天が讃えし転生馬   作:びりーばー

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フェブラリーS、ネタバレは避けるけど...


人気馬決着過ぎるよぉ...


馬主と調教師、当歳で決まる

 

 

黒富士の離乳も終わった9月上旬。

高平牧場で電話が鳴った。ちなみに当時の電話回線は短波である。

 

 

「場長!電話でーす!」

 

「おーう!すまんがあの当歳頼んだ」

 

「了解です、受話器どうぞ」

 

『どうも。私、東京競馬場所属の調教師 小東喜蔵 というものですが』

 

『小東?小東ってあの!あの小東騎手ですか?』

 

 

ーーー

小東喜蔵

 

日本競馬史上初のクラシック三冠達成騎手であり、セントライトの主戦騎手。1950年に騎手を引退し調教師免許を取得した、いわば当時の日本競馬を代表する人物の1人である。

ーーー

 

 

『ええ、間違いありませんよ』

 

『こ、小東調教師がうちのような新興に何の御用が?』

 

『いやね、1年前に岩手の試験場にいるセントライトにわざわざ種付けしてもらうために北海道からきた牧場があると伺いまして』

 

『それは間違いなくうちですが…』

 

『そのセントライトの子、見せてもらいたいのです。あと同行者も1人連れていってもよろしいでしょうか?』

 

『構いませんよ、同行者も是非是非!日時はいつになさいますか?』

 

『日時は……………』

 

『かしこまりました!お待ちしております!』

 

 

 

「…よっしゃああああ!」

 

 

場長は1人、とんでもない叫び声をあげた。

それは当歳の世話のために放牧地にいたスタッフにも聞こえてきたらしく。

 

 

 

「どうしましたあああ!」

 

 

 

「あとで言うよおおお!」

 

 

 

 

 

仕事をとんでもないスピードで終わらせてきたスタッフはやや興奮気味に場長に質問した、誰からの電話だったのかと。

 

 

「それはだな… あの!小東調教師だ!」

 

 

「…えっ、あのセントライトの?」

 

「そうだぞお」

 

「すげえすげえ!だけどあの小東さんがうちに何の用だったんです?」

 

 

実はこのスタッフもセントライトが大好きだったのである。

場長のセントライト交配を推進したのはスタッフだったりするのだ。

 

 

「うちの黒富士を見たいそうだ」

 

 

「なるほど、セントライトの仔でしかも純サラブレッドですもんね」

 

 

当時のセントライトは牧場ではなく岩手の試験場に身を置いていており、セントライトの交配相手にはアラブや中間種が含まれるようになったのが種牡馬成績の低迷だと捉えられている。だからこそ純サラブレッドのセントライト産駒は珍しいのだ。

 

 

「あと小東さんに同行者がいるらしい、もしかしたら黒富士の将来の馬主かもしれん」

 

「なんと!日時はいつです?」

 

「日時はな……………」

 

 

 

————————————

 

 

「お待ちしていました、高平牧場の場長 佐山和憲 と申します。黒富士は近くの放牧地にいます」

 

「ありがとうございます、いやはや少し早く着いてしまい申し訳ないです…」

 

 

「いやいや大丈夫ですよ、そちらの横にいる方は…」

 

「私か、私は下藤雄策というものでね。久しぶりに馬を持とうかと思い小東君にお供させてもらった次第だ」

 

 

「下藤って… セントライトの馬主じゃないですか!」

 

 

ーーー

下藤雄策

 

共に顕彰馬である1939年東京優駿を優勝したクモハタ、日本競馬史上初のクラシック三冠馬セントライトなど、数々の名馬を所有した名馬主。東京を襲った東京大空襲によって被害を受けるも戦後の復興に尽力した人物で知られる。

ーーー

 

 

「と、とりあえず黒富士の所に御案内しますね」

 

 

 

————————————

 

 

「この放牧地です、ちょうど当歳馬達が走り回っていますね。先頭を走っているのが黒富士です」

 

 

「あ、あれが黒富士なんですか?」

 

 

「ええ、そうですよ。分かりやすい真っ黒でしょう」

 

 

『下藤さん、幼駒時代のセントライトにそっくりですよ!そっくり!』

 

 

「ああ…こいつあ走るぞ」

 

 

下藤は元々相馬眼に定評がある。

だからこそ自分が見た黒富士を信じられなかった。

セントライトに似た毛色、如何にも走りそうな雰囲気。

何より醸し出していたオーラがとてつもなかった。

 

 

「母親は誰なんですか?」

 

 

「繁殖名はゴールドウエディングです、現役時代はブランドソールって「ブランドソール!?」はっはい…」

 

 

「ブランドソールがここにいたなんて…」

 

 

「よし決めた!佐山さんこの馬買うよ!」

 

 

「ほ、本当ですか!まだ当歳馬なのに買い手が決まるなんて…」

 

 

「調教師も決まってますよ、ね?下藤さん」

 

 

「ははは、分かったからそんな目で見るな小東君」

 

 

———————————————————————————

 

 

どうも黒富士です。

私は今ピッチ走法なるものを習得するために仲間たちと走っています。こういう小回りが利く放牧地ではピッチ走法が向いていると小学校で習いました。

 

 

 

【おまえつよい、ここのいちばん】

《分かった、もう1週走ろう》

ずっと走っていたら周りの仲間達がリーダーだと認めてくれた様です、嬉しい。よし、ペース考えて走るか…

 

 

 

走ってる途中に場長と知らないおっさんが2人やってきた。何やら俺を見て話しているようで、話は聞きたいんだけど馬群のペース握ってるから聞けない、もどかしいなクソッタレ…

 

 

 

 

 

《ふうっ…ふうっ…》

とんでもなくしんどい。だけどこれぐらい走っとかないとG1なんか勝てないように思える。なぜなら俺は64世代だからだ。

 

 

1964年クラシック世代… まさに「五冠馬」シンザンの独壇場だった世代だ。

皐月賞の勢いもそのままに東京優駿でウメノチカラを破ると夏バテがシンザンを襲った。しかし菊花賞ギリギリで体調が回復。万全とは程遠い状態だが目一仕上げで菊花賞出走。単勝1番人気をウメノチカラに譲るも結果は2着に2.1/2差を付ける楽勝で三冠を達成した。

 

レース映像の記憶で言えば当時の実況の『シンザンの三冠馬誕生します』というフレーズが脳にこべりついている。特徴的なフレーズだと思うのは私だけだろうか。

 

 

 

相手がシンザンなんだ、『彼の前では すべての馬が挑戦者だった。』とか列伝ポスターに書かれてあった。時代を創った怪物に勝つためには元が人間だった知識をフル活用してまで勝ってやる。

 

 

 

 

 

 

 

それが競走馬としての、最強への挑戦者としての流儀だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次の投稿時期は不明ですがマイブームが競馬なので1週間以内には出したいですね...
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