百鬼夜行の鬼   作:龍玉

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予約投稿の日にち間違えてた……。


第十四話 陰陽

 

「舞を披露してほしい?」

「はい。鬼様には今回の秋祭りのフィナーレで剣舞を披露していただきたく……」

 

 秋が訪れた百鬼夜行の中心部、陰陽部本部で鬼はある相談を受けていた。相談相手は今年で二年生となる桑上カホという少女で、中々に際どい服装をしている生徒だった。

 冬とか寒くないのだろうか。

 

「別に構わんが、なんでオレに?他の部活の中には舞が出来る子達だっているだろ?」

「それが……舞が出来る先輩方が受験等で忙しく、ならば二年生と一年生に任せようにもほぼ全員が当日に不在となってしまうらしく……」

「あらぁ…今年はかなり間が悪かったな……」

「今年だけ剣舞を取り除く案も出たのですが、鬼様に任せてみるのはどうだろうかという案が出たためにこのような相談を」

「なるほどな。百鬼夜行で帯刀してるやつなんざオレだけだろうし、一度相談してみて駄目だったら今回は無しで行こうっていう予定だったのか……わかった、舞は任せてくれ。その代わり、祭りの運営やらは頼んだぞ」

「ご協力、感謝いたします!」

 

 礼を述べるカホに対し、鬼は「今回は陰陽部が主軸で動いてるからな、この程度礼を言われる程でもねぇよ」と言いながらカホの頭を撫でる。撫でられた側は驚き慌てるも、その耳は嬉しそうに動いている。

 今回の秋祭り、運営を任されたのは商店街の住民達ではなく陰陽部だった。というのも今回の秋祭りで出店する店側で「たまには生徒達にも任せてみてはどうだろうか?」という意見が出され、これといった反対も無く陰陽部に任されたのだ。

 

 鬼がカホを労わったのはまだ二年生である身ではあるものの、運営側に立つ人間として方々に相談して進めて行こうとする生徒の姿を見て嬉しかったからである。運営も大事ではあるが、人脈を駆使して不備を直していく力はこれからも重要なものだ。

 

「にゃはは~、百花繚乱の方達と祭りを楽しむかもしれませんのに、すみませんね~」

「ん、ニヤじゃねぇか。調子はどうよ?」

「ぼちぼちですわ。カホがよく動いてくれますから私が動く必要もないのでね~」

「…ふーん、そうか」

「……あの、何故私の頭を撫でてるので?」

「気分」

「そ、そうですか……」

 

 恥ずかし気に笑う二本の角が生えた少女、天地ニヤの目元には若干の隈があった。化粧で隠れているように見えるが、よく観察すれば気づける。彼女は彼女で動いていたのだろうと察し、カホと同様に頭を撫でる。

 ニヤはといえば、撫でる鬼の瞳が柔らかいものだから自分を労わっているのはわかるが、自分の努力を見透かされたようで悔しいような恥ずかしいような。まぁ鬼だから気づきもするかと納得し、鬼からの労わりを享受する。

 

「鬼さん、私も撫でて~」

「うわびっくりした、チセじゃねぇか。こんなもんでいいか?」

「……♪」

「そんじゃあおまけに、ほーれ高い高い」

「わ~」

「…高い高いではありますが……」

「落とせば他界他界になりそうな高い高いですねぇ……」

 

 外で会話をしていたものだから天井も無く、かなりの高さで空を飛ぶ和楽チセ。それなりに頬が緩んでいるので楽しんでいることがわかるものの、傍で見守っている二人はヒヤヒヤしながら見ている。その内の一人は(鬼様!?絶っっっ対にチセ様を落とさないでくださいよ!?絶っっっっっ対ですからね!?)と絶叫していたが。

 

 空を飛んでいるチセはというと、鬼さんなら大丈夫と信頼しきった状態のため純粋に高い高いを楽しんでおり、投げている鬼も落とすつもりなんて一切ない。唯一心配しているのは、空を飛ぶチセを見て変な噂が立っていないかどうか程度のこと。*1

 

 鬼と陰陽部の面々が会う頻度はそこまで高くないが、鬼からすれば百鬼夜行の文化を愛するカホにどこか赤の他人の気がしないニヤとチセを大事に思う生徒なので親し気に接している。

 カホから見ても百鬼夜行の文化をよく知り時に頼れる大人であり、他の二人も鬼と同様に赤の他人の気がしないかつニヤからすればもしもの時は頼れる大人、チセからすれば遊んでほしい時は一緒に遊んでくれる大人である。

 そのため三人からも信頼度は中々に高い。

 

「うん……『そらをとび ちかいあおぞら きれいだね』」

「……ふむ。ならオレは、『秋の空 悦楽の姫 人見ゆる』ってな」

「「お~…!」」

「にゃはは、秋の空を詠った俳句が元ですかね?よくご存じで」

「チセがよく俳句を詠むからな。その過程で学んだだけだ。そんじゃ、舞のことはモモトークかなんかで追って連絡してくれ。またな~」

「よろしくお願いします、鬼様」

「またね~」

「また来てくださいね~、にゃははっ」

 

◇◆◇◆◇

 

「────つーわけで、明日の祭りの最後にオレが舞うし、せっかくだから見に来てくれ」

「見に行かないわけなくない?」

「絶対に見るよ。……でも、鬼さんと一緒に祭りは回れないの…?」

「いや、お前さんらの巡回に合わせて動くことは出来る。最後の舞までは自由時間だしな」

「やった!じゃあ前みたいに一緒にご飯食べようよ!」

 

 アヤメの言う前とは、この年の夏祭りのことだった。前回は鬼と共に花火を眺めたが今回は一緒に祭りを回りたいと頼み、手合わせを通して仲を深めた一年生組を含めた6人で祭りを楽しんだ。

 当時も巡回をしながらの祭りだったが、やはり楽しいことには変わりなかった。

 

「キキョウはどうする?」

「どの道あんたもついてくるんでしょ?答えなんか無くない?」

「そう言う割に嫌そうじゃねぇな。レンゲは?」

「し、師匠とっ!祭りを楽しめるのは、やっぱり嬉しいよ!それに、うひぃ!?誰かと祭りに行くのもっ!青春だからッ!!」

「そう言ってくれると嬉しいもんだ。あと脇が甘いぞ?」

「うげっ───」

 

 攻め続けていたレンゲの持つ木刀が跳ね上げられ、容赦なく鬼が振るった木刀が脇に命中する。しかし衝撃自体はなく、触れた瞬間に凄まじい冷気がレンゲの脇を襲う。

 鬼は思う。ほぼほぼ一枚の服しか来ていないが寒くないのだろうか。寒いんだろうな。じゃなかったらこんな風に冷たくて蹲ったりしないもんな。

 

 いつもの四人と新しく通い始めた一年生組の二人は今日も今日とて鬼の家でゴロゴロしていた。そしてゴロゴロしていたからか、鬼が「接近戦の修行でもするか」と宣言しやる気を見せたレンゲが選ばれ、双方が木刀を持って一打を入れるまで攻防を続ける修行を始めた。

 最初は基本中の基本の受け方や攻め方を教え、軽い打ち合いから始めた。そしてスポンジのように吸収していくレンゲに楽しくなってしまった鬼が「負けたら罰ゲームな」と木刀に冷気を帯びさせ、必ずと言っていいほどにレンゲの脇を狙い続けるため、さすがに嫌がったレンゲの上達スピードはより速くなっていく。しかしそれでも勝てることは無く、必ず脇に木刀を当てられて蹲るの繰り返しだった。

 一応鬼側の罰ゲームは「負けたら面に落書きをする」となっていたが、その面には一筋もインクの跡が無い。

 

 悔しくなったレンゲがやめることなく続けた結果、他の面々は自分の番が来ることも無いので暇を持て余していた。

 順番的には次のアヤメ、ナグサ、ユメは縁側でお茶を飲みながらレンゲの奮闘を観戦し、キキョウは縁側で日向ぼっこをしてゆっくりとしている。キキョウに至っては猫のように丸くなっている。

 ちなみに先程の会話に関してだが、この打ち合いの合間にされていた会話である。

 

 と、ここで鬼が木刀を下げる。

 

「レンゲ、今日はここでやめにすっか。さすがにお前さんのことをいじめすぎたからな……本当にすまん」

「はぁ…はぁ…!いや、私が弱いのがいけないんだ。だから師匠が謝ることでも「鬼火」っうわ!?わ、私の脇に火が…!?…あれ?……あ、あったかい……」

「ホッカイロみたいにした火だからな。勝手に消えるからほっといてもいいぞ。後は〜ホレ」

「わぷっ!?」

「嫌だったら適当に捨てていいぞ。寒くなった原因はオレだしな…」

 

 鬼が影から取り出したものを被せられたレンゲが驚くも、改まって被せられたものを確認する。

 どうやらレンゲが被せられたものは何かのジャケットのようで、何故かヒノキの匂いがする。

 

「あ、ありがとうございます!あの、これって師匠の…?」

「オレのライダージャケット。気持ち悪かったら投げ捨てて踏んづけてもいいぞ」

「そんな事するわけないじゃないですか!?その、何だか良い匂いがしたからなんなのかな〜って……」

「え?オレ芳香剤とか使ってたっけ…?」

「え」

「「「え」」」

「ちょっ、レンゲ私に貸して…!」

「あ、アヤメ先輩?どうぞ…」

「……………………鬼さんの匂いだ」

 

 アヤメが確認した瞬間、ナグサの瞳が鋭くなって鬼を見つめる。その瞳からは(レンゲだけずるい)という思念が込められており、やらかしたと思った鬼は冷や汗ダラダラである。

 

 ジャケットを渡されたレンゲはというと、(男性から服を渡されて寒さを遮る……前に漫画で見たやつだ…!)と興奮しているので特に気にせず鬼のジャケットを羽織る。

 調停委員会の制服の上から着ているというのにまだ余裕が存在し、ヒノキの匂いで包まれる。

 

「……なんか、落ち着くな…」

 

 動きやすく、程々の防寒性があるようでかなり過ごしやすい。それに、自分を包むヒノキの匂いにリラックス効果でもあるのか落ち着ける。

 自分も同じものが貰えないかと鬼に聞こうとして振り向くと、鬼にアヤメとレンゲが突撃するところだったようで固まってしまう。ギリギリのところで鬼の両手がアヤメとナグサの頭を抑え込んでいるが、ジリジリと距離が縮まってきている。

 

「おいゴラァ!!何二人揃ってオレの腹に突撃かましてんだ!?」

「ちょっと鬼さんは黙ってて!レンゲが持ってる服と本当に同じ匂いなのか確かめないと…!」

「そうだよ鬼さん。決してレンゲが羨ましいってことじゃないから…っ!」

「待てっ!?服に引っ付くんじゃねぇよ!?ユメ!ユメぇ!!ヘルプーー!!」

「ひぃん……!?どどど、どうすればいいの…!?」

「ユメさんユメさん、折角のチャンスなんだからユメさんも一緒にすればいいじゃないですか?」

「何言ってんだテメェ!?」

「………………じゃあ」

「じゃあ!?じゃあって言ったかユメ!?おわあああにじり寄ってくんなっ!?お前もオレを裏切るのか、ユメェェェェェッ!!」

 

「……そういや師匠、気持ち悪かったら捨ててもいいって言ってたっけ……」

 

 ならこれを貰っても良いのだろうか?……捨てていいと言ったのだから、どうしようか自分の勝手か。

 

「へへ…師匠、これ貰いますね!って、聞いてます?おーい」

 

「お、オレが何したっていうんだ……」

 

 日向ぼっこで眠ってしまったキキョウが寝返りをうち、ワチャワチャしている4人から流れる風が髪の毛を揺らす。

 

 今日も今日とて、鬼の家は平和である。

 

*1
バッチリ見られてるし『空飛ぶチセ様』という噂になっている。




☆鬼
最近作者から「鬼いさんじゃなくて感想欄の方が言っていた方の鬼ぃさんの方が言いやすいな…」と思われてる。
レンゲとの修行で楽しくなりすぎて反省していたら3人に襲われた。服はギリギリ死守した。
☆七稜アヤメ
鬼を襲った。抵抗しない鬼を見て「もしかして私達のことを傷つけたくなくてそんなに抵抗できない…?」と気づいてしまった。
☆御稜ナグサ
鬼を襲った。本当にヒノキの匂いがしてびっくりした。
☆梔子ユメ
鬼を襲った。何故か楽しんでしまっている自分がいる。
☆桐生キキョウ
寝てた。鬼の家の縁側がめちゃくちゃ寝やすい。
☆不破レンゲ
鬼との修行で短刀の扱いがめちゃくちゃ上達した。ジャケットはちゃんと許可を得て使い始めた。普段着の上に羽織るか悩むぐらいに気に入り、鬼に感謝している。
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