世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉 作:ヒツジ(ラム肉
ヒャッハー!
少年、必殺技『重破貫』を習得!
打倒ヒャッハーへの準備は着々と進行中!
だが忘れてはならない!!
相手はあのヒャッハー!
世界の常識を踏み潰す災害指定存在!
今日もどこかで元気に消毒活動中なのであったァ!!
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荒野の輸送隊は慎重だった。
それは当然のことである。
この世界では油断とは死を意味する。
武装車両三台。
装甲補強済み。
護衛バイク付き。
燃料満載。
弾薬積載。
荒野基準で言えば十分に堅実な編成。
「問題なし」
先頭車両の運転席で男が呟く。
周囲確認。
異常なし。
視界良好。
風向き安定。
実に日常的な安全確認。
だが。
荒野において日常とは最も信用ならぬ概念だった。
「……静かすぎるな」
後続車両の通信士が違和感を口にする。
動物の気配がない。
廃墟もない。
略奪者の影もない。
荒野特有の嫌な予感。
だが次の瞬間。
「ヒャッハー!!」
すべてを無意味へ変換する絶叫が響いた。
爆音。
突如として地平線から突っ込んでくる黒い影。
「なッ――!?」
反応より早く。
ドバァァァッ!!
白煙。
熱気。
灼熱の熱水。
視界が一瞬で崩壊する。
「熱ッ!?」
「ぐあああああ!!」
車両側面を襲う高温の暴力。
皮膚を焼き。
感覚を奪い。
理性を吹き飛ばす。
「伏せ――」
指示は最後まで発せられなかった。
黒塗りのバイク。
減速なし。
躊躇なし。
恐怖なし。
「ヒャッハー!!」
狂喜の咆哮と共に突入する災害。
硬鞭が唸る。
ゴシャァァッ!!
衝撃。
装甲車両が横転する。
「バカな……!?」
質量兵器による理不尽な破壊。
機械的強度など一切考慮されない。
ただ砕く。
ただ潰す。
ただ壊す。
それだけ。
銃撃が始まる。
「撃てェ!!」
弾幕。
掃射。
だが。
当たらない。
避けているのではない。
気にしていない。
ヒャッハーは笑っていた。
「ヒャッハッハァ!!」
被弾。
火花。
衝撃。
だが挙動は一切変化しない。
「なんだこいつは……!」
恐怖が伝染する。
戦闘理論が崩壊する。
接近戦。
死角。
間合い。
すべての概念が無効化される。
ヒャッハーが跳躍する。
人間離れした軌道。
次の瞬間。
ゴキィッ!!
硬鞭直撃。
護衛バイク粉砕。
人影吹き飛ぶ。
「ヒャッハー!!」
歓喜。
純粋な歓喜。
破壊行為そのものを楽しむ異常存在。
火炎放射。
爆炎。
熱水再噴射。
輸送隊は瞬く間に崩壊した。
数分後。
荒野は静寂を取り戻す。
残されたのは。
破壊された車両。
焦げた大地。
転がる物資。
そして。
「ヒャッハー……♪」
鼻歌交じりに略奪を開始するモヒカン。
実に上機嫌だった。
燃料確認。
弾薬回収。
使える部品選別。
まるで日常作業。
「悪くねぇなァ」
誰に言うでもない独り言。
欲望ではない。
使命感でもない。
単なる気分。
それがこの怪物の恐ろしさだった。
ヒャッハーに明確な目的はない。
支配欲もない。
征服思想もない。
「ヒャッハーしたい」
ただそれだけ。
だがその結果。
被害規模は軍隊級。
災害指定相当。
理不尽の権化。
物資を積載し終えると、
ヒャッハーは当然のようにバイクへ跨った。
「ヒャッハー!!」
爆音。
加速。
何事もなかったかのように走り去る。
荒野に刻まれる轍。
そして。
恐怖のみが残される。
数十キロ離れた交易拠点。
酒場では不穏な空気が漂っていた。
「またやられたらしいぞ」
「輸送隊が消えた」
「黒いバイクだ」
ざわめき。
沈黙。
理解された恐怖。
ヒャッハー。
すでに伝説級の災害存在。
「遭遇=死亡」
そんな狂った等式が成立しつつあった。
誰かが呟く。
「軍閥ですら手を焼いた相手だ……」
別の男が顔をしかめる。
「関わるだけ無駄だ……」
荒野の住民は適応が早い。
理解できぬものとは距離を取る。
それが生存戦略。
そしてその頃。
ヒャッハーダム。
「ヒャッハー……♪」
当の本人は極めて平和だった。
回収物資を雑に放り投げ、
呑気に設備をいじっている。
外界でどれほど恐怖が拡散していようと関係ない。
戦争も。
略奪も。
人命も。
すべては些末事。
ヒャッハーの世界は極めて単純だった。
楽しいかどうか。
それだけ。
「次は何が来るかねぇ……」
期待に満ちた独り言。
狂気ではない。
純粋な娯楽待機。
荒野最大級の災害は、
今日もまた機嫌よく日常を満喫していた。
その存在自体が、
世界のバランスを破壊し続けながら。