BanG Dream! It's MyGO!!!!!×Re・Load 作:ビンカーフランス
その後の三番スタジオは、何時もよりも少しだけ賑やかだった、
「入りはどうする? 僕から始めた方が良いかな?」
「えぇー? 自分のド派手なギターソロから始めた方が良いんじゃないッスかぁ?」
「初めからギターソロはねぇだろ。大人しく八神に任せろ」
「俺はどっちでも行けるから任せるわ~」
それぞれが自分の持ってきた楽器に対し、アンプに接続したり、スティックで叩き心地を確かめている中、唯一ボーカルでやる事の無い練馬は、此処に集まった四人のメンバーを呆然と眺めていた。
そして実感するのは、遂に揃ったという事実。それを噛み締めると、どうにも頬の緩みが止まらなくなってしまう。
──―最初のバンドは、解散してしまった。自分一人だけが夢を追い続けた結果、誰も居なくなって足を止めてしまった。
だが今は違う。高松 燈の──ーMygo!!!!!! の詩で蘇り、そして唯一無二の親友、黒崎とも出会えた。そして、夢を目指せるだけの仲間が出来た。それが凄く嬉しくて、この今が夢なんじゃないかと思ってしまうくらいだ。
「何気持ちワリィ面してんだ。準備終わったぞ」
「へっ? わ、ワリィ!」
だがそんな夢見心地も、ようやくドラムの慣らしを終えた黒崎に指摘されると醒めてしまう。周りを見渡してみれば、他のメンバーも既に準備が済んでいるようだった。
「曲はアレで良いんスよね? 最近流行ってるロック系の奴?」
「それで合ってる。さっき送ったばっかだが、お前らクラスならイケんだろ?」
スタジオに向かう前に、LINEグループで共有していた曲を、スマホの音楽アプリから垂れ流す。それに反応して八神は涼しい顔で、ギターを軽く当て弾きしてみせた。
「問題ないよ。でも……」
八神が会話の中で、チラリと横を見る。その視線の先には重いベースを気だるそうに構えた、さっき入ったばかりのベーシスト──ー朝日奈の方へ向いていた。
「俺なら問題ないよ~、大体の曲なら合わせられっからさ~」
試しにとばかりに、朝日奈が軽くワンフレーズを弾く。するとその音は、当て弾きした八神のメロディと、一寸のズレなく正確に合致してた。
「そうか、だったら始めるか」
これなら問題ないと黒崎が頷くと、その目線が合図を待つかのように練馬を捉える。すると、マイクを握ったままのマイクを自然と強く握ってしまう。
これがバンドとして初めてだ。数日前に出来たばかり、顔を合わせたのも数える処か、数分前に初めての奴だって居る。正直、この五人の音が重なった時、どうなるのか練馬にも分からない。
だからこそ、確かめてみたい。自分が信じた直感を──ーこのメンバーとなら最高の音楽を続けられると信じた自分が、間違いじゃない事を。
「それじゃあ! 行くぞ!!」
だから、ここ一番の大きな声で、マイクを通じて思いっきり宣言する。
「──―見えた」
──―最後のギターフレーズが消えても、張り裂けそうな喉の痛みや、全力を出して流れる汗も忘れて、練馬は夢中になっていた。
「何が見えたって言うの?」
「見えたんだよ! こう……景色が!!」
弾き終えたばかりの八神が、汗で濡れた髪を掻き上げつつ、そう問いかける。それに対し、練馬は興奮に身を任せて応えた。
見えてしまった。練馬の眼には確かに見えたのだ。
激しいテンポの中でも一際芯に響くリズム、熱量と派手さに溢れたギターソロ、まるで調和するように流暢なメロディ、自由ながらも音の土台を支える低音──―そして、真っ直ぐに歌う自分の声。
それら全部が重なったあの時──―練馬の眼には、まだ見た事も無い大舞台が確かに映っていた。
そこには広いステージを埋め尽くす観客、今まで感じた事も無いような熱狂──そして、汗まみれになりながら、それでも笑い交じりに音を鳴らし続けるメンバーが居た。
それが夢かどうだったかなんて分からない。あやふやすぎる未来の姿に、確かな物なんである筈が無い。
それでもあの光景を──ー夢を見た時に、振動の鼓動が息を覚えたてのように、激しく高鳴ったのは間違いない。それだけは未だ荒い振動が証明している。
「何言ってるんスかね? ハイになりすぎて幻覚見えたとか?」
「流石にそれは言い過ぎ。まぁ、良い感じだったのは認めるけどさ~」
だが、その光景は誰も見えていない。聞いて来た八神は勿論、菊池と朝日奈も何やらと首を捻っている。
──―しかし黒崎だけは、眼を見開いていた。
「何だ、今の感覚……」
「黒崎、お前も見えたのか!?」
「ハァ? お前の言う見えたってのは分かんねぇけど……こう、胸の中が今までにねぇくらい、バクバクしてやがる」
黒崎は信じられないとばかりに、まだ高鳴っているであろう自分の心臓に手を当てる。それを見て、自分が見たあの景色が、やはり間違いではないと練馬は確信した。
「イケる……このメンバーなら絶対にイケる!!」
練馬が掌を握り締める──ーその拳の中には確かな感触が残っていた。今はまだ何も無くとも、いつか必ず掴み取れると信じられる。
「コイツラとなら、一生音楽続けられる!!」
バンドを始めたキッカケ──ーそして、自分がもう一度目指し始めた夢を、このバンドメンバーとなら、辿り着けると本気で信じられる。
「一生って、ちょっと重くないッスかぁ?」
「いや出来るって! お前らとなら」
こんな時でも空気を読まない菊池は、それが冗談だと捉えているようだが、練馬は至って本気だ。例え、知り合って数日もしない内だとしても、また『一生』を賭けても良いとさえ思っている。
「……やっぱり、練馬って面白いわ~。八神もそう思わない?」
「何で僕に聞くかな? ……まぁ、退屈はしなさそうだよね」
その端では朝日奈と八神が、互いに肩を竦めながら目線を交わしている。その様子は何処か楽しんでいるように見えた。
「……」
一方、黒崎の方はと言うと、まだ余韻が抜けきっていないのか黙っている。だけど、親友である黒崎なら分かってくれると練馬は信じている。
──―まだ始まったばかりの五人。だからこそ、これから先を思い描けば、何処までも夢や理想が広がっていく。
その最初として、練馬は集まったメンバーの顔を目に焼き付け、そして握りしめたままの拳を高く突き上げた。
「よっしゃやろうぜ! この五人で何処までもな!!」
次の回で、ようやくMygo!!!!!が出てきます。
本日の十時ごろに投稿予定です。