五十嵐遥のVtuber活動録   作:バンバ

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 ストック数に不安を覚えてきた。
 最近ランニングを始めました。ダイエットです。


第10話「何故だろう。風邪でもないのに悪寒がする」

 

 8時を過ぎても起きてこない小鷺さんが大変愉快な姿で寝ているのを起こしてから、とりあえずの朝食を食べた。

 

「忘れて、忘れてえええぇ……!」

「これ私たちが犯罪してる側みたいな背徳感あるな……」

「面白すぎる」

 

 やはり愉快な女だ。面白すぎるだろ。勝てねえって。人の家の布団の上で寝袋に入って伏せ寝してるのは、絵面が強すぎるって。

 

 ただ、酷い二日酔いになっていたのはボクだけで、2人はそうでもないらしい。

 

「や、目の前であのペースで飲まれると、ちょっと」

「それですねー」

「ごめんなさい」

 

 はい。

 

 さて。冷蔵庫から引っ張り出されたタッパー入りの料理を食べ終えたボクたちは、改めて織原さんの家に住む際の問題を考えていた。

 

「私は、PCを置くスペースがあれば、みたいな感じですね。特別場所を取るような趣味とかも無いので」

「意外。楽器をたくさん持ってるイメージだった」

「確かにー。でも、そうだよね。あ、防音対策は私の方で勝手に進めてるから気にしないでいいよ!」

「神ですか?」

 

 とりあえず小鷺さんは問題ないらしい。身軽だなぁ。あと、防音に関してはボク無頓着だったな。もしかしてうちの両親、何も言わないけど結構うるさかった……?

 

「ボクの方は問題がある。その為にさっき、織原さんからRtoV:Aコラボ配信を打診された」

「問題解決につながる配信……?」

「あー、うん。いやね? 遥ちゃんの野生児具合を舐めてたというか……真っ当な責任感をこんな所で発揮してほしくなかったと言いますか……遥ちゃん個人でも解決できるんだけど……せっかくなら旅は道連れ的なノリで、3人でわちゃわちゃできないかなって……」

「すっっっごい嫌な予感がしてますけど、内容を教えて下さい」

「虫、食べる度胸、ある?」

 

 あっ、若干赤みを帯びていた顔がサーッと青くなった。ボクの色が。

 

 でもこれで初配信での色奪った分はチャラなのでは?

 ……そんなわけないか。

 

「……見た目とか、あります?」

「はい、これ。美味しいよ」

「……ヒョエ……調理法は?」

「素揚げの予定だった。見た目がダメなら、何とかして誤魔化そうとしてた」

「…………熟慮させてください………」

「そうなるよねえー!」

 

 2人して頭を抱えてしまった。まあ、怖いよね。加熱するけど、万が一はあるし。

 あ、2人ともアレルギーは大丈夫らしかった。甲殻類がダメな人は反応出ちゃうみたいだから。

 

「はい」

「いつから挙手性になったんだよぉー……はい遥ちゃん」

「ボクが試供品を持ってくる。それを食べて判断してもらう。それでいい?」

「うわぁ強烈にヤな予感がする!」

「私逃げてもいいですか!? 逃げても許されますよね!?」

「ボクのことなんだと思ってるの?」

 

 人様に出すんだ。ちゃんと食べられるクオリティじゃないと、ボクが納得できない。

 よし。そうと決まれば。

 

「安藤さんも巻き込もう。RtoVも、全部。カンダタさんも」

「ちょっとごめん、遥ちゃんのこと大好きだけど今だけは猛烈に距離を取りたいかもー!」

「ネタで野生児とか言ってごめんなさいー!」

 

 あ、無事に安藤さんは巻き込むことができました。ついでにボクらの同棲の話も触りだけ説明したところ、「良いんじゃない?」と軽い返事が来た。

 後はボクを見つけてきた関係者ということでカンダタさんを巻き込めるかどうかだ。

 

 

 

 

 そんなこんなで昼過ぎには体調もマシになったので出歩いたりして、楽しみ尽くしたボクは夜には家へと帰って来ていた。

 改めて、コンソメに向き直る。

 

「コンソメ、食べてくれよー……」

 

 小さじに乗せたゲルフード。興味は示してくれてる。けど、中々食べてくれない。

 ……まあ、まだデュビアあげて1日くらいしか経ってないしね。

 

 目的を変えよう。とりあえず、母さんに。

 

「母さん、聞きたい事がある」

「ハル、どうしたの?」

「例えば、ボクが…………シェアハウスみたいな形式で暮らしたい、とか言い出したらどうする?」

 

 リビングのソファーでグデーっとしたままテレビを見ていた母さんに、そう尋ねる。

 見たことないような顔で、ボクを見ていた。

 

「……え、騙されてるとかじゃないわよね?」

「人のことなんだと思ってるの」

「二十歳になるまで人間関係まともに構築出来ずに育って定職に就かずに働いてた馬鹿ドラ娘」

「泣くが」

「可愛いから許すけど」

「許すんだ」

 

 シンプルに暴言飛び出してくるじゃん。事実だけど。何も言い返せないけど。それでも痛いものは痛い。

 

「それで?」

「?」

「誰と暮らすのよ。アンタの事だから、恋人、異性は今のところ無しとしても、同性の、歳の近い子って想像したんだけど」

「サトリ妖怪か?」

「いっぺん殴るぞ馬鹿ドラ娘」

「殴ってから言う?」

 

 しかもわざわざ起き上がってのガッツリゲンコツだし。痛いし。

 

 そんなこんなで、今の仕事、RtoV所属のVtuberをやっていること。その折に、始めて仲良くできる友達が出来たこと。つい昨日泊まりに行ったのも、会社の件というより、友達の1人の家に泊まっての事だった。

 

 色々話しているうちに、母さんは微妙な顔をした。

 

「いやまあ、騙されてるわけではないか。いいわ。ただ、引越しに必要な荷物とかは自分でまとめなさいよー」

「よっし」

「父さんは……まあ、私から言えばいいか」

 

 我が家の力関係は、基本的に母>父≧ボクだ。

 父さんはなんというか、真っ当なんだけどダメ人間というか。黙々と仕事をしている分には何も問題ないんだけど、なんというか。

 どっかの最高司令官みたいな感じというか、母さんに一生尻に敷かれてるというか。

 

 まあ、我が家の事情は置いといて。

 無事に許可を得たボクは、意気揚々と突発配信に取り掛かった。

 

 

【突発雑談】君らの趣味事情とか、ボクの趣味事情とか【藤原澄】

 

「おはよう、君ら。RtoV:Aの青色担当の他称野生児、藤原澄。タイトルの通り、突発枠だよ」

 

【おはよう】

【草】

【おはようございますー】

【おはよう】

【急に配信通知きてビビったわwww】

【野生児www】

【おはよう言うても夜やけどなw】

【草】

【今度は何やったんやwww】

 

「………………その辺は、おいおい。聞かれる前にボクの趣味事情を答えておくと、歌は朝走ってる時に通る裏山とかで走りながら歌ってる感じ。生き物観察も少しペースを落としたりしながら、だね。……体を動かすのが好きって意味なら、ランニングもそれかもしれない」

 

【走りながら歌ってるのは結構キツくない???】

【やってる事がガチ歌手のそれなのよ】

【結構ゆったり走ってる感じなん?】

【運動かぁ…学生の頃以来やってねぇなぁ」

【学生時代一生帰宅部もいるよ】

【逆に中高大と野球やってて今も社会人チームでやってるよ】

【はぇーすっご】

【ゲームとかやらへんの?】

 

「ゲームは特に。人がやってるから」

 

【解読班ー!出番だぞー!!】

伊鶴城ルキア【ゲームは特にやらないかなぁ。人がやってるのを見てるだけで楽しいから、自分はいいかなって。かな?】

廻木ゼツ【ゲームをやらないのは、人がやってるのを見て、それで楽しいからいいかな、とかじゃないか?】

【悪い意味ではねーと思うけどwww】

【何圧縮したww言えwww】

【ナイス解読!】

【先輩も同期もよう見とる】

 

「…………あ、やったわ。ルキア、廻木先輩、ありがとうございます。食べるのは、本当に行き当たりばったりで、だね。何かが無性に食べたい、みたいな時に。行ったことない場所探してみよう、みたいな」

 

【草】

【草】

【やったわは草】

【でも趣味とは違くないか?】

【食べ歩きはガチで楽しいもんな】

【フラッと入りたくなるのわかるわ】

【それで穴場見つけたりな】

【ワイは読書とスポーツ観戦とかか?】

【てかどのくらきの頻度で走っとるん?】

【どのくらいの距離走ってる?】

【俺はアクアリウム作り】

 

「基本、大体毎朝5時過ぎた辺りで、地元の街中から裏山とか、割と無軌道に走ってる。……たぶん、2時間で25kmくらいか?」

 

【バケモンだバケモン!】

【草も枯れる】

【草ァ!】

【フツーに上級者向けの走りしてんだよなぁ】

 

「厳密に測った事ないから、たぶんそんなもんだよなあ、くらいだよ。……今度運営に相談して、数日かけて体力テストみたいな企画とかやってみてもいいかな?」

 

廻木ゼツ【体力に自信無いニキ的には辛えわ……】

【しれっと企画生まれようとしてて草】

【でもそうなるとRtoV最強の身体能力の持ち主、とはなるか?】

【瞬発力と持久力で求められるものが違うからなぁ】

駒井ハジメ【 】

【ハジニキもよう見とる】

【熊じゃ!熊が出たぞ!】

【筋肉ハゲ!!】

 

「え、駒井先輩居るの? …………こんにちは、先輩。雑談枠です。…………好きにコメントしていってください」

 

 駒井ハジメ。RtoVのR……リアル側のストリーマーにして、RtoV最強のフィジカル持ちだ。196cm。体重110kg。体脂肪率一桁にして、ゴリゴリの筋肉を誇る巨漢である。

 

 本人曰く、ちょび髭がオシャレポイントらしい。

 

 筋トレはともかく、読書、ゲーム、観葉植物を育てる事等、ボディービルダーのような体に見合わぬインドア系の趣味の数々に、大の猫好きで3匹の猫に囲まれながら暮らしているという、可愛いもの好きのギャップが多くのリスナーの心を掴み、R側ストリーマー最大の登録者140万人を達成している人でもある。

 

「………………話を戻そう。趣味の話。アクアリウム…………あれ、何だっけ。それの陸版」

 

【結構軽めにスルーしてて草】

【らしいなあww】

【前ヌーちゃんがテンパって雑談どころじゃなくなってだけど、それに比較したらまあ】

【アクアリウムの陸? 寄せ植え?】

【多肉とかの寄せ植えのこと?】

駒井ハジメ【苔とか植えるテラリウムのことかな?】

【半分くらい水に浸かってる半陸アクアリウムか?】

 

「………………駒井先輩ありがとうございます。テラリウムだ。動物を入れないものを、作ってみたくって」

 

 裏山を走っている時、苔むした岩とか、古びた祠とか、そういうのを走りながら眺めるの、なんか神秘的で好きなんだよね。

 植えてからの成長具合もわかるし。

 

【テラリウムか】

【調べてみた。綺麗やなぁ】

【テラリウム作ると問題が起こる。電気代とカビ問題とハエ問題や】

【植物とか苔って言っても生き物相手やからなぁ】

【実際作ってみてからやな】

 

「…………あ、いい時間だ。それじゃあ、今日もありがとうね。また会おう」

 

【また会おう】

【また会おう!】

【また会おう】

【またな!】

【またねーノシ】

【また会おう】




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