BanG Dream! It's MyGO!!!!!×Re・Load   作:ビンカーフランス

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第十一話:悩み

 今日の立希は少し──いや、かなり不機嫌だった。休日の朝からシフトが入ってるのもあるし、つい最近にそよと愛音から「彼氏と上手く行ってるの?」と弄られたからもある。

 

 だが、一番の原因は。

 

「お前、何で此処に居座ってんの」

「良いだろ別に。お客様は神様なんだからよ」

 

 朝からカウンター席で、顔見知りのクソ客(黒崎)が、コーヒー一杯でずっと居座り続けているからだった。

 

「店側としては邪魔なんだけど、サッサと出てってくれる?」

「うるせぇ。つかそんな接客態度良いのかよ、円香さんに言いつけんぞ」

 

 どうやら向こうも不機嫌らしい。いつもなら、こういう自分に非がある時には素直に謝っている。

 

「……なんかあったの」

「何もねぇ。本当に何もねぇよ……」

「……ハァ」

 

 素直に面倒くさいと溜息を付いた。プライドが邪魔しているのか、それとも言い出せない事情があるのか知らないが、何か抱えている癖に言い出せない天邪鬼っぷりは、見ていて腹が立つ。

 

「バイト」

「あ?」

「バイト。12時に終わるから、それまで待ってて」

「いや、俺は何も」

「良いから。何か言いたい事あんでしょ」

 

 やや不満そうに眉を顰める黒崎を押し切り、立希はバックヤードへと戻る。こうでもしないと、下手したら閉店まで居座られるやも知れない。それならいっそ話を聞いてやった方が、店に迷惑が掛からないだろう。

 

 それに、だ。

 

「……それに、世話にもなったし」

 

 以前、二人で燈達のデートを監視していた時、黒崎には色々と世話になっている。

 

 借りを作りっぱなしと言うのは、立希の肌には合わなかった。

 


 

 黒崎と約束した通り、12時にカフェのバイトが終わった後、立希が連れて行ったのは、近場に在る、有名チェーンのファストフード店だった。

 

「そんで、何があったの?」

 

 昼ご飯代わりのポテトを一摘まみしつつ、頬杖を突きながら立希は尋ねる。すると、黒崎は途端に視線を逸らした。

 

「……別に、何もねぇよ」

「そう言うの良いから、サッサと答えて」

 

 一方的に口を閉ざす黒崎を睨み付けてやると、重い溜息を吐いた後、やがて観念したように口を開いた。

 

「お前……バンドに新しいメンバーが入って来た時、どう思った?」

「新しいメンバー、か」

 

 立希が自然と思い出すのは、今のバンド(MyGO!!!!!)がまだ結成したばかりの頃──あの時は、ヤケに馴れ馴れしい転校生や、腹黒い元バンド仲間で、急にバンドをする事になり、そのせいで衝突や仲たがいをした事が何度もあった。

 

「もしかして、新しいバンドメンバーとなんかあったの?」

「別に何もねぇよ。ねぇんだけど……」

 

 否定しつつも言い淀む様子に、やはりと立希は息を吐く。認めたくは無いが、根っこの部分では黒崎と似通っている。だから、自分が経験したような悩みがあれば、直ぐに分かってしまう。

 

 そして、敢えて続きの言葉を待っていると、黒崎は重い口を開き、まるで独り言のように呟いた。

 

「……不安なんだよ」

「不安って、楽器の実力とか?」

「いや、アイツらの実力は悪くねぇ。寧ろスゲェと思ってる」

 

 あんまり言いたくないかのように口をモゴモゴとさせる黒崎。そんなしどろもどろな態度に少し怒りが沸き上がる。それを察知したのか、やや早口になって捲し立て始めた。

 

「菊池は見た目のまんまチャラいが、ギターの腕と熱量は本物だ。八神も、リードギターとしては完璧に近い。朝日奈に関しちゃ、リズムの基礎からシッカリ出来てる……まぁ、楽器の腕だけに言えば、これ以上ねぇくらいに信用してるよ」

「だったら、何が不満だっていうの」

「……アイツらが、練馬の夢に付いていけるかって事だよ」

 

 夢、その言葉が出た時に、立希はいつの日かの水族館で聞いた話を思い出した。

 

「アイツは一度、自分の夢に周りが付いて来れなかった──そのせいで腐ったような毎日を送っていたって聞いてる。だからもし、また同じような事になったら、練馬はもう立ち上がれないかも知れねぇ」

 

 練馬と──そして、黒崎の夢は、『一生音楽で生きて行く事』。まるで子供のように曖昧な夢を、二人が本気で目指しているのを知っている。だが、その夢に周りが付いていけるのかはまた別だと言う事も、立希は思い知っている。

 

「少なくとも、練馬はアイツらとなら本気で出来るって信じてる。だけど、俺はそう簡単に信じられねぇよ……特に、何か隠してる奴らにはな」

「……」

 

 似ている、本当に似ていてしょうがない。まるで昔の自分を見ているかのようで、頭が痛くなる。

 

 立希だって、そうだ。燈の為だと言いながら、自分以外に他のメンバーを信じられなくて──その末に、Mygo!!!!! から離れてしまった時期もあった。

 

 だからと言って、何かアドバイスを出来るという事は無い。結局、立希は自分では乗り越えてなんかいない。あの時に、燈が自分の手を引いてくれなければ、今此処には立ててなどいなかった。

 

「いや、すまねぇな。こんな話をしてよ……コイツは、俺達の問題だ。だからそっちに話す事じゃないってのは、自分でも分かってる」

 

 何も言えず押し黙る立希に、気を悪くさせてしまったと思ったのか、露骨に黒崎が平謝りをする。

 

 確かに、それは間違いではない。今もこうして何も言えない自分に歯噛みをしている。誰かに助けてもらった分際で、上から何かを言える資格など無いのは分かっている。

 

 ──それでも、放ってはおけない自分が、心底恨めしい。

 

「……コレ」

「ん?」

「私の連絡先」

 

 差し出したスマホの画面には、招待用のQRコードが表示されている。黒崎がそれを見開いた眼でマジマジと観察すると。

 

「……どういうつもりだよ? 俺に気でもあんのか」

「ハッ? 勘違いすんな」

 

 どんな思考回路をしていやがるのか……いや、いきなり異性に連絡先を教えた時点で、自分にも非があると、立希は言葉を飲み込んだ。

 

「別にアンタに気がある訳じゃないし……ただ、放っておけないだけ」

「放っておけないって……だから、これは」

「うるさい! サッサと交換しろ!」

 

 何故か恥ずかしくなってきて、半ば強引に連絡先を交換させる。そして連絡先に『黒崎』の名前が追加されている事を確認すると、ドッと肩に疲れが伸し掛かった。

 

「……ハァ」

「なぁ、椎名」

「……何、くだらない事だったら許さないけど」

「ありがとな」

 

 ──普段は真正面から礼を言わない癖に、こういう時だけは素直に礼を言ってくる。そういう所がまた、腹立たしくてしょうがない。

 

「べ、別にアンタの為じゃないし! 私がスッキリする為だから!」

「はいはい、そう言う事にしてやるよ。世話焼きでお優しいリッキー様」

「リッキー言うなし!」

 

 調子を取り戻したのか、また何時ものように揶揄い始める黒崎。塩らしさが無くなって普段通りの態度になったのは良いが、コレはコレで腹が立つ。

 

「つか、腹減ったな。飯買いに行くけど、折角だから何か奢ってやるよ」

「いや、別にアタシは……」

「……お前、今ハッ〇ーセットのパンダ見てたけど、欲しいのか?」

「ほ、欲しくないし!」

「マジかぁ……俺、この歳になってハッ〇ーセット頼まなきゃいけねぇのかよ」

「だから要らないって言ってるでしょ!」

 

 頬を膨らませる立希を他所に、そそくさとカウンターへ注文しに行ってしまう。そんな黒崎を席で見送りながら、ふと自分の口元が緩んでいる事に気が付いた。

 

「全く……」

 

 ──―アンタが元気ないと、コッチの調子が狂うっていうの。その言葉を胸の内に飲み込んで、立希はポテトをもう一口摘まみ上げた。


 

「待たせたな……ほらよ」

「何コレ……ってパンダ!? アンタ、本当に注文したの?」

「このハッ〇―セットを見て、マジで言ってんのか?」

「……ありがとう」

「そりゃどうも」

 




最近22時投稿になってないですか?

という訳で、明日からはちゃんと21時投稿を目指したいと思います。
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