BanG Dream! It's MyGO!!!!!×Re・Load 作:ビンカーフランス
「なぁ~、まだ始まらない感じ? つか帰っても良い~?」
「もう少しだって! だから帰らないで! マジで!!」
Ringのライブフロアに来て10分もしない内に、帰る気満々の朝日奈を練馬が何とか食い止める。
それもその筈、まだライブも何も始まってない状態で帰られては、何の為に連れて来たのか分からなくなってしまう。
だが、朝日奈はライブステージを埋める同じ観客を見渡すと、やや気まずそうに口元を引き攣らせる。
「でも俺達って結構場違いじゃない~? 周りは女性ファンばっかだし~」
「まぁ、そうだね。僕はこういうの慣れてるけどね」
「八神まで! つかそれって嫌味かテメェ!?」
だがそこに朝日奈の隣に居た八神までもが同調してくる。しかも、自分は顔が良いから女性に囲まれるのは慣れてますよと、さりげないアピールも加えてだ。
「黒崎ぃ! 何か言ってやれ! こういう時出番だろ!!」
「どういう時の出番を言ってやがんだよ。後、言っとくが俺もそっち寄りだからな」
「畜生! お前だけは味方だと思ってたのに!!」
しかも味方だと思っていた黒崎に縋りついても、此処に来てまさかの裏切り行為。いよいよ練馬が孤立し始めたその時、思わぬ所から菊池がいつもの軽薄さで割り込んで来た。
「俺は楽しみッスけどね! こういうライブで盛り上がるの結構好きッスよ!!」
「菊池ぃ……お前だけは俺の味方だよ!! こんな奴ら放って置いて俺らだけで楽しもうな!!」
「いや、お前が誘ったんだろうが……」
黒崎の冷酷なツッコみは無視しつつ、練馬は唯一の味方である菊池と肩を組む。すると、その菊池がふと疑問を覚えた様に尋ねて来た。
「でも、そんなに良いんスか? 先輩が異常に推してる。その『Mygo!!!!!』っての?」
「おうよ! 聞いたら泣いて感動すると思うぜ!!」
練馬はドンと音が付きそうなほど、大きく胸を張る。なにせ、このライブの為だけに、わざわざ休日に全員を呼び出した程だ。
キッカケは──―バンドを組んで、早数週間。初めこそ探り合うような距離感だったバンドメンバーも、日々の練習や雑談なんかを通して、少しずつ互いの性格が分かり始めた頃だ。
ある日の練習終わり、何時も借りている三番スタジオに残って雑談していた頃、ふと八神が「そう言えば、みんなってどんな曲が好きなの?」というのを発端に話が始まった。
「緩い感じのが好きかな~。あんまテンポ速いと疲れるし~」
「僕は特にこだわりとかは無いけど……最近流行ってるJ-PoP系かな?」
「俺はやっぱBPMが高い奴ッスか! 何かノリノリになれる系の!!」
「ロック。つかバンドやってんのならそれしかねぇだろ」
とまぁ、四人がそれぞれ全く違う回答をしている中、練馬も流れに乗って応えると。
「俺はやっぱりMyGO!!!!! だな! 特に燈ちゃんの声がスゲェ響くんだよな……」
「「「「…………」」」」
何故だか微妙な空気が流れた。まるで有名漫画の話をしている時に、一人だけ誰も知らないマイナーキャラを熱弁されたような、場違いな雰囲気が練馬に突如襲い掛かった。
「……いや、お前なら言うとは思ったけどな。普通、こういう話でアマチュアバンドのMygo!!!!! は出さねぇんだよ」
「そ、それはぁ、何となく分かるけどさぁ! マジで良いんだって! マジで!!」
「そう言われても、聞いた事も無いから全く共感できないわ~」
「ゔっ!?」
黒崎&朝日奈から、ごもっともな指摘を受けて、練馬は精神的に大ダメージを負ってしまう。
「だ、だったら……!!」
だがしかし、練馬は引き下がらない。一ファンとしてMygo!!!!! がマイナーと思われるのも嫌だし、何より今後メンバーから『マイナー好きで通ぶってる奴』とかいう不名誉なレッテルを張られる訳にはいかない。
「だったら! 全員でMyGO!!!!! のライブ見に行けば良いだろ!!」
──―とまぁ、こんな感じの経緯で、わざわざ休日に男四人連れ出して、女性ファンひしめく『MyGO!!!!!』のライブにやって来た訳だった。しかもチケット代1000円は練馬持ちでだ。
「へぇー、Mygo!!!!! って結構可愛い子多いね、フォローしとこうかな?」
消えて行った5000円の事を悼しみながら、練馬がそんな事を思い出していると、何やらSNSでリサーチしていたらしい八神が、ちょっと興味ありげに呟いた。
「どんな感じ~……ふぅん、良いんじゃないの~?」
「このギターの子とか、俺と同じくらいじゃないッスか? まぁ、ギターの腕なら俺の方が上だと思うッスけどね!!」
そこにMyGO!!!!! を知らない朝日奈と菊池も加わり、三人揃ってSNSに載っているメンバーの写真や動画を覗き込む。
「最近結成したばかりなのに、随分人気みたいだね」
「そうなんだよ! 全体的にバンドとして完成度が高ぇし、何より燈ちゃんの声が良い!!」
丁度、八神がメンバー全体の写真を拡大した所で、練馬が真ん中の少女の事を指し示す。
すると、菊池が「そう言えば」と前置きを付けてから、ふと尋ねて来た。
「いつも“燈ちゃん,燈ちゃん”とかって呼んでるッスけど、練馬先輩の知り合い何スか?」
「そりゃあ知り合いも何も……」
「おい、そろそろ始まるぞ」
練馬が目くるめく燈ちゃんとの出会いから話そうとした矢先、黒崎の言葉を合図に、ライブフロア全体が一斉に暗転した。
──スポットライドが、ステージの上を照らす。そこには五人の少女達が既に立っていた。
「は、初めまして……ま、MyGO!!!!! です。き、今日は宜しくお願いします……!!」
ステージの真ん中で、弱弱し気にマイクを握り締める少女──高松 燈が、か細い声で喋り始める。
「今はまだ、迷子だけど……迷子でも、進み続けたいから……」
話すのが上手くないのか、何度も詰まっては再び言葉を紡いでいく。それでもまるで続きを待つように、優しい静寂がライブフロアを包み込んでいる。
「だから……聞いてください」
そして、次の瞬間── MyGO!!!!! の音が始まった。
ドン、と低く深いバスドラムの音が会場を揺らす。ギターとベースがそれに続くようにリズムを刻み、フロアの空気が一気に引き締まる。ステージ上の五人が互いに一瞥を交わし──最後に、燈がゆっくりとマイクに口を近づけた。
そうして──ーいつか練馬に光を灯した彼女の詩が、始まった。
MyGO!!!!!がようやく登場したので、今後は一日一話投稿となります。
三日で二話連続投稿が終わったよ……