BanG Dream! It's MyGO!!!!!×Re・Load 作:ビンカーフランス
すまぬ!!
そして、一曲目が終わると同時に、ライブフロアが、一斉に拍手と歓声の渦に包まれた。
その渦を肌で感じながら、練馬は思わず、胸を打つ感情のままに拳を握り締めた。
「ほらな……だから言っただろ。MyGO!!!!! は、マジで良いって!」
「確かに可愛いだけじゃなくて、音楽もちゃんとしてるね。練馬君が推す気持ちも少しは分かったかも」
「だろ!」
八神が何時もとは少し違った笑顔をしている。練馬は確かな感触を覚えて、
「良い感じじゃ~ん。ドラムとベースもちゃんとリズム取ってるし。しかも、あのリードギターの子って、菊池よりも上手いんじゃないの~?」
「そ、そんな事ねぇッスよ! いやまぁ? 確かに上手いッスけどぉ? お、俺ならアレの三倍速く弾けるッスからね!!」
「もう人間技じゃ出来ねぇだろ。アホな嘘付いてんじゃねぇよ」
「そうだぜ~、諦めて「私はド下手です」って認めた方が楽だぞ~」
「それはちょっと違くないッスか? 自分ド下手じゃなくて天才何スけど!?」
初めて来た朝日奈や菊池も好感触なようで、黒崎も交えて何やら盛り上がっている。
最初連れて来た時はどんな反応をされるかと思ったが、そんな心配は必要なかったらしい。これで心置きなくMyGO!!!!! のライブを楽しむ事が出来ると、練馬が内心ホッと一息付く。
そうして練馬が再びステージ上へと眼を向ける。MyGO!!!!! の楽器隊は、既に次の曲の準備も終わって、丁度そろそろライブが再開しそうな雰囲気だった。
──―そんな時。
「ぁ……!!」
マイクには乗らない、燈の短い声が聞こえた気がした。
直後、見上げていた練馬の眼が、ステージ上の燈の眼と合う。そして小さくだが──ー確かに手を振ってくれた。
「……そうか」
初めて練馬がライブを見たあの時は、まだ顔も名前も知られてなくて、無数の観客に紛れたタダの一人だった。
だけど今は違う。こうして大勢の中からでも、燈は練馬を見つけてくれる。
それがどうにも嬉しくて──ーあの時より前に進めた事を実感し、練馬の口元からつい笑みがこぼれてしまった。
──―無数の拍手と共にステージを降りた燈は、舞台裏の暗がりに入ると同時に、ようやく大きな息を吐く事が出来た。
スポットライトの眩しい光も、観客の熱狂も──ーそして、チラリと目が合ったあの人の笑顔もまだ、身体の中に残っている。火照ったままの体温は暫くの間冷めそうにない。
そんな身体で引きずる様に歩いていると、後ろから肩をポンポンと、軽く叩かれた。
「お疲れ~、ともりん! 今日メッチャ良くなかったぁ?」
「愛音ちゃん……」
後ろを振り返ると、そこにはさっきまで一緒にステージに立っていた自分の友達──―愛音が、満面の笑顔で立っていた。
「う、うん。すごく、良かった……」
「だよねぇっ!! なんかスッゴイ盛り上がってたし! もしかしたら今までで一番かもぉ!!」
愛音が両手を大袈裟に広げ、はしゃいだ様子で声を跳ね上げる。そんな楽しそうな友達の姿に、燈はクスリと笑いを漏らした。
だがそこに水を差すように、先にステージから降りていた立希が、呆れたような冷ややかな目線を向けた。
「……どこがだよ。三回も間違えてたくせに」
「ゔっ!!」
気まずそうに顔を歪める愛音。だが、それでもと口を尖らせ、今度は両手をバタバタさせ始めた。
「で、でもぉ! みんなメッチャ盛り上がってたし、よくない!? 気にしすぎだって~」
「そういうのって、後で見返したら恥ずかしくなるんだよねぇ」
しかし通り過ぎさまに、そよが優しい笑みを浮かべながらも、鋭い一言で愛音に止めを突き刺した。とうとうメンタルがボコボコにされた愛音は、「みんなひっど~い」と項垂れ出した。
そんな時、パリッとした音が、ステージ裏で妙に響いた。
「クッキー、美味しい」
舞台裏に並べられたテーブルの方を見れば、楽奈がマイペースにも、差し入れに置かれていたクッキーを、モグモグと齧っていた。
「楽奈ちゃん。今食べたら、晩ご飯食べられなくなっちゃうよ~?」
「ん~……でも、今食べたい」
そよが注意したにも関わらず、口の端にクッキーの欠片を舐め取りながら、楽奈はふわっとした笑みで、もう一口食べ始めた。
「全く……後でどうなっても知らないからねぇ」
「なんか、そよりんお母さんみたいだね」
「愛音ちゃん、それ止めて」
「良いんじゃない? 野良猫の世話してくれるなら助かるし」
「……にゃーん?」
そんなやり取りを眺めながら、燈は小さく笑った。
一度は壊れたバンドの絆──―だけど、今はまた繋がっている。この光景は自分が諦めずに、また手を繋ごうとしたからだと思えば、こんな自分だとしても、燈は少しだけ誇らしく思える。
「とっもり~ん! 何してるのー? 先行っちゃうよー」
──―と、そんな事を考えていると、愛音の呼び声が耳を差す。見れば、既に自分以外のメンバー全員が、舞台裏から外に出る扉を開いて待っていた。
「あっ、ごめん……!!」
少し小走りになりながら、急いで歩き出す。暗い舞台裏でそれは危険だと分かっていても、咄嗟の行動を止める事は出来なかった。
故に、肩にぶつかったケースの山が、頭上から崩れ落ちて来たとしても、燈は咄嗟に気が付く事は出来なかった。
「燈っ!!」
「あっ……」
立希が切羽詰まった声で叫ぶが、もう遅かった。燈が見上げた頭上には、まるで自分を圧し潰すように、重厚なケースが既に落ちて来ていた。
燈は咄嗟に目を閉じてしまう──ーだが、幾ら待っても、堅いケースの衝撃はやって来なかった。
「──―燈ちゃん、大丈夫?」
代わりに声が聞こえる──ーそして目を開けると、背中に伸し掛かるショーケースの山から、知っている顔が暗闇に浮かんでいた。
「練馬……君?」
燈と練馬の関係を知りたい方は是非とも、前作をお読みに。