世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉   作:ヒツジ(ラム肉

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第12話 「ヒャッハー無双再開」

ヒャッハー!

 

少年、必殺技『重破貫』を習得!

打倒ヒャッハーへの準備は着々と進行中!

 

だが忘れてはならない!!

 

相手はあのヒャッハー!

世界の常識を踏み潰す災害指定存在!

 

今日もどこかで元気に消毒活動中なのであったァ!!

 

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荒野の輸送隊は慎重だった。

 

それは当然のことである。

 

この世界では油断とは死を意味する。

 

武装車両三台。

 

装甲補強済み。

 

護衛バイク付き。

 

燃料満載。

 

弾薬積載。

 

荒野基準で言えば十分に堅実な編成。

 

「問題なし」

 

先頭車両の運転席で男が呟く。

 

周囲確認。

 

異常なし。

 

視界良好。

 

風向き安定。

 

実に日常的な安全確認。

 

だが。

 

荒野において日常とは最も信用ならぬ概念だった。

 

「……静かすぎるな」

 

後続車両の通信士が違和感を口にする。

 

動物の気配がない。

 

廃墟もない。

 

略奪者の影もない。

 

荒野特有の嫌な予感。

 

だが次の瞬間。

 

「ヒャッハー!!」

 

すべてを無意味へ変換する絶叫が響いた。

 

爆音。

 

突如として地平線から突っ込んでくる黒い影。

 

「なッ――!?」

 

反応より早く。

 

ドバァァァッ!!

 

白煙。

 

熱気。

 

灼熱の熱水。

 

視界が一瞬で崩壊する。

 

「熱ッ!?」

 

「ぐあああああ!!」

 

車両側面を襲う高温の暴力。

 

皮膚を焼き。

 

感覚を奪い。

 

理性を吹き飛ばす。

 

「伏せ――」

 

指示は最後まで発せられなかった。

 

黒塗りのバイク。

 

減速なし。

 

躊躇なし。

 

恐怖なし。

 

「ヒャッハー!!」

 

狂喜の咆哮と共に突入する災害。

 

硬鞭が唸る。

 

ゴシャァァッ!!

 

衝撃。

 

装甲車両が横転する。

 

「バカな……!?」

 

質量兵器による理不尽な破壊。

 

機械的強度など一切考慮されない。

 

ただ砕く。

 

ただ潰す。

 

ただ壊す。

 

それだけ。

 

銃撃が始まる。

 

「撃てェ!!」

 

弾幕。

 

掃射。

 

だが。

 

当たらない。

 

避けているのではない。

 

気にしていない。

 

ヒャッハーは笑っていた。

 

「ヒャッハッハァ!!」

 

被弾。

 

火花。

 

衝撃。

 

だが挙動は一切変化しない。

 

「なんだこいつは……!」

 

恐怖が伝染する。

 

戦闘理論が崩壊する。

 

接近戦。

 

死角。

 

間合い。

 

すべての概念が無効化される。

 

ヒャッハーが跳躍する。

 

人間離れした軌道。

 

次の瞬間。

 

ゴキィッ!!

 

硬鞭直撃。

 

護衛バイク粉砕。

 

人影吹き飛ぶ。

 

「ヒャッハー!!」

 

歓喜。

 

純粋な歓喜。

 

破壊行為そのものを楽しむ異常存在。

 

火炎放射。

 

爆炎。

 

熱水再噴射。

 

輸送隊は瞬く間に崩壊した。

 

数分後。

 

荒野は静寂を取り戻す。

 

残されたのは。

 

破壊された車両。

 

焦げた大地。

 

転がる物資。

 

そして。

 

「ヒャッハー……♪」

 

鼻歌交じりに略奪を開始するモヒカン。

 

実に上機嫌だった。

 

燃料確認。

 

弾薬回収。

 

使える部品選別。

 

まるで日常作業。

 

「悪くねぇなァ」

 

誰に言うでもない独り言。

 

欲望ではない。

 

使命感でもない。

 

単なる気分。

 

それがこの怪物の恐ろしさだった。

 

ヒャッハーに明確な目的はない。

 

支配欲もない。

 

征服思想もない。

 

「ヒャッハーしたい」

 

ただそれだけ。

 

だがその結果。

 

被害規模は軍隊級。

 

災害指定相当。

 

理不尽の権化。

 

物資を積載し終えると、

ヒャッハーは当然のようにバイクへ跨った。

 

「ヒャッハー!!」

 

爆音。

 

加速。

 

何事もなかったかのように走り去る。

 

荒野に刻まれる轍。

 

そして。

 

恐怖のみが残される。

 

数十キロ離れた交易拠点。

 

酒場では不穏な空気が漂っていた。

 

「またやられたらしいぞ」

 

「輸送隊が消えた」

 

「黒いバイクだ」

 

ざわめき。

 

沈黙。

 

理解された恐怖。

 

ヒャッハー。

 

すでに伝説級の災害存在。

 

「遭遇=死亡」

 

そんな狂った等式が成立しつつあった。

 

誰かが呟く。

 

「軍閥ですら手を焼いた相手だ……」

 

別の男が顔をしかめる。

 

「関わるだけ無駄だ……」

 

荒野の住民は適応が早い。

 

理解できぬものとは距離を取る。

 

それが生存戦略。

 

そしてその頃。

 

ヒャッハーダム。

 

「ヒャッハー……♪」

 

当の本人は極めて平和だった。

 

回収物資を雑に放り投げ、

呑気に設備をいじっている。

 

外界でどれほど恐怖が拡散していようと関係ない。

 

戦争も。

 

略奪も。

 

人命も。

 

すべては些末事。

 

ヒャッハーの世界は極めて単純だった。

 

楽しいかどうか。

 

それだけ。

 

「次は何が来るかねぇ……」

 

期待に満ちた独り言。

 

狂気ではない。

 

純粋な娯楽待機。

 

荒野最大級の災害は、

今日もまた機嫌よく日常を満喫していた。

 

その存在自体が、

世界のバランスを破壊し続けながら。

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