最狂の呪詛師   作:ボタン

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最狂

呪術界において、一番強い人物は?

 

 と聞かれたら、全ての呪術師、呪詛師、が口を揃えてこう言う、『五条悟』であると。

 

 呪術界において、最悪の呪詛師は?

 

 と聞かれたら、同じように皆んな口を揃えて、『夏油傑』と答える。

 

 ーーなら、呪術界において、一番()()()()()人間は?

 

 そう聞いた時、全ての呪術師、呪詛師が黙ってしまった。

 

 何故?

 

 『最強』の名を欲しいままにしている五条悟が、唯一

 

「勝てるっちゃ勝てるけど、二度と戦いたく無い」

 

 と言わしめ『最悪』と畏怖される夏油傑に

 

「あれはもう……なんて言うかね、私が知る人で唯一、もう色々手遅れだなって思った人だよ」

 

 と、遠い目をされた。

 

 彼の名前は、天神崇徳(あまがみすとく)

 

 羂索ですら直接対決を避けた五条悟に対し、一人で挑み続けた最狂の呪詛師である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっべぇ……すっげえ暇だ」

 

 視界に映り込むのは、ただ真っさらな“青”

 

 どこまでも澄み渡っている、綺麗な青空。その下に、無様に転げ回っている変人が俺である。

 

 “暇”その単語一つが、俺の頭の中をぐるぐると染め上げていく。

 

 先に言っておこう。俺は“呪詛師”だ。

 

 呪術界において、呪詛師とは呪いが見えない非術師を攻撃、または殺害する奴ら。

 自身の術式を不当に行使する奴の事を指す。

 

 ちなみに俺は人殺し、非術師を殺すなんて事は興味は無い。流石に目の前で殺されそうとしてたら止めるが、態々探し回って呪詛師を倒しにいくほど、俺は真人間では無い。

 

「どうしよっかな〜悟に喧嘩はこの間売ったばっかだし、傑はなんかファミレスに女の子引き連れてたし、流石にどっちも迷惑だよなぁ」

 

 結果、河川敷で一人日向ぼっこする羽目になったと言うわけだ。

 

「やぁ、隣り良いかな?」

 

 俺の視界に、知らない男性が映る。しかし、頭に抜い目がついていた為、俺はすぐにわかった。

 

「なんだよ、()()?また殺りあいたいのか?」

 

「あって一言目がそれかい……流石“最狂”だよ。君とはもう懲り懲りだ」

 

「それで?態々俺を見つけてまで、何しに来たんだよ?」

 

「宿儺がね、無事に受肉を果たしたよ」

 

 俺の思考が一瞬止まる。宿儺、その名を聞いて俺は記憶を探る。

 

 呪術全盛、平安にて猛威を振るった正真正銘の化け物。二つの口と、二対の腕、二つの呪具で史上最強と言われてる存在。

 

 平安の術士が総力を上げて、なんとか“封印”と言う形で彼を倒した。

 

 そんな怪物が、受肉したとか下手なホラーよりもホラーじゃん。あーあ、どうせ上層部が五月蝿くなるんだろうなぁ。俺には関係ないけど。

 

「つーか、宿儺の器とか居たのかよ。そっちの方がビビったわ!」

 

「虎杖悠仁って言うんだけどね。彼、私の息子だよ」

 

「お前……マジかよ。呪胎九相図よりもパネェもん作ってんやん。どうしてそれを俺に言ったん?」

 

「彼が()()()()()()死んだとか、私の計画が頓挫しかねない。これはまぁ、一種の忠告として捉えてもらって構わない。私はね、君の事を五条悟よりも危険視している。間違って宿儺と宿儺の器を殺さないように、頼むよ」

 

「まぁ、殺しは出来ないと思うけど、()()()()()()()()()()ぐらいなら出来るな」

 

「ーー本当に頼むよ。ヒヤヒヤさせられるよ、君の言葉には」

 

「まぁ、頑張れよ。別にお前の計画は邪魔する予定は無いし」

 

「そうかい。その言葉が聞けただけでも、収穫だよ。君は五条悟よりも危険視しているからね」

 

 そう言って、羂索は立ち上がり、歩いて何処かに行ってしまった。俺は別に止めもせず、ただずっと夕焼けで赤くなった空を見上げていた。

 

「適当ーに呪霊を祓って帰るか。今日は」

 

 少し名残惜しいが、芝生と別れを告げて立ち上がる。

 

「やっべ、汚れてらぁ」

 

 ズボンについた泥を払いながら、歩き出してしばらくすると目の前に壁が立っていた。

 

 

「何で少年院に“帳”が?なんかあったんかね?」

 

 適当にぶらぶらしていたら、真横に“帳”が降りていて少しだけビビった。

 呪霊の気配を探ると、三つ反応があった。その内二つは人間で残り一つは呪霊。

 

「何だ、()()()()()か。しょーも……あれ?弱過ぎじゃね?」

 

 術師の反応は二つ、片方はまぁまだマシだが、もう片方は呪術師なりたてのヒヨコみたいな反応と、ライオンみたいな化け物の反応が重なっている。どっちにしろ、この二人だけで雑魚とは言え特級を相手にするのは、さぞかし無謀と言わざるを得ない。

 

 要するに、あの腐った上層部どもが態々階級を騙してまで消したかったのが、気配が重なっている子だとするなら……もしかしてこいつが宿儺の器か?

 

「やっぱりぶっ殺そうかな、上層部。でも悟が何とかしそうなんだよなぁ…」

 

 少し進むと、茶髪の女の子と補助監督の人が居た。何やら騒がしく話している。

 

「あーすんません。補助監督の人、俺を中に入れてくれません?中の二人、助けようと思うんで」

 

 近くに人がいるとは思わなかったのか、女の子と補助監督の二人ともビクッと肩を振るわせ、女の子の方はすぐに戦闘体勢に入った。

 

「アンタ、誰?」

 

「芻霊呪法かぁ、出来ない事は無いけど、ハンマーを持ち歩くのはちょっとなぁ…」

 

 釘崎野薔薇は、この男に対する警戒を最大級にまで上げた。何もしていない、ただ()()()()()()で自身の術式が暴かれた。まるで……

 

「“六眼”!?」

 

「いやいや!!俺はそんな大層な物持って無いよ。俺の術式だよ。詳細は教えられないけど、まぁ乙骨くんの上位互換って言えばわかるかな?」

 

「何の用なのよ…」

 

「お?争う気は無いって事は伝わったのかな?いやなに、中の二人を助けようってだけだよ。どう見ても、この呪霊君達のレベルじゃあ無理でしょ?悟を待つにしても、多分だけど来ないと言うか、来れないと思うよ。どうせあのクソ共のせいでね」

 

 言いたい事は言った。後は、この二人が決める。警戒は解いてはくれないけど。

 

「わかった!“縛ろう”『俺は俺の術式範囲外に出るまでor呪霊の死亡が確認されるまで、君の仲間に傷をつけない。有効期限は明日の正午まで』これでどうだい?」

 

「……」

 

 俺と女の子の間に、沈黙が走っている。多分彼女は俺が提示した“縛り”の穴を探してる。と言っても、かなり誠実に出した縛りなんだけどな。そこまで怪しいかね?

 

「ーーわかった。あいつらの事を、お願い」

 

「オッケー。それじゃあ、この天神崇徳!行ってまいります!!」

 

 補助監督の人が、帳を一瞬だけ緩める。俺はその隙にねじ込む。

 

 “帳”の中に入り込んだ。

 

 俺が最初に目にしたのは、こう、なんて言うんだろう。

 

「下水道みてぇ……」

 

 ここ少年院だよな?間違っても、下水道とか言わないよな?なんか所々亀裂が入ってるし、明らかに戦闘の跡しかない。

 

「まぁ、雑魚でも『特級』だもんな。【生得領域】ぐらい流石に出せるか」

 

 【生得領域】は、めちゃくちゃ簡単に言えば、そいつの心の中ってとこだな。

 

「不細工な【領域】だなぁ。最近の『特級』は皆んなこんな感じなのか?」

 

 多分だけど、もう俺が入ってる事は既に認知されてる。腐っても『特級』だし、それぐらい出来なきゃおかしい。

 

「あー、悟の【領域】が恋しいぜ。あそこまで綺麗なもんは見た事ねぇ」

 

 悟の領域がガラス細工と言うなら、こいつはゲロだな。それもとびっきり汚ねぇやつ。

 

「お?ようやくお出ましか。両面宿儺さん……であってる?ただの刺青狂いの人じゃあ、無いよね?」

 

 視線の先では、凶悪なのかどうかは知らんが、とりあえず笑ってる顔面に刺青と目が二倍に増えてる少年。

 

「ーー何だ貴様は?」

 

「ふっ……ある時は悟のライバル!ある時は傑の親友!ある時は黒幕である!天神崇徳ですッ!!!」

 

「ーー本当に何だ貴様は?」

 

「なっ……!!スベッたとでも言うのか!!この!俺ごふぁ!?」

「目障りだ、死ね」

 

 俺の一人芝居の途中で殴りかかってきやがった、宿儺の野郎!

 

「人の話は最後まで聞きましょうって、親に言われなかったか!?宿儺さんよぉ!!」

 

「本当に不快だな、お前は」

 

 【領域】を展開し終わった後だな、こりゃあ。とりあえず、戦闘跡から宿儺の術式は十中八九“斬撃”で確定。

 

 まだ宿儺は術式を使って来ない。

 

「そうゆう事ね、“指”が少ねぇんだな。宿儺だけに」

 

 今の所、殴る蹴るのオンパレード。宿儺くん、身体能力高過ぎん?後、悠仁くん君の体、ばか力が過ぎるだろ!?

 

「あーもう、しょうがない。【動くな】」

 

 宿儺が拳を振りかぶったまま、不自然に動きを止めた。何ともまぁ、怖い形相で俺を睨みつけてる。

 

「“縛り”のせいで、悠二くんの体に傷付けれないんだよ。だから……【死ね】」

 

「って言えたら楽なんだけど、生憎【死ね(それ)】は出来ないんでね。それじゃあ宿儺、“縛り”を結ぼう」

 

 動けない宿儺に、俺が歩みを寄せる。

 

「『一つ、俺の暇潰しの邪魔をするな』『二つ、俺は一度だけお前の味方(パシリ)になってやる』『三つ、お前が指を十五本以上食ったのを、俺が知った時お前と戦う』こんな所でどう?」

 

 俺の呪言から解放された宿儺が、忌々しそうな目をこちらに向けた後、大きくため息を吐いた。

 

「いいだろう。俺の指が揃った時、貴様を殺そう」

 

「ヨシッ!“縛り”成立ぅ!!」

 

 俺の目の前の不快な男、天神といった男は俺と“縛り”が結べた事がそんなに嬉しかったのか、奇声を上げながら飛び跳ねていて、地面に寝そべっていった。

 

「ーーケヒッ。愉快な男だ。まさか俺と“縛り”を結びたがる阿保がいるとは」

 

 その言葉を放った時、目の前の男から“感情”という物が消え去った。俺が僅かながら、恐怖を感じた。そして心底冷えた声で、男は口を開いた。

 

「まぁ俺にとっちゃ、全部()()()()だよ。でも、お前で二人目だ。俺の“暇”を埋めてくれる人間は」

 

「ーー阿保は撤回しよう。貴様は、どうやら根本から狂ってるようだ。そうか、俺を()()()()()()か……実に面白い」

 

 宿儺が俺を見ている。ゆっくりと笑みを浮かべて、口を開く。

 

「もう一度、名を名乗れ。覚えておこう」

 

「ーー天神崇徳、崇徳だよっ!」

 

 俺は立ち上がって、出口の方に歩いて行く。もう【生得領域】は崩壊している。建物も元の形に戻っており、僅かながら安堵した。

 

「じゃあな、宿儺」

 

「あぁ、次が楽しみだ天神。さて、俺も俺の事をしよう」

 

 宿儺と別れた後、ここから先は俺はよく分からない。

 

 まぁ、一応あの二人の無事は確認出来たし、女の子との“縛り”も別に無視してないし。

 

 宿儺が暴れて何をしようが、俺には何も関係は無い。

 

「さて、帰って寝るかぁ」

 

 すると、雨が降ってきた。天気予報では、晴れだったんだけど。

 

 俺は術式を起動する。その瞬間、俺に当たる雨粒が()()()()()()。まるで『無限』が続いているように……

 

 スキップしながら、俺は帰った。

 




 オリ主の術式は『数値化呪法』という術式です。
 簡単に言うなら、作中でも言いましたが、詳しく説明すると『乙骨くんが出来ることが半分出来ない。乙骨くんが出来ない事がオリ主は出来る』という感じです。
 
 
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