世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉 作:ヒツジ(ラム肉
ヒャッハー!
戦場は混沌!補給も火力も理性も崩壊済み!!
だがヒャッハーのダムにはまだ在庫が眠っていた!!
帰らなかった者たち。
消えたハンター。
奪われた軍閥。
その“残骸”が今――
最悪の形で戦場へ帰還するゥ!!
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戦場に、異質な音が混じった。
それは爆発でも銃撃でもない。
重い。
鈍い。
腹の底を不快に震わせる低周波。
まるで大地の奥底で何か巨大な機械が目覚めたかのような、
不吉極まりない駆動音だった。
「……なんだ?」
誰かが呟く。
激戦の最中であるにも関わらず、
その一言は異様なほど明瞭に響いた。
違和感。
本能的な拒絶。
経験豊富な荒野の住民ほど、
その音に強い警戒を覚えていた。
聞いたことがある。
だが思い出したくない種類の音。
視線が一斉にダム側へ向く。
ヒャッハーダム搬入口。
巨大鋼鉄扉。
分厚い装甲板。
通常ならば要塞の門と呼ぶべき代物。
それが――
ゆっくりと開いていた。
ギギギギギ……
耳障りな金属摩擦音。
戦場の騒音すら押し退ける不快な響き。
そして。
現れた。
戦車。
一台。
鋼鉄の巨体。
鈍く光る装甲。
重量そのものが歩いているかのような存在感。
だが誰も驚かなかった。
問題はその後だった。
二台。
三台。
五台。
十台。
「……は?」
間抜けな声が漏れる。
異様だったのは数だけではない。
塗装だった。
統一性がない。
軍閥仕様の迷彩。
ハンター改造機体。
溶接跡だらけの即席装甲。
錆びた外装。
独自のマーキング。
そして――
見覚えのある色。
見覚えのある装甲。
見覚えのある傷。
「……おい……」
誰かの声が震える。
「……あれ……」
記憶が刺激される。
忘れたはずの過去。
消えた仲間。
帰らなかった者たち。
ヒャッハーは。
ダム上部で。
実に楽しそうに笑っていた。
「ヒャッハー!!」
両腕を広げる。
祝祭の司会者のごとき仕草。
「帰らなかった連中の愛車だァ!!」
戦場が凍り付く。
理解が浸透する。
自律稼働戦車群。
かつてこのダムへ挑み。
敗れ。
消え。
歴史から脱落した者たちの残骸。
その象徴。
その墓標。
それが今。
砲身をこちらへ向けている。
悪夢だった。
単なる兵器ではない。
過去の具現。
死者の遺産。
敗北の再演。
精神へ直接突き刺さる恐怖。
砲塔が旋回する。
ギュイ……
無機質な音。
だがそこに宿るのは圧倒的な暴力の予感。
ドォン!!
砲撃。
爆炎。
衝撃。
戦場が揺れる。
「ふざけんなァ!!」
怒号が炸裂する。
「なんで動いてやがる!!」
理屈は不要だった。
理由は単純。
ヒャッハーの気分である。
「ヒャッハッハァ!!」
狂喜。
歓喜。
愉悦。
「リサイクルってやつだ!!」
最悪の宣言。
戦場の精神が軋む。
味方だった機体。
仲間の形見。
奪われた車両。
消えたハンター。
その記憶の象徴が砲火を吐く。
心理的破壊力最大。
火力以上の暴力。
視界の端で、あるハンターが絶句する。
「あれ……俺の……」
数日前に失った車両。
砲身がこちらを向く。
躊躇なし。
ドォン!!
爆発。
彼の姿が煙へ消える。
誰もが理解する。
これは戦闘ではない。
精神攻撃。
恐怖の質が違う。
だが世紀末世界の住民は止まらない。
止まった者から死ぬ。
それがこの世界の絶対法則。
「撃てェ!!」
「止めろォ!!」
「壊せェ!!」
砲撃。
ミサイル。
ロケット。
火力の洪水。
だが敵は戦車。
容易には沈まない。
装甲が弾く。
履帯が進む。
砲塔が回る。
悪夢が前進してくる。
ヒャッハーはそれを見て爆笑していた。
「ヒャッハッハァ!!」
「いいねぇ……!!」
まるで観客席の狂人。
戦場そのものを娯楽として消費する怪物。
そして誰もがまだ気付いていなかった。
この悪夢ですら。
ヒャッハーにとっては前座に過ぎないことを。