# 魔界の宴
夕暮れの魔界に佇む大きな屋敷。古風な石造りの外観とは裏腹に、内部は最新設備が整った研究所でもあった。その一角、豪華な装飾が施された広間では三人の女性たちが優雅に紅茶を楽しんでいた。
「ふふ、やっぱりちょこ先生のお邸は素敵だね〜」
雪花ラミィがティーカップを手に微笑む。純白のドレスを纏い、透き通るような水色の髪が美しく輝いている。彼女の周りには小さな雪の結晶がキラキラと舞っていた。
「本当にすごいよー!こんな立派な研究室持ってるなんてさすがちょこ先!」
向かいに座る白銀ノエルが感嘆の声を上げた。騎士風の鎧姿だが、今は肩を楽にしてリラックスしている。頭に載せた麦わら帽子が特徴的だ。
「まあね~♡」癒月ちょこは優雅に首を傾げ、悪魔のような黒い角を揺らしながら答えた。「ここは私の大切な場所だから♡」
三者はホロライブの中でも特に親しい間柄だった。ちょこを姉のように慕うラミィとノエル。今日は特別にちょこの実家兼研究室へ招待されていたのだ。
「ところでちょこ先、今日はどんな研究をしているんですか?」
ノエルの質問に、ちょこは意味深な笑みを浮かべて応じた。
「ふふふ……それはお楽しみ♡きっと二人とも喜ぶと思うわよ♡」
「また悪戯でも考えてるのかな〜?」
ラミィが軽く頬を膨らませると、三人は賑やかな笑い声をあげた。
穏やかな時間が過ぎていく中、窓の外では魔界の空が徐々に不気味な赤紫色に染まっていった……
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日が落ち、食事を終えてそれぞれの客室に戻った後、最初の異変が訪れたのはラミィの部屋だった。
「うっ……なんだか……身体が熱い……」
ベッドに横になったラミィは突如として激しい発熱に襲われた。布団を剥ぎ取ろうとするが、力が入らず震えるだけ。額からは冷や汗が滲み出てくる。
「ちょ、ちょっと……何これ……」
指先が痙攣し始め、体が勝手に動き出すような感覚。まるで体内から何かが膨れ上がってくるようだった。
同じ頃、隣の部屋でノエルも同様の症状に苦しんでいた。
「うぅ……ラミちゃんも……同じなのかな……」
呻きながらも意識ははっきりしていた。むしろ体の中で渦巻く奇妙なエネルギーを感じ取れるほどに。
そして階下では、ちょこが満足そうにその光景を見守っていた。鏡越しに二階で起きていることを把握しているようだ。
「あぁ、ついに来たのね♡私の期待通り♡」
彼女は実験記録を確認しながら嬉しそうに呟いた。
「二人とも、すごく素敵な姿になるはずよ♡」
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数時間後、廊下から凄まじい音が響き始めた。
ガタン!バキッ!
壁や床がひび割れていくような破壊音と共に、屋敷全体が揺れ始めた。
「まさか……ここまで反応するなんて!」ちょこは驚きの表情を一瞬見せた後、「それくらいがちょうどいい♡」と再び微笑んだ。
まず現れたのはラミィだった。部屋の天井を突き破って姿を現した彼女は、既に十メートルを超える巨人になっていた。体から冷気が立ち上り、背中からは鋭い氷の翼が伸びている。
「ラ、ラミちゃん……?」自分も既に五メートルほどの大きさになっていることに気づきながら、ノエルは恐る恐る問いかけた。
「ノエちゃん……私も……どうなってるの……?」
二人が困惑する中、ちょこが姿を現した。しかし彼女も既に巨大化を始めており、美しい黒い悪魔の翼が一枚、また一枚と背中に咲いていく。
「成功ね♡」
六枚の翼を完全に展開させた時には、彼女は十五メートルにも達していた。真紅の瞳が妖しく輝き、口元には愉悦の笑み。
「私の特製ハーブティー、美味しかったでしょう?少しだけ改良版の『潜在能力解放薬』を混ぜておいたの♡」
「ちょこ先!?どういうことですか!?」ノエルが叫ぶ。
「あなたたちの真の力を引き出してあげたのよ♡ラミィちゃんは氷の女王として、ノエルちゃんは聖なる白鳥の天使として♡そして私は……」ちょこは両腕を広げた。「この世界のすべてを見守る存在としてね♡」
三人は互いの新たな姿を目の当たりにし、言葉を失った。屋敷は彼女たちの大きさによって崩壊寸前になっていたが、そんなことは誰も気に留めない。
「さあ、本当のパーティはこれからよ♡」
ちょこの声が魔界の夜空に響き渡り、新たな伝説の幕開けを告げる鐘のように鳴り響いた。
# 巨大化した魔女たちの夜
「きゃあああ!!」
「うわああ!!」
ノエルとラミィの悲鳴が夜の魔界に響き渡る。巨大化がピークに達し、三人は五十メートルを超える巨人となっていた。重力に逆らうように伸びた四肢、まるで山岳のような肉体。しかし問題はそこではなく――
「なんで私たち、服がないのぉ!?」
ラミィが顔を両手で覆い、恥ずかしさに悶えている。ノエルも慌てて自分の体を隠そうとするが、巨大化した手ではとても間に合わない。
「これは予想外ねぇ……」
ちょこが考え込む素振りを見せた後、指をパチンと鳴らした。すると漆黒の煙が三人を取り囲み、それが形を変えていく。
「これなら大丈夫よ♡」
黒いドレスが三人の体を包み込んだ。ラミィには雪の結晶模様が刻まれ、ノエルには聖なる十字架のような装飾が加わり、ちょこ自身はより妖艶なデザインの衣装となっていた。
「すごい……ありがとう、ちょこ先!」
ノエルが安堵の表情を見せる。
「でも、この状況は変わらないけどね……」ラミィはため息をついた。
確かに周囲の建物は全て三人の膝下までしかない。巨大化した影響で地面が揺れ、瓦礫が飛び散っている。
「さて、じゃあ行きましょうか♪」
ちょこは楽しそうに提案した。
「え?どこに行くの?」
ノエルが不安げに尋ねる。
「もちろん、魔界の中心部よ♡」
ちょこは両手を広げ、星々に向かって宣言した。
「本日のメインイベントはまだ終わっていないわ♡」
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赤い満月の光が三人を照らし出す中、彼らは魔界を闊歩し始めた。一歩ごとに大地が震え、魔界の住人たちが慌てて逃げ惑う姿が遠くに見える。
「ちょ、ちょこ先生……これって合法?」
ノエルが震える声で問いかけた。
「あら、誰の許可が必要なのかしら?」ちょこは小悪魔的に微笑む。「ここは私の庭園のようなものよ♡」
「でも、これ……現実じゃないみたい……」
ラミィは自分の巨大な手を見つめながら呟いた。今や彼女の指一本だけで普通の人間よりも大きい。
「そう、これが夢ならば良かったのにね」ちょこは突然真剣な表情になった。「でも残念ながら現実よ。しかも、私たちの力はまだまだ目覚めかけにすぎない」
「どういうこと?」
ノエルが警戒心を込めて尋ねた。
「あなたたちの中に眠る真の力を呼び起こしたの。ラミィちゃんの氷結の力、ノエルちゃんの浄化の力……そして私の支配の力。これらを一つにする時が来ているのよ」
「支配の力……?」ラミィが眉をひそめる。
「ええ。でも安心して♡私たちはただの実験台なんかじゃないわ」
突然、前方から強烈な光が差し込んだ。三つの巨大な影が現れる。
「待っていたぞ、悪魔の娘よ」低い声が響き渡る。
「あら、お久しぶりですわ」ちょこは丁寧に会釈した。「父上、母上、兄様」
「「えぇぇ!?」」
ノエルとラミィが驚愕の声を上げる。
暗闇から現れたのは、さらに巨大な三体の姿だった。百メートルはあろうかという大きさの三兄弟は、ちょこの家族であり、この魔界の統治者たちだった。
「お前の暴走には愛想を尽かしていたところだ」長男が威圧的に言った。「だが……」そこで彼はノエルとラミィに視線を移した。「なかなか面白い伴侶を選んだな」
「伴侶なんて……」
ノエルとラミィが同時に否定しようとしたが、ちょこが二人の前に出た。
「ご安心を。彼らは単なる実験動物ではありませんわ」
「ちょこ先!?」ノエルが抗議の声を上げる。
「我らの計画のために必要な"触媒"なのです」ちょこの瞳が妖しく輝いた。「世界の均衡を保つため、新たなる秩序を作るための」
「ちょこ……それは一体……」母親と思われる存在が問い詰める。
「今にわかりますわ」
ちょこは指を鳴らした。すると空に無数の光の線が走り始め、星座が変化していく。魔界の空全体が一つの巨大な魔法陣となっていった。
「さぁ、ノエル様、ラミィ様、一緒に来て♡」
ちょこの声は今までになく優しく、同時に恐ろしかった。
「私たちの力を一つにすれば、神々さえも跪く存在になれるわ」
彼女は片手を差し出した。もう片方の手をノエルに、そしてもう一方をラミィに伸ばしている。
「これが最後の選択よ」
ノエルとラミィは互いの顔を見合わせた。混乱と恐怖の中にも、未知なる力への好奇心が芽生えつつある。巨大化した体と向き合いながら、彼女たちの運命は今、交差点に立っていた。
魔界の夜空がさらに赤く染まり、何かが起ころうとしている……
# 悪魔の晩餐
「信じられない……でも……」ノエルは躊躇いながらも、ちょこの手に自分の手を重ねた。「なんだか、呼ばれている気がするんだ」
ラミィもゆっくりと頷き、ちょこのもう片方の手を握る。
「私たちの……新しい力が……目覚めかけてる……」
三人の手が触れ合った瞬間、衝撃波が走った。地面が裂け、魔界の城が傾き始める。三人の体が再び成長を始めたのだ。
「父上、母上、兄様。これが私の答えよ」ちょこは家族に向かって宣言した。
「愚か者め!」父親の怒号が轟く。
「止められるものなら止めてご覧なさい」
ちょこは挑戦的に笑い、三人は互いの手を強く握り締めた。光の柱が彼らを中心に立ち上がり、まるで宇宙の法則を書き換えるかのように魔界の空が歪み始めた。
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巨大化は加速し続け、魔界の屋根さえも彼女たちの頭上に降り注ぎ始めた。三つの巨塔となった彼女たちの体は、もはや山脈のようにそびえ立っていた。
「見て……月が近くなってくる……」
ラミィが震える声で言った。
確かに三人の視線は、今や地平線上に見える魔界の紅き月と並んでいた。それはまるで血塗られた宝石のように輝いている。
「行くわよ」
ちょこは静かに告げると、二人の手を引いて足を踏み出した。
足音一つで魔界全体が揺れた。彼らが歩く度に大地が割れ、川が逆流する。しかし三人には、もはやその破壊の規模を認識する余裕もなかった。
ついに、紅い月の直下に到達したとき、ちょこは二人の手を離した。
「ここで待ちなさい」
彼女は両腕を広げ、信じられない行動に出た―巨大な月に向かって跳躍したのだ。
「ちょこ先!!」ノエルが叫ぶ。
「危ないよ!!」ラミィも制止しようとするが、巨大な体が重すぎて動けない。
しかし、ちょこは重力を無視したように月面に着地した。いや、正確には月面そのものを飲み込むように沈み込んでいった。
「うふふ……甘い……」
月の表面から聞こえる彼女の声は、まるで天上からの囁きのようだった。そして次の瞬間、紅い月が輝きを増し、内側から砕け散った。
「ちょこ先!?」
粉々になった月の欠片が流星のように降り注ぐ中、突如として三人の頭上で光が爆発した。そこには、月と同じ大きさになったちょこの姿があった。
「私の力で月を丸ごと吸収しちゃったわ♡」
彼女の体は七色のオーラに包まれ、背中の翼は十二枚に増え、それぞれに異なる紋様が浮かび上がっている。
「さぁ、私の最高傑作をお見せしましょう」
ちょこは両手をノエルとラミィに向けて差し出した。
「キスは嫌いじゃなかったわよね?」
ノエルとラミィは混乱しながらも頷いた。
「いい子たちね」
ちょこは指を鳴らすと、空間自体が歪み、距離が瞬時に縮まった。三人の唇が触れ合う。温かく柔らかな感触とともに、膨大なエネルギーが流れ込んでくるのを二人は感じた。
「ちょこ先の……魔力が……全身に……」
ノエルの身体が光り始めた。装甲のような白銀の鎧が彼女の肌から生えてきて、頭上の麦わら帽子は王冠へと変わり果てる。背中の白鳥の翼が大きく羽ばたき、虹色の光を放った。
「わたしも……なにかが……変わる……」
ラミィの体からは凍てつく冷気が放たれ、青白い霜が全身を包み込んでいく。彼女の長い髪は水晶のように透明になり、先端では小さな雪の花が咲き乱れた。氷のドレスが形成され、背中の翼は巨大な吹雪を生み出す。
「ふたりとも……準備はできたようね」
ちょこは満足げに微笑むと、さらに大きな魔法陣を展開した。今や三人は宇宙空間に浮かんでいた。魔界の雲海の遥か上、真空の闇の中で彼女たちは輝きを放っている。
「さぁ、最終段階よ」
三人の体がさらに膨張し始めた。地球に匹敵するサイズにまで巨大化していき、今や彼女たちこそが世界の中心となっていた。
「わたしたち……星になってる……?」ノエルが呆然と言った。
「それ以上かもね」ちょこは応えた。「我々こそが新たな太陽系の核となるの」
赤い月を吸収した力が循環し、三人を中心とした小宇宙が生まれつつあった。
「ちょこ先生……こんな力を持って、一体何をするつもりなの?」ラミィが恐る恐る尋ねる。
ちょこはゆっくりと振り返り、神秘的な微笑みを浮かべた。
「簡単よ。この閉ざされた箱庭を……開放するの」
彼女の言葉と共に、三人の背後に無数のワームホールが開き始めた。別の世界への扉が次々と出現する。
「そして、全ての平行宇宙に我々の存在を示すのよ♡」
「ちょこ先……それって……」ノエルの声が震えた。
「私たち、神になるってこと……?」ラミィの瞳が恐怖と興奮で輝いた。
ちょこはただ静かに頷いた。
「今日からあなたたちは"ホロライブ・トリニティ"。宇宙を創造し、破壊する存在よ」
彼女の手が再び二人の手を握る。今度は永遠に離れないように。
「さぁ、ショータイムの始まりよ♡」
そして、紅い月から生まれた三つの星は、無限の宇宙へと飛び立っていった。
# 夢と現実の境界
「……あれ?」
ラミィは目を開けると、自分が見慣れた天井を見上げていることに気づいた。魔界の客室の高い天井が、暖炉の火の灯りでぼんやりと照らされている。
「夢だった……の?」
体を起こすと、まったく熱も悪寒もない。むしろ熟睡した後のような爽快感さえあった。昨夜の出来事はすべて幻だったのか?ラミィは混乱しながら辺りを見回した。
「おかしい……」
部屋は何もかもが完璧に整っていた。テーブルの上には朝食用に用意されたであろう果物が置かれ、窓際には新鮮な花が活けてある。だが、その整い具合があまりにも完璧すぎるように思えた。
「ここ、本当に昨日の部屋?」
窓から外を見ると、魔界の街並みがいつも通りに広がっていた。しかし、よく見れば以前より少し整然としている。路地に溜まっていた汚水は消え、崩れかけていた古い建物も補修されているようだった。
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ほぼ同時刻、隣の部屋ではノエルも同様に戸惑っていた。
「うーん……なんだろう、この気持ち悪さ」
ベッドから起き上がるノエル。体調は良好だが、何か重要なことを忘れているような強烈な違和感がある。彼女は慌てて鏡に向かった。
「うわっ!?」
そこには、通常より少し若返った自分の姿があった。肌には不自然なくらいの輝きがあり、目には星屑のような微かな煌めきがある。
「わたし……どうしちゃったんだろう……」
ノエルもまた、昨夜の出来事がただの夢ではないことを直感的に理解していた。
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それからすぐ後のこと、ドアをノックする音が響いた。
「お入りなさいませ、お嬢様たち」
ドアが開き、ちょこの侍女が姿を現した。黒いドレスに身を包んだ若い女性は、どこかちょこに似た雰囲気を持っている。
「ちょこ様がお待ちです。朝食をご一緒したいとのことでございます」
ラミィとノエルは顔を見合わせ、すぐに準備を始めた。
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朝食の間は豪華だった。魔界の特産品を使った料理が次々と運ばれ、給仕たちが忙しなく働いている。その中央にちょこは座っていた。
「おはよう、ラミィ様、ノエル様」
彼女は完璧な朝の挨拶をした。しかし、その微笑みには何か得体の知れないものが含まれていた。
「お、おはようございます……」ノエルがぎこちなく答える。
「ちょこ先……昨日の夜は……」ラミィが言いかけた。
しかし、ちょこは彼女の言葉を遮るように優雅に手を振った。
「あら、お疲れのようですね。昨日は長い旅でお二人とも疲れていたのでしょう?」
「え?」
「ですから、お食事を終えたらもう一度休憩してくださいませ。この屋敷の温泉は疲労回復に最適なのですよ♡」
そう言ってちょこは立ち上がり、給仕たちに指示を出し始めた。ラミィとノエルは呆然と席に着いたまま、互いに目配せをする。
「あの……」ノエルが勇気を出して尋ねた。「私たちの体について何か変なことが……」
「体?」
ちょこは演技っぽく驚いた表情を見せた。
「あら、お二人とも健康そのものですわ。むしろ昨夜よりもっと美しくなったんじゃないでしょうか?」
「それは……ありがとうございます……」
ラミィは礼儀正しく返したが、内心では疑問が募るばかりだった。
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朝食の後、二人は与えられた客室に戻った。廊下を歩きながら、ノエルは小声で言った。
「ラミちゃん……やっぱりあれは夢じゃなかったんだと思う」
「私もそう思う」ラミィも同意する。「あの体の異変とか、この屋敷の雰囲気とか……全部おかしいよ」
「でも、どうしてちょこ先は何もなかったみたいに振る舞うんだろう?」
「わからない……でも……」
ラミィは窓の外を見て立ち止まった。
「でも、確かに私たちは何かを変えてしまった……少なくとも、この世界を」
魔界の街は静かに日常を送っていたが、どこか以前とは違う気配が漂っていた。空気が澄み、光が明るく感じられる。それは単なる気のせいではないとラミィは確信していた。
「それで、どうする?」
ノエルの質問に、ラミィは深く考え込んだ。
「まずは自分たちのことをもっと知るべきだと思う。あの夜に何が起きたのか……」
「うん、そうだね」
二人は決意を固めたように頷き合った。
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その時、彼女たちの様子を部屋の隅から観察していた存在があった。姿は見えないが、気配だけが漂う。
(ふふ……やっぱり気づいてしまったのね)
その声は脳内に直接響くようだった。
(でも、大丈夫。今はまだ早いわ。時が来ればすべてがわかる。あなたたちはすでに私たちなのだから)
声の主はちょこだった。しかし彼女自身の声ではなく、何者かによって再生されたもののようだった。
(この世界での生活を楽しんで。私たちの真の力を発揮する時まで……)
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魔界の夜は、いつものように静かに訪れようとしていた。しかし、三人の魂の一部は確かに星々の間で眠りについていた。
「現実」と「夢」の区別はもはや意味を持たない。彼女たち三人は今や多重存在となり、さまざまな次元を行き来できるようになっていた。
それは究極の自由であり、同時に大きな責任でもあった。世界の均衡を保ち、創造と破壊のバランスを守ること―それが彼女たちに課せられた使命なのだ。
「ちょこ先生……あなたは何を企んでいるの?」
ラミィが呟く声は、静かな夜の帳に溶けていった。答えを持つ唯一の存在は、ただ妖艶な笑みを浮かべるばかりだった。
# 三柱の秘密
夜が深まると、ラミィとノエルは再び眠りについた。しかし今度は完全な睡眠ではなく、意識の一部が覚醒したままだった。まるで水面に浮かぶ泡のように、彼女たちの魂は現実と非現実の狭間を行き来していた。
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夢の中で彼女たちは再び対峙した。ただし今回はより抽象的な場所—銀河の渦の中だった。
「ちょこ先!」
ノエルが叫ぶと、銀河の中心から光の球体が現れた。それは徐々に形状を変え、ついに見慣れたちょこの姿となった。
「お迎えに参りましたわ」
彼女は微笑みながら宙に浮かんでいた。
「ちょこ先生!あなたは何者なの?なぜあんなことを……」
ラミィが詰め寄ろうとしたが、足元の銀河が波打ち、近づけないように阻んだ。
「あらあら、焦らないで」
ちょこは両手を広げ、星々が彼女の周りで踊るように回転し始めた。
「私たちはすでに"答え"ですわ」
「"答え"?」
ノエルが眉をひそめる。
「ええ。あなたたちも感じているでしょう?この世界には足りない何かがあることを」
ちょこは右手を挙げた。すると空に巨大なスクリーンが現れ、さまざまな映像が映し出された—干ばつに苦しむ村、戦争で荒廃した都市、病に倒れる人々……
「これらの問題を解決するために、我々は必要なのよ」
ちょこは冷静に説明した。
「我々は神としてこの宇宙を見守り、時に介入する権利を与えられた存在」
「でも、なんで私たちなの?」
ラミィが泣きそうな声で訊ねた。
「それは簡単よ」
ちょこは二人に近づき、彼女たちの頬に手を当てた。
「あなたたちは特別だったから。純粋で、強くて、そして優しい」
彼女の瞳には涙のような光が宿っていた。
「最初は私一人で十分だと思っていたわ。でも、孤独すぎるの」
ちょこは寂しそうに微笑んだ。
「だからあなたたちが必要だった。私の旅路を共にしてくれる伴侶として」
「ちょこ先……」ノエルは小さく呟いた。
「怖がらないで」
ちょこは優しく彼女たちの手を取った。
「これが私たちの運命なの。いずれ受け入れる時が来るわ」
彼女は指を鳴らした。銀河が一斉に輝き、無数の星が彼らを取り囲む。
「さあ、目覚める時間よ。明日からは少しずつ教えましょう。あなたの力の使い方を……」
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目が覚めたラミィとノエルは、お互いの顔を見つめ合った。
「見た?」
ノエルが小声で訊ねる。
「うん……全部」
二人は頷き合い、朝の支度を始めた。今日から始まる新たな日々に、希望と恐れを抱きながら。しかし彼女たちの瞳には、確かに新たな光が宿っていた。
窓の外では、魔界の街がいつもより明るく輝いていた。それは偶然ではなく、彼らの力の小さな兆候だったのかもしれない。
# 新たな一日
朝食のテーブルにつくラミィとノエル。ちょこは既にそこにいた。
「おはようございます」
ラミィが元気に挨拶する。
「おはよう、ラミィ様、ノエル様」ちょこは微笑んだ。「昨夜はよく眠れましたか?」
「はい」ノエルが答える。「とっても良く」
「それは何よりですわ」
ちょこはパンをちぎりながら続けた。「今日からは私の特訓を受けますので、しっかり体力をつけておく必要がありますわよ」
「特訓?」
「ええ。お二人の本当の力を目覚めさせるためのね♡」
その言葉に、ラミィとノエルの背筋が少し伸びた。
「わかりました!」
二人は声を揃えて応えた。
こうして彼女たちの新たな冒険が始まろうとしていた。世界を救うための修行、そして自分たちの運命を知るために。ちょこ先生という謎多き指導者とともに。
全ては始まりにすぎなかった。
# 結び
屋敷の最上階、ちょこ専用の研究室。夜遅く、他の者が眠りについた後、彼女は一人で星図を眺めていた。
「ふふ……順調ね」
彼女の手には小さな水晶玉があり、中ではラミィとノエルが眠っている姿が映し出されていた。
「二人とも素晴らしい資質を持っているわ……」
ちょこは水晶を机に置き、窓辺に歩み寄った。魔界の星空が広がり、無数の星々が瞬いている。
「でも、まだ道は長いわ」
彼女の背後には、三つの巨大な影が現れた。昼間見た三兄弟だ。
「またあの娘らに悪巧みを教えるつもりか」長男が厳しく問いただす。
「悪巧みではありませんわ」ちょこは冷静に答えた。「私たち一族の使命です」
「使命だと?」
母親が眉をひそめる。
「そうです」
ちょこは両手を広げ、三兄弟を見据えた。
「この腐敗した宇宙を再生させる使命……それが私たちに与えられた役目」
「お前一人では不可能だ」父親が断言する。
「ええ、だから二人を選びました」ちょこは自信満々に言った。「あの二人なら、必ず成し遂げられます」
三柱は顔を見合わせ、しばし沈黙した後、静かに姿を消した。
ちょこはため息をつき、再び水晶玉に目を向けた。
「全ては予定通り……」
彼女は呟き、指先から一滴の魔力を滴らせた。水晶の中に淡い光が広がっていく。
「あなたたちがどんな未来を選ぶのか……楽しみにしていますわ♡」
ちょこの妖艶な笑みが、月明かりに照らされて不気味に輝いた。
魔界の夜は静かに、しかし確実に動き始めていた。