ワタクシが新時代の破壊者ですわ~ァ! 作:サイリウム(夕宙リウム)
「おーほっほっ!!! すんばらしい朝ですわァ!!! 今日も今日とてトレーニング! の前に、ゲートというゲートをこの世から消し飛ばし……」
「殴るよ?」
「冗談ですわッ! お嬢様ジョーク!」
略しておジョーク! 丁寧ですわー!!!
というわけでごきげんよう愚民ども! このゲートクラッシャー様が直々に挨拶をして差し上げますわァ! 日課の破壊活動を物理的に止められてしまったのは業腹以外の何物でもありませんが、良きトレーナーが付いたのでプラスということにしておきましょうっ!
(……にしても、想像以上に良い“鯛”が釣れましたわね!)
ワタクシより目立とうとする『新時代の扉』とかいう者たち。それを破壊するためには出走しなくてはならず、出走するためにはトレーナーが必要。そんなわけでいい感じのトレーナーを見つけようと模擬レースに飛び入り参加したのですが……。
一本釣り出来たのは、この『竹トレーナー』という女性。
髪を短めに整え、動きやすい様にパンツスタイル。アロマシガーと言うタバコみたいなのを吸っているのはちょっと減点ですが、いかにもシゴデキという感じの女性です。本人も結構動けるようで、ほんとワタクシ好みの“従者”を見つけることが出来ましたわ!
「でもおタバコはおよしになって!」
「アロマシガーですよお馬鹿。吸うタイプのアロマで、肺に負担がかかる成分は一切なし。貴女のせいでストレスがヤバいんです。換気はしてますし、コレぐらい我慢してください。」
そんな! 今週間まだ70個しかゲートをお釈迦にしていないと言うのに! ……え、それが問題? そんにゃぁ。
まぁ明日も破壊しに行くので落ち込んでいる暇なんて無いんですけど、という言葉を口の中に転がしながら。今現在いる部屋。ワタクシ達に割り振られたトレーナー室へと目を向けます。
そんな部屋の壁に飾られているのは、何枚もの写真たち。
そしてその写真の中で笑うのは、盾やトロフィーを持った数々ウマ娘。中でも目を引くのは……
(まさか凱旋門賞を取ったことのあるトレーナーに巡り合えるとは! ふふふ! ワタクシの覇道に相応しい始まりですわね!)
「ですがこの方、何処かで見たことのある様な気が……。」
そう口にしながら思考を回していると、トレーナー様の方で動きが。
先程まで動かしていた指を止め、口元で火を灯していたおタバコをぐしゃり。動き始めたコピー機に移動しながら、こちらに言葉を投げかけてきます。
「ふぅ、こんなものでいいでしょう。ゲク子。少しお時間いいですか?」
「……ゲク子?」
「名前長いでしょう? ゲートクラッシャー、略してゲク子。」
……。
ぐぅぅぅウウウウウ! 言い返せないッ! 反抗しても物理で押さえつけられる気がするッ!!!
でもいずれ! 初対面でぶん殴られた借りを併せて、百倍返ししてやりますからね! 今はまだパワーバランスがそちらに傾いていますので受け入れて差し上げますが、いつか『やーい竹林! 変な名前ー!』と弄り倒して「なんか言った?」い、言ってませんわッ!!!
「ならいいけれど。……さて、ゲク子。トレーニングの方が少しずつ軌道に乗って来ましたので、今日は“これから”のことを考えましょう。無論今後、適宜変更はあると思いますが出走するレースを考えていきましょう。」
「おぉ、レース!」
いいですわね、いいですわね! ワタクシ好みのお話になって参りました!
「でしたらワタクシ、ホープフルに出たいですわ!」
「ホープフル? 近いのから来ましたね。……となると最終的な目標は三冠、クラシックルートですか?」
「えぇその通り!!!」
何度も言いますが、この身の目標はあの映画の中でワタクシよりも目立っていた愚民どもの征伐になります。勿論、彼らには彼らの物語というものが存在するのでしょうが……。
残念ながらこの世界のスポットライトはワタクシの為だけに存在するのです。
ワタクシがそう定めた以上、主役の座を譲ってやるつもりなど毛頭ございません。
タキオン様が超光速へと到達なさるのなら、それよりも速く。
ポケット様が最強であるのなら、それよりも強く。
カフェ様がその幻影を追い越すのなら、より早く。
ダンツ様が主役へと繰り出そうとするのなら、ワタクシが先に。
この身は“壊すため”にあるのです。
ワタクシの前にどれだけ感動的なドラマが存在していたとしても、全て無意味! 我が身を彩る可憐な花でしかありません! もちろん批判も罵詈雑言も結構! 言いたきゃ好きなだけ吠えておけばいいのです! 負け犬として可愛がってやりましょうとも!
つまり! “新時代”など丸ごと全部!
喰らいつくして壊しつくしてやりますわッ!!!!!
「……少々暴力的すぎる気がしますけど、その熱意は認めるしかありませんね。一応ティアラの用意もしていましたが、こっちは破棄。三冠狙いで行きましょうか。」
「あら? 我が従者と言うものが解っていませんわね! 狙うんじゃなくて、ワタクシが“取る”のですわ!」
ワタクシの勝利はすでに決定事項!
ムカつくのをぶっ壊せば、最終的に三冠に成ってるのです! これほどお得で、賢くて、素晴らしい“結末”はないでしょう?
「成程。確かに貴女にとっては“弱気”過ぎたみたいですね。」
「その通り! してトレーナー! このワタクシが勝利するためのトレーニング! これを考える栄誉を差し上げますわ!」
確かに今日まで少し練習を見てもらっていましたが、ぬるくてぬるくて湯冷めしちゃうようなレベルでございました! もっと苛烈で! 激烈で! 脳みそが吹き飛ぶようなステキな練習を求めますわ!
確かに破壊者たるワタクシであれば、練習などしなくても粉砕は可能! しかしながらそれではこの神から頂いた玉体の持ち腐れというもの! 輝くならば最大限輝くのが我が使命!
つまり、トレーニングでも気を抜きませんってコトですのよ~~~!!!
「その意気やよし! ……と、言いたいところなんですが。」
そう言いながら彼女が手渡してくるのは、一枚の紙きれ。
其処に大きく書かれているのは、“不合格”という単語。
そしてその下に続く、『欠席のため試験実施できず』という文字列。
「ゲート試験。ズル休みしたみたいですね。」
「……。」
「これで3度目ですよね? これ受からないとレース出れないって言いましたよね? この前怒った時は泣きながら『次こそはちゃんと受ける』って言いましたよね? ……どういう、ことですか?」
え、えっと……。
「逃走ッ! じゃなくて背後への万歳突g「制裁ッ!!!!!」
直後ワタクシに叩き込まれる鉄拳。
その日、神に愛されたはずのこの身は、お星さまになったのでした。
おしまいッ!
「殺してませんが? はぁ、全く。……にしてもホープフルですか。まだ手綱は握れてますし……。少し考えてみましょうか。」