BanG Dream! It's MyGO!!!!!×Re・Load   作:ビンカーフランス

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第二十六話:作詞/作曲

 詩を書く───そう決めてから数日後、練馬は。

 

「ダメだァ! どう足掻いても『らーらーランニング』みたいな歌詞しか出てこねぇよぉ!!」

 

 いつかの喫茶店の席で、夏休みの読書感想文並みに薄っぺらい歌詞が描かれたノートを前に、絶望に頭を抱えていた。

 

「た、大丈夫! わ、私は好きだから……ら、らんらんランニング!」

「ありがとう! でもそのフォローが逆に痛いよ燈ちゃん!!」

 

 対面の席に座る燈からの、親切心溢れるフォローが逆に心へ突き刺さる。

 

「そもそも歌詞なんて書いた事ねぇから、どうもグッ! って来るフレーズとか出ないんだよなぁ」

 

 練馬は背もたれに肩を預け、疲れ果てたように力を抜く。

 

 ここ数日、朝から寝る前まで、ひたすら詩を考え続けたが、出て来るのはありきたりなフレーズか、厨二臭い言い回しばかり。

 

 わざわざ休日に燈ちゃんと会う約束をして、力を借りようとしたがこの様である。申し訳なさすぎて、

 地面に頭を埋めたい気分である。

 

「燈ちゃんはどうやって書いてんの?」

「えっ、私?」

「そうそう。俺、燈ちゃんみたいな歌詞を書きたいんだよ!!」

 

 ふと思いついた事を練馬は尋ねてみる。

 

 練馬が目指しているのは、燈が描くような、真っ直ぐで心にスッと入って来るような詩。だったら、本人にそのコツを聞いた方が手っ取り早いと思った。

 

 すると、燈は口元を手で隠して考える素振りを見せる。そして、やや控えめにこう言った。

 

「私は……書きたい、って思った事は無いかな」

「へっ? じゃあどうやって、あんな詩を」

「ずっと言えなかった事とか、伝えたい事を、ノート一杯に書いて、消したりして……そしたら、いつの間にか詩になってるから」

 

 逆に今度は、燈が首を傾けて練馬に尋ねる。

 

「練馬君の伝えたい事は、何……かな?」

「伝えたい事、か……」

 

 伝えたい事なんて、一杯ありすぎて困ってしまうくらいだ。どれから伝えれば良いのか分からないくらいだ。

 

 でも、一番に伝えたい事を考えると、ほんの少しだけ。

 

『あの日の景色が待っているから』

 

 

 ワンフレーズだけ、勝手に書けてしまった。

 

 

 

「……よっしゃ! もう一回だ!! 今度はフレーズとか関係なく、思いついた限り書いてやる!!」

 

 力が抜けた身体に喝を入れ、両頬をパンッ! と引っ叩く。そして、再びノートに向かって、落書きみたいな文字を書き連ねていく。

 

「うん……私も出来る限り手伝うから、一緒に完成させよう」

 

 その様子に、燈が優しく微笑む。そして、両掌でグッと握ると、珍しく自信満々げに口を開いた。

 

「練馬君が、みんなに伝えたい詩を」

 

 燈ちゃんがいれば、今はとっ散らかった様々な思いもきっと、一つの詩に出来る。練馬はそう信じて、またノートに思いの欠片を書き込んでいく。


 今日の放課後の羽生ヶ丘は、ヤケに騒ぎ立っていた。

 

『ねぇねぇ! 正門の前にイケメンが居るんだけど!!』

『本当!? わ、私ちょっと声かけてみようかなぁ』

 

 廊下で通り過ぎ様の女子生徒から、そんな話し声が聞こえてくる。立希は無視して、玄関へと向かっていく。

 

「イケメンって……絶対不審者に決まってるでしょ」

 

 玄関に着くと、そんな悪態を吐きながら靴を履き替える。

 

 このまま正門から出れば、件のイケメンとやらが居るらしいが、生憎と立希はそんなのに興味がない。なので、そのまま真っ直ぐと玄関を出て行く。

 

 そして、正門を潜り抜けようとしたその時、門の壁にもたれ掛かる、例のイケメンに声を掛けられた。

 

「おい」

 

 立希はワザと無視する。聞いた事のある不快な声を、耳に付けたイヤホンで聞こえないフリをして、横を通り過ぎて行く。

 

「無視すんじゃねぇよ。冷酷女」

 

 だが、不快の正体───黒崎は逃してくれなかった。通り過ぎようとする立希を先回りして、真正面に立つ。

 

「アンタ……何の用?」

「随分と嫌われたな、俺も。まぁ、当たり前か。何があったか、どうせアイツ(練馬)経由で知ってんだろうし」

「だったら分かってんでしょ。サッサと消えて」

 

 立希はこの男がした事を決して許すつもりはない。直接的では無いとは言え、コイツが原因で燈は泣いた。

 

 それに、個人的にも許せない事がある。コイツは親友と夢を叶えると言った癖に、それを裏切っている。

 

 一度は同じ気持ちを共有した人間として、立希は絶対に許す事は無い。

 

「頼みがある」

 

 そんな男が、今更どの面を下げてやって来たと思えば。

 

「俺に……音楽の作り方を教えてくれ」

 

 その面は、真っ直ぐ下を向いていた。

 

「この前、アイツからこんなのが送られて来てよ」

 

 頭を下げたまま、自分のスマホの画面を見せる。その画面には、練馬とのメッセージのやり取りが映し出されている。

 

 そして、最後の履歴は練馬からのメッセージ。それは落書きのような、歌詞のような───詩未満の文字の羅列だった。

 

「アイツ……詩、作ろうとしてんだ」

 

 黒崎の拳が震えるのを視界の端に捉えた。立希は黙って、言葉の続きを待つ。

 

「確かに、俺はアイツを裏切った……だから報いたいんだ。一緒に目指そうぜって言ってくれたダチとの夢に、今度は少しでも力になりてぇんだ」

 

 再び黒崎が顔を上げる。どんなしょぼくれた面があるかと思えば、随分と必死な形相で、整った顔立ちが泥まみれになっている。

 

「……チに来て」

「えっ、今なんて」

「ウチに来て。機材とか色々あるから」

 

 黒崎の袖を掴み、無理やり引っ張っる。若干抵抗されるが、力押しで連れて行く。

 

 ───別に許した訳じゃない。燈を泣かした事や、練馬を裏切った事は一生恨むだろう。

 

 でも、あの泥臭い顔は嫌いじゃない。

 

 いつもはリアリストを気取っている黒崎が、泥に塗れてでも、夢を追う親友の為に必死になる顔は───。

 

 言いたくは無いが、少しだけ格好良く見えてしまった。

 

「……ありがとな」

「礼は曲が出来てから言ってからにして」

 

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