世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉   作:ヒツジ(ラム肉

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第29話 「旧世界の残骸」

ヒャッハー!

戦場は混沌!補給も火力も理性も崩壊済み!!

だがヒャッハーのダムにはまだ在庫が眠っていた!!

 

帰らなかった者たち。

消えたハンター。

奪われた軍閥。

 

その“残骸”が今――

最悪の形で戦場へ帰還するゥ!!

 

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戦場に、異質な音が混じった。

 

それは爆発でも銃撃でもない。

 

重い。

 

鈍い。

 

腹の底を不快に震わせる低周波。

 

まるで大地の奥底で何か巨大な機械が目覚めたかのような、

不吉極まりない駆動音だった。

 

「……なんだ?」

 

誰かが呟く。

 

激戦の最中であるにも関わらず、

その一言は異様なほど明瞭に響いた。

 

違和感。

 

本能的な拒絶。

 

経験豊富な荒野の住民ほど、

その音に強い警戒を覚えていた。

 

聞いたことがある。

 

だが思い出したくない種類の音。

 

視線が一斉にダム側へ向く。

 

ヒャッハーダム搬入口。

 

巨大鋼鉄扉。

 

分厚い装甲板。

 

通常ならば要塞の門と呼ぶべき代物。

 

それが――

 

ゆっくりと開いていた。

 

ギギギギギ……

 

耳障りな金属摩擦音。

 

戦場の騒音すら押し退ける不快な響き。

 

そして。

 

現れた。

 

戦車。

 

一台。

 

鋼鉄の巨体。

 

鈍く光る装甲。

 

重量そのものが歩いているかのような存在感。

 

だが誰も驚かなかった。

 

問題はその後だった。

 

二台。

 

三台。

 

五台。

 

十台。

 

「……は?」

 

間抜けな声が漏れる。

 

異様だったのは数だけではない。

 

塗装だった。

 

統一性がない。

 

軍閥仕様の迷彩。

 

ハンター改造機体。

 

溶接跡だらけの即席装甲。

 

錆びた外装。

 

独自のマーキング。

 

そして――

 

見覚えのある色。

 

見覚えのある装甲。

 

見覚えのある傷。

 

「……おい……」

 

誰かの声が震える。

 

「……あれ……」

 

記憶が刺激される。

 

忘れたはずの過去。

 

消えた仲間。

 

帰らなかった者たち。

 

ヒャッハーは。

 

ダム上部で。

 

実に楽しそうに笑っていた。

 

「ヒャッハー!!」

 

両腕を広げる。

 

祝祭の司会者のごとき仕草。

 

「帰らなかった連中の愛車だァ!!」

 

戦場が凍り付く。

 

理解が浸透する。

 

自律稼働戦車群。

 

かつてこのダムへ挑み。

 

敗れ。

 

消え。

 

歴史から脱落した者たちの残骸。

 

その象徴。

 

その墓標。

 

それが今。

 

砲身をこちらへ向けている。

 

悪夢だった。

 

単なる兵器ではない。

 

過去の具現。

 

死者の遺産。

 

敗北の再演。

 

精神へ直接突き刺さる恐怖。

 

砲塔が旋回する。

 

ギュイ……

 

無機質な音。

 

だがそこに宿るのは圧倒的な暴力の予感。

 

ドォン!!

 

砲撃。

 

爆炎。

 

衝撃。

 

戦場が揺れる。

 

「ふざけんなァ!!」

 

怒号が炸裂する。

 

「なんで動いてやがる!!」

 

理屈は不要だった。

 

理由は単純。

 

ヒャッハーの気分である。

 

「ヒャッハッハァ!!」

 

狂喜。

 

歓喜。

 

愉悦。

 

「リサイクルってやつだ!!」

 

最悪の宣言。

 

戦場の精神が軋む。

 

味方だった機体。

 

仲間の形見。

 

奪われた車両。

 

消えたハンター。

 

その記憶の象徴が砲火を吐く。

 

心理的破壊力最大。

 

火力以上の暴力。

 

視界の端で、あるハンターが絶句する。

 

「あれ……俺の……」

 

数日前に失った車両。

 

砲身がこちらを向く。

 

躊躇なし。

 

ドォン!!

 

爆発。

 

彼の姿が煙へ消える。

 

誰もが理解する。

 

これは戦闘ではない。

 

精神攻撃。

 

恐怖の質が違う。

 

だが世紀末世界の住民は止まらない。

 

止まった者から死ぬ。

 

それがこの世界の絶対法則。

 

「撃てェ!!」

 

「止めろォ!!」

 

「壊せェ!!」

 

砲撃。

 

ミサイル。

 

ロケット。

 

火力の洪水。

 

だが敵は戦車。

 

容易には沈まない。

 

装甲が弾く。

 

履帯が進む。

 

砲塔が回る。

 

悪夢が前進してくる。

 

ヒャッハーはそれを見て爆笑していた。

 

「ヒャッハッハァ!!」

 

「いいねぇ……!!」

 

まるで観客席の狂人。

 

戦場そのものを娯楽として消費する怪物。

 

そして誰もがまだ気付いていなかった。

 

この悪夢ですら。

 

ヒャッハーにとっては前座に過ぎないことを。

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