BanG Dream! It's MyGO!!!!!×Re・Load 作:ビンカーフランス
丁度良かった、と練馬は背中に伸し掛かる重圧に歯を食いしばりながら、練馬はそう思っていた。
MyGO!!!!! ライブが終わったその後、折角なので新しく組んだバンドメンバーの紹介も兼ねて、顔を合わせに来た矢先でコレだ。
向かっている途中に崩れる音を聞きつけて、慌てて走り出していなかったら、間に合わなかっただろう。そんな事で気を紛らわせようとするが、いよいよ腰が限界に近づいて来た。
その時、開きっぱなしだった廊下側の扉側から、練馬を追いかけて来た練馬がやって来た。
「いきなり走り出し──って、練馬! お前大丈夫か!!」
「だ、だいじょ……あっ、やっぱ無理。メッチャ重いぃぃ! 助けて黒崎!!」
「だろうな!」
状況を理解した黒崎がすぐさま駆け寄ると、練馬に伸し掛かったケースの端を掴む。
「行くぞ! せーの!!」
「よいしょっとぉ!!」
そして互いの掛け声で持ち上げると、何が詰まっているのか分からないケースが、むんずと持ち上がった。そのまま床を傷つけないよう、慎重に降ろすと、練馬はその場にへたり込んで息を吐いた。
「いやぁ助かったわ! ありがとな!!」
「礼は要らねぇよ。それよりも……」
黒崎が「ん」と視線を誘導する。そちらを見ると、呆然としていた燈が、ハッと気を取り戻したように、慌てて練馬へと駆け寄った。
「ね、練馬君! 大丈夫!?」
「ん? へーきへーき! 燈ちゃんの為ならこれくらい!!」
正直腰が砕ける寸前だが、練馬は笑顔を作ってみせる。すると、両手をバタバタさせて慌てていた燈が、少しだけ目を潤ませながら言葉を返す。
「練馬君……ありがとう」
コレ心臓留まったんじゃね? と練馬は胸を抑えた。好きな人から贈られる涙目ながらの感謝というのは、そのぐらいの破壊力は絶対にある。
「燈!!」
「ともりん!!」
「ブベッ!?」
だがそんな痛みも、心配して駆けつけて来た立希と愛音に突き飛ばされた痛みで、空しくも上書きされてしまった。
「大丈夫!? 怪我は無い!? ば、絆創膏!!」
「絆創膏持ってるよ! えっと! えっと!!」
立希が燈の怪我を念入りに調べ始め、愛音が衣装のポケットからガサガサと弄る。
だが、その様子を見ていたそよが、やれやれと肩を竦めていた。
「二人とも落ち着いて、燈ちゃんは怪我してないでしょ。寧ろ練馬君の方がケガしてそうだけど」
「……大丈夫?」
心配してくれているのか、ポツリと楽奈が呟く。生憎頑丈な身体に生まれた故、怪我とかそう言うのは無い。寧ろ心の方がよっぽど重症だと思う。
──―そんな騒がしさの中、黒崎がやって来た廊下の方から、バタバタと複数の足音が近づいてきた。
「練馬せんぱーい! 急に走り出して……って、どうしたんスかそれ!?」
そして最初に現れたのは菊池だ。廊下の外からヒョイっと顔を出すと、ケースが崩れた舞台裏の惨事を前に目を丸くした。
「うわぁ……これは酷いね」
続けて現れたのは八神だ。眉を僅かに潜めた後、状況を理解したらしく、そのまま舞台裏の中へと足を踏み入れた。
すると、突然足を踏み入れた見知らぬ八神に、立希が警戒の目を向ける。
「……誰、お前ら」
立希の鋭い眼光で空気がピリつき始める。だが、そこで中和するように、ふわりとした声が割って入った。
「二人の付き添い~。それと差し入れにね? ほら」
暢気な声と一緒に、遅れて舞台裏に入って来たのは朝日奈だ。その片手には、此処へ来る途中に、カフェスペースで買って来た差し入れの紙袋が握られている。
「差し入れ……?」
「そう、差し入れ~。良かったら食べる?」
「食べる!?」
朝日奈が近くに居たそよへ差し入れの紙袋を渡すが、如何にも怪しい奴という顔をして受け取ろうとしない。代わりに、楽奈が掻っ攫うように貰い受けると、そのまま中の抹茶フラペチーノを選び取る。
それをキッカケに、突如見知らぬ人間がやって来た事への混乱は収まった。しかし、「誰だ? コイツ」という謎の緊張感は未だ残っている。
「あっ、そういや忘れてた」
その時、ようやく腰の痛みが引けて来た練馬が立ち上がる。そう言えば、此処へ来たのは、久しぶりにMygo!!!!! の面々と顔を合わせに来ただけじゃない。
「紹介するぜ。新しいバンドメンバーの菊池、八神、それと朝日奈だ」
「ちわーッス! 天才ギタリストの菊池ッス! よろしく!!」
「八神です、みんな宜しくね?」
「朝日奈で~す。よろしく」
紹介された三人が個性的な挨拶を終えると、愛音がはしゃいだように練馬の肩を揺さぶった。
「なになに~、練馬君もバンド始めたの? じゃあ私達とお揃いじゃん!!」
「まぁな! しかもコイツらスゲェ上手ぇんだぜ! マジヤベェよ!!」
「いやぁ! なんせ自分ってば天才スからねぇ~!!」
またしても、特に菊池が得意げに胸を張り上げる。それがキッカケか分からないが、ようやく謎の緊張感も解け始めた。
「自慢話も良いけど、とりあえず片づけない?」
そよの現実的な一言に、場の空気が再度引き締まった。
「結構散らばってるし、これもう全部片づけた方が良くね?」
朝日奈も辺りを見回す。見れば、ケースの山が崩れた事で、その周囲一帯も大惨事となっている。少なくとも、このまま見知らぬ顔で帰れるような有様ではない。
「それじゃあ、全員で片づけようか」
そして、まるで場の空気を読んだような八神の提案に、この場に居る誰も口を挟まなかった。
こうして、思わぬ形で顔を合わせた二つのバンドは、やや騒がしくも共同作業という初の交流が始まった。