またポツポツ投稿する感じになりますが本作をどうぞよろしくお願いします!!
ちなみにストックは無いです。あまりにも執筆スピードが遅すぎる現実に泣きそう。
「というわけで、帰るのはもうちょい先になりそうだわ。すまん」
『どういうわけで???』
様々な機器が設置された部屋の隅で電話をする鬼にアヤメが聞き返す。若干の怒気が含まれているように感じるが、恐らく気のせいではないだろう。
「いやぁ、ミレニアムにエデン条約時みたいなキヴォトスがぶっ壊れかねない爆弾が埋まってたってのは説明してなかったっけか」
『初耳なんだけど?え?ミレニアムってそんなにやばい学園だったの?』
「キヴォトスが壊れかねない爆弾が眠ってんのはミレニアムだけじゃねぇけどな。アビドスしかりトリニティしかり……お前さんらが知らんだけでそこら中に埋まってるからな、やばいのって」
『知りたくなかったよそんな事実』
「で、その爆弾の処理が今やれば犠牲無しで済みそうなんだよ。まだまだ調査の範疇から抜け出さねぇが……頑張れば、一人どころじゃない命を救うことが出来る」
『……』
スマホから目を離し、部屋の中央に目を向ける。中央には鬼が持ち込んだゲーム機が浮かんだ状態でケースに囲まれており、離れた所ではリオと黒服が何かを計測しながら話し込んでいる。聞こえてくる内容から察するに、如何にしてゲーム機の通信範囲外から中にいるであろう『鍵』を解析するかを模索しているらしい。
しかしリオは黒服のことを警戒しているようで、手の内を見せるような手段を避けているようだった。
『鍵』を確保したことを報告した際は即決で破壊を提案した彼女だが、鬼が何かに役立つかまだわからないから破壊を待ってほしいと言えばその矛先を抑えてくれた。その後、黒服にも連絡して許可を得たので黒服の仮拠点にやって来たはよかったものの、リオが黒服を警戒し始めて鬼の後ろから出ようとしなかった。
リオの心情も納得できるものだったため、黒服との間に危害を加えないという契約を結ぶことで一定の信用を築くことに成功。なんとか協力関係に近い状態にまで持ち込んだ。
まぁ、鬼が黒服に「名もなき神々の王女の侍女ゲットしたからちょっとヘルプ」と伝えた時のあの興奮具合を考慮すれば、リオの警戒具合もむべなるかな。他人をあまり信頼しようとしないリオ相手に協力関係を結べただけよかったと思うべきだろう。
若干険悪な雰囲気になっている気もするが、後で間に入ることで仲裁すればいいと判断して鬼がスマホに意識を戻す。すると鬼の言い分に納得したのか、アヤメのため息が聞こえてくる。
『鬼さんの事情はわかった。けど、そんな大事が起きてるって聞いて黙って見ていたくはないよ。私達に何かできることってないかな』
「お前さんらに、か……」
そんな申し出に、鬼は顎に手を当て考え込む。しばし時間が空いて、一つ頷いた。
「トリニティの時にも頼った手前、何度も頼みたくはないんだがな……オレよりもお前さんらの方が適任かもしれないことがある」
『私達の方が適任?』
「あぁ。面倒なことにミレニアムの生徒がさっき言った爆弾の身内なんだよ」
『え゛っ』
「んでまぁ、その身内には友達もいるわけで……オレが説明しようにも怪しい以上、同じ生徒が説明してくれた方が聞き入れてくれやすいと思うんだよ。身内の方はオレが説明するから、その身内の友達の説得を頼んでもいいか?」
『……後で詳しく教えてよ?それじゃあナグサ達にも伝えてくるね、ばいば~い』
「あぁ、また後で」
通話が切れるのを確認した後、今も議論を重ねる二人の元へと歩み寄る。鬼が近づいたことに気づいた二人が議論するのを止め、鬼に話しかける。誰と通話しているかは既に伝えていたが、それでも確認するべきと考えたのだろう。
「どうだった?」
「困惑しちゃいたが、自分達も力になりたいって言いだしてな。ゲーム開発部の説得を頼むことになった」
「確かに我々が説得に向かうよりも、彼女達の方が適していますね。我々は少しばかり、いえかなり怪しい風貌ですし」
「……私は怪しくないわ」
「残念ながら貴女は少しばかり固く見えてしまう以上、相手を威圧しているように見えますよ?」
「お前さんは常に笑ってるから逆に怖いがな」
「貴方に言われたくないわ」
「なんでだよ、オレの何処が怪しいってんだ」
「クックック、鬼の面を付けながら帯刀している大人が怪しくないというのは苦しい言い分でしょうに」
「……それもそうか」
鬼と黒服が軽く笑えば、眉をひそめたリオがため息を吐く。大人組の会話に参加する気が失せたのか、そのまま機器を操作し始める。
「無駄な会話をしている暇があるなら、少しでも解析方法について話し合ってちょうだい。Divi:Sionがいつ来るかわからない以上、時間は限られているのだから」
「すまんすまん。それで、何か思いついたりしたか?二人で話し合ってたみたいだが」
「えぇまぁ、話し合ってはいたのですが……あまり有意義なものではありませんでしたね」
黒服の言葉に、鬼は首を傾げる。恐らく生徒の中でも名もなき神々の技術に精通したリオと、名もなき神々の遺産を流用して研究を行う黒服の二人がいれば何か案が浮かぶと踏んで協力を持ち出したのだが、その二人を以てしても良案が浮かばなかったらしい。
すると黒服がゲーム機の入ったケースに近づき、鬼に手招きをする。近寄ってみれば、中のゲーム機が起動しているのが確認できた。
「起動してる、のか?オレが見た時は電源が切れてたと思うんだが……」
「はい、鬼面が持ち運んでいた時は切れていました。しかしこのケースに入れて計測を開始したところ、無人で起動しました。恐らく中にいるであろう『鍵』に勘付かれたのでしょう」
「あちゃー、さすがに黙って見てるわけなかったか。そんで?なんで解析できないんだ?」
「実を言うと、先程から解析自体を試みているのですが……」
「中にいるAIの妨害が激しいの。これほどまでに解析を防がれたのはヒマリ以来かしら」
「リオと黒服の二人掛かりでやっても防がれたのか?」
少し驚いた様子で鬼が聞き返せば、黒服が肩を竦めた。
「彼女はまだしも、私はハッキング分野に関しては少し齧っている程度ですから。本職ほどセキュリティの突破といったことは出来ません」
「でもお前さん、名もなき神々の遺産を解析してこのワープ装置みたいなの作ってただろ?なら『鍵』の解析も出来るって思ってたんだが……」
「本来なら。しかし解析を試みる内にわかったことなのですが、どうやら『鍵』には意思があるようです。こちらが嫌がるセキュリティを逐次作り出しては締め出してきましたからね。意思を持ったデータの解析となると、さすがの私でもお手上げです」
「無抵抗ならやりようはあったのですが」と黒服は続ける。
鬼は名もなき神々の遺産を研究して作品を作り出してきた黒服ならば、『鍵』の解析も出来ると踏んでいたのだが……それは抵抗のないものだったからこそだった。さすがに意思を持った機械かつセキュリティを突破した直後に新たなセキュリティを作り出すAIを相手にするのは、作る側であり突破するのが専門ではない黒服でもきつかったらしい。
「リオ的にはどうなんだ?解析出来そうか」
「……無理ね。時間を掛ければ突破は出来るだろうけど、今はその時間が惜しい状態。それこそ、ヒマリやチヒロでもなければ……」
「明星ヒマリと各務チヒロの御二方ですか。確かに彼女達はハッカーとして随一の実力の持ち主だと耳にしたことがありますし、協力を持ちかけてもいいのでは?」
「駄目ね。ヒマリは名もなき神々の王女──アリスの危険性を理解していない。最悪の場合は彼女を破壊しなければならない以上、彼女とは決して相容れない。チヒロもヒマリに付くでしょうし、協力を持ちかけるのは良案とは言えないわ」
「あー……そういやこの前ゲーム開発部がやらかしたって言ってた時、明星ヒマリも一枚噛んでたって言ってたな。となると解析に関してはここだけでやるべきか……オレは力になれそうにないし、今の状況が続くかもな」
「そこの大人が何も隠していなければ、だけれど」
「私は何も隠していませんよ、クックック」
「おいこら、オレを挟んで睨み合うんじゃねぇよ」
鬼を挟んで火花を散らす2人を諌め、ゲーム機をまじまじと見つめる。傍から見たら何の変哲もないゲーム機であるのに、その実態はこのキヴォトスでも随一と言える技術者を弾く力を持った『鍵』。
あの王女の側仕えと考えれば納得がいくが、そんな存在が王女の直ぐ側に居た事実に身震いするような気分になる。
そんな折、鬼はふと考えることがあった。
「そういえば……」
「どうかされましたか?」
「いやなに、この中にいるAI…『鍵』は名もなき神々の王女の侍女なんだよな」
「そうですね。無名の司祭が名もなき神々の王女を覚醒させるための鍵であり、その側仕えとして生み出したのが、そのゲーム機に存在するAIであるとされています」
「ならさぁ…『鍵』とアリスって姉妹の関係になんのかな」
「……どういうこと?何故天童アリスと『鍵』が姉妹になるのかしら」
首を傾げながら鬼へと問いかけるリオ。名もなき神々の事柄ではあるが、考えたことも無かった見方だったからか純粋な疑問として受け取ったらしい。
黒服は鬼の疑問に対して静かに考察を広げ、その着眼点に笑みを零す。
今この場にいる者達はキヴォトスを滅ぼす兵器を無力化するために集った有力者であり、その対象たる天童アリスと『鍵』を兵器あるいは潜在的な脅威として見る。
そんな存在に対し、姉妹かどうかなんて考える人間は極少数だろう。ましてや世界を滅ぼす存在であり、最悪の場合は殺し合いすらあり得るのだ。鬼の疑問は、あまりにも呑気とすら言える。
しかし、そんな疑問を零せるのも鬼の実力故の発言なのかもしれない。定期的に実験を繰り返す黒服は、鬼の実力をこのキヴォトスで最も明確に理解していると言っても過言ではない。
あの焔と氷、そして影。鬼火と彼が称する焔は恐怖から来るものだが、影と氷は恐怖から来ているわけでも、神秘から現れるものでもない。その丹田を侵食する
あれだけ多用しているにも関わらず、苦悶の表情が現れない精神は流石としか言い表せない。
そしてその戦闘力を顕示したカイザーとの抗争に関しては肝が冷えたものだ。
黒服は当時、アリウス自治区から帰還し無事に復帰した鬼を祝い、共に彼の復活に尽力したマエストロとゴルコンダとゆっくりとしていた。
折角だからご褒美を味わってもいいじゃないか、と外から仕入れた20年物のシャンパンを開けて乾杯しようとした時に耳に届いたカイザーと大和の抗争の情報の衝撃は筆舌にし難かった。思わず三人で十字を切ったのもいい思い出だ。
そもそもあの頃の鬼は一番不安定な状態であり、開戦の一撃が物理的な物であればカイザーという会社がキヴォトスの地図上から
………思考が逸れた。黒服が2人に目をやれば、リオが鬼に自身の見解を話している場面だった。
「彼女達に姉妹という見方をするのは少し違う気がするわ。どちらかと言えば、姉妹機であると考えるのが適しているでしょう。彼女達が作られた時期は近しく、用途も似通っているもの」
「姉妹機ってのは言い得て妙だな。傍から見たら普通のアリスとAIだから姉妹
「……いくら彼女が人に近く、王女の在り方から離れても……兵器であることには変わらないわ」
「頑固だな、って言いたいが……まだアリスの中にある爆弾がある以上、完全に否定出来んな」
「となれば、天童アリスが姉になるんじゃないでしょうか?作られた時期は近しいでしょうが、王女の制作が最優先だった可能性がありますし」
「アリスが姉って、はっきり言って想像つかんぞ?刀持った不審者に満面の笑みで近づいて「バーチャスミッションです!」ってワクワクするのがあの子だし」
「実際されたしな」なんて肩を竦めれば、事情を知るリオは理解を示し、黒服は名もなき神々の王女の変質具合に笑いが漏れてしまった。
「ククッ、クックック……!王女にそこまでの変化が起きるとは、やはりこの世界は面白い…!一体何が原因でそんなことが?」
「テイルズ・サガ・クロニクル」
「…………あぁ。なるほど」
鬼がアリスとのクエストの最中に聞いたその名を言えば、冷水をぶっかけられたかのように黒服の笑いが消え、無の表情を見せる。最初鬼もアリスからその話を聞いた時は身震いしたものだから、黒服の反応もよくわかる。
あのテイルズ・サガ・クロニクルが終わるまで帰れまテンは、ゲマトリアのトラウマと化していた。
「あれならば重大なバグが発生してもおかしくありませんね。はっきり言って世界1位のクソゲーですから」
「申し訳ないけれど、私の後輩の作品を貶さないでちょうだい。あの作品はあの子達の『ゲームを作りたい』という情熱の込められたものよ」
「これは失礼、確かに褒められた態度ではありませんでしたね。それにしても、貴女がそう言うということは……もしや、あのゲームをプレイなさったので?」
「?えぇ、勿論」
「……ではもう一つご質問を。確かにあのゲームには彼女達の情熱が込められていたのでしょうが、快適なゲーム環境だと言えたのでしょうか」
「…………」
リオは黒服の質問に目をそらし、沈黙を返す。彼女もまた、テイルズ・サガ・クロニクルの虚無に触れた者だったのだ。鬼は沈黙で返したリオをさもありなんと頷いた。
その瞬間、鬼の脳内にある閃きが走った。
「なぁリオ、アリスと『鍵』は姉妹機に近いんだよな。じゃぁもし人として見たら、姉妹って言えるよな?」
「……人としてみるなら、だけど。けれど彼女達は──」
「待て待て、そう焦るな。オレに妙案が浮かんだ」
「妙案?」
「……まさか鬼面、貴方……」
鬼との長い付き合いがあるからこそ、黒服はその妙案に思考が追いつく。だがその妙案を受ける対象に選ばれてしまったのなら、黒服は即座に降伏するだろう。
冷や汗が浮かぶ黒服に仮面の下で笑みを浮かべた鬼は、まだわかっていないリオに提案する。
「アリスにとって『鍵』が妹で、その妹がアリスを覚醒させて世界を滅ぼそうとするなんてアリスは絶対に拒絶する。てことは姉妹喧嘩の構図になるわけだ。ならさ……」
「姉妹喧嘩にテイルズ・サガ・クロニクル使わせれば『鍵』もバグるんじゃね?」
※鬼の提案はリオからの「確実性が無さすぎるしそれが原因で今以上の敵意を持たせてしまったらどうするの」という正論で撃沈しました。