BanG Dream! It's MyGO!!!!!×Re・Load   作:ビンカーフランス

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第七話:後片付け

 丁度良かった、と練馬は背中に伸し掛かる重圧に歯を食いしばりながら、練馬はそう思っていた。

 

 MyGO!!!!! ライブが終わったその後、折角なので新しく組んだバンドメンバーの紹介も兼ねて、顔を合わせに来た矢先でコレだ。

 

 向かっている途中に崩れる音を聞きつけて、慌てて走り出していなかったら、間に合わなかっただろう。そんな事で気を紛らわせようとするが、いよいよ腰が限界に近づいて来た。

 

 その時、開きっぱなしだった廊下側の扉側から、練馬を追いかけて来た練馬がやって来た。

 

「いきなり走り出し──って、練馬! お前大丈夫か!!」

「だ、だいじょ……あっ、やっぱ無理。メッチャ重いぃぃ! 助けて黒崎!!」

「だろうな!」

 

 状況を理解した黒崎がすぐさま駆け寄ると、練馬に伸し掛かったケースの端を掴む。

 

「行くぞ! せーの!!」

「よいしょっとぉ!!」

 

 そして互いの掛け声で持ち上げると、何が詰まっているのか分からないケースが、むんずと持ち上がった。そのまま床を傷つけないよう、慎重に降ろすと、練馬はその場にへたり込んで息を吐いた。

 

「いやぁ助かったわ! ありがとな!!」

「礼は要らねぇよ。それよりも……」

 

 黒崎が「ん」と視線を誘導する。そちらを見ると、呆然としていた燈が、ハッと気を取り戻したように、慌てて練馬へと駆け寄った。

 

「ね、練馬君! 大丈夫!?」

「ん? へーきへーき! 燈ちゃんの為ならこれくらい!!」

 

 正直腰が砕ける寸前だが、練馬は笑顔を作ってみせる。すると、両手をバタバタさせて慌てていた燈が、少しだけ目を潤ませながら言葉を返す。

 

「練馬君……ありがとう」

 

 コレ心臓留まったんじゃね? と練馬は胸を抑えた。好きな人から贈られる涙目ながらの感謝というのは、そのぐらいの破壊力は絶対にある。

 

「燈!!」

「ともりん!!」

「ブベッ!?」

 

 だがそんな痛みも、心配して駆けつけて来た立希と愛音に突き飛ばされた痛みで、空しくも上書きされてしまった。

 

「大丈夫!? 怪我は無い!? ば、絆創膏!!」

「絆創膏持ってるよ! えっと! えっと!!」

 

 立希が燈の怪我を念入りに調べ始め、愛音が衣装のポケットからガサガサと弄る。

 

 だが、その様子を見ていたそよが、やれやれと肩を竦めていた。

 

「二人とも落ち着いて、燈ちゃんは怪我してないでしょ。寧ろ練馬君の方がケガしてそうだけど」

「……大丈夫?」

 

 心配してくれているのか、ポツリと楽奈が呟く。生憎頑丈な身体に生まれた故、怪我とかそう言うのは無い。寧ろ心の方がよっぽど重症だと思う。

 

 ──―そんな騒がしさの中、黒崎がやって来た廊下の方から、バタバタと複数の足音が近づいてきた。

 

「練馬せんぱーい! 急に走り出して……って、どうしたんスかそれ!?」

 

 そして最初に現れたのは菊池だ。廊下の外からヒョイっと顔を出すと、ケースが崩れた舞台裏の惨事を前に目を丸くした。

 

「うわぁ……これは酷いね」

 

 続けて現れたのは八神だ。眉を僅かに潜めた後、状況を理解したらしく、そのまま舞台裏の中へと足を踏み入れた。

 

 すると、突然足を踏み入れた見知らぬ八神に、立希が警戒の目を向ける。

 

「……誰、お前ら」

 

 立希の鋭い眼光で空気がピリつき始める。だが、そこで中和するように、ふわりとした声が割って入った。

 

「二人の付き添い~。それと差し入れにね? ほら」

 

 暢気な声と一緒に、遅れて舞台裏に入って来たのは朝日奈だ。その片手には、此処へ来る途中に、カフェスペースで買って来た差し入れの紙袋が握られている。

 

「差し入れ……?」

「そう、差し入れ~。良かったら食べる?」

「食べる!?」

 

 朝日奈が近くに居たそよへ差し入れの紙袋を渡すが、如何にも怪しい奴という顔をして受け取ろうとしない。代わりに、楽奈が掻っ攫うように貰い受けると、そのまま中の抹茶フラペチーノを選び取る。

 

 それをキッカケに、突如見知らぬ人間がやって来た事への混乱は収まった。しかし、「誰だ? コイツ」という謎の緊張感は未だ残っている。

 

「あっ、そういや忘れてた」

 

 その時、ようやく腰の痛みが引けて来た練馬が立ち上がる。そう言えば、此処へ来たのは、久しぶりにMygo!!!!! の面々と顔を合わせに来ただけじゃない。

 

「紹介するぜ。新しいバンドメンバーの菊池、八神、それと朝日奈だ」

「ちわーッス! 天才ギタリストの菊池ッス! よろしく!!」

「八神です、みんな宜しくね?」

「朝日奈で~す。よろしく」

 

 紹介された三人が個性的な挨拶を終えると、愛音がはしゃいだように練馬の肩を揺さぶった。

 

「なになに~、練馬君もバンド始めたの? じゃあ私達とお揃いじゃん!!」

「まぁな! しかもコイツらスゲェ上手ぇんだぜ! マジヤベェよ!!」

「いやぁ! なんせ自分ってば天才スからねぇ~!!」

 

 またしても、特に菊池が得意げに胸を張り上げる。それがキッカケか分からないが、ようやく謎の緊張感も解け始めた。

 

「自慢話も良いけど、とりあえず片づけない?」

 

 そよの現実的な一言に、場の空気が再度引き締まった。

 

「結構散らばってるし、これもう全部片づけた方が良くね?」

 

 朝日奈も辺りを見回す。見れば、ケースの山が崩れた事で、その周囲一帯も大惨事となっている。少なくとも、このまま見知らぬ顔で帰れるような有様ではない。

 

「それじゃあ、全員で片づけようか」

 

 そして、まるで場の空気を読んだような八神の提案に、この場に居る誰も口を挟まなかった。

 

 こうして、思わぬ形で顔を合わせた二つのバンドは、やや騒がしくも共同作業という初の交流が始まった。

 

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