ワタクシが新時代の破壊者ですわ~ァ!   作:サイリウム(夕宙リウム)

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プロローグ 1

ウマ娘

 

彼女達は走るために生まれてきた

 

ときに数奇で、時に輝かしい歴史を持つ別世界の名前とともに生まれ

 

その魂を受け継いで走る

 

それが彼女たちの運命

 

この世界に生きるウマ娘の未来のレース結果は

 

まだ誰にも解らない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ならワタクシが全て吹き飛ばして差し上げますわァ!!!

 

 

おーほっほっ! 跪きなさい愚民ども! このワタクシがご高説を垂れてやりますわ!

 

うん? 偉そう? おほー! そりゃワタクシ偉いんですもの! 名家の娘ですわよ! 地主系ウマ娘ですわよ! 一応お貴族様なんですのよ! 偉いですわー!!! ……あ、いや。メジロ家とかは出さないでくださる? あ、あそこと比べられたら吹き飛んじゃいますので、はい。

 

 

(……にしても、面白い夢でしたわね。)

 

 

現在ワタクシがいるのは、寮の自室。栄光ある中央トレセン学園の栗東寮の一室です。

 

時刻は朝の5時で、目覚ましと共に“日課のため”にいつも通りの起床を決めたのですが……。それまで見ていた夢が、ちょっと面白くてですね?

 

 

(【劇場版ウマ娘プリティダービー 新時代の扉】、ねぇ?)

 

 

思い起こすのは、私達が住む世界を映像として切り取った光景。ちょうど100分程度で見切れるいい感じの映画でした。

 

内容は勿論、音楽映像共に素晴らしく一つの芸術作品と言っていいもの。もしそれがワタクシの頭の中で構成されたものならばもうすんばらしい才能。今すぐメガホンを取って撮影に入りたいと思うほどです。

 

しかしながら……

 

 

「異様なリアリティ、正夢的な奴ですわね!」

 

 

そう、余りにも現実に沿い過ぎている。

 

もっと言えば“このまま何もしなければなぞる様に現実となる”という確信。まさに未来予知かのような事象。マージでヤバいですわ。

 

ま、まぁ? この輝かしきワタクシに超能力が目覚めたと考えれば? もう飛び切り素敵なことですが! これさえあれば世界は思いのまま! 我が家のことを『そよ風で消し飛びそうな木っ端男爵家』とか言いやがった奴を纏めて消し飛ばしてやりますわァ! おーほっほっ!!!

 

 

「……でも、とーっても。気に入りませんわねェ?」

 

 

私が見た光景の中では、確か同じクラスの『ジャングルポケット』と言う方が主人公の立ち位置でした。

 

彼女はレースの中で挫折し、立ち直り、成長する。えぇえぇ、それだけ見れば実に感動的なお話と言えるでしょう。切磋琢磨するお仲間もいれば、尊敬する先輩もいらっしゃる。あのタキオンとかいうちょっとヤバ気な方もちゃんと救われたと言いますか、“気が付けた”ようですし、そこは問題ありません。

 

ワタクシが気に喰わないのは、ひとえに。

 

 

「この“ゲートクラッシャー”様を差し置いて活躍するなど、許せませんわッ!」

 

 

……え? 名前がお嬢様っぽくない?

 

うっせぇですわねブチ転がしますわよッ! ドラム缶にコンクリ詰めて東京湾に沈めてやりましょうか!? お魚を数える準備をしておくのですねッ!!!

 

んん! とにかく! 私を差し置いて活躍するのなど許せません! 私が見た夢が正夢で、今からソレをなぞる様に現実が描かれるのであれば、ブチ壊すまで! 三百万歩譲って壊せないにしても、あの光景を現実と認め足掻かないなどお嬢様の風上にも置けませんわッ!

 

気に喰わないものは、全力をもって踏みつぶす!

 

それがワタクシの流儀でしてよ~~~ッ!!!!!!!

 

 

「そうと決まれば早速行動ですわッ! デビューは一年ほど遅らせようかと思っていましたけど、もう知りませんッ! 定められた運命は破壊されるためにあるのです! 全速前進、オールクラッシュですわァァァアアアアア!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うわけで模擬レースですわ~~ッ!」

 

「あ、あのねゲートクラッシャーちゃん。こういうのはね、事前に申請をね?」

 

「うっせーですわ教官殿! どうせ芋引いて飛んだ子がいらっしゃるのでしょう! ならその空いたスペースにワタクシが入ればいいだけのこと! 有効活用というものでしょう!!!」

 

「口悪うっさ。……いやまぁそうなんだけどね?」

 

 

あぁもう、要領を得ませんわね! そんなにお魚を数える仕事がお好き!?

 

そう脅してみれば、しぶしぶですが出走登録を行ってくれる教官殿。ふふ、最初からそうしておけば余計な時間を使わずともよかったのです。今後は賢い選択をオススメしますわ! ……まぁ手間をかけさせたのは確かですので、褒美を取らせてやりましょう!

 

 

「黄金色のお菓子を懐に収めて差し上げますわ~!!!」

 

「いや賄賂は駄目だから……、あぁなんだほんとにお菓子か。うん、じゃあ頂くね。……いやこれも賄賂か? あ、美味しい。」

 

 

急に悩み出した彼を無視しながら、他のウマ娘たちが集まる場所へと移動していきます。

 

この尊き身がやって来たのは、言わずと知れたトレセン内のターフです。理由は勿論、ぶっ壊すわため。先ほど見た夢が事実であれば、どれだけ素晴らしい未来であっても“あらかじめ定められた”という一点で『ワタクシが破壊すべき未来』に成り下がります。陳腐な言葉には成りますが、自分が進む道は自分で決める物でしょう?

 

そんな大事な道を勝手に定めようとするのならば……、踏み均すのが我が定め。

 

この世界のスポットライトはワタクシの為に存在するのです。他の愚民どもに譲ってやる謂れはありませんわ!

 

 

(しかしそんな完璧なワタクシでも、単身でレースに出ることは叶いません。)

 

 

厄介なルールではありますが、中央のレースに出走するにはまず、トレーナーを見つけなければいけません。チームか専属担当、所謂“保護者”となりうる有資格者からのサインが必要なのです。

 

しかしことはそう簡単に運びません。

 

本来であれば、我が家の威光。名家たるパゥワーを持って優秀なトレーナーを囲い込み、このワタクシに仕える名誉を与えていたのですが……。

 

 

(ぐぅぅ! 資金力ッ!!!)

 

 

お恥ずかしくて口には決して出せませんが、我が家はちょっと。いやかなり不味い感じの状況に陥っています。

 

元々地主系であり、陛下から男爵位を頂くほどの名誉ある我ら。軍にも大きな伝手を持ち、ほんの数十年前までは日の沈まぬ繁栄を謳歌していたようなのですが……。まぁ普通に敗戦で全部吹き飛んじゃったみたいなんですよね、はい。

 

軍は解体されたので伝手は意味がなくなりましたし、地主の根幹たる土地も憎きヤンキーどもに解放されてしまいました。一応まだ手持ちの資金と一部の土地は残っていたので、名家たる根幹までを奪われることは無かったのですが……。

 

まぁはい。祖母の代で事業が空中分解しまして、はい。

 

 

(ま、まぁ!? このような苦境も!? このワタクシを輝かせるためのスパイスと思えば! なぁぁんにも問題ありませんわァ!!!)

 

 

伝手が無いのなら、単に優秀なトレーナーを自身の手でつかみ取ればいいだけのこと! というかそもそも我が才能をもってすればトレーナーなんて別になくてもいいというもの! ワタクシの力をもってすれば独力で運命の破壊などたやすいのですわ~~!!!

 

勿論トレーナーがどうしても手伝いたいというのなら許してやってもいいですが、 その価値など出走するためのサイン役でしかありませんわ! にぎやかしですわ~!

 

 

(えぇえぇ! そうと決まれば話は早い!)

 

 

この模擬レースを持って我が威光を世に“ほんの少しだけ早く”知らしめる! そして同時にトレーナーをゲッチュする! そう考えればお家の事情などなーんの問題もありませんわ~~!!!

 

でもあんまり大きい所、複数人を見ているチームは面白くありませんわね。このワタクシという玉体を扱うのです。マンツーマンに絞らせて頂きましょう!

 

 

「さて……」

 

「あ、そこの! 代わりに入った子だよね! 次君の番だよ!」

 

「あぁ失礼、すぐに参りますわ~!」

 

 

これから行われる模擬レース、それを見物しているのであろうトレーナーたちの方に視線を向けますが……、それよりも先に近くのウマ娘に声をかけられます。どうやら既に“ねじ込み”の件が共有されているようですね。

 

我が道を遮るものは全て破壊し尽くすのがワタクシですが、お嬢様であるがゆえに、他の方に必要以上のご迷惑をおかけすのは本意ではありません。パパっと準備してしまいましょう。

 

 

「飛び入り参加なんて、やるねぇ? あ、そうそう。今回のゲートだけど、なんか整備不良とかで使えないなの。」

 

「でしょう?」

 

「うん? ……とにかく今日は一直線にならんで合図と共に、って感じになるみたい。気をつけてね。」

 

「ご親切にどうも、感謝ですわ!」

 

 

……さて、それでは意識を切り替えてまいりましょうか。

 

これから行われるのは、我らウマ娘にとっての“戦場”。求められるのはただ全力を持って他の方々を叩き潰すことのみ。真剣勝負の場で、余計な感情を持ち込むなど阿呆のすることですからね。

 

 

「ふふふ、ブチのめして差し上げますわァ?」

 

 

 

 

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