「予約投稿したか15時投稿されるやろ!」
今のバンバ
「なんで投稿予定日が2027/2/22/15:00になってるんですか!?」
なので初投稿です。
さて、女が3人以上集まれば姦しいとはよく言うものの、流石に騒ぎすぎてしまったと反省中のボクたちです。
厳密にはボク以外の3人だけどね! ボクは周りの話を聞きながら最低限相打ちを打ったり、頷いたりしていただけだ。……止めなきゃ同罪か。
それはさておき。説明担当者さん……後に聞いたところカンダタさんの部下の1人だったらしい……からありがたーーーい話を聞きつつ、初配信の順番が決まった。
織原さんが一番手。二番手に小鷺さん。三番目にボク。
いや本当に、一番乗りじゃなくて良かった。むしろ織原さんはなんであんなノリノリで真っ先に手を挙げたんだろう。
言葉の節々に乗る色々としがらみが多くて大変そうな疲労感、あと、名指しで少々怒られてしまった。
『デッドハード田山さんから話は聞いていましたが、打ち合わせの際になりたい自分にコスプレして現れたとか……いえ、それは良いんです。日程とかアバター周りの調整とかもありますが、まだ何とかなる範囲だったので』
デッドハード田山さんは私のアバターの絵師、つまりはママのハンドルネームだ。
……何度聞いても厳つい名前だ。本人はすごいお淑やかな人なのに。
『ですが、そのような面し……んん゛っ、事前に決められていた内容の外から横紙破りをするのは、やめていただきたい。いや、やるならせめて安藤マネージャーを通してください』
『……すみませんでした……』
この折に小鷺さんと織原さんからまた凄い目で見られていたわけだけど、それはさておきだ。
内心で労わりながら聞き終えたボクたち3人は、安藤さんからの紹介で今日たまたま事務所にいるというRtoVの先輩たちに挨拶をしに行くことにした。
ここでボク自身の確認も兼ねて、RtoV……いや、今主流となっている動画サイト“Y-Tube”内の、Vtuber事情について振り返っておこうと思う。
まず、大戦国時代である。大規模なVtuberグループが存在しつつ、個人勢も含めて星の数ほどのVtuberが居てもおかしくない。最大規模で300万人を超える登録者数を叩き出しているVtuberも、珍しくなくなってきている。
昔ほどVtuberだからアングラ寄り、みたいな事を言われる風潮も無くなりつつあるのは、間違いなく先人たちの尽力のお蔭だろう。あたまがあがらない。
そんな、先人たちが切り開いてくれた……開拓済みの世界での、視聴者という名のリソースの奪い合い、血を血で洗う、水面下でも、表面上でも、レッドオーシャン。
……みたいな強めな言葉で説明を受けつつも、その後あんなこと言われちゃったんだよな。
『RtoVはその、R側……顔出しをしているストリーマーも擁する形になっている為、Vtuberグループの中でも一際変なグループと言いますか……まあ、その辺が“緩い”Vtuberグループだと思っておいてください。顔出しはしなくとも、それに近い形のコラボも珍しくありませんしね』
『個々人の数字で見たら大手と大差ないんですけど、物販とかイベントにそこまで精力的じゃないんですよね、RtoV』
まあ、うん。ここまで聞いて思った事がいくつかあった。
もしかして、ボクたちはそれを解決する為に探されていたってことなのだろうか。
ぶっちゃけた話、ボクは顔出しそのものは怖いけど、嫌ではない。だけど、顔出しをするには……言葉を借りるなら、血で血を洗う争いに参加するには今のこの業界的には、特に初動が難しい。……のだと思う。
なら、その初動を確保しやすいVtuberというのは、イラストやグッズ展開もしやすい。身バレさえ起きなければ、色々と都合もいい。
RtoVという色々と混沌とした箱で出せる、今後の展望を考えての一手、みたいな。
考えすぎか。
「う、うううう……」
「小鷺さん大丈夫ですよー。いざとなったら遥ちゃんに場を引っ掻き回してもらって……」
「ボクのことなんだと思ってる?」
「え、面白行動モデル系ウーマン」
「ありがとう」
こら小鷺さん。『あ、そこ素直に受け取るんだ』みたいな顔をしないで。顔に出てないだけでこんなに距離感の近い人との会話に慣れてないから、ボク自身も変なこと言ってるなーって自覚はあるんだよ。
そうして歩いていると、ロビーのソファに座りながらこちらに声をかけてくる男性が1人。
いやこの声は……それに、その奇抜な髪色……先から白髪になっていくグラデーションカラーの髪。
……あの髪色、本当にやってたんだ……。
「お、見ない顔じゃんねー。新人さん? LANEやってる?」
「…………やってます。五十嵐遥です。よろしく、お願いします」
「あ、は、はははは、初めまして! 小鷺陽糸と申します! よろしくお願いします!」
「小鷺さん早いって。あ、織原飛鳥と言います。よろしくお願いしますね、廻木先輩」
「おっ、オレのこと知ってんねー? んじゃ、改めまして。廻木ゼツこと、鈴谷一平です。よろしくね」
廻木ゼツ。RtoVのVtuber部門一期生にして、人気トップの1人であり、チャンネルの登録者数は驚異の160万人。
対戦系のゲームにおいては無類の強さを誇る、胡散臭カッコイイ系の、本業の退魔師が悲しいくらいに仕事にならない為副業で配信をやっている……という設定のVtuber。
そしてボクの推しの1人である。あの回りに回るマシンガントークに滑り込んでくるような発言の数々は、決して嫌なものではなかった。
「あ、そうだ。ちょっと無茶振りいいかな?」
「無茶振り、ですか?」
「ああ、まあ、配信ネタ作りの一環だわ。ちゃんとうちのマネさん経由で上には許可もらってるから、ま、無理強いはしないよ」
「…………無茶振り……」
無茶振り。一発芸……ボクなら、まあVtuberにスカウトされたモノからして、歌か。
「…………」
「お、手を挙げるのが早かった。じゃあまず、自己紹介を改めてどうぞ!」
自己紹介を改めて?
……ああ、確かに。此処からは、五十嵐遥というボク個人ではなく、そのアバター……“藤原澄”として歌うべきだろう。
というか気のせいじゃなければ、ゼツさん、ボクたちのスタートダッシュをうまく決める為の役割を引き受けてくれたニオイもする。
「…………RtoV:Aの青色担当。藤原澄。……歌います、アカペラで」
「え、あ、ここで!? ストップストップ! スタジオに行こう、スタジオ! 実はレッスンスタジオがたまたま空いてたから借りさせてもらってるんだ!」
「ん…………わかりました……あ、ごめん。小鷺さん、織原さん、どうしよう」
「あー、そうしたら、私たちも歌でいいですか?」
「わ、私も歌で大丈夫です!」
そのまま、少しだけ肌寒さの残るスタジオに足を運んだボクたち、というかボクは、アカペラで歌う条件で思いっきり歌うことにした。
とりあえず、本当にとりあえず。RtoV:Aの全員で歌う事が確約されていた歌は……まだお出ししちゃいけない事情で歌えないので……ボクの推しのアーティストの歌を1つ。
歌詞の受け取り方で意味が変わるかもしれないけど、ボクはこう受け取った曲。
最愛のペットとのお別れを、詩的な表現で綴った、愛の歌。
今のボクの出せる全霊で歌う。ただ、個人的に刺さる、心地よく感じ取れる“気持ちのいい音”の出し方で。
別に歌い方とか、あまり調べようとか思っていなかった独学だったし、こういう歌い方しか知らないとも言うんだけど。
「────ふぅ」
5分近くの歌唱を終えて、一礼。
ややあって、4人分の拍手が聞こえてきた。
安藤さん、小鷺さん、織原さん、鈴谷さんだ。
「やーやーブラボー!! マジか!! すげえじゃん!! マジで歌上手すぎて言葉出なかったわ!! え、何か歌手でもやってた!?」
「…………ありがとうございます。趣味で歌ってるくらいです」
目をキラキラと輝かせて少年のような眼差しでこちらを見る鈴谷さん。
一方で何か、魂が抜けたような顔をしている小鷺さんと、ニマニマと楽しそうな顔をしている織原さん。
「聞いてはいたけど、スカウトも納得ね」
「……これだけは」
「…………よ、容姿端麗で歌も上手い……五十嵐遥、一体あなたは何を持ちえない……!?」
小鷺さんが何か、復活した直後にネタに走り出した。たぶん。元ネタあんまり知らないけど。
……何を、か。
んー……。
「…………友達?」
「うっ」
「はいストップ。陽糸さんも自爆しないで。ていうか……遥ちゃん酷くなーい? 私たちもう遥ちゃんのこと友達だと思ってたけどー」
「……」
フレクサトーンの音が脳裏を過ぎる。
マジで? 織原さんとボクが? 早くない? もっとこう……少しずつ距離感を近寄りすぎず、離れすぎず、学校で消しゴムとかシャー芯貸してとか、天気の話題から入ったりしてジワジワ詰めていくものじゃないの? そこからオシャレの話とか、ご飯を一緒に食べに行ったり、何が好きかとか……いやまあ、話せるような友達の1人も今までいなかったんだけど。
……そうか、こんなに、アッサリ。
「わ、私もですよ! ちょっと歳は離れてますけど……五十嵐さんは、私の友達ですとも!」
「……2人とも、ありがとう」
「んへへ、報酬は名前呼びでいいともー」
再びフレクサトーンの音が脳裏を過ぎる。
な、名前呼びって、そこまで呼び合うとかもはや親友以上恋人未満とかそのレベルでは!? それを複数人同時に!? もはやそれはエッチなことをするのと同意くらいの領域なのでは!?
失礼、錯乱してました。
いや、偏見は止めよう。胸が大きいからってそんな変な方向に結びつけるのはよくない。思春期の男のじゃないんだぞボクは。
「な、え、あ……飛鳥……さん」
「陽糸さんの方が年上でしょー? 呼び捨てでいいのに」
「恐れ多い恐れ多い!」
「…………」
「遥ちゃんは、呼んでくれないのー?」
それに、向こうから振ってきてくれたんだ。乗っかるしかない、この流れに!
「飛鳥、これでいい?」
「……い、イイヨ」
「陽糸、どうかな」
「…………ハ、ハイ」
あの、結構頑張ったんです。友達ならやるだろうなって、手を取って目を見て名前を呼ぶってやっただけなんです。呼び捨てで。
小鷺さんはギリギリ理解しよう。恥ずかしがり屋というか、私と同じようなコミュ障のニオイを感じている。私の方が酷そうだけど。
問題なのは、なんで織原さんが顔を真っ赤にしてるんですか??? なんでよりエッチな感じになってるんですか???
小鷺さんも安藤さんも廻木さんも何か言ってよ!
「ハタから見てたらすごいわね……」
「……てぇてぇ……」
ダメみたいだ。
……このあと、復活した2人の、何処かぎこちない自己紹介と各々の歌をその場の全員で聞いてその日は解散した。
夜。
「……コンソメ、やっぱボク人付き合い向いてないのかなあ」
んなもん知らんと言いたげに、コンソメは照明の光を浴びて体温調整をしていた。
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