五十嵐遥のVtuber活動録   作:バンバ

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 予約投稿し忘れそうになったやついるぅ!?

 俺です。バカス。


13話「RtoV体力テスト企画③(終)

 

 

「お疲れ様ー……っていうか、大丈夫? ルーちゃん、満身創痍じゃない?」

「何とか大丈夫……です……」

「ありゃ、素が出ちゃった」

 

 そんな安藤さんとルキアのやり取りを眺めつつ、ストレッチをする。

 股を割って、ペターッと着地し、上半身をつま先の方へグッと伸ばす。

 

「うわ凄っ。かなーり体柔らかいんだねー」

「モナもそうじゃないの」

「私も柔いとは思うけど、そこまでじゃないかなー」

「そう」

 

 最低限ストレッチを終えて、バックに入れてあるタッパーから試供品煎餅を取り出す。

 うん。やっぱり米の比率をもうちょっと増やしても良さそうか。後は、片栗粉を使って揚げ焼きみたいに……いや、ヘルシーな利点が軒並み消えるから良くないかな。

 

「……やだわールーちゃん。すーちゃんったらまたえげつない物食べてるわー」

「モナっちー。澄っちの野生児っぷりは今に始まった事じゃないの」

「あだ名? ありがとう」

「リアクションが想定とは違うなぁ……!」

 

 ルキアのツッコミは置いといて。

 まあ、野生児うんぬんは否定しきれないからね。ボクもあだ名を考えた方が良いのか、これは。

……いややめておこう。絶対変なあだ名つけそうだもの。

 

 澄っちもそうだけど、すーちゃん、か。

 状況が許すなら、感涙を流していたかもしれない。

 

「モナ、ルキア。君らに会えてよかった」

「大胆な告白!?」

「ルーちゃん、落ち着いて。いつものすーちゃんだよ!」

 

 ……あの、モナ。君の中でボクはどういう扱いなんだ。具体的に聞きたいんだけど。

 

 とりあえず、デュビア煎餅をぽりぽり食べる。海老煎餅みたいな味で悪くはないんだけどなぁ。

 

「す、澄っち。アタシもやっぱ、貰っても……」

「はい」

「ヒョア……ええぃ! いぃいただきます!」

 

 決死の覚悟を決めた顔で、煎餅を食べるルキア。

お、一瞬青い顔になったと思ったら、すぐに顔色が戻った。

 モゴモゴと食べて、咀嚼し、飲み込んで。

 

「……え、普通に美味しくない?」

「ルーちゃん、お前もかぁ……!」

「いや、言いたい事はわかるんだけど……え、これ何も言わずに出されたら普通に食べちゃうやつ……」

「しっかりしろールーちゃあぁあん!!?」

 

 よし、次はもうちょっと味を変えてみよう。

 そんなこんなやっている間に、スタッフさんから声がかかった。休憩終わりである。

 

④長座体前屈

 

「知ってた……知ってたんだよ……」

「ルッキャ……涙拭けよ」

「澄ちゃん体柔らかいなー」

「次点は身長でゴリ押したハジメちゃん、と」

 

 64cmでボクが1位だった。やったね。駒井先輩は案外体が固くて、57cm。

 

 ルキアは……本人の名誉の為に伏せておこう。十の位の数字が2だった、とだけ。

 

「イヅヅヅヴゥ!!」

「……55cm!」

「だあああぁア!! 悔しイ!」

 

 結構本気で膝裏とお腹を抑えながら吠える姐さんを尻目に、次の立ち幅跳びに向けてジャンプを繰り返しておく。

 

「……準備の仕方がガチすぎないー?」

「壊れたくないからね」

「まあ、そりゃそうだけども。にしたってめちゃくちゃ跳ねてない? ルーちゃん見てみな? すんごい顔してるよ」

 

 そうかな。そう思ってルキアを見れば、今日何度目か忘れてしまったけど「マジかこの人」みたいな目でボクを見ていた。

 そりゃあ、ボクとルキアでは体の大きさも違うんだから違うのは当たり前じゃないかな。

 

「や、流石に垂直ジャンプで4〜50センチ跳ねてるのはやばいと思うよ」

 

⑤立ち幅跳び

 

「どっ、せえぇぇい!」

「廻木ィ、そんな声張ってモ、あんま飛んでねえゾ……」

「えーと、188cm!」

「ゼツ、今度俺と一緒に筋トレしよう」

「身長よりは飛んでるからいいだろハジメェ!」

 

 乾坤一擲を感じさせる掛け声から繰り出されたそこそこな記録に、何とも言えない空気感。フォローになってないフォローを投げかける駒井先輩に食ってかかる廻木先輩。

 

「どりゃあ!」

「おお、飛んだ! 筋肉が飛んだ! ……222!」

「おおおおお!!」

「いやマジで良く飛ぶナァ……」

 

 ルキアが「魔王?」とか言ってるけど、何のことだろうか。

 それにしても、本当によく飛ぶ。というか跳ぶなぁ。

 でも、あれくらいならボクでも行けそうだ。

 

「よおし次! 藤原!」

「よし…………っいしょ!」

 

 腕を振って、膝を縮めて、反動を付けて、踏み切って、ジャンプ。勢いよく前へ。

 足をまっすぐ伸ばして、着地の直前に不恰好な『く』の字の体勢を目指す。

 そのまま綺麗に着地して、スッと立ち上がる。

 

「…………え、走ってないよね?」

「見てなかった?」

「こら、先輩にそんな言い方しない! すみませんレイサ先輩、うちの澄っちが……」

「い、いやいいんだけど……え、えぇ……に、244……いや飛び過ぎじゃない!?」

「よし」

 

 なんか、周りの視線が痛い気がするけど、気にしたら負けだ。

 

⑥シャトルラン

 

 ド……レ……ミ……ファ……ソ……ラ……シ……ド

 

ポーン……

 

 ド……シ……ラ……ソ……ファ……ミ……レ……ド

 

「はっ、へっはっ……もっ、っは、むりぃ……」

 

 パタンと前に倒れる形で、ルキアが力尽きた。47回。

 

「まっだ、だっらっしゃー!!」

 

 廻木先輩がど根性を発揮して粘るものの、そこから10回と伸びず、55回。

 

「怪ッ盗の底力、舐め、んなっはっ!」

「私はもう無理、かなっはっ、はぁっ……!」

 

 悩ましい声を上げながら、音のテンポについて来れずに遅れて歩き始めたレイサ先輩が、69回。

 ギリギリまで粘って、ルキアと同じように、けど結構な勢いで前に飛ぶように倒れ込んだ姐さんが72回。

 

「ハジメさん、まだ、結構余裕っぽいですー?」

「そういうモナさんも!」

 

 90回を過ぎても話す余裕がありそうな2人。ボクはボクで無言で続けていた。

 歌い出しても良いんだけど、こういう時のは真面目にやらないとね。いや、話している2人が不真面目とは思ってもないんだけど。

 

 こういう時こそ口を開くと何言い出すかボク自身もわからないし。

 

 

「……あー、これ、多分澄っち最後になる、かなぁ」

「え、ハジメちゃんじゃないか?」

「わかんねぇけどナ。藤原のやつが体力ヤベーとは聞いてたけど、そんなにカ?」

「いやー、3人ともバケモンでしょバケモン」

 

 

 100回を過ぎた。まだ行ける。

 徐々にペースを上げ、けどラインを踏む直前にちょっとだけ足を緩めて次の切り返しにスムーズに移れるように。

 切り替えの直後にモナを見る。喋る余裕はもう無さそうだ。というか目が怖い。カッ開いてガチの顔だ。

 駒井先輩は顔を顰めているけどまだ行けそう。ただ、筋肉が多い分、体重は脚によく響くんじゃないだろうか。

 

 120回を超えた。テンポが早い。けどまだ余裕がある。

 駒井先輩の足がもつれた。モナはギリギリの顔をしている。まあ、実際に出力される時は黄色い黒子姿なので顔はわからないんだけど。

 

 ボクは……うん、まだ行ける。あ、駒井先輩倒れた。

 

「ハジメー!? 大丈夫!?」

「もっ……はっ! はっ……む、無理……はぁ!」

 

 駒井先輩が122回をマークして、その直後にモナも足を緩めて、そのまま座り込んでしまった。ルキアが駆け寄っている。

 ……もうちょい行けるな。

 

「野生児野生児言ってたのが、本格的に否定できなくなってきたかもしれない」

「んっへっへっ、ルーちゃん、ふ、今、笑わせ、はぁ、なひでっ……!」

 

 そうやっている内に、限界が来た。あー、疲れた。流石に疲れた。

 140回。到達して、振り返って……歩いた。

 他の6人とスタッフさんたちから、強い拍手で迎えられた。

 

「藤原ァ! お前ヤバすぎるぞ藤原ァ!」

「澄っちマジ野生児! マジでRtoV最強の体力でしょ!?」

 

⑦鉄棒、⑧ハンドボール投げ、の予定が……?

 

「中止! 中止しましょ! これ以上は無理!」

 

 廻木先輩が訴える。冗談めかした様子でもなく、結構大真面目な顔をして、だ。

 スタッフさんたちも「確かになぁ」みたいな顔をしている。

 ボクはあれから息も整ったのでイケる趣旨を伝えていたら、ルキアからとうとう怯えたような顔をボクに向けている。

 ……いや、よく見たら姐さんもビビったような顔してるな。

 

「藤原ァ! その「ボクまだ行けます!」みたいな顔は流石にちょっと引くぞ藤原ァア!?」

「俺、流石に藤原さん程調子戻って無いです……」

「私もー……ていうか、足プルプルしててウケる」

「アタシは……余裕はあるけど、みんながやらないなら」

「まあ、スタッフさんたちからも『無理にやらなくてもいい』とは話あったしね?」

「私も、ちょっと無理だナ」

 

 1-6の民主的多数決により、続行は不可能と判断された為、ここで終了となった。

 ちょっとだけ、本当にちょっとだけしょぼんとしたけど。

 

⑨終わり

 

「それじゃ、これで終わりになります! RtoVの突発企画、また見てくれよな! ありがとうございました!」

 

 一例したり、手を振ったり、ポーズをとったり、各々好きに締めの行動をする中、ボクはとりあえず緩く手を振って、締めとした。

 

「……はーいカットー! オッケーでーす!」

「ヨォシ! お疲れ様でした!!」

「お疲れ様でしたー!」

「お疲れ様でした」

 

 そんなこんなで、無事に撮影を終えたボクたちは、シャワールームをささっと出て、安藤さんと合流して、車に乗せられた。

 

「普段の企画モノなら、この後打ち上げとかあるんだけど、流石に後日になったわねー」

「………えっ」

「遥ちゃーん、その「行きたかったなー」みたいな反応してるけどー、私たちのことも慮ってほしいなー?」

「私も、ちょっと、余裕、ないです」

「………………そっか」

 

 まあ仕方ない。今回は諦めよう。あ、そうだ。これは聞いておかないと、後で問題になるかもしれない。

 

「安藤さん」

「どうしたのかしら」

「…………今回の撮影の事、配信で触れても大丈夫、ですか?」

「あー…………ちょっとなら良いわよ。ネタバレは厳禁だけど、こんな感じのを撮ってきましたー、とか。動画として発表されてから、その後に裏話とかに触れるとかなら全然良いわ。あ、激しい運動とか、トレーニングが結構キツくて、みたいに誤魔化す分には全然いいわよ」

「………わかりました」

「おっ、ネタ探しかなー?」

「試供品の話、しても良いかなって」

「おっと私の尊厳破壊の話にもなりかねないなー!?」

 




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