原作開始前に最難関の森で過剰に努力した俺は、いずれ破滅する推しヒロインを幸せに導きたい【聖騎士学園の転生半魔神】 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
「しょぼい
ヴォルクの重い大剣を、オルトはただの剣で弾く。
その何の変哲もない剣を向け、オルトは言葉を付け足した。
「お前にはこれで十分だ」
「ほお……?」
対して、ヴォルクは顔をひきつらせる。
モブだと思い込んでいるオルトに、まさか弾き返されるとは思わなかったのだ。
ならばと、ヴォルクも力を見せる。
「
ヴォルクは爆発的に神力を
さらなる身体強化を
今の攻防よりも、神器は数段硬化されている。
「この、井の中の
しかし、その程度はオルトも当然のようにできる。
「その言葉、そっくりそのまま返すよ」
「バカな!?」
同じく神器の密度を高め、真っ向から抑えてみせた。
だが、ギリっと歯を
「チィッ! 生意気なクソモブが!」
「……!」
激しい
【
だが、固有の特殊効果により、相手にだけ重い一撃を与える。
「オラオラ、さっきまでの威勢はどうした!」
「……っ!」
ヴォルクもその性能を理解しているのだろう。
作中
加えて、ヴォルク自身の強さも相まり、剣筋は“速くて重い”。
その単純な言葉で表すにふさわしく、小細工が一切ない強さだ。
(これが悪役転生ってわけか……!)
本来は努力しない悪役が、努力してさらに強くなる。
王道の悪役転生の道筋を、ヴォルクも
その証拠に、現時点で持ち得る力とはとても思えない。
(これは数カ月どころの話じゃないな)
おそらくオルトと同じ二年間。
もしくは、それ以上前からヴォルクに
それほどに、同級生では飛び抜けた実力だ。
──オルトという
「もう十分だ」
「……ッ!?」
激しい乱舞の中、またもオルトがヴォルクの剣を弾く。
ほんの一瞬にも満たない、
「お前の実力は分かった」
制限時間が迫る中、オルトもただ防御に回っていたわけではない。
原作から
その結果──
「脅威には
「んだと……!?」
自分を上回っていることはないと判断した。
すると、オルトは立場を明らかにする。
「お前に特に恨みはない。でも一つ忠告しておく」
「……!」
「もしレイダに手を出すなら、俺はお前を許さない」
「……!?」
対して、ヴォルクは目を見開いた。
(なんだこの力は……!?)
オルトの神力が上昇していく。
すでに全力を出しているヴォルクなど話にならない。
姿形は変わらないが、ヴォルクはその威圧感に背筋を凍らせた。
(こ、こんなの、シナリオ終盤クラスじゃ……!)
そう思えるほどに圧倒的な存在感だ。
ヴォルクの目の前にいるのは、文字通りの“化け物”である。
そして、今度はオルトからヴォルクへ迫る。
「せいぜいおとなしくしていろ」
「……ッ!?」
ヴォルクもとっさに防御するが──
オルトの神器が、ヴォルクの【覇道の黒剣】を破壊したのだ。
(神器破壊、だと……!?)
以前、ミリネに絡んできた上級生に対して行ったものだ。
ここから導かれるのは、二人の神力量には
神器破壊は、
(このモブが、俺より上だと言うのか……!?)
「ぐっ……」
神力を消費し過ぎたのか、ヴォルクは膝をつく。
自然と、オルトが上から見下ろす形になった。
「悪い事さえしなければ、俺も口出しはしない」
「……!」
「その転生を楽しむんだな」
「……っ!!」
警告を残し、オルトはヴォルクに背を向けた。
その方向から、推しが走ってくるのを感知していたからだ。
状況を目にしたレイダは、はっと声を上げた。
「ア、アンタ……!」
「なんとか勝ったよ」
「な、なんとかって……」
だが、そう言うには少々無理がある。
膝をついているのが、現成績一位のヴォルク・ナイトフォール。
それを下してなお、オルトは余裕を保っているからだ。
「……フッ、まあいいわ」
それでも、レイダは笑みを浮かべた。
それでこそ“自分が目指すべき道”だと思ったのだ。
オルトは、最後にヴォルクを目を向ける。
「
「……ッ!」
転生関連の話はしない。
他人にバレるのは、双方にメリットがないからだ。
タイミングよく戦闘が終わったのも、オルトが計算していたのかもしれない。
レイダが勝利し、ヴォルクから目的を聞き出した上で、転生の話を聞かれる前に決着させるまでの時間を。
どこまでも底が知れない少年だ。
「じゃあ、レイダ」
「ええ」
そうして、オルトとレイダは同時に
制限時間は残り五秒。
ギリギリの中、オルト達の勝利だ。
「やったわね!」
「ああ!」
二人は強く
お互いの成果を称えるように。
「と、ところで、レイダ」
「ん? なによ」
そんな終わりを迎えた中、オルトはふとたずねる。
「その、
「何の話──って、ハッ!」
レイダはタッグ戦に夢中で忘れていた。
勝利したらオルトと「友達になる」という件を。
「そ、それは……って、~~~っ!」
すると、レイダは途端に顔を真っ赤にする。
なんて恥ずかしい事を言っていたんだと自覚したようだ。
(『アンタはなりたいの?』って、なに!?)
友達について、レイダは“恋人一歩手前”という程に重く考えている。
冷静になった今、素直にYESと言えるわけがない。
「レ、レイダ?」
「うっさい! ちょっと黙ってなさいよ!」
真っ赤な顔を
今思えば、約束した時のレイダは精神的に弱っていた。
友達になろうとすら言えず。
オルトの足を引っ張り。
自分のせいで一時はピンチに陥った。
それらがレイダの本心を引き出したのだ。
しかし、今はとても言い出せない。
(でも、でも~~~!)
“一度言った事を
それは自分の騎士道に反する。
騎士に二言はない。
ならばと、レイダは
「今日の夜、第三公園!」
「え?」
「夕食後だから! 分かったわね! じゃあわたしは行くから!」
「ちょっ、レイダ!?」
そしてそのまま、真っ赤な顔を抑えてぴゅーっと逃げ出す。
タッグ戦の後にもかかわらず、あまりに元気だった。
「う、うん……わかった」
こうして、タッグ戦は終了した──。
次回、ご褒美回の予感……?