BanG Dream! It's MyGO!!!!!×Re・Load   作:ビンカーフランス

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早くMygo!!!!!の面々が登場して欲しいので、暫く二話投稿が続きます。


第三話:遊雲ベーシスト

 そして翌日の放課後─―

 

「……お前、どういう魔法を使いやがった」

 

 ライブスタジオに向かう道中、一緒に歩いていた黒崎から、練馬はずっと疑惑の目線を浴びせられていた。

 

 その理由は言うまでも無く──

 

「という訳で、新しくギターとしてやらせてもらうから、宜しくね?」

「ウェ!? マジであのYAGAMIッスか!? スゲェー! 後で一緒に写真良いッスか!!」

「良いよ。あっ、でもSNSに上げるのは勘弁してね? 一応、今は顔出しNGだから」

 

 カリスマインフルエンサーにして新メンバー、八神 総司──そんな超レアキャラを、練馬如きがスカウトして来たと言うのだから。

 

「初対面で誘ったら一発OKとか普通有り得ねぇだろ。本当に何しやがったんだ? まさか弱みでも……」

「俺そんなに信用ねぇか! 良い加減認めろよ! 俺の熱いハートが八神にも響いたんだって!!」

「無いな、現実見ろ」

「即答!? 少しは考えてくれても良いんじゃねぇの!」

「やぁ、ちょっといいかな?」

 

 相変わらず辛辣な親友の言いぐさに練馬が口を尖らせていると、横から八神が静かに静かに割って入った。

 

「黒崎君だっけ? 初めまして。僕、八神 総司って言うんだ」

「……黒崎 望月。一応、ドラムやってる」

「へぇ、そうなんだ。僕はギター、専門はアコギだけど。エレキも出来るから宜しくね?」

 

 背中に抱えたギターケースを少し揺らして、八神はやはり好意的な笑顔で接する。それに対し、黒崎は様子を探るように鋭い目をしている。

 

「……宜しく」

「おいおい……」

 

 丸で会話をぶった切るような黒崎の物言い。新メンバーに対してあんまりな態度に、練馬は慌てて割って入った。

 

「待望の新メンバーだぜ? 少しは愛想良くしろよ!」

「分かってるよ……ただ、何となく信用できねぇ。胡散臭ぇっていうか……」

「お前なぁ……」

 

 口は悪いが滅多に理不尽な事はしない黒崎には珍しく、バツが悪そうに目を逸らす。そんな態度をされると、練馬もそれ以上は追及できず、賑わう人混みの中で、一瞬にして狭苦しい気まずさだけが場を包んだ。

 

「つか先輩ら、コレ何処に向かってんスか?」

 

 だが、そんなのを全く読まない空気を、普段ならウザいとしか思えない菊池の能天気がぶち壊してくれた。それに乗っかる形なのか、黒崎が合わせて口を開く。

 

「忘れたのかよ? Ringだよ」

「Ring……あぁー、あの最近人気のライブスタジオッスよね? でも、良く昨日の今日で予約取れたッスよね?」

「コイツがそこのスタッフと顔見知りでな。練習終わったら、清掃の手伝いするっていう条件で貸してもらえたんだとよ」

 

 質問に答えた黒崎が、予約を取ったその本人であり、なおかつ今回のスタジオ練習を提案した本人でもある、練馬の顔を指差す。

 

「それって俺らも清掃手伝う感じッスか? 面倒なんスけどぉ」

「良いじゃんか! 折角良い感じにメンバーが集まったんだし、一回ぐらい合わせてみてぇじゃん!!」

「と言っても、ベースは居ないけどな」

「ゔッ! そ、その内見つけて来るから!!」

 

 何時ものように深いため息を吐く黒崎に、練馬は苦し紛れにそう叫んだ。

 

 確かに、四人揃ったとは言え、バンドには必須となる最後のピース、ベーシストがまだ足りない。しかしそれでも、今回の全員集まってのバンド練習に誘ったのは、一種の実験みたいなものだった。

 

 ド派手なパフォーマンスと熱量を持つ菊池と、流れるようなメロディラインを弾く八神。そんな二人のセッションを想像するだけで、練馬はワクワクが止まらなくなる。

 

 そう思い立ったが直ぐに、こうしてメンバー全員を誘い、わざわざ旧縁を頼ってまでスタジオを抑えていた。

 

 その大体過ぎる行動力に呆れているのか、はたまた行き当たりバッタリな言動に呆れているのか、黒崎は怪訝な目線を練馬に向けた。

 

「お前なぁ……そう簡単に見つかる訳ねぇだろ。少なくとも、このメンバーに並ぶ奴なんざ、そう居ねぇからな」

「いやそんな事はねぇって!! 八神や菊池みてぇに絶対どっかで出会う筈!!」

「練馬先輩の言う通りッス! なにせ天才の俺が居るんスから、ちょちょいのちょいッスよぉ!!」

「まぁ、案外何とかなるんじゃない? 知らないけど」

「一人でも大変だって言うのに、馬鹿が三人に増えやがった……」

 

 新メンバーの脳天さ加減に、いよいよこれからを想像したらしく、黒崎が眉間にしわを寄せていると、スタジオRingの看板は直ぐそこまでに見えていた。

 


 

 ライブハウス『Ring』の自動ドアを潜り抜けると、先ず最初に練馬達を出迎えたのは、軽やかなBGMと、コーヒーの香ばしい匂い。その匂いに練馬は何処か懐かしさを感じる。

 

「へぇ~、結構良い感じじゃないッスか」

「だろ? ここ結構お気に入りなんだよ」

 

 始めて来た菊池は、そのお洒落な雰囲気に爛々と目を輝かせている。かつて常連だった練馬からすれば、ちょっとした優越感に浸れるぐらいに新鮮な反応だ。

 

「初めて此処に来たけど、カフェスペースなんて有るんだね。ちょっと見て来ても良いかな?」

「後でな。先に鍵貰いに行くぞ」

 

 対して八神はインフルエンサーらしく、隣接されているカフェスペースに興味を示している。だが、黒崎が睨むように良い放ち、釘を刺しておくと、「ざんねん」とばかりに肩をすくめる。

 

 そうしている内に、練馬は先に受付へと駆け寄ると、そこに居たスタッフの女性に軽く挨拶をした。

 

「ちわーっす、円香さん!」

「あっ、練馬君久しぶりー! 今日は清掃手伝ってくるんだよね? ほんとありがとね~」

「いえいえ、スタジオ使わせてくれるってんだから、寧ろ当然っすよ!」

「円香さん、お久しぶりです」

 

 そう二人が話している内に、後から黒崎もやって来た。そして、その瞬間に、円香の眼が途端に輝き始めた。

 

「黒崎君も久しぶりー! そう言えば愛音ちゃんから聞いたよ~? 最近、立希ちゃんとWデートを」

「してません。戯言です。サッサとスタジオの鍵を貸してくださいこの野郎」

「ありゃりゃー、釣れないねぇ」

 

 そう言いながら、円香は受付の下から鍵束を取り出すと、三番スタジオとタグに書かれた鍵を練馬に渡す。

 

「はい、今日は三番スタジオ空けてあるから、自由に使っていいよ。ただし、終わったらちゃんと掃除頼むね?」

「了解っす! 助かります!!」

 

 そして受け取った練馬はそのまま三番スタジオに続く廊下へ一直線に向かってしまった。

 

「ちょ……ったく、アイツ」

「ハハッ、練馬君っていつも元気だよねぇ」

「元気じゃなくて頭の中が空っぽなだけですよ……」

 

 一人取り残された黒崎は、「まぁいいか」と吐き捨てる。個人練習で何度も来ているので、三番スタジオが何処なのか、黒崎の頭に入っている。

 

「おい八神、菊池。三番スタジオだ、行くぞ」

「うーッス」

「はいはいーい」

 

 通い慣れた黒崎を先頭に、八神と菊池が後に続く。そうして、受け口を抜けて左右にスタジオが並ぶ廊下を歩いていると、先に行った練馬を見つけた。

 

 だが、練馬が居たのは何故か三番スタジオではなく、その反対側にある二番スタジオの前。しかもまるで覗き込むかのように、扉の僅かな隙間に顔を密着させている。

 

「何してんだ、お前?」

「なぁ……コッチ来いよ」

 

 練馬が手招きをして、ほんの少しだけ開いた扉の隙間を指差す。それに釣られて黒崎は、その隙間から中の光景を覗き込んだ。

 

 そこから見えるのは、自分と同じ青華高校の制服を着た青年。無精気味に伸ばしたアッシュグレイの前髪から覗く、隈の付いた眼つきは、本人自体の雰囲気を示すようにやる気なく垂れ下がっている。

 

 だが、そんな見た目よりも黒崎の印象に残ったのは、その青年が弾くベースの音だ。

 

 ──ーまるで海辺で遊ぶ波の揺らぎを操るかのような、自由でしなやかな重低音のグルーヴが、指先で弾く度、重低音が波紋のように空間へ広がっていく。

 

 それでいて、ベースとしての基礎が消えた訳じゃない。一音一音は正確にリズムを刻み続けており、寧ろメロディとしての土台があるからこそ、自由に遊ぶグルーヴがより一層に冴え渡っている。

 

「嘘だろ……どんなリズム感してんだ。アイツ」

 

 黒崎は小さく息を呑む。同じバンドのリズムを支えるドラマーとして、そのベースが一見不規則にも思えるメロディの中で、如何に正確な音を刻み続けているのかを肌で感じる。

 

 そうして、ベースが奏でる音の中に暫し魅入られている中、最後のスライドを皮切りに、その青年の手が止まった。

 

「……それで、人の練習覗いて楽しかった~?」

「ゲッ!?」

 

 青年が肩に掛けたベースを降ろしたと同時に、その視線が扉の隙間から覗き見る練馬達の方へと向いた。

 

「あ、えと? そのぉ……」

「ごめんね。つい君のベースが凄くて夢中になっちゃった。迷惑だったかな?」

「そう! それ!!」

 

 咄嗟の事で上手く口が回らない練馬の代わりに、八神がすかさず扉を開いて前に出て答える。すると青年はやや疑うように目を細めたが、直ぐにやる気の無い目つきに戻った。

 

「ふぅん……まぁ良いか~」

 

 青年は壁に立てかけてあった楽器ケースにベースを仕舞い込むと、そのまま肩へ背負い込む。

 

「そんじゃ、俺は帰るんで~」

 

 そして、青年はそのまま練馬達の間を潜り抜け、スタジオの外へと出ようとしたその時。

 

「──―なぁ」

 

 練馬が何の脈絡もなく、その青年を呼び止めた。

 

「何?」

 

 青年が半ば廊下に飛び出した足を止める。そして何が用でもあるのかと待ってくれている。だが、練馬はそこでハッキリと言葉にはできなかった。

 

 練馬は青年の自由なリズムを聴いた瞬間、胸の奥で『パチン』と何かが嵌るような音がした。ただそれだけを理由に呼び止めてしまったのだから。

 

 だけど逃したくは無かった。例えそれが嘘だったとしても、あのベースの音を聞いた時に感じた予感まで嘘だったなんて思わない。

 

 だから結局、練馬が言うべき事は一つしか無かった。

 

「お前、俺と一緒にバンドやらねぇか」

「──―え?」

 

「マジスか先輩!? いきなり初対面の奴誘うとかブッ飛びすぎでしょ!」

「おいおい、マジかよ……」

 

 菊池は笑い転げるように腹を抱え、黒崎はまたかとばかりに頭を抱える。だが、練馬は伸ばしたその手を引っ込めようとしない。寧ろ誇らしげに伸ばしたままだ。

 

 断られるのは承知の上、だけどもたった今感じた予感を逃すくらいなら、最初から動き出してなんかいない。その為に伸ばした手が、練馬は何も恥じる事は無かった。

 

「……どうしてかな~?」

 

 すると、青年は立ち止まったまま、少しだけ首を傾げて問い返す。それに対し、練馬は自分が感じた率直な感想を、今度こそそのまま伝えた。

 

「お前のベースの音聞いてたらさ。上手いとか、カッコいいとかの前に、これだ! って感じがしたんだよ。だから、きっとお前がベースに居てくれたら、絶対に上手く行くって思ったんだよ」

 

 それは根拠なんて何一つない妄想のように聞こえるかもしれない。だが、上手い言葉をこねくり回すなんて器用な真似は出来ない。だから練馬は躊躇うことなく真っ直ぐに応える。

 

「頼む! 俺と……俺達とバンドやろうぜ! そんでいつかデッケェ所でライブしようぜ!!」

 

 ──―だが、最後にその言葉を吐いた時、練馬は急に言葉が出なくなった。

 

「……お前も同じ事、言うんだなぁ」

「えっ?」

 

 それは幻覚なのか──温度を失ったように青年の瞳が冷たくなったような気がした。その熱を失った黒い目が、まるで練馬を憎むように歪む。

 

 だが、それは見間違いだったのかも知れない。次の瞬間には、青年の眼からは再び熱が戻り、そして寧ろ興味津々とばかりに練馬の手を握った。

 

「まぁ良いよぉ。どうせ暇だしさぁ」

「マジか!? よっしゃぁ!!」

 

 自分で誘っておいて、まさか一発で乗ってくれるとは思っていなかった練馬は、思わず満面の笑みで力強く握り返してしまう。だが、青年はそれを拒もうとせず、気の抜けた顔で口を開いた。

 

「俺の名前は朝日奈 遼。まぁ、これからよろしく~」

「俺は練馬! 宜しくな朝日奈!!」

「オッケー、練馬ね。そんで……」

 

 朝日奈はお道化た様に肩をすくめると、やがてその目線が練馬から他のメンバーへと移り変わる。

 

「そっちのバンドメンバーは?」

「あ、そっか! 忘れてたぜ! こっちがドラマーの黒崎! そんでサイドギターの八神と、リードギターの菊池!」

「へぇ~」

 

 遼は練馬の手を早々に振り払うと、まるで一人一人を品定めでもするかのように、ジロジロと三人を観察する。

 

「えぇっと八神だっけ?」

「そうだよ、宜しくね朝日奈君」

「はいはい~、そんでそっちは菊池君と」

「そうッス! いやぁさっきのベースマジ痺れました! アレなら天才の俺に付いて来れそうで安心したッスわぁ!!」

「へぇ~」

 

 特に最近入ったばかりの練馬や八神に対しては、何かを見透かしたかのように、一際興味深そうに見入っている。そうして全員と顔を合わせた後、朝日奈はさも楽し気に口元を歪ませた。

 

「面白そうなバンドじゃん。みんな宜しくねぇ~」

 

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