百鬼夜行の鬼   作:龍玉

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ブルーアーカイブ二次創作初心者です。「百鬼夜行って日本がモチーフっぽいけど、剣士とか侍とかいないよな~。あと鬼」という世迷いごとから思いついたお話です。まだまだ執筆初心者なので生暖かい目で見守ってください…。あと主人公視点はあまり出ないかもです。


本編
第一話 邂逅


 

 それは、いつも日常の片隅にいた。ただ気づいていなかっただけで、意識を向けたことがなかっただけで。

 

 

 いつも己を頼りとする少女が体調不良でおらず、一人街並みを歩く少女がそれと出会ったきっかけはとても些細なものだった。

 まだ桜が咲き誇っていた月の中旬、今だ道半ばの半人前であると認識し、日々精進することを目指して自己鍛錬を繰り返す日々の中で耳に入った噂話。

 

「そういえば奥さん知ってます?最近半月さんのところに鬼が現れたんですって!」

「あらまぁ。今度は何を?」

「半月のご主人さんが言うには、阿闍梨餅を買っては屋根に上って桜を見てたんだとか。子供が真似するから下に降りなさいって言われても、謝罪一つでのらりくらり」

「あらあら…昔から変わりませんねぇあの人は」

 

 毛繕いをしながら始まった井戸端会議とでも言うべきか、午後の用事を終えた燕の婦人方の話に出てきた鬼という言葉。己が生きている内に聞いたことの無いそれは、まだ高等部に編入してばかりの少女の好奇心をくすぐるものだった。しかもその鬼は、若干褒められたものではない行動を取ることで有名のようで婦人方の話はそちらへと移っていく。

 

「この前は確か、初等部の子供達と一緒になって大騒ぎしてましたっけ」

「そうそう。子供達が花火で遊んでいると、「ならもっとデカいやつを見るか」なんて言って打ち上げ花火の準備をして……」

「子供達と巻き込んだ大人で大はしゃぎ!うちの子供もご飯の最中なのに窓に張り付いて、ねぇ」

 

「あら燕屋の奥さん、もしかしてあの人の話?」

「あら~目黒屋の奥さんじゃないの!そうよあの人の話!打ち上げ花火で騒いで調停委員会の人に叱られてたじゃない」

「あったわねぇそんなことも!冬にはそこかしこにかまくらを作って」

「入ろうとした人を毛布で包んで放置したりしてねぇ。私もあれに引っかかっちゃったのよ~」

「えっそうだったの!?私は主人がやられちゃってそのままぐっすりって聞いてたけど……」

「そうよ、あのかまくらは魔性の巣窟…一度捕まったら最後、誰かが起こしに来るか日が隠れ始めるまで眠りの中……!」

「「きゃ~!」」

 

 婦人方の話を聞いていくうちに(そこまで実害は無い……?)と浮かんだ考えを振り払い、やっぱりちゃんと注意しなければいけないと覚悟を固める。そこに私も見てみたかったとかどんな寝心地なんだろう、家にあるやつよりもっと寝やすいのだろうかなんていう気持ちは無い。無いったら無いのだ。

 

 これも百花繚乱紛争調停委員会の活動の一つと考え、鬼の正体を突き止めるのとどんな毛布なのかを確かめるために少女────七稜アヤメは歩き出した。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 アヤメは手始めに、百鬼夜行に住む人々から情報収集をすることにした。すでに放課後の時間となっていたことも相まって、様々な話を聞くことが出来た。

 蕎麦屋を営む柴丸さんが言うには、

 

「あの兄ちゃんのことかい?まー一言で表すのは難しい御仁だな。昼は子供達と遊んでは一人でプラプラするし、夜になったら危ないことをしてる奴がいないか歩き回ってるらしいからな。その時の様子と言やぁ、昼間の人好きな雰囲気じゃないって話だ」

 

 とのこと。しかし柴丸さんは「まぁ悪人だとは思えんな。俺がぎっぐり腰になっちまった時はわざわざ代わりに蕎麦を作ってくれたもんだ」とも続ける。夜の話は初めて聞いたが、噂話の印象との差異はそこまでない。

 噂話をしていた燕屋のスズメさんにも話を聞くことが出来た。彼女が言うには、

 

「ちょっと子供っぽいところがある人かしら。昔から色んなことをしては色んな人に怒られて、一緒に笑ってるのよ。私も巻き込まれたことがあるけど、案外楽しいし安全なのよ?本当に危なかったらあの人が事前に止めるからね」

 

 と朗らかに笑っていた。続けて、「でもねぇ、屋根に上って景色を見るのは駄目じゃないかしら。うちの子も行きたい行きたいって真似しちゃうから、あまり良いとは言えないわねぇ」とぼやいていた。

 そして件の鬼と遊んだことがあるという少女からも話を聞くことが出来た。彼女は笑いながら、

 

「鬼さんのこと?鬼さんはね、すごいんだよ!おっきな花火を上げたり壁に張り付いたり、かくれんぼだと絶対にみんなのことを見つけられるんだよ!隠れる側になったら一番最初に見つかるのにね~」

 

 といった話をしてくれた。また彼女から興味深い話を聞くことが出来た。曰く、夜も深い頃に友人達と肝試しに行こうとした彼女の耳元で「カララララ……」という音がしたと思うと、何かが切り裂かれて倒れた気配がしたのだとか。驚いて振り返ると月に照らされた鬼がおり、家に帰るように促されたのだとか。共に遊んでいた頃の雰囲気は一切なく、少しの寒気も感じたため素直に応じたとのこと。そんな彼女が見た鬼の手元には、鈍く光る刀があったらしい。

 

「でもね、次の日になったらいつもの鬼さんだったんだ~。昨日の鬼さんのことを聞いてみたら、はぐらかされちゃったんだけどね。残念だな~」

 

 最後に、先輩である調停委員会の委員長から話を聞くことが出来た。先輩はどこか呆れたような、仕方なさげな表情で話をしてくれた。

 

「あぁ……あの人のことか。アヤメは会ったことが無いのか?…そうか、そういうこともあるだろうな。まぁ自然と関わることになるだろうから知っていた方がいいか。ん、どういう意味だって?そのままの意味さ。あの人は時々問題を起こしては私達に叱られるってことをずっと繰り返してるんだ。私が小さい頃から変わってなくってね、何度注意したことか……。まぁ、悪事を働いてるってわけでもないから注意で済ましてるんだ。私達ですら起きていない時間に彼が巡回しているという話もあるから、感謝したいところもあるのさ。問題を起こしてばっかだから文句もあるけど」

 

 総評して、問題を起こすがみんなから好かれている有名人と言ったところだった。しかし夜の雰囲気といい、銃ではなく刀を持っている点といい怪しげな気配も感じる。

 やはり本人に会った方がわかりやすいだろうと結論付け、しかして居場所がわからないという点で躓いてしまう。

 こうなったら片っ端から和菓子屋さんや料理店などに突撃して探し出してしまおうと考え、家で休んでいるだろう友人に安否の確認をしつつお店への突撃を開始した。時々困った様子の人を手助けしつつ。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「おじさーん!こんにちわー!」

「おぉ、アヤメちゃんじゃないか。どうかしたのかい?」

「実は、鬼を探してて!」

「鬼?…あぁ、彼のことか!それならあっちに────」

 

「鬼~?もしかして鬼さんのこと?それならあっちで日向ぼっこしてたよ!」

「日向ぼっこ?」

「うん!猫ちゃんも一緒に寝ててねー、私も一緒に寝たかったんだけど…屋根に上るなって言われたの。鬼さんは上ってるのに……」

「へ~、本当に屋根に上ってるんだ…教えてくれてありがとね」

「どういたしまして!」

「……あの子が言ってたのはこっちの筈だけど、そろそろ着くかな」

 

 犬獣人のおじさんに聞いたり料理店に立ち寄ってみたりするうちに、現在いるであろう場所までたどり着くことの出来たアヤメ。辺りには人だかりもあって、耳を澄まさずとも賑やかであることが分かる。

 探している鬼は人の目も気にせず屋根に上って昼寝をしているということを確認し、何故そういった行為を繰り返しているのだろうかと考え始めた時のことだった。

 

「オラオラァ!もっと安くしろよ!こんなんじゃ払わねぇぞ!?」

「おいおい、そりゃ困るなぁ。うちのうどんを食ったからにはちゃんと払ってもらわなきゃ困るぜ」

「うるせぇ!あたしを誰だと思ってる!カラカラヘルメット団だぞ!」

「そうだそうだ!あたし達は払わねぇぞ!」

 

「おー、やる気のある子達がまた来たみたいだねぇ」

「そのようじゃな。婆さん、少し戸を閉めとくれ。わしは遮蔽物を出しとくるよ」

「はいはい」

 

 怒声と銃撃音。キヴォトスでは日常茶飯事の光景とはいえ、わざわざ百鬼夜行まで来たうえで騒ぐのは珍しい。魑魅一座が騒ぐことはよくあるのだが、彼女のようなヘルメットを装着した人々が暴れるのは少し新鮮な気分だった。周囲の人々も物珍し気にしつつ、被害を浴びないための用意をしつつ調停委員会が動きやすいように遮蔽板等のを取り出していた。

 さて、七稜アヤメはこの春に高等部へ進級し、幼馴染と共に百花繚乱紛争調停委員会の一員となった身。目の前でトラブルが発生し、しかも危害を加えようとする存在を見過ごすわけにはいかなかった。己の愛銃である百花繚乱制式ライフルを構えて踏み込もうとし────

 

 

 

スパパァァン!!!

 

 

「「ぐえっ!?」」

 

 快闊な音が鳴り響いた。アヤメが踏み込もうとした態勢のまま目を瞬かせていると、喧騒の元であったうどん屋の中から何かが飛び出した。よく見れば、先程まで騒いでいたヘルメット団が縄で縛られた状態で放り出されていたらしい。

 

「人が仕事終わりのうどん食ってるって時に騒ぐんじゃねぇよ、ったく。おやっさん、コイツラの食った分も払っとく」

「そりゃ構わねぇが、お前さんはいいのか?」

「オレが払っときゃあコイツラに何言おうが文句は出ねぇだろうしな。要するにただの理由付けだよ、理由付け」

「まぁお前さんが良いならなんもねぇがな…ほい、毎度あり」

「あぁ、ご馳走様」

 

 うどん屋の戸を開けて出てきた存在はかなりの背丈があった。小豆色をした馬乗袴と白茶色の袴を身に着け、話に聞いていた刀と何故かハリセンを腰に差している。

 だが何より目を引くのは、その顔だった。露出している手や首は人の皮膚をしているのが分かるというのに、顔面にあたる部分が赤い。少し長い白髪の色がその異色さを際立たせていた。

 よくよく観察すれば、節分等で鬼役が被る面のようなものであると分かるが、不思議なことに紐らしきものが一切見当たらない。

 

 まじまじと見ていたアヤメだったが、向こう側も観察されていることに気付いた。店を出てきて早々に見つめられれば気付くのも仕方ない。

 訝しげな雰囲気でアヤメを一瞥し、ふん縛ったヘルメット団を抱えて屋根から屋根へと飛び移って姿を消した。

 

「………あ!?い、行っちゃった…!」

 

 目の前で急に屋根に登る奇行を前にして思考が停止してしまったアヤメは追いかけ始める。

 

 探していた人物を見つけたものの、想定外の追いかけっこが始まった。

 

 





☆七稜アヤメ
幼馴染と一緒に調停委員会に入ったピチピチ高等部一年生。人助けが好き。

☆幼馴染
アヤメの幼馴染。現在風邪を拗らせ自宅療養中。アヤメが様子を確認しに来た時には鼻をズビズビ言わせながら泣きついた。自分に自信が無いらしい。

☆鬼
鬼。午後の仕事も終わってさぁ飯だ~と思いながらたぬきうどんを啜ってたら目の前でトラブル発生。ハリセンでしばき倒して説教しようと移動してたらなんか付いてきた。
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