世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉   作:ヒツジ(ラム肉

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第19話 「停戦交渉」

ヒャッハー!!

 

軍閥総力戦、壊滅!!

 

荒野最大勢力、まさかの全面敗北!!

 

そして導き出される苦渋の選択――

 

停戦交渉!!

 

世紀末世界に最も似合わぬ理性的行動!!

 

だが相手はあのヒャッハー!!

 

嫌な予感しかしねぇぞォォォ!!

 

--------------------

 

軍閥司令部。

 

空気は重かった。

 

異様なほどに。

 

沈黙。

 

誰も口を開かない。

 

机上に積み上げられた報告書。

 

損失一覧。

 

被害記録。

 

全滅判定。

 

「……信じられん」

 

幹部の一人が呟く。

 

声に力はない。

 

それも当然だった。

 

戦車群壊滅。

 

重装甲部隊壊滅。

 

総力戦部隊壊滅。

 

あり得ない。

 

常識が拒絶する結果。

 

「単独犯だぞ……?」

 

確認するような声。

 

だが返答はない。

 

誰もが分かっていた。

 

事実であると。

 

「……戦力ではどうにもならん」

 

別の幹部が低く言う。

 

怒りではない。

 

諦観でもない。

 

純粋な現実認識。

 

「被害が拡大するだけだ」

 

合理的結論。

 

だが。

 

それは軍閥にとって最悪の選択肢だった。

 

交渉。

 

停戦。

 

妥協。

 

軍閥とは暴力による秩序。

 

絶対的武力。

 

恐怖による支配。

 

それが。

 

たった一人に粉砕された。

 

「……認めるのか?」

 

誰かが問う。

 

敗北を。

 

屈辱を。

 

恐怖を。

 

長い沈黙。

 

そして。

 

「……交渉するしかない」

 

絞り出される結論。

 

苦渋。

 

だが否定できない。

 

ヒャッハー。

 

あの異常存在は、

 

通常の敵ではない。

 

勝敗の枠組みそのものが通用しない。

 

「使者を出せ」

 

命令が下る。

 

「白旗を持たせろ」

 

「刺激するな」

 

「絶対に挑発するな」

 

異様な指示の数々。

 

それだけで状況の異常性が理解できる。

 

相手は、

 

国家でも軍隊でもなく、

 

ただのモヒカンである。

 

その頃。

 

ヒャッハーダム。

 

「ヒャッハー……♪」

 

怪物は相変わらず上機嫌だった。

 

ダム上部。

 

瓦礫。

 

残骸。

 

焼け焦げた戦場。

 

そのど真ん中で、

 

鼻歌交じりに設備をいじっている。

 

完全に通常運転。

 

そこへ。

 

白旗。

 

接近する一台の車両。

 

「……ん?」

 

ヒャッハーが顔を上げる。

 

視線固定。

 

数秒の観察。

 

そして。

 

「ヒャッハー!!」

 

なぜか嬉しそうだった。

 

「なんだァ?」

 

使者到着。

 

車両停止。

 

扉が開く。

 

震える軍閥の男。

 

白旗を掲げ、

 

恐る恐る歩み出る。

 

戦場の誰よりも緊張していた。

 

「……何の用だ?」

 

ヒャッハーの声。

 

妙に普通。

 

妙に穏やか。

 

だが逆に恐ろしい。

 

使者の喉が鳴る。

 

唾を飲み込む。

 

そして。

 

「て……停戦交渉を……」

 

一瞬の沈黙。

 

ヒャッハーの動きが止まる。

 

空気が凍り付く。

 

そして。

 

「……ヒャ?」

 

素っ頓狂な声。

 

本気で意味が分からない顔。

 

「停戦?」

 

首を傾げる。

 

実に純粋な疑問。

 

使者の背中を冷汗が流れる。

 

ヒャッハーは続けた。

 

「なんで?」

 

場の空気が死ぬ。

 

「まだ全然楽しめるだろ?」

 

絶句。

 

価値観の断絶。

 

軍閥側の常識が崩壊する瞬間。

 

戦争とは目的のための手段。

 

資源。

 

支配。

 

秩序。

 

だがこの男は違う。

 

「まぁいい」

 

ヒャッハーが肩をすくめる。

 

あまりにも軽い反応。

 

「条件は単純だ」

 

使者が息を呑む。

 

恐怖。

 

緊張。

 

絶望的な要求を覚悟する。

 

だが。

 

「しばらく俺にちょっかい出すな」

 

沈黙。

 

理解不能。

 

「……それだけだ」

 

使者が呆然とする。

 

「……それだけ?」

 

思わず聞き返してしまう。

 

ヒャッハーは笑った。

 

「ヒャッハッハァ!!」

 

実に楽しそうに。

 

実に愉快そうに。

 

「戦争なんざ口実だ」

 

戦場が静まり返る。

 

「俺はただヒャッハーしてぇだけだ」

 

理屈ではない。

 

思想でもない。

 

目的でもない。

 

ただの欲求。

 

ただの衝動。

 

だが。

 

それこそが最も恐ろしい。

 

使者は初めて理解する。

 

この存在の本質を。

 

敵ではない。

 

交渉相手でもない。

 

災害。

 

現象。

 

理解不能領域。

 

「……分かりました」

 

震える声で答える。

 

拒否権など存在しない。

 

「では……停戦成立ということで……」

 

ヒャッハーは興味なさそうに手を振った。

 

「好きにしろ」

 

あまりにも無責任。

 

あまりにも自然。

 

まるで、

 

最初からどうでもよかったかのように。

 

使者撤退。

 

車両離脱。

 

軍閥側へ帰還。

 

そして司令部。

 

報告。

 

沈黙。

 

誰もが同じ感想を抱いていた。

 

勝てない。

 

理解できない。

 

関わってはいけない。

 

ヒャッハー。

 

それはもはや個人名ではない。

 

概念。

 

災害分類。

 

荒野の新たな法則。

 

一方その頃。

 

ダム上部。

 

「ヒャッハー……♪」

 

当の本人は、

 

完全に通常営業へ戻っていた。

 

まるで戦争などなかったかのように。

 

「さて……」

 

工具を放り投げ、

 

荒野を見渡す。

 

「次は何して遊ぶかねぇ……」

 

この瞬間。

 

荒野の誰もが知らなかった。

 

停戦という選択が、

 

さらなる悪夢の前触れに過ぎなかったことを。

 

ヒャッハーは止まらない。

 

止まる理由が存在しないのだから。

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