世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉 作:ヒツジ(ラム肉
ヒャッハー!!
荒野最強火力・戦車軍団壊滅!!
絶対優位のはずの軍閥側に走る異変――
理解してしまった恐怖!!
組織という幻想が音を立てて崩れ始めるゥ!!
そして戦場は、
戦争から災害へと変質するゥ!!
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「……撤退だ」
軍閥指揮官の声は、異様なほど静かだった。
怒号ではない。
激情でもない。
事実確認。
感情を排した、純粋な判断。
戦車群壊滅。
重装甲喪失。
火力優位消滅。
戦況、致命的破綻。
合理的結論。
極めて妥当な決断。
だが。
部隊は動かなかった。
「……おい」
副官が呟く。
「命令が聞こえなかったのか?」
違う。
理解していた。
理解していたからこそ、
動けなかった。
視線の先。
爆煙の向こう側。
ゆらり。
揺らめく影。
「ヒャッハー……♪」
鼻歌。
ただの鼻歌。
だが。
それだけで、
戦場の空気が凍り付く。
誰もが思い出していた。
先ほどまでの光景。
砲撃を突き破り、
爆炎を踏み越え、
戦車を叩き潰したモヒカン。
あれは敵ではない。
脅威でもない。
理不尽。
災害。
常識の外側。
「……撃てェェ!!」
半ば悲鳴の号令。
銃撃。
掃射。
爆発。
火力の洪水。
だが。
止まらない。
ヒャッハーは、
被弾しながら前進していた。
避けない。
隠れない。
恐れない。
ただ歩く。
ただ笑う。
「ヒャッハッハァ!!」
楽しそうに。
実に楽しそうに。
この事実が、
何より恐ろしかった。
勝つためではない。
殺すためですらない。
楽しんでいる。
戦争を。
破壊を。
恐怖を。
「ば……化け物……」
誰かの呟き。
その瞬間だった。
軍閥の統制が音を立てて崩壊した。
「逃げろォォ!!」
一人が叫ぶ。
それを見た別の兵が後退する。
さらに別の兵が走り出す。
連鎖。
恐怖の連鎖。
理性は伝染しないが、
恐怖は爆発的に伝染する。
「隊形を維持しろ!!」
指揮官の絶叫。
「持ち場を離れるな!!」
だが。
誰も聞いていなかった。
視界に映るのは、
迫り来るヒャッハーのみ。
戦術も規律も意味を失う。
なぜなら。
相手が理屈で倒せる存在ではないと、
全員が理解してしまったからだ。
ヒャッハー、加速。
次の瞬間。
ゴシャァッ!!
硬鞭一閃。
装甲車粉砕。
鉄板が紙のように歪む。
機械が悲鳴を上げる。
火炎放射。
ゴォォォォ!!
兵士焼却。
悲鳴が空気を裂く。
掃射。
破壊。
粉砕。
蹂躙。
戦場という概念が崩壊していく。
「撃て!撃ち続けろ!!」
なおも抵抗する部隊。
だが。
止められない。
被弾。
爆炎。
衝撃。
すべてを受けながら前進するモヒカン。
物理法則すら疑いたくなる光景。
「なぜだ……!」
兵士の絶叫。
理由は単純。
ヒャッハーだからである。
軍閥。
荒野最大級の武力集団。
暴力の象徴。
秩序の代行者。
支配の装置。
それが。
たった一人の存在によって、
瓦解していく。
これほどの屈辱があるだろうか。
これほどの理不尽があるだろうか。
「……無理だ」
誰かが膝をつく。
「勝てる相手じゃねぇ……」
その言葉は、
戦場全体の真実だった。
ヒャッハーは笑う。
「ヒャッハッハァ!!」
歓喜。
狂喜。
愉悦。
戦場の中心で、
まるで祭りでも眺めるかのように。
「いいねぇ……!!」
破壊の只中で、
心底楽しそうに。
数十分後。
軍閥総力戦部隊。
壊滅。
荒野に沈黙が訪れる。
焼け焦げた大地。
転がる残骸。
歪んだ装甲。
溶けた鉄。
崩壊した常識。
そして。
ダム上部。
「ヒャッハー……♪」
怪物は、
満足げに笑っていた。
まるで。
すべてが予定調和だったかのように。
まるで。
この結末以外あり得なかったかのように。
「さて……」
ヒャッハーが呟く。
誰もいない戦場を見下ろしながら。
「次は誰が楽しませてくれるんだァ?」
荒野に風が吹く。
誰も答えない。
答えられる者が、
もう存在しないのだから。
だが。
この沈黙は終わりではない。
むしろ始まり。
軍閥という巨大勢力の敗北。
それは荒野全域へ拡散する。
恐怖。
噂。
狂気。
そして。
新たな火種。
ヒャッハーという存在が、
伝説ではなく、
現実の災害であることを示した日。
荒野の歴史に刻まれる、
決定的瞬間であった。
「ヒャッハー……♪」
鼻歌だけが、
いつまでも荒野に響いていた。