「ジェンティルさんがデビュー戦で圧勝…?」
私はトレセン新聞を見ながら、これから相手にするウマ娘を見る。そこには大きく『ジェンティルドンナ!まさかまさかのデビュー戦で圧勝!ティアラ路線を踏み荒らすのか!?』と。
「あはは…さすがにこれは言い過ぎじゃないかな?ね?シーナ。」
「わ、わかっていますトレーナーさん。やっぱりこれはまぐれですよね。わかっています…わかってますから。」
少し前に考えてたことが頭を過ぎる。
「(私は…勝てない。勝てるはずがない。トリプルティアラなんて…私が夢にしてはいけない夢だったのかもしれない。)」
悪いことばかり考える。気にしないようにしても、そのことしか頭に思いつかない。
「コラコラ、ちょっとは落ち着きなさいって。」
「えっ?」
トレーナーさんは私の肩に手を置いて落ち着くように言ってくれる。
「ヴィルシーナ。落ち着いて?大丈夫だから。アナタなら出来る。だから、私を信じて。」
「わ、わかりました…。トレーナーさんを…信じます。」
私は深呼吸をして、トレーナーさんの目を見る。そこには私を勝たせるという意思が見えた。
『北風トレーナー。理事長が呼んでおりますので理事長室までお越しください。』
どうやら、トレーナーさんは理事長さんに呼び出しを受けたようだ。
「んー?なんだろうね?ちょっと行ってくるから帰ってくるまでに落ち着いてるはずだね?」
「そ、そうですね。」
「それじゃ、行ってくるね〜。」
そう言って、手を振って出ていくトレーナーさん。
「私ってそんなわかりやすいんですかねぇ…。シュヴァルにもトレーナーさんにもバレてるし…。隠さないとなぁ…。」
私は独り言を言って天井を見る。私は何度この天井を見た事か…。
「ヴィルシーナさん。失礼するわ。」
ドアが開いたと思えば、そこにはジェンティルさん。前にあった時よりオーラが増しているような気がする。
「あら?トレセン新聞じゃない。ほほほ…私のことを書いてありますのね。ふーん…『ジェンティルドンナ、デビュー戦で圧勝!』ね。これからは本当の強者のレースを見せてあげますわよ。どうぞ、特等席でご覧になって?ヴィルシーナさん。」
「なっ!いえ!私は貴女に勝つんだから!私こそが強者ってことを貴女に教えてあげますから!」
「あらあら…お可愛いこと。ヴィルシーナさんが私に勝てるのを楽しみにしておきますわね?」
啖呵を切ったのは良いものだが、さっきの言葉に後悔し始める。なぜなら、私のデビュー戦も近いのにジェンティルさんと同じように圧勝出来るか自信が無いからだ。
ジェンティルさんが居ることを思い出して、振り返るがそこにはもうジェンティルさんの姿はなかった。
「ああ…もう行ってしまってたんですね。最近考えすぎなのかしら…。」
また独り言で天井を見る。いつも見る天井。私は悩みを消すように一人でトレーニングを始めた。
「あっ!お姉ちゃん!」
後ろから可愛らしい声が聞こえた。振り返れば、思った通りヴィブロスだ。
「あら、ヴィブロスもトレーニングしに来てたの?」
「トレっちが新しいトレーニングを思いついたってことでやってるの。それで、お姉ちゃんのトレっちは?」
「さっき放送で呼ばれてたわよ?知らないの?」
確かに少し前に放送で呼ばれてた。ここにも放送機はあるだろう。どうして知らない?
「あ〜…もしかしたらトレっちと話しすぎて聞こえなかったのかもしれない!」
ムフーとするヴィブロス。私は「そこでムフーってする意味ないわよ?」と頭を撫でる。相変わらず、可愛い末っ子だ。
「じゃあ、お姉ちゃんは一人でトレーニングするの?」
「そうね。あの人には勝たないと。」
「お姉ちゃんってジェンティルさんのことばっかり言ってるよね。」
「そう…かしら?」
「そうだよ!お姉ちゃんはジェンティルさんのこと好きなんだなぁって思ってるよ!私は!」
「やめてよ…私はあの人なんて…。」
「隠さなくてもいいよー!あっ!トレっちが呼んでるからそろそろ行くね!頑張ってお姉ちゃん! 」
「え、ええ。」
私があの人のことなんて…。有り得ない!有り得て欲しくない!あくまでライバルとして!好きなはずがない!あの人が好きなわけない!どうしてヴィブロスはそんなことばかり言うの!私のことを考えてるわけ!っていけない。私は何、取り乱しているのだろう。大丈夫。ヴィブロスは悪くない。私の精神が弱いのよ。それだけ。ヴィブロスに当たってないわ。
「ここに居たのシーナ。って大丈夫?顔が白いわ!」
「いえ、大丈夫です。」
大丈夫じゃない。でも、デビュー戦は近い。ここで休む訳にはいかない。だから、ここは嘘をつく。また信頼してくれている人を裏切る。
「大丈夫ですトレーナーさん。デビュー戦も近いので…。」
「そ、そう?じゃあ、トレーニングを言うね?」
『さぁ!1番人気ヴィルシーナ。他には引けを取らない力がありそうですね。』
ついにデビュー戦。ジェンティルさんにみたいに圧勝しないと、あの人に笑われてしまう。
「お姉ちゃーん!頑張って〜!」
ヴィブロスの声がするほうを見れば、トレーナーさんにヴィブロス、シュヴァルが居る。私は手を振って返事をする。
ここで勝てれば…問題なくジェンティルさんと戦えるはず…。いや待って…ここで勝ててもジェンティルさん相手に勝てるの?分からない…分からない。考えたくもない。今は考えないようにしよう。さぁ、出走だ。
『各ウマ娘ゲートイン完了。出走の準備が整いました。』
絶対に負けられない!負けたくない。
瞬きをし、目を開けた瞬間にゲートが開く。私は足に力を込めて前へ出る。
『おーっと!ヴィルシーナ!強気のスタート!1番人気の力を見せてくれるのか!』
トレーナーさんが見てる。あの人だって絶対に見てる。本当にあの人に宣戦布告するために負けられない!
『ヴィルシーナ!ここで果敢に攻め上がる!先頭は焦りつつあります!ジェンティルドンナの時のようにここで捲れるのか!?』
ここでジェンティルさんと比べるなと言いたかったが、私は今このレースに集中しないと。スタンドの前に差し掛かった瞬間、私はあの人の目を見てしまった。その目は「貴女の力はそんなものでしたのね。」と言っているような蔑んで残念そうな目。ふざけるな!お前は見てるだけだろ!走ってるのは私だぞ!お前に勝つのは私だ!
「はぁぁぁぁぁぁ!」
『ヴィルシーナ!2番手の娘は追いつけない!ヴィルシーナ!今1着でゴール板を通り抜けました!強いとしか言えないレースです。』
「はぁ…はぁ…ふぅー。勝ちました。あとは、あの人を倒すだけ。」
私は、スタンドに立って笑みを浮かべているジェンティルドンナを睨みつける。
「かかってらっしゃい。わたくしが貴女を潰して差し上げますわ。」
5ヶ月ぶりの更新ありがとうございます。
綾凪九尾でございます。
自分でも合ってない小説を書いております。何気に重い小説です。言ってしまえば、ヴィルシーナがジェンティルドンナをライバル以上な感情で見てしまっているのがこの小説。
これから始まるティアラ路線。
どうなっていくのか私にも分かりません。
ですが、末永くお読みいただけたら光栄です。
では、気長にお待ちください