音MADでしか呪術廻戦を知らない俺が禪院家にTS転生?! 作:ポ予
「珍しく鋭い指摘やね、まさにその通り。『世界に呪霊がいる』と知った非術師は、最初の一定期間は不安に呑まれるはずや。
……え?
一瞬、直哉の言葉の意味がわからなかった。
直哉の表情は普段のそれと違ってとても穏やかで、それなのに目だけが怖い。黄味がかった明るい色の虹彩の中心に浮かぶ真っ黒い瞳孔は、まるできらきら光る星雲の中央に鎮座する穿孔のようだった。星の死体。ブラックホール。たまにとんでもなく冷たい目をする奴ではあったが、ここまでのを見るのは初めてだった。
直哉は笑みを深める。
何年か前までは見慣れていた嘲笑寸前の笑みを。
直哉は笑ったままで周囲を見渡した。
「呪霊が非術師の負の感情から生まれる以上、非術師に直接『呪霊がおる』言うたら不安が呪霊を生む循環が起きる。けど、宗教いう包装紙でくるんで渡したら話が違うんやない? ──宗教的フレームは『畏敬』『感謝』『儀礼的受容』『鎮魂』みたいな、呪霊化しにくい感情類型を選択的に喚起する。これを使わん手はない。……ついでに呪術を使えば『奇跡』は起こし放題やし、信者を増やせば献金が集まる。政党に流せば、将来は禪院の息のかかった人間を直接総理に据えることも可能やね。あとはなし崩しでぶち抜いたる。姉さん達の好きな『民意』によるプラン。たとえばこういう方法やったら、問題は起きないんちゃうの?」
……えーっと。
禪院直哉という存在は常に思想が偏る宿命なのか?
3歩後ろを歩かれへん(以下略)とは別の意味で、怖いことを言い出してる気がする。
けれども、方向性自体は最良に近い。
既存の宗教文化の延長線で呪術概念の受容地盤を整えること自体は悪くない。一つひとつを取り出して見れば近代社会が普通にやっていることの組み合わせで、それを呪術界の改革目的に向けて再構成したもの。特に倒錯した発想ではないと思う。
菜緒葉ちゃんが温めていた線よりは圧倒的にマシだと思うし、細部を調整すれば使えるだろうか。
ただ、後半部分はカルトがやることだというイメージも強い。そして呪術を悪用したカルトは、たまに摘発されている。
ここでは一応釘を刺しておいた方がいいかと思い、声をあげる。
「これこそ8条に真っ向から喧嘩を売っていますわ。危険すぎます。宗教法人と呪術界の相性が最悪なのを、あなたは知らないの?」
「あー。そんなん誤魔化せばええねん」
俺のツッコミに一切動揺せず、直哉は事も無げに言ってのけた。
「宗教法人だけで活動を組織すると、宗教法人法の監督が活動全体に及ぶからな。これを避けるために、複数の法人形態を組み合わせるんや。学校法人と公益財団法人をミックスさせて、それぞれの法人の理事会を完全に分離。あとは信徒リストに禪院の術師の名前は絶対に入れん。盤星教なんかは何十年もそれで通しとる。そして、教義の設計が決定的に重要やね」
「教義?」
「ん、教義のなかに『呪術』『呪力』『呪霊』を直接含めなけりゃ、文化庁の所轄担当官が教義を読んでも、第8条違反の証拠を直接拾えへんやろ?」
……そうなの?
正直なところ俺は宗教法人のスキームについては本腰を入れて調べたことがなく「なんとなく怖いなぁ」位のノリで生きてきたので、よくわからない。
直哉はちょっと詳しすぎないか?
それとも単に俺が無知なだけか?
誰か助けてくれ。
「詳しいですね、直哉さん」
蘭太くんがなんともいえない顔で言った。みんなももっとドン引きしているかと思いきや、他の子は一切引いていない。最初に呪霊増加リスクに触れた子などは、完全に尊敬の目で直哉を見始めている。
直哉は半笑いのまま肩を竦めた。
「こちとらずっと調べとんねん。……わかるやろ、菜緒葉ちゃん?」
目だけが異様に真摯な暗さを湛えたまま、こちらを凝視してくる。
しかし菜緒葉ちゃんは出てこない。
それを数秒かけて確認すると、直哉は一瞬無表情になってから、また笑って続ける。
「で。ここからが本題やけど……将来的には、この場で非術師に対する実験を行うこともできる。この世に呪力という奇跡があると知った時の反応についての確認。さらに『神饌』とでも称して非術師に対する呪霊食の実証を始めよっか。信徒からならいくらでも合意を取れる。むしろ神の恵みとして、喜んでサンプルを提供するはずや。……そうしたら、呪術師の仲間が案外いっぱい増えるかもしれへんね」
笑いながら話すようなことではなかった。
まず、直哉がこういう思考を回せるタイプだというのが意外だというのは前提として……ここまでの未来図を語ってしまうのは、流石に時期尚早じゃないか。疾風迅雷か?
非合意の治験の話まで出てきたら、流石に参加者がドン引きしかねない。
蘭太くんが真剣な目で直哉を見据えた。
「呪霊が見える人が日本にだけ増えたら、海外からの目が厳しくなると思いませんか?」
「それも考慮済みや。海外に布教して炊き出しして、先行で実験すりゃええねん。アフリカとかのほうが飢えてる人が多いんやない? 知らんけど」
投げやりに近い、あまりに乱暴な言い方だ。
……けれども呪力を海外に配るなら、まずはアフリカに配りたいというのは菜緒葉ちゃんも言っていた。理由は先進国に先に呪力について研究させると、格差が悪化するから。
咄嗟に批難する言葉が見当たらない。
迷っていると、非術師アンチの警戒心に満ちた子が言った。
「呪霊食で呪術師の数を増やすのは要するに、呪術師と非術師の境界を曖昧化する作業ですよね」
……それは正解。
この子は差別的ではあるが、頭はいい。宗教法人作りも政界進出も、本質的には術師の地位を毀損しない。しかしこれは違うのだと気づいているのだろう。
でもさ、そもそもこの子が少し前まで言ってた「猿」って一体なんだと思う?
◇
実は「猿」の定義というのは案外曖昧だ。
たとえば直蔵お兄様のように産みの母が非術師の女中な術師は大勢いるし、俺のお母様も非術師の親から生まれた呪術師だった。その逆に、婿養子の実家が非術師家庭であることもザラ。
つまり、数世代遡れば、家中ほぼ全員が非術師の血族を抱えていることになる。
口喧嘩の弾みで自分の家族にそのように暴言を吐く術師が皆無とは思わないが、知人や友人の身内を日常的に「猿」扱いし続けられるはずもない。だから禪院の呪術師の大部分は、非術師の身内の存在自体を曖昧化・周縁化する処理を無意識に身につけている。
20世紀初頭のアメリカには「家系に1人でもアフリカ系の祖先がいれば、見た目がどれだけ白人に近くても法的に黒人とみなす」というルールがあった。それに比べれば、我が家はなんていい加減なんだろう!
じゃあ、誰が「猿」と呼ばれるのか。
まず、抽象カテゴリとしての非術師。
呪力の漏出を自分で処理できない、呪霊の発生源。
禪院の呪術師は基本的に彼らを見下しているので、彼らを「猿」と呼称してもあまり問題は起きない。公的な場で言い出したらまずいが、身内しかいない状況であれば許容される程度。
それでも親切な非術師の子供が助けてもらったお礼にとお花など持ってきたら、半分くらいの術師は喜ぶと思う。そういう曖昧な分類だ。
続いて、呪術界の業務を妨害する非術師。これを「猿」と罵るのは常態化している。どんなにムカついても使ってはいけない言葉というのが世の中にはあるし、「そういう言い方は嫌いですわ」と何年も前から言っているけれど、効果はあったりなかったり。そもそも、俺の前でだけ言わなくなるだけでは意識改革にも繋がらず、あまり意味がないかもしれない。
そして最後に──
庶子であれば、政治的可視性が低い。胸糞悪い話だが、養子に出すか、最悪認知しないという手だってある。性別が女の場合なら一層都合が良い。どうせ前線に出ないのが普通だから、家で女中として働かせ、年頃になったら嫁に出せば済む。
だが、嫡妻の子、特に男児はどう足掻いてもいなかったことにはできない。
つまり家中政治の最大単位での失敗を家から切り出すために「猿」と罵るのだ。尤も、罵っても罵っても失敗を補うにはまだ足りなくて、結局前当主は立場を失ったのだが。
若い層は特に、甚爾くんの件で彼が自分の親より強いことを理解して、心底恐怖している。自分や自分の親が「猿」に劣る弱い存在だという認知的負荷から逃れたがっている。「猿」であれば例外なく憎み、身内でも虐げ殺すというほどの気骨ある差別主義者は、この家にはいない。だから「猿」という分類に内心で違和感を持ちながらも、年長の親族の言葉を聞き流し続ける。そして次第に、この言葉への嫌悪感を失ってゆく。そういう半端な状態に置かれている。
この不純さは、一貫性のなさは醜い。
そんな浅い覚悟で、人を傷つけていい訳がない。
でも俺は、それが禪院家のいいところでもあるとも思っている。
多くの人を動かすための思想というのは、なるべく多くの人を受け入れるものであって然るべきだからだ。
植民地主義とかそういう小難しいことを言い出す子でも、ただ自分の周りの世界を守りたくて精一杯の子でも、人類を全員魔法少女にしたい子でも、受け入れられるように。
非術師と呪術師の境目を、緩やかに破壊する。ヒトと呪いの境目さえ案外曖昧なのだから、それは本当は、大して難しいことではないはずだ。
それを成し遂げさえしたら、甚爾くんはきっと──。
でも、まだ夢だ。
俺は「猿」という言葉を飲み込み始めた少年に届く言葉を、ゆっくりと探すことしかできない。
「要は、社会全体の呪力リテラシーを上げる作業ですわよ。そのうち呪霊食や、脳をいじる術式、かわいくなる術式などのいい術式持ちも出てくるかもしれない。……その後で、関係者全体が熟議した上で、境界線については問われるべきでしょうね。今から話し合ってもどうにもなりませんわ」
結局は、曖昧な言い方に逃げた。
呪術師と非術師の境目そのものの破壊に関する主張で、相手を説得しきる自信がない。たとえば非術師の一部が呪詛師化するリスク辺りをベースに責め立てられたら、現段階では苦しいからだ。
菜緒葉ちゃんはモラルがあまりないので気にしていないようだし、俺も
しかし相手の子はその曖昧さの前でも一歩も引かず、即座に言い返してきた。
「そうなったら、禪院家は最終的に優位性を失うのでは?」
畳み掛けるような調子だった。
俺は紅茶のカップを置く手を止め、どう躱そうかと頭を巡らせる。曖昧に流すのも、はぐらかすのも、この聡い子相手にはもう効かない。
しかし言い淀みかけた瞬間、菜緒葉ちゃんが浮上する。
ひとりでに口が動く。そして、俺では出そうとしても出せない、なぜだかいつもナチュラルに甘々な声音が漏れる。
「あら。でも、私達が優位性を失う頃には、あなたの嫌いな『猿』だって1匹もいなくなっているでしょう。別にいいんじゃない?」
足は勝手に彼のすぐ近くに歩み寄り、目は彼の顔を覗き込み、菜緒葉ちゃんはどこまでも優しく言った。
「私にはわかりますわ。辛いですわよね。何の意味もなく『貴族』をやらされるのは」
「えっ……」
相手の表情に戸惑いが浮かんだ。
当然だ。俺なら絶対にこんな甘やかし方はしない。甚爾くんの苦労を思えば「勝手にやれよ」としか思えないし、同年代の男に優しくしすぎると後で面倒くさくなるからだ。
けれども菜緒葉ちゃん自らがそうするなら仕方ない。別に籠絡しようとかではなく、彼女は本気でこの子に親切にしてやりたいらしかった。
なんでだろうね?
菜緒葉ちゃんは相当に歪んでいるけれど、弱い者いじめだけは真剣に嫌っている。非術師を一方的に蔑視するなんて、本来なら大っ嫌いなはずなのに。
でも、俺が一切止めないので、菜緒葉ちゃんはそのまま言葉を続ける。
「ただね、直哉が言う通り、呪いに満ちた世が到来するのなら、そこには呪霊も新しく生まれなくなる」
「……」
「それまでの間、時代を先導するあなた達は、間違いなくこの世界の『貴族』であり『英雄』ですわ。平安時代の陰陽師がそうであったようにね」
夢見るように菜緒葉ちゃんは話した。
甘い声を、蜂蜜の雨のように満遍なく降らせながら。
相手の男の子は黙る。
理由が納得によるものなのか、単に「禪院菜緒葉」がかわいい顔とかわいい声で共感を示したことへの感情ゆえなのかは不明だった。
そして、彼が黙りこくると、菜緒葉ちゃんは全体を見渡した。
「あなた達はこれまで無意味に『貴族』をやらされてきたと思っているのでしょうが、あなた達の座っている寒々しく孤独な椅子は、実は世界のすべてを変える装置なの。呪術師は、呪力という人類普遍の遺産の独占的管理者なんですのよ。そしてあなた達がその力を手に入れたのは、幸福な偶然に恵まれたから。……恵まれた自分にどのように向き合うかによって、禪院の真価は問われます。結論を出すにはあなた達はまだ若すぎるけれど、未来の禪院を担う者として、思考を止めないでね。ただ座しているだけの人生は、きっと退屈きわまりないでしょうから」
締めくくりでニッコリと笑う。
すると参加者のみんなから、何故か拍手が起きた。
……。
……いやー、強引に締めたね!
でも助かった。
俺1人だったら論破されていたかも。
生得領域プレイスのキショい椅子に腰を下ろし、疲れた体をほぐすみたいに伸びをしていると、キショい椅子から唇が生えた。
《結局ポジショントークだよね、どこまでも。シン菜緒葉さんの企みは全人類を呪術師の美少女にすることだし、君がしたいのは呪術医療へのアクセスを可能にするための呪術師増加にすぎないだろう? そのために七面倒くさい理屈をこじつけて、未来ある若者をたぶらかして洗脳するなんて、やってることが
真男佳だ。教え子達を全員東大へ行かせられるレベルのカリスマ講師(自称)兼俺達の奴隷なので、勉強会の協力者としてこき使っているのだが──呼んだ時以外は黙っていろという指示をまた破りやがった。あとでお仕置きしてやろうか?
とはいえ今回に限ってはコイツが正しい。自覚はある。
ポジショントークのオンパレードに決まってんだろ。
でも、だからどうした?
俺が洗脳しなかったら、どうせ親とかがもっとクソな洗脳をするんだろ? たとえば、「禪院にあらずんば人にあらず」とかさ。
じゃあ、俺がやってもいいんじゃないか?
女や非術師を見下さず、伝統に対する批判的思考ができるような子達を育てた方が、いいんじゃないか?
常識的に考えて、禪院の男に「非術師の女の人が病気で死んじゃったのが悲しくて、それをなくせる世界を作りたいんです!」なんて言って、響く訳がない。「いつ呪霊に殺されるかわからない俺達よりマシだろ」と冷笑されて終わりだ。
ありとあらゆる人を味方につけるためには、そのための利益を提示しなきゃいけない。「世界は間違ってます、俺のために世界を変えてください、だけど俺は何もしません」じゃダメなんだよ。
戦後呪術界レジームからの脱却。
呪術全盛平安回帰。
2つの決定的なスローガンをいつ口にするかは決めていないが、この調子でみんなが乗り気なら、事前のイメージよりも早くてもいいかもな。
そんなことを考えていると——
「僕は、せっかくなので解放者になりたいです」
誰よりも早く、そして最も美しい最後のピースをはめたのは蘭太くんだった。
「宗教活動をするなら、非術師の皆さんの役に立つものにしましょうよ! 医療を中心にした術式を優先して拾い上げて、それを教義の奇跡に組み込むんです」
「……蘭太くん!!」
菜緒葉ちゃんはハイテンションで蘭太くんの手を取った。
ニッコニコである。
ちなみに俺もニッコニコである。
蘭太くんも嬉しそうにした。
「あ、でも『かわいくなる術式』は別に要らないと思いますよ? 菜緒葉さんはそんな術式がなくても最初から充分かわいいですからね!」
「なっ……!」
蘭太くんのド直球ストレートな褒め言葉に、俺の(というか菜緒葉ちゃんの)顔が熱くなるのが分かった。
おい、これ俺が今メイン張ってなくて本当に良かったな!? 男の魂が入った状態で年下の男の子に「かわいいですよ」なんて正面から言われたら、どんな顔していいか分からん。
と、思っていたら。
『マコくんヘルプ! 元はといえば手作りクッキーなんてあざとい真似をしたマコくんが悪いんですのよ!? ……でも、生まれて初めて同年代の男の子にカワイイって言われましたわ! いやー、なるほど、これがウワサに聞いていた乙女ゲームの実体験版……! 私達もいよいよTS美少女としての実績解除って感じですわね〜!! サンキューマコくん、後半の講義はよろしくあそばせーっ♡』
……返すなよ。
ここで主導権を返すなよ!!!
逃げるな本体!!!!
「あ、あら、あらあらあら……! 蘭太くんったら、からかわないで頂戴?未婚の女性に気軽に『かわいい』だなんて……!」
強制的に表に引きずり出された俺は、顔を真っ赤に染めながら、手元の指示棒をいじるという最高にあざといお嬢様の仕草で誤魔化すしかなかった。
とはいえ、勉強会は想像以上に上手くいっている。
一時はどうなることかと思ったが、若手が自発的に考え改革に乗り始めたのは紛れもない前進だ。多少危うい部分も、年齢を考えれば許容範囲。きっとみんな、立派に育ってくれるだろう。
五条悟がどれだけ最強の個として君臨しようが、現行の総監部がどれだけ強大だろうが、関係ない。
俺は満面の、最高に輝くお嬢様スマイルを浮かべてみせた。
「さあ皆様、お茶の時間はここまでですわ。──後半戦はインターネットと情報秘匿の戦術について。ビシバシ行きますわよ!」
この場にいるみんなの心は完全にひとつ。
組織を、思想を、時代を内側から作り変え、最後に歴史の勝者となるのは禪院だ。
◇
──その一方。
(蘭太くんのアホ〜!! 君が好きなのは姉さんやろーが。菜緒葉ちゃんに手ぇ握られて照れんなや! 気づけ!そもそも姉さんは菜緒葉ちゃんの体で男にニコニコすな! 手作りクッキー振舞うな! 菜緒葉ちゃんが余計出づらくなってまうやろ!
ついでにかわいくなる術式で
クソボケカス野郎!!!
…………というか、この勉強会の流れ、コレなんか流石にあかんやつやない??)
と、中核メンバーかつ一見過激派の禪院直哉だけが、暴走トロッコのような周囲の面々の様子にブチギレつつも焦りに焦っていることに──ノリノリのメンバー達も、光と闇の姉コンビも、微塵も気づいていなかった。
姉の分裂を知ったあの日から始まった禪院直哉の地獄巡りの加速は、今も止まる気配すら見せないでいる。