサは泣いた。




おみくじの結果はちゃんとルーレットで決めました。本当に大凶を引くとは思ってなかった…。やっぱりナグサはなんか持ってんすね。
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