五十嵐遥のVtuber活動録   作:バンバ

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 評価バーが色付きました。ありがとうございます!

 実は昨日予約投稿やろうとして一瞬表に出してしまい、そこから即消したので実質初投稿です。


第5話「この選曲で青色を名乗る度胸」

 

 配信を開始する。軽快なBGMと、ボクのアバター、藤原澄がぼんやりと何処かを眺めている待機画面が映る。

 

 改めて、頂いた立ち絵を見る。

 青く長い髪。鋭い青の瞳。

 白い肌。青い花を付けた白い帽子。白をベースにしたロングスーツ。指先を隠す手袋。

 襟と帽子には金の装飾がワンポイントのように静かに光っている。

 なんなら革靴も白い。ズボンとの間から覗く、くるぶしの隙間に、デッドハード田山先生の性癖を見た、気がする。

 

 いやぁ、我ながらコスプレ、もとい白スーツで挨拶に行ったのは、やはり変だったかもしれない。

 ……手作り感のある、帽子を手に取る。

 青い花を頂く、白いキャップ帽。

 ボクはそれを、しっかりと被った。

 

「よし」

 

【わくわく】

【全裸待機】

【待機】

 

 音源の切り替えの準備もよし。自己紹介とかは一度すっ飛ばして、やることを明確に。

 本当に、モナにもルキアには頭が上がらない。モナはこの前の初めての顔合わせの時、配信する上でのアレコレをボクに教えてくれた。

 

 Remix版の音源をボクに提供してくれたのは、他でも無いルキアだ。

 

 友達が、綺麗にスタートしたんだ。ボクに出来なくてどうする。

 これがボクにできる、ボクなりのお返しだ。

 

「初めまして、キミら」

 

 息を吐いて、吸う。

 声は出る。無理に出す感じではない。思いっきり歌える、最高のコンディション。

 なら、あとは突き進むだけ。

 

「自己紹介の前に、ひとつ。どうかボクの歌を聴いていってくれ。話すのは、それからだ」

 

 事前の準備とはやはり大切だったなとは思う。防音材で囲いを二重に作っておかなければ、きっと母さんに怒られていた可能性もある。そこそこに抑えてくれるのはやっぱり偉大だよ。

 

【このイントロは!?】

【うっそだろ?wwww】

【そら避けるわ同期もwww】

 

「────色違いでごめぇえええん!!!」

 

【うおおおおおお!!!】

【草ああある!!!!】

【開幕とんでもねえ選曲だあああああああ!!】

 

 カッコいい曲とは何か。ボクはそれに対して、一つだけ答えを持っている。

 腹の底から、全力で歌える曲のことだ。歌詞は例え悲しくとも。

 突き進むようなエレキギターが掻き鳴らされる。その熱をそのまま飲み込むように、ボクもただ、全力で。

 声を張る事と、声を整える事は、矛盾しない。声量を上げれば音程を整えやすくなり、整えられた音は次の歌詞への繋ぎをなめらかにする。

 最高に楽しい。……イメージカラーが青いのに、紅い曲を歌うのは如何なものかと思うけど。

 そこはまあ、ルキアへの感謝も含めてって事で。

 

【うわうま】

【これは歌ガチすぎる】

【一生耳に残るな】

【てかアレンジBGMもバカカッコよくていいな】

【バイオリンとかたぶんフルートまでぶっ込んでるのやりたい放題のアレンジって感じで好きだ】

【でも低音も足りてる!】

【てかカラー的にいいのかこれww】

【強い】

【そら2人も初手歌避けるわww】

 

「────ふぅ」

 

 一息ついて、視線を手元のメモ帳に向ける。

 初配信はこれで乗り切る、というか、受け入れてもらえる下地を作らないとよくない、とは安藤さんにも織原さんにも釘を刺された。

 

『友達同士の会話で、『頭の出来が違うらしい』は褒め言葉として機能しないからね!?』

『はいソコ整った顔を僅かに変えるようにして『マジか』みたいな顔をしなーい! 美人ならどんな顔も様になるの腹立つなぁコンニャロウ!』

『いや安藤さんも美人…………いえ……えーとっ……なんでもありません。ごめん。……陽糸さん。……ボクと比べて、圧倒的に…………音楽に対する造詣が深いあなたの…………音楽への思いを無碍にしたくなくて、すぐに返事をしてしまった。ごめん』

『い、いえ、大丈夫です……口が悪いってそういう意味だったんですね……』

 

 冷静に考えたら「キミは頭の出来が違うらしい。気にしないで」はシンプル暴言だ。もっと言葉を選べよ、ボク。「本当に凄い、尊敬する。もっと聞きたい」くらいの言葉を選べただろって。

 

 ……いや本当によくアレンジ楽曲提供してくれたな……。

 

 それはそれとして、ここまで歌い上げるのなら家でやるとか言わずに、スタジオをお借りしてやるべきだったかもしれない。

 

「初めまして、RtoV:Aの青色担当、問題児とか野生児とか有毒ヤマアラシとか散々言われてた、藤原澄(ふじわらすみ)です。視線が下向いてるのはカンペガン見だからね。許してほしい……ルキアが赤だから。ボクは青」

 

【カンペガン見は草】

廻木ゼツ【うおおおおおおお藤原あぁぁ!!!】

【マジでかっこいいわ】

【廻木限界化してて草】

【色とかええんかwww】

【 廻木ゼツ 】

【草】

【ちょっと根に待ってない?www】

伊鶴城ルキア【だから言ったでしょ。勝てないって】

【同期もようみとる】

【これは納得せざるを得ない……】

 

「一応カンペ、ガン見の理由もとい言い訳だけさせてもらうね。結論を先に言うと炎上対策です」

 

【草】

【草】

【配信業的にそれはどうなんやw】

【草】

【そんなに口悪いんかw】

 

「ボクは、考えてからじゃないと喋れないタチでね。率直に思ったことを言ったりすると、後から思い返しても『もっとこう、あっただろ』ってなるレベルで言葉選びが終わってる。そして、その考える部分が致命的に長い。なんでVtuberになろうと思ったんだろうね。この辺は後でルキアとモナの配信の時にでも聞いてみてね。ボクが話すと圧縮言語とか挟まるから」

 

【草】

【草】

伊鶴城ルキア【草も枯れるけどね???】

モナ・トナト【本当にね。悪気はないのがわかるから尚更】

【そこまで言われるレベルかよwww】

【しれっと自分の存在に疑問を呈するなwww】

 

「とりあえずスライドを表示して……趣味兼好きなものは、歌うことと、散歩と生き物観察。あと食べること。たぶんボクがRtoV:Aで一番大食いだと思う。好き嫌いはよっぽどじゃないと無いかな」

 

【そら(あんだけ歌えれば好きなのは)そうよ】

【この見た目でwww大食いwww】

【失礼承知で質問だけど、太ってる?】

【一番食べた時はどのくらい食べたの?】

 

「困ったな。カンペにない質問が来た。少し間を置くね………………170センチ後半ちょいに60キロって太ってるのかな。わからない。胸は真っ平らだし」

 

【デッッッ!!?】

【サラッと言うな】

【待てマジでデカくない???】

【すごくデカい】

【しれっとまな板確定してて草】

伊鶴城ルキア【澄ちゃんちょっとそれ以上はダメかなぁ!】

 

「あ、流石に個人情報が過ぎたか。ごめんルキア。…………えー、一番食べた時……一食分なら、たぶん2キロかな。ボクが食べてたキング牛丼を見て父さんが一緒になって頼んじゃって…………だいぶ残したんだ。それもボクが食べて。細かい量は分からないけど、だいたいそのくらいだったと思う」

 

【情報量が多い多い】

【そこ普通逆じゃねえかなあ】

【準モデル体型じゃねーか。それで大食い属性とか一昔前のラノベやないんやぞ】

【そして歌もつよつよ、藤原澄……恐ろしい女!】

 

「カンペに戻るよ。時間も押してるしね。今後の活動方針としては、歌枠配信や、作業配信しながらの雑談かな。たまにゲームもやるかもくらい。基本的にコラボはあんまりしないかも。ボクの口は本当に突拍子もなくポロッと変なこと言うからね」

 

【やべー、この女、おもろすぎる】

【目付き鋭いクール系かと思えばミステリアスど天然狂人枠か()】

【口悪いほど口悪いか……?】

RtoV:Aマネージャー【初顔合わせの時も初っ端から色々ぶっ込んでましたよ、ええ】

【マネージャーもよう見とる】

【草】

 

 説明に困るんだよね、ボクのこれ。ナチュラルに選んだ言葉がよりにもよってそれかレベルだし、そこに加えて言葉足らずだし、余計な言葉が足されてる関係で本来の言いたかった事が雰囲気しか見えないくらい変換されてるんだよねえ。

 

 カンペを置いた。ここからは短いけど、ボク個人の時間だ。

 

「………………友達今までいなかったから……この表現合ってるか不安だけど…………リラックスしてる時…………会話技能に常時ファンブルが付くリスクがあると思えばいいよ」

 

 TRPGとかやった事ないけど、興味はある。絶対面白いじゃんアレ。

 

【うっ】

【友達……ナニソレ……】

【お金で買えないもの。その代表例】

【なんだ俺らか】

【涙拭けよ】

【ウッッッ】

【流れ弾が四方八方に行ってて草】

【その表現はどうなのwwww】

【ファンブル付きまとうのはNG】

【災いを呼ぶ口過ぎるwwww】

【草】

 

「よし。とりあえず、初配信はこんなもんで。……そういえば挨拶考えてなかった。まあ、とりあえず、初配信来てくれてありがとう。また会おう」

 

【乙!】

【また会おう!】

【乙カレー!】

伊鶴城ルキア【乙ぬるぽ!】

【また会おう!】

【乙ガッ!】




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