そういえば皆さんは先生について想像する場合、どのお方を想像しますか?自分は女性の先生となるとよく生徒に襲われてるよわよわ先生などが頭に浮かびます。
それと、章の管理で位置変更をしました。混乱した方がもしいたらごめんなさい。今後はこの形で行くと思います。
連邦生徒会長が失踪した。これにより、様々な自治区で犯罪が急増し始めたらしい。今は微々たるものだが、時間をおけば置いておくほど爆発的に増えていくだろう。
しかしそのことを現時点で知っているものはほぼいない。唯一知っているのは……
「えー新学期が始まる前に伝えとくことがあります。連邦生徒会長が少し前に失踪したのでこれから百鬼夜行でも犯罪が急増するから気を引き締めるように、以上。じゃあオレは取引先と話してくるから……」
「「「「待って待って待って待って」」」」
鬼がそう言って姿を消そうとするのを引きずってでも止めようとする百花繚乱組。当たり前だ、連邦生徒会長が失踪したなんて話は聞いたこともないし、犯罪が急増すると言われて納得できるわけがない。
「もーなんだよ…こっちは向こうとの大事な話があるんだぞ?あまり引き止めないでくれよ」
「さすがに無理があるでしょ!?」
「鬼さん、ちゃんと報連相はして…」
「さすがの私でも連邦生徒会長ぐらいは知ってるんだよ!?その人が失踪したってどういうこと!?」
「さっさとあんたの知ってる情報を吐いて。今すぐ」
「いやでござる」
「フシャーッ!!」
「キキョウ猫出てる、猫の威嚇が出てる!」
五人がわちゃわちゃしている横で、「ワカモちゃん、連邦生徒会長ってどんな人?私よく知らなくて…」「連邦生徒会の生徒会長でして、超人と呼ばれていた人間ですわ。ですが失踪したというのは私も初めて知りました」なんてほんわかしている。
温度差が激しい。
服をがりがりと引っ搔いてくるキキョウを抑えつつ、四人の包囲の輪を抜け出す鬼。頭を少し掻きながら服を整え、逃げる態勢に入った。
「あっ逃げようとしてる!!」
「レンゲ、逃がさないで…!」
「了解っ!」
「っ影に入ろうとしてる!先回り!!」
「あっキキョウテメェ!?」
鬼が両手の人差し指と親指を合わせ、三角形を作り出そうとするのを見逃さなかったキキョウがレンゲに報告する。その意図を汲み取ったレンゲが鬼本人ではなく鬼の目の前にある影に突進し、逃亡を阻止しようとした。
そして鬼とレンゲが影に入り……
「まぁ影に入らなくてもいいんだけどな」
「えっ────」
力強く踏み込んだ鬼が飛び上がり、影に突っ込んだレンゲが地面と激突する。勢いのあまりそのまま地面に突き刺さってしまい、レンゲの下半身のみが地面から出ていた。
「レンゲ!?」
「床は後で直しとくから気にすんな。そんじゃな~」
「くそっ逃がした…!」
「キキョウ、こうなったら鬼さんの家で罠を張っちゃおう!どうせここに帰ってくるんだし!」
「……そうだね、アヤメ先輩。ナグサ先輩、とりもちを設置しましょう」
「わかった」
「レンゲちゃん、大丈夫~!?」
「まったく、鬼様のフェイントに引っかかってしまうとは……まぁぶっちゃけた話、あれは仕方ありませんが…」
「手間かけさせてすみません…」
床に突き刺さったレンゲをユメとワカモの二人掛かりで引っ張ると、ギャグマンガのようにすぽんっと抜け出せた。床に突き刺さったのに傷一つないのは、さすがはキヴォトスの住む人間と言ったところか。
そして正午を回り、鬼が家に帰ってきたころ。
いたるところにとりもちが仕掛けられ、影から調停委員会仕込みの奇襲を仕掛けてくる四人の対応に駆られるのだった。
◇◆◇◆◇
数週間後、キヴォトスは多発する犯罪の対応に迫られていた。
各学園の上層部は現状に対して連邦生徒会が動かないことに不信感を覚えながら問題に対処していく。それは百鬼夜行も同様で、鬼を問い詰めようにも以前以上に発生するトラブル対応にてんやわんやだった。
しかし、その対応が求められる量は他学園に比べてかなり小さいものだった。というのも、「百鬼夜行には鬼がいて、悪さをしようものなら瞬きの間に学園外に放り出されている」という噂が広がっていたからだった。
事実鬼が抑止力になっており、百鬼夜行で問題を起こそうとするものなんて余程の馬鹿しかいない。少しでも考えることの出来る者は、絶対に百鬼夜行では悪事を働かないのだ。
鬼とカイザーの間で起こった事件を知っている者は、絶対に敵わない化け物なのだと知っているから。
そして、当の本人は。
────ドガアアアアンッ!!!
「おー……ははっ派手だねぇ。テーマパークに来たみたいだぜ、テンション上がるな~」
呑気にD.U.をプラプラと歩いていた。
片手にフライドチキン、もう片方にはドクターペップーを持ちながら爆発の起きた方向に目を向け、目的地に向かっていく。
久しぶりの遠出だが、ちゃんと留守番組には長い間家を空けることは伝えてある。調停委員会組からは非難轟々の嵐だったが、時々顔を出すので許してほしい。
「…そろそろか。さっさと食っちまおう」
目的地に近くなったため、手元の肉とドリンクを一気に食べきり、諸共炎で焼けつくす。灰すら残さずに燃やしたことでゴミも出ない。
路地裏に入り、人の気配が一切ないことを確認し……手印を組む。両手の人差し指と親指を合わせ、三角形を作り出しながら手を広げる。
「影鬼」
円状に広がった影の中に沈み込み、泳ぐようにして移動する。
ある時から使えるようになったこの能力は今でも重宝しており、潜入に最適なのだ。さらに言えば、建物の壁も無視して移動できるので金庫の中だろうと入りこめる。
なんなら影の中からほんの少しだけ機器の先っちょを出すだけで盗聴も可能であり……なんて思い返している間に目的地の中に入り込んだ。
影から顔を出し、建物の中────サンクトゥムタワー内部を確認する。いつも以上に慌ただしく、問題の解決に尽力していることがわかる。
しかし目的の人物はおらず、別の場所に移動しては確認する。それを繰り返し……ついに見つけた。
「……彼女か?話に出てた
天井付近の影から顔を出した鬼の視線の先には、一人の女性が眠っていた。青黒いショートの髪を持ち、少しばかり背丈が低いようにも感じる。
鬼がわざわざサンクトゥムタワーに潜入した理由、それは
しかし鬼は、その先生という言葉に万感の思いが込められていたことに気づいていた。
(だから確認しにきた。どんなやつなのかって)
彼女が慕っていたであろう人物。気にしない方が可笑しいとすら思える。そして直に見た所感としては…
「……普通の女性だな。鍛えてるわけでもない……」
筋肉質でもなく、キヴォトスに住む人々のような頑丈性はなさそうに思える。もしや、外から来た人間?そう考えると納得はする。
彼女が頼りにする人物であるだろうことはわかるが、どこか引っかかる。そして何よりも。
「……」
放っておけない。そんな雰囲気すらする。言葉も交わしたことが無ければ、顔を合わせたこともないというのにそう思ってしまう。
「『先生』っていう
足音がする。ハイヒールを履いているのか、廊下から少し響いて聞こえる。どうやら誰か来たようだ。
すぐさま影から飛び出し、先生らしき人物の影へと降り立つ。音も無ければ風も起こさない動きによって彼女を起こすことなく影に降り立ち、水面のような波紋を残して鬼の姿が消えた。
少しばかり、様子を見ようと思ったのだ。この人物のできることを、少しでも把握できるように。
「……つっても、出来て今日一日程度か……」
鬼はミレニアムである頼みごとをされているため、そこまで長居は出来ない。だから先生が起きなければ、ただただ彼女の影の中に入っただけになってしまうのだが……。
「────先生、お待たせして申し訳ありません」
ドアから一人の生徒が現れる。眼鏡をかけて長い髪に高い背丈を持った生徒、連邦生徒会所属の幹部である七神リンだった。
一度差し入れを渡しに来た時に顔を合わせたことがあるのだが、その時も過労で隈だらけの目をしていたのを覚えている。すぐに行動してよかった、もし飛び降りる瞬間を見られたら疑問に思われていただろう。
頭上で起きていることに意識を向け直す。リンが女性に呼びかけるが、先生と呼ばれた女性はちっとも起きやしない。余程熟睡しているようだ。
「……先生?…先生、起きてください。……先生!」
少し語気を強くしながら呼びかけると、やっと女性の瞼が開かれる。しかし現状の把握が出来ていないのか、不思議そうにリンに視線を向ける。
「少々待っていてくださいと言いましたのに、お疲れだったみたいですね。なかなか起きないほど熟睡されるとは」
「……?」
「夢でも見られていたようですね。ちゃんと目を覚まして、集中してください。もう一度、改めて今の状況をお伝えします」
「私は七神リン、学園都市「キヴォトス」の連邦生徒会所属の幹部です」
「そしてあなたはおそらく、私達がここに呼び出した先生……のようですが」
「…推測なんだね?」
「…あぁ。推測形でお話したのは、私も先生がここに来た経緯を詳しく知らないからです」
「君も、知らされてないんだ…」
「はい。…混乱されますよね、わかります。こんな状況になってしまったこと、遺憾に思います。でも今はとりあえず、私に付いてきてください。…どうしても、先生にやっていただなくてはいけない事があります」
「わかった。任せてほしいな」
「…お早いお返事、ありがとうございます。それではこちらへ」
リンに付いていく形で先生も歩き出し、影に潜む鬼もまた動き出す。これから起きる騒動を予測しながら…。
◇◆◇◆◇
軽いキヴォトスの説明がなされながらレセプションルームに移動し、混乱する自治区の問題解決のためにやってきた生徒達との邂逅を果たした。
そして鬼が「ハスミはわかるけどユウカも来てんじゃねぇか、ミレニアムもヤバそうだな」とぼやいたり、先生とやらの持つ権限の強さに頭を抱えている間に、先生を含めた生徒たちはシャーレの建物に向かい始めた。
その道中で見かけたものは、先生の持つ戦術指揮能力の高さだった。不良相手とはいえ、他学園同士の生徒をあそこまで連携させる点は舌を巻くほどの力だ。
唯一の欠点は銃弾一発で致命傷になることだが……まさか銃弾飛び交う戦場に生身で突っ込むことはないだろう。
『シャーレ部室奪還完了。私も、もうすぐ到着予定です。建物の地下で会いましょう、先生』
「うん、リンちゃんも気を付けてね」
『……リンちゃん?』
「?駄目かな」
『はぁ…ちゃんは外してください、先生』
「……もういいか」
先生がシャーレ内に向かう道中、周りから人がいなくなった瞬間を狙って影から影へと飛び移る。誰かに姿を見られるわけにもいかないので、すぐさま離脱しなければいけない。
さっさとミレニアムにいって用事を済ませよう────そう思っていた。
「…?誰かいるの?」
鬼が違う影に飛び移った瞬間、先生の視点が向けられる。ギリギリのところで移ったとはいえ、鬼の移動音なんてしていない。だというのに気づかれそうになった。
動きもせず、声も一切出さないまま先生が行くのを待つ。しばしの空白を置き……気のせいだと判断した先生が地下に向かった。
「……あっぶねぇな。なんで今の動きに気づきかけたんだ?」
やはり只物ではなかったと再評価し、影の中を泳いでいく。また逢う日が来ることが近いことを感じつつ。
◇◆◇◆◇
ミレニアムサイエンススクール、キヴォトスにおけるマンモス校の一つとして数えられるほどに大きな学園であり、土地も人もそれに比例するように大きく、多い。
しかし短期間での成長を遂げていたためか、警備の穴を付ける部分がかなり存在している。それは電子的な部分に限らず、土地という部分においても。
そんな警備の穴といえる路地の影から現れ、ミレニアムに入り込んだ鬼。通常はモノレールといった交通機関での移動が常ではあるが、そこまで移動速度で困ることは無いからという理由で鬼が使うことは無い。
そもそも鬼がここに来るまでの姿がカメラに映るのは避けたいため、散歩目的などで来る以外は使うことは一切ないだろう。
そんな鬼の姿はいつもの袴ではなく、ミレニアムに合わせているような白衣姿となっている。面自体は変わっていないので判別できるが、知り合いが見たら驚くこと間違いなしだろう。
「時間は……もうちょいか。ん~……あ゛あぁぁ~いい天気…」
思っていたよりも早く着いたらしく、暇な時間が出来たのでベンチに座り込んで体を伸ばす。そのまま横になろうとして、やっぱりやめてそのままだら~とする。
ミレニアムにやってきた理由は、とある生徒からの依頼とそのついでとばかりに聞いた悩み事の解決のためにやってきた。
まぁ悩み事と言っても、言っていた本人が相談してきたわけではない。心の声が漏れていたのか、とても小さな声で呟いていたのが聞こえたから動いてるだけなのだから。
そのことを聞いてみれば、呟いた本人はとてもとても不審な目で見てきたが。理不尽すぎやしないだろうか。
「────さあああん!」
「あ?」
どこからか声が聞こえた。周りを見渡してみれば、ある一点から何かがこちらに向かって走ってきている。そしてその何かが少しずつ見えてくるようになってきて……
「こーんにーちはー!!!」
「おーこんにちは。いつも通り元気だな」
「えへへ~!今日はどうしたの?もしかしていつもの?」
「おう。最近はどうだ?」
「めちゃくちゃ元気!それにね、ぼーっとすることもないんだ~!」
飛び込んでくる生徒を受け止めつつ、目的の一つである健診を行っていく。生徒────一之瀬アスナの首元にあるチョーカーの具合を確認しながら世間話を振れば、元気な返事が返ってくる。
とある生徒がある時、彼女のことについてぼやいていたのだ。掴みどころのない少女であるのだが、何もしていないときはボーっとしてしまうらしい。
本人もそれは自覚しているものの、その症状が不定期に訪れては自分が何をしていたかさえ忘れてしまうのだとか。
そこで鬼が会ってみたところ、一瞬で懐かれた。どうも凄まじい直感を持っているらしく、鬼が悪意のない人間であるとわかると一緒に遊ばないかと誘うようになったのだ。
ミレニアムには時々来ることもあったのでその都度アスナの遊びに付き合っていた鬼だったが、案の定アスナの症状が現れることがあった。
その症状がどのようなものなのかも確認できたので、処置に入ることに。しかし鬼は探究者でありゲマトリアの面々のような研究者ではない。医師でもなければ看護の知識なんて基礎的なものしかない。
不幸中の幸いは、アスナの症状が神秘によるものかもしれないということだろうか。どうも鬼が見た限りでは、アスナの神秘が頭に集中することが何度かあった。もしかしたら、アスナの超直感とも言うべき能力はそれによるものかもしれない。
症状はその能力の代償的なものと考えると、一応の筋は通る。生物学的なものが原因となるとお手上げだが、神秘であれば少しは手助けできる。
そこで鬼は、今もアスナの首元に付けられているチョーカーを作り出した。当然黒服にお願いしながらではあるが、形にすること自体は出来た。
このチョーカーは神秘の流れを首元で調整するもので、頭に神秘が集まりすぎたらすぐに体全体に流れるサイクルを促すようになっている。これにより戦闘時などを除いた神秘の使用を抑え、症状の抑制に成功した。
ちなみにだが、黒服には「知り合いの生徒が欲しいんだってさ」と少しボカして伝えている。彼女のことを知れば、もしかしたら実験に参加してほしいなんて言い出すかもしれないためである。
最近は自分との約束を守ってくれているおかげで、誰かを犠牲にする実験を最後の最後までしないでいてくれている黒服のことを思い出しながらチョーカーの設定を調整する。彼女が超直感に近い思考をすればするほどこれも消耗するため、適度な整備が必要なのだ。
「本当ならこっちだけで整備できるのがベストなんだがな…」
「会長もまだ難しいって言ってたもんねー」
「あのでかい妹は神秘関連より別の分野に長けてるからな。仕方ないっちゃ仕方ない」
「あはは!会長のこと、でかい妹なんて呼ぶの鬼さんぐらいじゃないかな?怒られちゃうかもよ?」
「構いやしないさ。合理主義を極めすぎて人に頼るのも怖い生徒なんざ、でかい妹呼ばわりでいい。そもそもそんなことを気にするやつとは思えん」
そう言えばコロコロと笑うアスナ。大型犬のような彼女だが、いざ戦闘となるとかなりの実力を持っている。一度軽い手合わせを行ったこともあるが、中々楽しい手合わせだったのを覚えている。
「…うし、これでオッケー。機能的に神秘の抑制程度しか出来てないが、生活に支障は?」
「ない!」
「ならいい。それじゃ、オレはあいつとの用事があるからな。なんかあったら何時でも連絡しな」
「はーい、鬼さんもまたね~!」
アスナと別れ、また影の中を移動して予定の場所に向かう。影の中で移動するうちに、ミレニアムの中心地域から離れた場所に存在する巨大な都市が見えてきた。
キヴォトスの終焉に備えるためにと建設された極秘の要塞、エリドゥ。
鬼がここを知っていたのは、建設計画を立てたとある生徒が鬼に投資を持ちかけたためである。大和の社長である鬼に、学園一つ運営するのも可能なレベルの投資を。
中央に聳え立つ制御タワーに入り、上で作業をしているであろう彼女の下へと向かう。恐らく今は防衛機構のプログラムを製作しているはず。
気配のする階で影から現れ、目的の人物に近づく。
そして作業をしていた生徒────調月リオが鬼へと振り向く。赤い瞳が鬼へと向けられ、静かに見据えてくる。
「待っていたわ、百鬼夜行の鬼。早速会議に入りましょう」
「それで、誰がでかい妹ですって?」
「なんで聞いてんだよ」
次回はアビドス編かと。まぁ鬼ぃさんは積極的な介入をしませんが。
それと鬼ぃさんの使う『影鬼』についてちょこっとだけ解説を。
・影鬼
鬼ぃさんがある時から使えるようになった能力。主に影の中に飛び込むことで裏世界に近い空間に入り、障害物等を無視して移動できる。本人視点ではすべてが黒い影らしきもので構成されており、めり込むようにして壁も通過できる。息が出来る変な水っぽいので全体が浸水しているようで、泳ぐ形で移動可能。本来なら何も見えないまま揺蕩うことしか出来ないが、何かがあることが知覚出来たのなら便利な能力となる。
どうやって出入り口を見つけているのかと言うと、現実世界で影となっている部分から光が漏れ出ているように見えているため、そこから飛び出している。
本来なら鬼ぃさんに目覚めることのなかった力。