音MADでしか呪術廻戦を知らない俺が禪院家にTS転生?! 作:ポ予
真希ちゃんの話を最後まで聞いて、俺はようやく自分の見落としに気がついた。
かつて扇のおじさまと結んだ縛りは2つある。妻子に暴力を振るわないこと。俺の方針に従い、邪魔をしないこと。あれで禪院家壊滅フラグの根っこは抜いたつもりでいた。
完全に見逃していた。俺が奪ったのは暴力だけで、おじさまのありのままのカスさについては何ひとつ封じていなかったのだ。
おばさまは仕事中。部屋の隅、文机でドリルを広げていた真依ちゃんは、俺が姿を現すなりビクッと肩を揺らし、即座に真希ちゃんの背中へコソコソと隠れた。相変わらず極度の人見知りだ。
2人には「向こうのお部屋で遊んでいてくださいましね」と柔らかい声で言い含め、文机の上にぽつんと置かれていた桐の小箱だけを証拠品として拝借する。そして俺は、奥の間の物々しい襖を容赦なく引き開けた。
おじさまは机に向かっていた。
何をしているのかと思えば、菜緒葉ちゃんや俺が五条との戦いでズタボロに砕いた呪術高専の敷地や各種設備の弁償、および総監部への手続き書類の処理だ。お父様も甚壱くんもこの手の細やかなデスクワークには疎い。こういう面倒な事務作業はすぐにおじさまの元へ回ってくるのだ。
「菜緒葉か。療養中と聞いたが。まあいい、元気があるなら茶でも淹れろ」
おじさまはチラリとこちらを一瞥しただけで、視線すら戻さずに顎で急須をしゃくってみせた。
……待て。最近のこの人は、俺を見かけるたびに恐れ多いご神体を見るような目で、常に恭しく寄ってきていたはずだ。
それが今日は座ったまま、完全に見下したような態度。
そして何より悲しいかな、禪院の女としての嗜みを10年間徹底的に叩き込まれた俺の身体は思考よりも先に滑らかに動き、急須と湯呑みを温め始めていた。
……なんかこの人、俺が弱った途端にやけに態度がデカくなってないか?
『今ならヨユーで勝てると思ってるからじゃありません?』
生得領域の奥から菜緒葉ちゃんの冷静な分析が飛んでくる。
そうだった。扇のおじさまは今や呪術界最強の炎遣いになってしまったのだ。両面宿儺や『予測』の中でお父様を殺した呪霊と比べたら流石にアレだろうが、今のおじさまがガチめに1級相当の中でも上澄みであることは疑いようがない。
クソッ!俺がおじさまの呪力量を増やして戦闘力を爆上げしてしまったばかりに、こんなイキリ散らかした態度を許すことになるとは……!
淹れ立てのお茶をドカンと文机に叩きつけ、俺は拝借してきた桐の小箱を突きつけた。
「おじさま、この木箱の中身なんですけれども……!」
「おお、それを見たか。日ごとの推移が一目でわかるよう、日付順に並べておいた。真依の構築する宝石の透明度は3週目に一度落ちたが、そこから持ち直してな。硬度も向上している」
「ちっがーう!!」
自慢げに語るおじさまの顔面に右ストレートを叩き込もうか本気で悩んだ。
「毎晩8時過ぎまで、鼻血が出ても修行続行! そのうえ真希ちゃんと真依ちゃんの才能が逆なら良かっただのなんだのと言い放ったそうですわね!? ちょっとスパルタすぎません??」
「ふん。娘を思っての教育だ。真依には家事を免じてやっているのだぞ。十分甘くしている」
「はあぁ?」
「そもそも、日々の成果を可視化する宝石作りも、呪力操作の精密性を高める真珠の構築も、全部オマエが提示した修行法だろうが! 両方採用して叩き込んでいるのだから、むしろ感謝されてもいいくらいだ」
毎日の物質構築と構築物の精密制御。
前者は真依ちゃんがまずは呪術の楽しさを学べるようにと俺が、後者はもうちょい負担の少ない修行がないかということで菜緒葉ちゃんが提案した。片方ずつを成長に合わせてやって行けばいいと思っていた。
まさかこの男が過干渉&毒親のフルパワーを発揮して「じゃあ両方限界までやらせれば倍伸びるな!」という最悪の算術を弾き出していたとは思わなかったのだ。
「この、カ……」
カス、と罵りかけたところで、背後の襖がかたんと鳴った。指3本ぶんの隙間に、同じ顔がふたつ、縦に並んでいる。上が目を丸くした真希ちゃん。下が涙目になった真依ちゃん。
真依ちゃんの視線が、机の上の桐の小箱、厳格な父親、そして肩を怒らせている俺の姿を、順番に往復する。
「ほうせきもしんじゅも、りょうほうやれっていうのは、ぜんぶ……」
「ち、違いますのよ真依ちゃん。今のはね」
「ナオハが……ナオハが犯人だったんだぁ!」
ビシッと小さく震える指で指さされた。
「ナオハなんてだいっキライ!」
「わぁぁぁん!」と屋敷中に響き渡るような泣き声をあげ、真依ちゃんが廊下を走り去っていく。真希ちゃんは俺の顔と、逃げていく妹の背中を2回ほどパタパタと見比べ、意を決したように「真依!」と叫んで後を追いかけていった。
俺は頭を抱えた。
頭を抱えたまま、3秒。4秒。5秒。
廊下の向こうで「わぁぁぁん」が角を曲がり、「真依!」がそれを追いかけ、やがて両方とも聞こえなくなった。
「……子供の言うことだ。放っておけ」
おじさまは何事もなかったようにお茶を啜った。
「泣けば済むと思っている。甘えだ。真希なら泣かん」
コ、コイツぅ……!
頭を抱え続けている俺に、脳内から菜緒葉ちゃんがアドバイスをくれた。
『マコくん、おじさまは私達の方針に従うという縛りを結んでいます。今こそそれを使うチャンスですわ!』
そうだ。それがあった!!
俺は背筋をぴんと伸ばして正座した。
「おじさま。真依ちゃんの修練について、私の方針を申し上げます!」 「聞こう」
即答だった。おじさまは湯呑みを置き、こちらに向き直る。
縛りは生きている。ヨシッ!
「夜は休ませてあげてください。限界が来たらその日はおしまい。それから、宝石と真珠は両方ではなく——」
「夜とは何時からだ」
「ほえ?」
「季節によって日没の時間は違う。帰って来られる時間も違う。日曜にまとめてやらせるか? 限界とはどのラインだ? 肉体的限界か、呪力枯渇か。私は同じ術式の持ち主として完璧に見極めているぞ。一晩眠れば回復する程度で留めてやっている」
扇のおじさまはドヤ顔を向けてきた。
「そもそも、真依と同じ年の頃のオマエはもっとやっていた。どうして真依にだけやらせない? 才能の差か? それとも哀れみか?」
「……あれは私が好きでやったことです。誰にもやれと言われていません」
俺と菜緒葉ちゃんという狂気の二心同体コンビと違って、真依ちゃんはごく普通の、純正の女の子だ。俺たちと同じ基準で物事を強要されるのは、どう考えても可哀想すぎる。
「では、真依にも好きでやらせろと? あれが自分から何かを好くのを待っていたら、日が暮れるどころか代が替わるわ。呪術師として生まれた以上、強要されてでも力をつけねば死ぬのは自分だ。それがこの家の、いや、呪術界の真理だろう。軽い気持ちで他人の家の教育方針に文句をつけるな!」
おじさまは「はい、論破!」とでも言いたげな顔でこちらを見てきた。怒りに任せて踏み込んできたし、おじさまのやり方は明らかにダメなのだが、今の言葉の後半だけは正しい。俺は反論の言葉を見つけられず、再び頭を抱えるしかなかった。
◇
その日の昼のうちに、呪霊の生け捕り任務から直哉が帰ってきた。俺の部屋の障子を足で開け(お行儀!)、畳の上に呪符でぐるぐる巻きにされた木箱をごとりと置く。箱の中で何かがみちみち鳴っている。ありがたいお土産だ。
俺は要所要所で直哉に呪霊をスタンさせてもらいつつ、自室で簡単な料理を進めた。そうしながら今日扇のおじさまの部屋で起きた顛末について語った。
直哉なら一緒に怒ってくれると思っていた。なにせあの叔父のことは昔から「パッとせぇへん」呼ばわりで、敬意の欠片も持っていない。「あのオッサンほんまカスやな」の一言くらいは当然出てくるものと思って、俺は相槌待ちの顔で身を乗り出した。
「え、何がアカンの?」
「……はい?」
「扇の叔父さんが正しいやろ、それ」
一瞬、聞き間違いかと思った。
「術式があるんやから、限界まで鍛えるのは当たり前や。女の子やから言うて手ぇ抜かんと、男と同じだけやらせとる訳やろ。男女平等な教育やん。ええことやろ」
「……だんじょびょうどう」
思わず平仮名で復唱してしまった。
直哉の口からその四字熟語が出てくる日が来るなんて!
俺感動しちゃったよ。
しかし、よりによって今、その文脈で使うか!?
「ええことではありません! まだ5歳の女の子が、夜の8時過ぎまでですわよ? 鼻血を出して毎日のように泣いているんですのよ?」
「痛みがないと修行は身につかんわ。俺もそうやって強なったよ。泣いたくらいでやめとったら、それこそ三流の雑魚で終わりや」
「それは……」
「姉さん達かて4時起きやったやん。真依ちゃんだけ可哀想言うのは、それこそただの贔屓ちゃうの。『女の子やから泣いたら許したる』いうんは、姉さん達が一番嫌いなことやないの?」
ぐっ。
こいつ、最近ますます口が回るようになった。
誰が鍛えたんだ。俺か。痛いところを的確に突いてきやがる。
「俺かて真依ちゃんが嫌いで言うとるんちゃうで? せっかく術式あるのに雑魚のまま大きなって、後で死ぬ方がよっぽど可哀想やろ。そもそも、その程度の訓練についてこれへん真依ちゃんの方にも問題あるんちゃう?」
俺は無言で、弟の脳天に手刀を落とした。
「痛っ。何すんねん」
「そう言うあなただって我が家のこの手の教育のせいで、しばらくはとんでもないドブカスになってたでしょ!!」
「はあ? アレは修行が原因ちゃうわ。周りの大人どもが『相伝の天才ですね~』『直哉さま~』言うて甘やかしまくったせいで、俺の天性のカスの本能が開花しただけやろ!」
「開き直るな!」
「でも、障子破っても女中しばいても、誰も本気で俺を怒らんかったやん。ちゃんと怒ったのは姉さんだけや。あれがアカンかったんやろ。もっと幼少期に徹底的に鉄拳制裁受けて分からされてたら、俺はもっと素直でマシな人間になってたわ」
「……」
「扇の叔父さんはその点、実の親として逃げずに真依ちゃんを締めてるんやから、真依ちゃんは俺みたいな性格歪んだカスにはならん。安心しぃ」
本当に安心か?
見るからに内気な真依ちゃんは、カスにすらなれずにただ潰れてしまう可能性もある。
直哉はデフォルトで性格が悪いのだが——今にして思えば、素行が一番ひどかったのは、俺と菜緒葉ちゃんがまるで構ってやっていなかった時期だ。そして相伝の術式を持つ直哉には、溜め込んだストレスを吐き出す先が無限に用意されていた。きつい訓練と特権は裏表だ。なのに真依ちゃんには片方しかない。
頭痛がしてきた。
こめかみを強く揉み締めながら俺は精神の奥底へと助けを求め、肉体の主導権をバトンタッチする。
こういう時こそ、本物の禪院家の娘であり真依ちゃんの従姉妹である彼女の出番だ。同じ家で虐げられた彼女なら、5歳の女の子が置かれた悲惨な状況に対して、的確な解決策を提示してくれるはず——
「直哉、いつの間にか、メチャクチャ立派で理知的になりましたわね……! 私、感動で涙が出てきちゃいそうですわ……! 真依ちゃんの誤解なんて、もう少し大きくなって頭が冷えた頃に解きに行けばよろしいんですものね!」
「せやろ!? さっすが菜緒葉ちゃんは話がわかるわ! 叔父さんの指導は間違ってへん!」
「ええ、そうですわ! 呪術界最強の炎遣いとなったおじさまに直々に手ほどきして貰えるなんて、私、幼少期の自分と比べたら羨ましくて嫉妬してしまいそうですのよ!! なのにどうしてキライだなんて酷いこと言われなきゃいけないんですの!」
……。
敵は外にも内にもいた。
今の真依ちゃんが呪術師になりたいのかはまだ不明だし、あんなスパルタ特訓は絶対に彼女の精神衛生上良くないはずなのに……。
ともあれ身体の主導権を握った菜緒葉ちゃんは、手早く調理を済ませ、呪霊の活け作りを一生懸命食べた。
女の子の身体なのでそこまで胃袋が大きくないし、呪霊の肉は呪力的なエネルギーにはなってもビタミンやミネラルのような身体的栄養満点とはいかない。結局のところ、栄養バランスのためには普通のお米や野菜、お肉も一緒に食べなくてはいけなくて中々に面倒な部分もあるのだが、それでも生の呪力を直接身体に流し込むと、腹の底からじんわりと熱が戻り、少しだけ元気が湧いてきた。
「よし直哉! 元気が出てきたから、軽く身体を動かしたいですわ!」
食後の冷茶を飲み干し、菜緒葉ちゃんは晴れやかな顔で宣言した。直哉は少し驚いたように目を瞬かせた後、すぐに嬉しそうな笑みを浮かべた。
「おっ、ええで。俺が相手したるわ」
「お断りしまーす!」
「即答やん。なんで」
「今の私は呪力が普段の4分の1しかありませんのよ? そんな状態であなたとやり合ったら、リハビリどころか致命傷になりますわ。だから今は適当に、2級相当の相手を見繕って頂戴。軽く汗を流せる程度の手頃なサンドバッグ要員が欲しいの」
「……菜緒葉ちゃん、たまに(?)とんでもないこと言うよな。まあええわ、適当に暇しとる非番の連中に声かけたろ」
直哉は苦笑いをしながら携帯を取り出した。
——そして数分後、稽古場の引き戸が、がしゃーんと派手な音を立てて開かれた。
「お、お待たせしましたっ!」
息を切らして飛び込んできたのは蘭太くんだった。稽古着の上に引っかけてきた羽織の襟が、片方だけ内側に折れている。直哉の電話一本で本当に走ってきたらしい。
「まるでワンちゃんやね。よっぽど姉さんに会いたかったんやなぁ」
壁際に寄りかかっている直哉がニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべて言った。
……直哉。オマエさっき「適当に暇しとる連中」って言ってなかった? 完全に名指しで面白がって呼び出しただろ。
俺が冷ややかな視線を向けてやっても、当の直哉はどこ吹く風で「ふぁ」と気の抜けた欠伸までしてみせた。でもまあいいか。とりあえず表に出ているのは俺なので、俺はお嬢様として満点のスマイルを顔面に貼り付けた。
「ごきげんよう、蘭太くん。急にお呼び立てしてしまってごめんなさいね」
「いえ! 全然! 全然です!」
元気のいい返事。こういうところは昔から変わらない。
——で、だ。
菜緒葉ちゃんは直哉に「2級相当の相手を見繕って」と頼んだ。2級くらいなら今の自分でも余裕でボコれるとでも言いたげな口ぶりだったが、あれは見栄だ。実際はよくわからん。
そしてその「手頃なサンドバッグ要員」として目の前に立っている男の子を、俺は見上げた。
見上げた。
前世の俺は超がつくほどの虚弱体質で、蘭太くんと同じ年の頃には病院と自宅の往復ばかり。体育はほぼ見学、腕相撲で女子に負けるほどのモヤシだった。
それに比べて、目の前のコイツはどう見ても仕上がってきている。
ぐぬぬ……ッ!!
豆粒とまでは言わないが、昔は俺より断然ちっちゃかったのに!!
俺と菜緒葉ちゃんだって筋トレ頑張ってるのに、なんか理不尽!!
なのに菜緒葉ちゃんは意気揚々としていた。
『マコくん、私決めましたわ。こないだ新調して貰った浴衣を褒めなかったこの子をボコボコにして、自己肯定感を高めますの!!』
そういえば彼とマトモに話すのはあの夏祭りの夜以来初めてだ。
だが、今の俺たちは呪力が4分の1である。
そんな大言壮語を吐いて大丈夫か。
『弱っている時こそ確実に勝てる格下の相手を理不尽に殴って、勝利の味を思い出すのもアリかもしれません。これは必要なリハビリですわ、リハビリ♡』
そういうドブカスなことを言うのはやめなよ……と思うが、多分本音じゃない。菜緒葉ちゃんの蘭太くんに対する人格評価は本来とんでもなく高いのだ。だからこれは、夏祭りの夜に「品性を疑われます」とピシャリとやられたことへの、ちょっとした意趣返しだろう。
本気じゃない。たぶん。
「……あの、本当にいいんですか?」
蘭太くんが、心配そうに俺の顔を覗き込むように少しだけ屈んだ。その物理的な高低差がまた俺の自尊心を削ってくる。
「直哉さんから連絡をもらって飛んできましたけど……菜緒葉さん、五条悟との一件で倒れて、まだ本調子じゃないって聞いてますよ。無理は……」
その目に、俺は少しだけたじろいだ。
心配してくれている。それは痛いほどわかる。わかるんだけど、最近の蘭太くんが俺に向けてくる視線は、乙女ゲームなら完全に個別ルート突入、スチル回収寸前みたいな温度をしているのだ。
こんないい子からのピュアな気持ち、中身が元男&世界の全てをメス堕ちさせたがるメスガキにはもったいなさすぎる。彼は絶対に、もっとマトモで健気な女の子と付き合うべきだ!
そう思っていると——直後、菜緒葉ちゃんがスルッと主導権を取り戻した。
「あらぁ、お優しいこと!」
口が勝手に動いた。いつもの3割増しで甘いのに悔しげで、対抗心バリバリな声だ。
「でも、本調子じゃないくらいが、あなた相手にはちょうどいいハンデですわよね? 昔は私に手も足も出ずに転がされて、わあわあ泣いていた子なんですもの……ふふっ」
盛るな盛るな盛るな盛るな。
庭の隅で組み手ごっこをしていたのは俺だ。それに、最初のうちはかなり手加減してもらってたのもこっちである。蘭太くんが泣いたことなんて歴史上1回も存在しない。記憶の捏造をやめろ。
「なっ……」
「私は術式なんて使って・あ・げ・ま・せ・ん♡ 呪力強化による体術のみ。でもぉ、蘭太きゅんは必死に術式フルスロットルで向かってきていいですわよっ! どう? これならビビリの蘭太くんでも、少しは『菜緒葉さんに勝てるかも!』って勘違いできちゃうかしら?」
……え?
呪力4分の1。術式なし。体術のみ。
相手はこっちより身長が20センチ高くて、目で見たものを止める術式をフルで使うバリバリの実戦派。
これ、リハビリじゃなくて公開処刑のセッティングでは?
さっき直哉に「致命傷になりますわ」とか言って組み手を断った冷静さはどこに置いてきた?
そして菜緒葉ちゃんの煽りスキル全開の言葉に、蘭太くんの顔色が変わった。いくら温厚でも、彼にも呪術師としてのプライドはある。
「……そこまで言われたら、僕だって男です。いくら菜緒葉さんでも」
「へー、男。所詮は品性のない私が、そんなことを気にすると思っているのですか?」
その言葉に、蘭太くんがびくっと肩を揺らして気まずそうに目を逸らした。
——あっ。
菜緒葉ちゃん……。
もしやちょっとした意趣返しとかではなく、ガチギレしていらっしゃる?
面白がっていた直哉も流石に表情を引きつらせた。
「あの……ええの? ハンデつけすぎやない? もし万が一にも間違いがあったらどうすんの……」
「えっ。直哉、信じてませんの? 圧倒的な私の大勝利を!!」
「……じゃあ特等席で見物させてもらうわ。菜緒葉ちゃんの大勝利」
すると蘭太くんが珍しく声を荒げて噛み付く。
「別に見物しなくていいじゃないですか! 退屈でしょうし、直哉さんは自分の任務の準備でもしていればいいんじゃないですか!!」
「はーん? つまり菜緒葉ちゃんとふたりっきりになりたいん? 疑うわぁ、ひ・ん・せ・い」
「ちーがーいーまーすー!!」
また新たな小競り合いが始まってしまった。
弱い者いじめって訳じゃないし、蘭太くんもかなり言い返すタイプだから普段はある程度スルーしているが、勘弁して欲しい。
蘭太くんは深呼吸をして直哉から視線を切ると、真っ直ぐにこちらを見据えてきた。
「……わかりました。じゃあ、菜緒葉さん。もし僕が勝ったら、もう僕のことを見下して子供扱いするのはナシにしてください!」
すると、菜緒葉ちゃんがゆっくりと首を傾げる。俺の首でもある。だからその角度だけで、次に来る台詞がわかる。10年一緒にいれば、この子が一番えげつない言葉を言う直前の、予備動作くらいは覚える。
「あらぁ? そういうことをムキになって顔真っ赤にして言っちゃう時点で、もう完全にこ・ど……」
——ああああ! やっぱりダメだ!!
これ以上菜緒葉ちゃんに喋らせたら、俺の精神がメスガキムーブの羞恥心で焼け焦げて死ぬし、蘭太くんの心も完全にへし折られる!
俺はフルパワーで自我をねじ込み、口を動かした。
「……も、だとか思ってませんわ! ぜーんぜん、これっぽっちも、1ミリだって思っていませんわ!!」
声が激しく上ずってしまったが、なんとか言葉を繋ぐ。蘭太くんの耳には、言い淀みつつ言い直しただけの一続きの文に聞こえたはずだ。
いい子の彼をこれ以上傷つけないよう、俺は必死にフォローの言葉を重ねる。
「蘭太くんは、この家を支える、と〜っても頼りになる後輩ですわ!」
「………………後輩」
蘭太くんの肩が、目に見えてガクリと落ちた。
犬の耳と尻尾が見えた気がした。ぺたんと垂れ下がっている。子供扱いを否定したつもりが、「後輩」という明確な上下関係の壁をコンクリで固めてしまったらしい。
しまった、自分から地雷原でタップダンスを踊ってしまった。
直哉が笑いを堪えている。
やっぱりコイツ、最低だよね……。
しかし蘭太くんはすぐに立て直した。
「……構えてください、菜緒葉さん」
空気がびりっと張り詰め、彼の周囲で呪力が濃密に練り上げられていく。
「言っておきますが、手加減はしませんから!」
おお、かっこいいセリフだ。完全に少年漫画の主人公が覚醒する直前の面構えである。
しかし、俺の脳内では——。
『ふふん! 羂索さんが褒めてくれた私の可愛い浴衣姿をスルーした大罪、直哉の目の前で這いつくばらせてたっぷりわからせてやりますわ♡ 震えて眠りなさい!』
——蘭太くん、本当にもっといい女の子を探した方がいいんじゃないかな?
なんなら、今日の菜緒葉ちゃんからの意地悪をそのキッカケにしなさい。
◇
「──で、参りました、は?」
天井の木目がぐるぐると回って見えた。
肺から無理やり空気を押し出され、冷たい畳の感触が背中全体に広がる。けれども一番守るべき後頭部と床の間には、衝撃を殺すように滑り込んだ蘭太くんの掌があった。
見上げると、馬乗り一歩手前の体勢で蘭太くんがこちらを見下ろしている。
「……」
「菜緒葉さん!」
「…………じゅ、術式を使ってガチれば負けませんでしたわ!」
思わず負け惜しみを言うと、少しだけ躊躇うような変な間があってから、ベチッと強めのデコピンが降ってきた。
「ひゃっ、参りましたぁ! これでいい?」
俺はわからされてしまった。
悪いのはハンデ付きの舐めプを提案した菜緒葉ちゃんなのに……。
呪力量低下の結果、身体強化に回せる呪力の見極めをミスったのが最大の敗因だが、向こうも確実に強くなっている。しばらく前に反転術式のコツを教えたことで、立ち回りから怪我を恐れる躊躇いがごっそり抜け落ちていたのだ。それとの相関でか、術式を使うのも前より断然上手い。
でも、おそらくは今より強かったであろう蘭太くん(大)をパーフェクト真希ちゃんが身体能力だけで倒したのを考えると、あまり言い訳もできないか。
壁際からぱちぱちとやる気のない拍手が聞こえた。
「いやー、ええもん見せてもろたわ!」
直哉だった。
特等席から近づいてきて、俺のすぐ横にしゃがみ込む。
「『私は術式なんて使って・あ・げ・ま・せ・ん♡』」
……やめろ。
「『どう? これならビビリの蘭太くんでも、少しは勝てるかもって勘違いできちゃうかしら?』──勘違いやなかったなぁ?」
「……うるさいですわ」
「なんて? 聞こえへん」
「うるさいって言ってますの……っ!」
『くっ……! 嘘ですわ、私の大勝利プランが……!!』
生得領域の菜緒葉ちゃんもギリィッ!とハンカチを噛みちぎらんばかりに悔しがっている。
しかし表に出ているのは俺なので、ここは矜持を見せねばならない。無様な姿のまま、俺はなんとか口角を上げてみせた。はらわたが煮えくり返るような悔しさをぐっと飲み込み、あくまで成長した弟分を讃える余裕のある姉の微笑みを作る。
「……ふふっ。強くなりましたわね」
どうだ。これならギリギリ尊厳は保たれ——。
「いや、菜緒葉さんが弱くなっただけです」
冷や水を浴びせるような声が降ってきた。拘束を解いて立ち上がった蘭太くんは勝者の優越感に浸るでもなく、煽り返してくるでもなく、ただひたすらに切実な顔をしていた。
「そんなんじゃ、すぐ呪霊に殺されちゃいますよ」
暗く悲しげな瞳だ。『予測』の中で大人になったこの子が、菜緒葉ちゃんにいつも向けていた視線と全く同じだった。
俺は『予測』の悲惨なビジョンを音MADの優秀な素材としか認識していない節がある。そうやって真男佳に勝った。だからそこでの登場人物も、菜緒葉ちゃん以外は素材用の実質別人として都合よく処理できているのだ。しかしかつての菜緒葉ちゃんはそこまで器用に現実と『予測』を峻別できず、メンタルが深刻なエラーを起こしていた。
だから、今のはちょっとまずい。
俺は初見でキレたし、令和基準では妻にネットで愚痴られそうなタイプではあるが、『予測』の彼は禪院基準だと異例の善人だった。だから直哉の100倍くらい人気があって、その輝きで菜緒葉ちゃんの惨めさをじわじわと煽っていたのである。
俺も前世で少し似た経験があった。中2の頃に隣の席だった、パッとしないモヤシの俺にも優しかったギャル。博愛主義のアイツは休みがちな俺のために毎回のようにノートを取ってくれたり、バレンタインデーにはハート型の義理チョコもくれた。嬉しいと同時にキツかった。
自分に別人格が宿った瞬間からアイツが俺にメロメロになったりしたら、俺だってちょっと気が狂って奇行に走っちゃうね。
そう考えてみると、なんて可哀想な菜緒葉ちゃん……。
俺のせいで……?
——案の定菜緒葉ちゃんは表に出てきて、恐る恐るといった調子で尋ねた。
「……あ、あの。私のこと、キライになりましたか……」
しかし蘭太くんは怒ったように答えた。
「嫌いになんてなりませんけど!!」
即答したあとで蘭太くんはようやく質問の意味を噛み砕いたみたいに、眉を寄せた。
「なんでそうなるんですか……。菜緒葉さんってそんなにマイナス思考でしたっけ?」
「だって、そういう目をしていたから。今の私は品性ないし意地悪だし、弱いし……」
いやいや、自己卑下しすぎだって!
俺は、菜緒葉ちゃんだって本気でモテようと思えば全然モテると思うよ?
マゾかオタクを狙おう!
……と、茶化して明るく全てを済ませようとしたら、
「──ふざけないでください!!」
蘭太くんに怒られた。
いや、俺の内心のおふざけではなく、菜緒葉ちゃんが怒られているのか。
「品性がない? 意地悪? 弱くなった? ……そんなこと、どうだっていいですよ!!」
「ら、蘭太くん……?」
「僕が一番怖いのは、菜緒葉さんが居なくなることです! 五条悟と戦って倒れたって聞いたとき、僕がどれだけ……どれだけ生きた心地がしなかったか……っ!」
その言葉に、俺——いや、菜緒葉ちゃんの心臓がギュッとなった。悲しみのせいだ。菜緒葉ちゃんは本当にもう少しで消えるところで、けれども蘭太くんは「禪院菜緒葉」の区別なんかついちゃいないんだから、菜緒葉ちゃんが消えても何も気づかなかったかもしれない。
しかしそこまで言ったところで蘭太くんは直哉をガン見して、口を閉じた。
「……」
「……」
2人は数秒間謎の見つめ合いを続け、それから直哉が言う。
「……で、蘭太くん。まさか言うん、『アレ』?」
「言いません。直哉さんじゃないんだから、そんな性格の悪いことはしませんよ」
「そうやって言い訳すんのはダサいで、『蘭太きゅん』」
「気持ち悪いのでやめてください」
なんでまた唐突に喧嘩を始めたの。
男同士だけでわかり合ってTS美少女をハブるなよ。
そもそも『アレ』ってなに。
菜緒葉ちゃんが『マコくん、あとはよろしくね』と若干しょぼんとしながら主導権をまた投げ渡してくるのを後でどうフォローしようか必死で考えつつ、俺は宇宙を背景にしてフレーメン反応を起こす猫のような気持ちになっていた。
「というか君、菜緒葉ちゃんをこれ以上凹ますなや。さっきイヤなことがあったばっかりで、今のはストレス発散のつもりやったんや。……まさか菜緒葉ちゃんが自滅し始めるとは思わなかったんやもん……」
直哉は叱るような口調で蘭太くんに言った。直哉は常に「姉さん」と「菜緒葉ちゃん」を呼び分ける。つまり、落ち込んでいるのは今ここで喋っている方じゃなくて奥に引っ込んだ方だと——蘭太くんには絶対に解読できない形で言っている。
蘭太くんは案の定、何も気づかずにこちらを向いた。
「イヤなこと、って……何かあったんですか?」
俺は答えに詰まった。
「いえ、大したことでは——」
「真依ちゃんに『だいっキライ』って言われたんやって」
肘で脇腹を小突くと、直哉は「なんでやねん、ホンマのことやん」と小声で言った。
観念して、俺は事情を話した。
真依ちゃんの術式に合わせて修行のやり方を2つ提案したこと。おじさまがそれを両方も、限界まで詰め込んでいたこと。それを問い詰めに行った現場を真依ちゃん本人に見られて大泣きされ、修行の計画者として嫌われてしまったこと。おじさまを説得しようとして、論破されて帰ってきてしまったこと。
「——あの子、ただでさえ引っ込み思案でしょう? 私の顔を見るといつも真希ちゃんの後ろに隠れてしまうくらいなのに、そこへ来てこれですもの。当分は口も利いてもらえませんわ。その間にも修行は続き、繊細でか弱い真依ちゃんの心が破壊されていくんじゃないかと思うと、私はもう心配で心配で……」
「…………え?」
蘭太くんが、俺の顔をまじまじと見た。
冗談かどうか、確かめるみたいに。
「真依が……おとなしくて引っ込み思案???」
語尾が三段階くらい跳ね上がった。
「……違いますの?」
「菜緒葉さん、昔僕に頼みましたよね。双子を悪く言う奴がいたら庇ってあげてって。僕、菜緒葉さんや甚壱さんに会いに来たついでであの子達を見かけたときは話しかけたり、親に頼んであの双子にうちの妹を紹介したりしたんですけど……」
蘭太くんは、言葉を選ぶように少し間を置いた。
「真依、この家の子供の中で一番偉そうですよ」
……はい?
俺の脳内に宇宙を背景にした猫が再び降臨した。
「あの真依ちゃんがぁ?」
「はい。偉そうです」
蘭太くんは一切の躊躇を見せなかった。
悪口ではなく、事実だから言っている、という顔をしている。
「僕が見かけるのはたまにですけど、菫……うちの妹の話だと、遊ぶときは全部真依が仕切るらしいです。この間はおままごとか何かをしたらしくて、その時の配役はお姫様は真依で、真希は王子様で、菫は犬」
「犬」
「犬です。菫が『わたしもお姫様がいい』って言ったら、『すみれちゃんはまだ術式ないからダメ』って言われて、真希がしょうがなく2回目で王子を譲ってくれたらしいんですけど。帰ってからずっと泣いてて大変でしたよ」
俺は真依ちゃんの、着物の裾を握りしめて震えていた小さな手を思い出した。その小さな手が、友達に犬の役を割り振ってお座りとかをさせているところは、脳をどう捻っても全然思い浮かばなかった。
いや待て、お姫様になりたいのはともかく、5歳児の時点で術式マウントをとって友達を犬扱い!?
それはちょっと……。いや、ちょっとどころではなく性格が……。
流石は直哉の従妹と言うべきか……?
「で、でも、私の前ではいつも真希ちゃんの後ろに!」
「きっと菜緒葉さんの前でだけですよ」
「俺の前でもやけど? 真依ちゃん、俺の前でもずーっと真希ちゃんの後ろやで。挨拶もせえへんし。そういう子なんやと思っとったけど」
直哉が心外そうに口を挟むと、蘭太くんは至極当然という顔で言い放った。
「そりゃあ直哉さんは……直哉さんですからね。本能的に危険な存在だと認識されたんじゃないですか」
「おいコラ」
えっ。じゃあ俺って、真依ちゃんの中で直哉と同格の「ヤバい奴」枠なんですか?????
真希ちゃんの後ろに隠れるのは、引っ込み思案だからじゃなくて、俺たちの前限定の警戒&防衛ムーブメント?
俺の脳内の宇宙猫が、もはやブラックホールに吸い込まれそうになっている。
「あと……ほら、菜緒葉さんって意外と察しが悪いじゃないですか。
「……はい?」
「意外とっていうか、結構。かなり!」
「???」
「……その、人の機微に疎いというか、自分に向けられている感情に無頓着というか……」
「ちょっと蘭太くん!? 突然なんですの、それはどういう意味ですの!」
もしかしてそれは君が、完璧マドンナを演じるTS美少女の俺に一過性のときめきを覚えているという話についてか?
それはねえ、もう1年もすれば黒歴史になるだろうと思って、善意で気づかないフリをしてあげてんの!!
そもそも職場恋愛って拗れたら地獄だし、何かあったら傷つくのは君の将来なんだぞ!!
しかし横から直哉が「あー」と納得したような声を上げた。
「それ、俺もずっと思っとったわ」
「ちょっと、直哉まで!?」
「姉さん、良くも悪くも自分に都合のいい善意で物事を解釈しがちやからね。人間の負の感情への理解が薄いんやわ。真依ちゃんのことかて、勝手にフィルターかけて見とったんちゃう?」
「そんなこと……!」
否定しようとして、言葉に詰まる。
俺の中での真依ちゃんは最初から、将来直哉にセクハラされ、実父に殺される悲劇のヒロインだった。だから助けになりたいと思って、優しくしていた。でも、悲劇のヒロインに対しては、可哀想だという以上の感情は持ちようがない。
『直哉のマコくん観はかなり正確ですわね……』
菜緒葉ちゃんにまでそう言われて俺が内心でダラダラと冷や汗を流していると、蘭太くんはさらに真剣なトーンで追撃をかけてきた。
「それに、菜緒葉さんって、真希はともかく真依にはあんまり興味ないんじゃないかと、正直思ってました」
「えっ」
「真希は物怖じしないところが小さい頃の直哉さんと少し似ているし、菜緒葉さんによくなついているし、何より甚爾さんと体質が同じで苦労してますからね。菜緒葉さんが真希を特別に気にかける理由は、端から見ていてもわかります。でも真依は、言い方は悪いですけど、よくいる普通の女の子ですから」
「そ、そんなことはありませんわ! 私は2人とも平等に可愛がって、だからこそ真依ちゃんにも専用の修行メニューを——」
「じゃあどうして、真依の性格をよく知らないままなんですか?」
蘭太くんの言葉が、えぐい角度で俺たちの胸に突き刺さる。
俺も菜緒葉ちゃんも、真依ちゃんをきちんと見ていなかった。一歩間違えると禪院家を滅亡させるほどパワフルな真希ちゃんと比べると、オマケ的な認識を持ってなかったとは言いきれない。直哉と扱いに差をつけられていたのが嫌だったのに、俺達も結局は、なりたくなかった大人とおなじになってしまっていたんだ。
——というか、『予測』内での真依ちゃんのムーブって、姉妹揃って直哉とおじさまの被害者で大いに恨みを抱えていることを差し引くと、どんな感じだったっけ?
女中の菜緒葉ちゃんが真依ちゃんにどう思われていたかというと、たしか……。
「だから……」
蘭太くんはこれ以上ないほど気まずそうに目を逸らした。バツが悪そうに口ごもる。
「……だから、なんなの。ここまで来たらはっきり言いなさいな」
俺が恐る恐る続きを促すと、蘭太くんは覚悟を決めたように一つ深呼吸をし——とどめの一撃を放った。
「非常に……本当に物凄く言いづらいのですが……今回の修行の件で真依に嫌われたんじゃなくて、最初から素で嫌われていたという可能性はないですか?」