NieR:Automata JUSTICE   作:うぇいかた

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遂に彼が登場します。※彼推しの人は閲覧注意!!推奨:ブラウザバック


Phase11 「優シキ少年」

 

 

メイリン・ホーク。

かつてザフトの精鋭艦ミネルバで、幾多の修羅場を声一つで捌いてきた通信士の「圧」は、戦闘特化自動歩兵人形“ヨルハ”たちをも震え上がらせた。

 

「「……っ、申し訳ありませんでしたぁっ!!」」

 

先ほどまでアスランの足元に縋り付いていたヨルハ7人たちは、メイリンの一喝によって引き潮のように、驚くべき速さで廊下の彼方へと消えていった。

 

 

静まり返った広大な格納庫。

残されたのは、呆然と立ち尽くすアスランと、肩で息をするメイリンだけだった。だが、その静寂の端っこ、巨大な構造材の影に、1つの動く影があった。

 

 

「……え?」

メイリンが真っ先に気づいた。

 

 

そこには、これまでのヨルハたちとは明らかに異なるシルエットの個体がいた。漆黒のハーフパンツ、少年のような細い体躯。銀色の髪を揺らし、目元を黒いゴーグルで覆った少年が、柱の陰から二人を照れくさそうに、それでいて壊れ物を眺めるような、畏怖に満ちた視線で見つめていたのだ。

 

「……女だけかと思ったら、男もいたか・・。」

アスランは少しだけ安堵した。

 

女性ばかりに囲まれ、宗教的な熱狂をぶつけられる状況に精神を削られていた彼にとって、同性の姿は一筋の希望に見えた。見た目は自分よりも遥かに幼く、少年のように見えるが、その立ち振る舞いには高い知性が感じられる。

 

 

アスランはゆっくりと、少年の方へ歩みを進めた。

「……君は、どうやら他の子たちとは違い、冷静なようだな。話が通じそうだ。……俺はアスラン・ザラ。君の名前は?」

 

 

「あ……あ、ああ……っ!」

アスランに声をかけられた瞬間、少年は胸を強く押さえ、その場で過呼吸気味に激しく動悸を乱した。

 

 

ドクン、ドクン、とブラックボックスが異常なまでのパルスを刻む。

 

 

(なんだ……この感覚……。2Bに抱いている『大切な人』や『憧れ』とも違う。……これが、過去のアーカイブにある『カリスマ』……本物の人類が放つ、魂の(プレッシャー)なのか!?)

 

 

アスランが差し出した手を見て、少年は失神しそうなほどの衝撃を受けていた。

 

 

だが、アスランがさらに一歩近づき、その影から背後のメイリンの姿が露わになった瞬間――。

 

少年のブラックボックスは、ついに限界突破(オーバーヒート)を起こした。

 

 

「…………ッ!!?」

少年の視線が、アスランを通り越してメイリンに固定される。

 

 

 

鮮やかな赤髪のツインテール。

ヨルハの「死」を象徴する黒いドレスとは正反対の、生命力に溢れた緑色をしているザフト軍の通信士の制服。

 

 

そして何より、ヨルハ隊員たちの扇情的なミニスカートとは対照的な、膝下までしっかりと隠れた落ち着きのあるスカートの丈。

 

 

「……えっ? な、何? 私の顔に何か付いてる?」

メイリンが不思議そうに首を傾げる。

 

その瞬間、少年の中で、大切に育んできた2Bへの淡い想いが、どこか遠くの銀河まで吹き飛んでいった・・・。

 

 

(……きれいだ。……なんて、なんて『実在感』のある人なんだ……! 2Bのような冷たい美しさじゃない。……温かくて、厳しくて、でも……太陽みたいだ!)

 

 

少年はガタガタと震えながら、突如として背筋をピンと伸ばした。

先ほどまでの照れくさそうな態度はどこへやら、彼は自分のハーフパンツや上着の裾を整え、精一杯「大人の男」を演じようと、気取ったポーズでメイリンの前に躍り出た。

 

 

「……お初にお目にかかります! !人類様!!僕はヨルハ九号S型、通称“9S”と申します/////以後お見知り置きを/////」

 

9Sは、かつてアーカイブで読んだ「古の騎士の挨拶」を再現しようとして、少し声が裏返りながらも熱弁を振るい始めた。

 

 

「僕は、このヨルハ部隊の中でも分析やハッキング能力に特化した機体です! 地上のあらゆる機械生命体のコアを解析し、この世界の真理を暴くことが僕の使命でございます////・・・ですが、メイリン様! 貴女の放ったあの凛としたお声、そしてその完璧なまでの制服の着こなし・・・僕は今、自分のパーソナルデータが、貴女という存在によって完全に上書きされるのを感じていますっ!!」

 

 

「……は、はぁ……」

 

 

「メイリン様! もも・・もも・・もしよろしければ、貴女様のモバイル端末のセキュリティ設定を僕が担当させていただけませんか!? 貴女様の機密事項を、僕の全演算能力を賭けて死守します!! もちろん、地上の美味しい水や、珍しい植物のデータも・・・全部、全部貴女様だけに捧げますから!!」

 

 

アスランは、差し出した手を空中で止めたまま、凍りついた。

 

 

(・・・こいつもダメだ。・・話し相手として期待した俺が馬鹿だった・・。)

 

 

目の前の少年のヨルハは、今やアスランのことなど眼中にない。

 

赤髪のツインテール美少女、メイリン・ホークという「本物の、生身の女性」の圧倒的な愛嬌と可憐さに、システムごと持っていかれてしまっていた。

 

「……アスランさん。……この子も、2Bさんたちと同じ病気にかかってますよ?……しかも、なんだか方向性が凄く……『重い』です」

 

 

メイリンが引き気味にアスランの背中に隠れる。

 

「あああああ/////僕の熱意に感動して照れてしまってアスラン様の背後へ身を隠すなんて・・///僕の想いは・・罪なんですね///

あああ////」

9Sはあらぬ方向に解釈を広げて悶絶し始めた。

 

 

こうして、バンカーにまた一人、アスランとは別のベクトルで「人類」という名の毒に冒された、厄介な忠犬(ストーカー候補)が誕生してしまったのである。

 

アスランは少しだけ彼の言動に考えを巡らせる

 

(強化人間ならば、幼い頃から戦闘訓練と洗脳と刷り込みがされてるだろう。この子は今この瞬間に“メイリン”をキッカケに異性に対する感情というのが爆発したのだろうか?)

 

そんな彼の考えを台無しにするかのように、新たな「バグ」が異音を立てて発生した。

 

ヨルハ部隊の中でも随一の演算能力を誇り、優秀なスキャナーモデルして地上の機械生命体を震え上がらせてきたはずの少年9S、その彼がいま、自らのメインプロセッサを焼き切らんばかりの勢いで、ガタガタと膝を震わせ、顔面(人工皮膚)を真っ赤に染め上げている。

 

「あ……あの!! アスラン様!! メ……メメメメメメメメメメメ……ッ!!」

 

彼の視線の先には、先ほど一喝でヨルハ女子部隊を散らせた「赤髪の聖女」メイリン・ホークがいた。

 

 

9Sの網膜センサーは、メイリンのツインテールが揺れる角度、制服の生地が描く柔らかな曲線、そして何より「生身の人間」だけが放つ、微細な体温のゆらぎを、秒間数億回という異常なサンプリングレートで記録し続けていた。

 

 

「メメメ・・・メイリン様!! 僕のことは、ナインズって……ナ・・ナ、ナインズって呼んでくださると、最高に嬉しゅうござりまするぅぅぅ!!!////」

 

 

「…………ござりまする?」

メイリンは、思わず目を丸くした。

 

 

目の前の銀髪の少年は、緊張のあまり言語中枢の辞書データがクラッシュしたのか、それともアーカイブの「古の丁寧語」をランダムに合成してしまったのか、もはやどこの時代の侍か、あるいは奇妙な道化師のような口調に成り果てていた。

 

 

「ナ……ナインズ? 9Sじゃなくて、ナインズって呼べばいいの?」

 

 

「はいぃッ!! そうでする! 拙者……いえ、僕のこと、そう呼んでいただければ、ブラックボックスが爆発しても本望にございますればッ!!」

 

9Sは、もはや自分が何を言っているのか理解していない。

 

彼にとって、2Bは「大切な人」であり「憧れ」だった。だが、目の前のメイリンは、彼が数千年の歴史アーカイブの中で夢想してきた「人間」そのものの象徴だった。

 

その彼女から、自分だけの愛称で呼ばれるというシミュレーションを実行した瞬間、彼の脳内には、人工頭脳全回路をダウンさせかねないほどの幸福物質である“擬似エンドルフィン”が溢れ出していたのだ。

 

 

「……アスランさん。この子、大丈夫なんですか? 目が回ってますよ?」

 

 

メイリンが不安げにアスランの袖を引く。

アスランは、差し出した右手をゆっくりと下ろした。その表情には、同性としての、そして戦士としての深い落胆と、一周回った哀れみが浮かんでいる。

 

 

「……ダメだ。メイリン。こいつも、根っこはあの2Bたちと同じ……いや、それ以上に質が悪い。……見てみろ、あの鼻の下の下がり方を。……あれは、洗脳というよりは、ただの『一目惚れ』だ」

 

 

 

アスランの「一目惚れ」という言葉に、9Sのセンサーが過敏に反応した。

 

 

「ひ……ひとめぼれッ!? そ、そそそそそそんな、人類様に向かってそのような大それた不敬な感情などッ!! 僕はただ、メイリン様のパーソナルデータを永久保存して、毎朝起きた瞬間にそのお声を再生し、僕のOSの起動音に設定したいだけで……ッ!!」

 

 

「それ、完全にストーカーの思考だよナインズ君!!」

 

メイリンの鋭いツッコミが、9Sの胸を貫く。

だが、9Sにとってそのツッコミさえも「聖なる言葉」として処理された。

 

 

「あああッ!! 『ストーカー』という古の愛称で呼ばれたぁぁッ!! メイリン様、最高にございまするぅぅ!!」

 

 

「……話にならん」

 

 

アスランは深いため息をつき、頭を抱えた。

2B筆頭の女性ヨルハたちは、アスランを「神」として崇拝し、命を投げ出すことを厭わない。

そしてヨルハの数少ない少年“9S”は、メイリンを「女神」として崇拝し、プライバシーの概念すらもかなぐり捨てて付き従おうとしている。

 

 

 

このバンカーには、まともな会話が成立する相手が一人も存在しないのか?

アスランは、ふとグフが運ばれたであろう方向へ目を向ける。

 

 

 

(メイリンの言う通りだ。早くグフを回収しないと、あいつら、俺の機体になんてデコレーションを施すか分かったもんじゃない……。金の刺繍が入ったリボンでも付けられた日には、カガリやキラに合わせる顔がない……!)

 

 

 

「ナインズ・・。“ござりまする”はもういいから、グフ・・俺の機体の場所へ案内しろ。メイリンへのハッキング云々は、その後に考えてやる!!」

 

 

「は、ははぁーッ!! 仰せのままに、アスラン様!! メイリン様のご機嫌を損ねぬよう、最高級のセキュリティでご案内いたしまするぅぅ!!」

 

 

9Sは、まるで尻尾を振る子犬のような勢いで、しかし不自然なほど格好をつけたステップで歩き出した。

 

 

一方、その背後では、騒ぎを聞きつけた1人のヨルハが、物陰から9Sを凄まじい形相で睨みつけていた。

 

 

『・・・9S・・・自分だけメイリン様に名前を呼ばせて・・!!』

 

 

 

バンカー内での「人類」を巡る派閥争いは、アスランの正義感とは無関係なところで、より苛烈な、そしてより血なまぐさい方向へと緩やかに進んでいく・・。

 

 

 

「……メイリン。頼むから、あんまり彼らを刺激しないでくれ」

 

 

「私、普通にしてるだけなんですけど・・・////」

 

 

最大の敵は、機械生命体でも異星人でもなく、自分たちの「存在そのもの」が引き起こす、アンドロイドたちの愛という名の暴走であった。




停滞してたNieR×マリオのコラボ小説を進めるので、一旦NieR×SEEDの更新は遅くなります。

どのカップリングが面白そうか?

  • アスラン×2B
  • アスラン×9S
  • アスラン×A2
  • アスラン×司令官
  • アスラン×6O
  • アスラン×21O
  • アスラン×パスカル
  • アスラン×アネモネ
  • アスラン×デボルポポル
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