世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉 作:ヒツジ(ラム肉
第14話 「軍閥討伐隊 vs ヒャッハー」
冒頭あらすじ
ヒャッハー!!
ついに来たぞ軍閥本気モード!!
戦車!装甲車!重武装兵!!
荒野最大級戦力による討伐作戦発動!!
通常なら勝敗確定の圧殺イベント!!
……だが相手はあの男。
常識が通用すると思った時点で負けなのだァ!!
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地鳴り。
荒野を震わせる重低音。
それは嵐ではない。
自然現象でもない。
軍閥討伐隊。
鋼鉄の行軍である。
戦車列。
装甲車群。
武装輸送車。
重機関砲搭載車両。
対拠点制圧規模の完全武装部隊。
荒野においてこれほどの兵力が動くことは稀だった。
理由は単純。
ここまでしなければならない敵など存在しないからだ。
だが今回は違う。
「目標区域接近」
通信兵の声は平坦だった。
感情を排除した軍閥式発声。
だがその背後で、兵士たちの緊張は明らかだった。
「単独犯、だったよな……?」
誰かの呟き。
「報告上はな」
即答。
だが誰も笑わない。
戦車越しの視界。
ヒャッハーダム。
異様な存在感。
荒野の中で不自然に残された巨大構造物。
まるで世界から浮いているかのような違和感。
「……静かすぎる」
指揮官が眉をひそめた。
通常、この規模の部隊が接近すれば賊徒も野生も逃げ散る。
だが。
何もいない。
動く影すらない。
風の音だけが荒野を撫でていた。
「警戒を――」
その瞬間だった。
バララララララララ……!!
爆音。
全員が反射的に視線を向ける。
ダム側面。
黒い影。
跳ねるように駆ける異様な車体。
「……来たぞ」
誰かが息を呑む。
黒塗りのバイク。
溶接跡だらけの装甲。
異様な武装。
そして。
「ヒャッハー!!」
絶叫。
あまりにも場違いな歓喜。
だが速度は異常。
直線加速。
無駄な挙動ゼロ。
まるで戦場を熟知しているかのような侵入角度。
「撃てェ!!」
号令。
次の瞬間。
機関砲。
重機関銃。
対車両火器。
弾幕の洪水。
通常なら回避不可能。
粉砕確定。
だが。
「……は?」
誰かの声が漏れた。
ヒャッハーは突っ込んでいた。
減速なし。
回避なし。
正面突破。
弾幕の中を。
「バカな……!?」
被弾。
火花。
衝撃。
それでも止まらない。
むしろ加速していた。
「ヒャッハー!!」
笑っている。
狂喜している。
常識の外側。
「なんだコイツはァ!!」
兵士たちの理解が崩れる。
次の瞬間。
ドバァァァッ!!
白煙。
液体噴射。
「火炎放射――!?」
違う。
爆炎ではない。
悲鳴が上がる。
「熱ッッ!!?」
熱水。
高圧噴射された灼熱の暴力。
防具越しでも意味を成さない。
装甲の隙間へ。
視界へ。
関節部へ。
「ぐあァァァ!!」
人間兵器の限界を踏み越える攻撃。
「ヒャッハッハァ!!」
歓喜の笑い声。
バイクは止まらない。
突入。
衝突。
接触。
そして。
ゴシャァッ!!
硬質音。
衝撃。
装甲車側面。
歪む鋼板。
「殴った……!?」
理解不能。
爆薬でも砲撃でもない。
物理打撃。
質量破壊。
「あり得ん!!」
さらに一撃。
履帯部。
ゴキィィッ!!
破壊。
戦車が傾ぐ。
「バカなァァ!!」
戦場理論崩壊。
「距離を取れ!!」
指揮官の怒号。
だが遅い。
ヒャッハーは既に内部へ侵入していた。
近接距離。
最悪の間合い。
熱水。
硬鞭。
銃撃。
すべてが同時に襲いかかる。
それは戦闘ではない。
災害だった。
「化け物……」
誰かが呟く。
だが軍閥は軍閥である。
恐怖で崩壊するほど甘くない。
「包囲しろ!!」
「逃がすな!!」
戦車砲塔旋回。
照準固定。
「今だ――」
発射。
轟音。
直撃――
の瞬間。
ヒャッハーが跳んだ。
爆炎を踏み台に。
あり得ない軌道。
あり得ない跳躍距離。
「なッ……!?」
砲塔上部へ着地。
一瞬の静止。
そして。
ゴシャァァッ!!
観測装置粉砕。
視界喪失。
「ぐあァ!?」
無力化。
続けざまに跳躍。
別車両へ。
破壊。
粉砕。
混乱。
「何なんだコイツはァ!!」
兵士たちは理解していた。
戦っていない。
蹂躙されている。
それでも。
軍閥は退かない。
退けない。
組織とはそういう存在である。
「全火力集中!!」
最後の手段。
飽和攻撃。
爆炎が荒野を覆う。
砲撃。
ミサイル。
ロケット。
爆発。
すべてが一点へ。
そして。
沈黙。
煙。
砂塵。
「……やったか?」
誰かが呟いた。
甘い期待。
淡い希望。
次の瞬間。
爆煙の中。
ゆらりと立ち上がる影。
「ヒャッハー……♪」
戦場凍結。
焼け焦げた外套。
煤だらけの身体。
だが。
笑っていた。
「いいねぇ……最高じゃねぇか……!!」
絶望確定。
軍閥討伐隊。
理解する。
この存在は。
兵器ではない。
兵士でもない。
怪物でもない。
分類不能災害。
「……撤退だ」
誰かが呟いた。
だが。
ヒャッハーは既に走り出していた。
「ヒャッハー!!」
歓喜と共に。
終わりなき暴力の象徴として。