五十嵐遥のVtuber活動録   作:バンバ

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 そろそろちゃんと残酷な描写(人による)が出てきそうなので初投稿です。

 ……初投稿です、の、元ネタってなんなんだろうか。


第9話「なんて???」

 

 アルコールに浸った頭が、変に冷静で、変にポカポカしてて、気持ちがいい。

 

「んへへ……」

 

 嬉しかった。楽しかった。陽糸さんと、遥ちゃんとの女子会……とは名ばかりの、ぶっちゃけトーク。陽糸さんも溜め込んでたんだなぁ。

 

 でも、何となく気持ちはわかる。自分を見てほしい。その欲求は、私も抱えていたものだから。

 

 ……それにしても、遥ちゃんが酔ったらあんなに態度が悪くなるとは。映画のヤンキーだってもうちょっと穏便なんじゃないかな。ちょっと身が竦んじゃった。

 

「………んへへー」

 

 でも、嬉しかったんだ。

 

『……私は、飛鳥さんの家に一緒に居ても、構いません。迷惑を掛ける事になるかもしれません。それでも、良ければ!』

『何かに成ろうとしなくても、キミらはキミらだ。キミはキミしか居ない。そうだろ友達』

 

 普通じゃないかもしれない。それでも、対等な関係で、友達と呼んでくれる人がいる。

 それが、凄く、嬉しくてたまらない!

 ……寝付けるかなぁ。

 

 

 

「…………」

 

 死にたくなっていた。おいは恥ずかしか! なんて事を。

 

 人様にお見せできるような感情じゃない。お酒の魔力、人の口を軽くする、悪魔みたいな飲み物。

 

 誰かに認められたいという感情は、それだけ見れば健常なもの。

 だけど、私のそれは行き過ぎている自覚があった。人に求め過ぎている。

 厄介なメンヘラのそれだ。

 

 確かに、私の音楽は認めてもらえた。けれど、私は? その疑問を抱いた時、Vtuberを目指したものの、果たしてそれは私なのだろうかと、ずっと疑問が渦巻いていた。

 

 それをぶちまけた。

 

 それを、2コ下と、5コ下の女の子に!

 

 飛鳥ちゃんは、まだ良い。遥ちゃんには、あんな情けない姿、見せるわけには……いや普段から見られてる気がするけど、そうではなく。

 

「でも、友達って、呼んでくれたから」

 

『……だから、なんて言うか。嬉しかった。あんまり私個人を気にしない、馴れ馴れしくて、余所余所しくて、分かりづらくて、楽しくて、私を私として見てくれてるみたいで……そんな友達となるべくずっと、一緒に居たくて』

 

『2人がボクのことどう思おうが知らないけど。ボクはキミらのこと友達だと思ってるよ。思ってなかったらこんな話最後まで付き合うか。あー、好きな人が自己否定してる姿ってこんなに嫌なもんだと思わなかった! ぶっ殺すぞホント!』

 

「ふふ」

 

 いや、それにしても。

 飛鳥ちゃんも、遥ちゃんも、個性強いなぁ。

 自前で持ってきた寝袋に包まりながら、そんな事を思った。

 

 

 

 

 

 あ た ま い た い 。

 

 二日酔いって、何でこんなにキツいんだろうね。吐きそう。

 

 そしてわかってても二度、三度と繰り返すから、やはりお酒というものは特有の魔力があると思う。

 

 頭の奥底から響いてくる頭痛を我慢しながら頭を上げて、テーブルで突っ伏したまま寝ていたらしいことを把握した。

 

 ブランケットがかけられていて、目の前にはよく見たら何かメモ帳が立ててある。

 

『ごめん! 起こそうにも起きないし持ち上げるのも厳しそうだったから、ブランケットだけ掛けておくね!』

 

 ……いやまあ、体格差的にも厳しいものがあるよね。

 

「お゛お゛お゛ぉ゛……」

 

 テーブルの上に置いていた僕のスマホは、6時10分を表示していた。

 

 珍しく寝坊した形だ。だけど今日は流石に無理。土地勘無い場所を二日酔いで走るなんて死ぬより酷い目に遭う。

 

 ……困ったな。ボク、部屋の間取り把握してないから、2人がどの部屋に居るか全然わかってないぞ。トイレくらいしか分かってない。

 

 よろよろと立ち上がって、トイレに行って、また座る。その際に勝手に冷蔵庫を開けさせてもらったけど、ボクたちが昨日買ったものを取っただけなので、大丈夫だと、思いたい。

 幸い、昨日広げて食べきれなかったお菓子も冷蔵庫に入れられてた。スナック菓子とかもまとめて。

 

 ……人ん家の冷蔵庫を勝手に漁るのはダメだろうって? そうだね……。

 

 キンキンに冷えたお水をチビチビと飲みながら、おにぎりを食べる。ツナマヨと鮭、王道だよ王道。

 正直何もお腹に入れたくないけど、入れないと動くのも儘ならない。

 

「一緒に住む、かぁ」

 

 ぶっちゃけ、ボクは問題ない。語弊はあるけど。

 一緒に住むにあたって問題が発生するんだ。

 

 というかコンソメのことだ。

 家族、ペットを飼っている以上、極端に大型ではないとしても、臭い問題や、ボクがエサとして増やしているデュビアの問題がある。

 

 ゲルフードの方が体にもいいんだけど、食いつきが良くなくて。そうやって育ててデュビアを増やしている間に、数百匹ものデュビアが飼育ケースの中をひしめき合っている。

 

 いやまあ、配信でやっても良いんだけど。解決策。

 ただ、2人を巻き込んだら面白そうだけど、確実に嫌われるよなあとは思う。

 

 いきなり何も言わずにデュビア──ゴキブリを食べさせてくる人がいたら、ボクはその人とは友達になりたくない、と思う。

 

 その辺含めて、2人が起きたら相談しよう。

 

 

 

 

「んな! 起きてたの!?」

「おはよう。死にそう」

「そりゃあんなに飲んだらそうなるよ……どこまで覚えてる?」

「面倒臭い絡み方してたところから全部」

「あー、あの言葉嘘じゃなかったんだ」 

「………………友達に、嘘をつく必要性が?」

 

 一瞬フリーズして言葉を選んだ。え、嘘って?

 何か拙いことでも言ってしまっただろうか。

 

「んへへ、別にー? ただ口説かれただけですよー」

「は? 織原さんを?」

「あ、たぶん無自覚だな? ひとたらし? あと、いい加減ちゃんと名前呼んでよー。小鷺さんも呼んでくれてるのに」

「ありえない。なら友達が居るはず」

 

 名前呼びの言葉を務めて無視して、頭を回す。

 くどく、功徳? 文脈が違う。くどく、句読点? んなわけあるか。くどく、口説く……口説くかぁ。

 どれだ? どれがその判定になった?

 ただ、本心からの言葉をぶつけただけの筈なのに。

 

「まっ、いいや。てか、やっぱ顔色悪いね。白湯でも飲む?」

「飲む。冷まさなくていい」

「わかったー」

 

 まあいいや。今考えてもどうしようもないし。

 てか、そんなに顔色悪いのか。やっぱり飲み過ぎた。

 そんなこんなで沸くまでの間、改めて話すことにした。

 

「一緒に住むのは、いくつか問題がある」

「問題?」

「コンソメ」

「…………スープ? …………あっ、あの子! メチャクチャ鮮やかなオレンジ色の!」

「そう。生き物だから、臭い問題がどうしても。あと、エサ」

「エサ? 何あげてるの?」

「デュビア。海外のゴキブリ。増やしてるんだけど」

「ゴキブリを増やして!?」

「足は速くないよ、臭いとかも少ない。大きいダンゴムシみたいな」

「…………写真とかある?」

 

 半年ほど前に、手の上に乗せたオスメスのデュビアの成長過程を撮っていたのでフォルダに残っていた。

 一瞬躊躇ったように顔を背けて、横目でちらっと見てから、やはり顔を背けてしまった。

 

「……ごめん無理かも」

「知ってた。あと、絶食させて食べると美味しい」

「食べ……え、食べ!? ハイ!?」

「だから、少し待ってほしい。まだ慣れきってないから」

「…………待って、『まだ慣れきってない』の前か後ろ、何か飛ばしたでしょ」

 

 やっちまった。織原さんが知ってる前提で口を開いてしまった。気を付けないと。

 

「………………市販のエサも食べてくれるんだけど………………生きてるエサと比べると食い出が悪い。慣れさせるまで待ってほしい」

「なるほどね。オッケー、って言いたいんだけど……んー」

 

 やや悩んでいる様子の織原さん。胸の前で腕を組んで考え込んでいるせいで、胸が腕に押されて形を変えていた。

 ……薄着とはいえ、分かるもんなんだな。

 

「その、ゴキブリの方はどうするつもりなの? 増やしてるんでしょ? 外来種だから逃すのも……」

「食べようかなって」

「…………」

「配信のネタになる。美味しい」

「野生児かな???」

「知ってたんじゃないの?」

 

 うぐっ、なんて呻き声の後に、本気で頭痛そうになってしまった。二日酔いかな?

 あと、別に外来種でなくても逃すとダメなんだけどね。国内生外来種が混入するのは本当に怖い。一世代だけの流入が、バタフライエフェクトでとんでもない環境問題に繋がりかねない。

 

「確認なんだけどね、遥ちゃん」

「何」

「イヤイヤじゃないんだよね? うちに住むの」

「だったらこんな風に考えてない」

「……よし、後で3人まとまっての初コラボ配信、しよっか!」

「なんで?」




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