世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉   作:ヒツジ(ラム肉

32 / 45
第30話 「戦車 vs 全軍」

ヒャッハー!

旧世界の残骸――自律戦車群出撃!!

帰らなかった者たちの愛車が牙を剥く!!

 

だが世紀末の住民は止まらない!!

恐怖?絶望?そんなもん知ったことかァ!!

 

火力 vs 火力!!

暴力 vs 暴力!!

 

荒野の全軍勢、怒涛の反撃開始であるゥ!! 

 

--------------------

 

砲撃が荒野を裂いていた。

 

爆炎。

 

衝撃。

 

振動。

 

視界のあらゆる方向で土煙が立ち上がり、

焦げた砂と鉄の臭いが戦場を満たしている。

 

自律戦車群。

 

鋼鉄の群れ。

 

旧世界の残骸。

 

だがそこに宿るのは、紛れもなき現役の暴力。

 

ドォン!!

 

砲身が火を噴く。

 

装甲車が吹き飛ぶ。

 

車体が宙を舞い、次の瞬間には原形を失っていた。

 

「撃てェェェ!!」

 

怒号が重なる。

 

軍閥兵。

 

ハンター。

 

賊徒。

 

普段ならば絶対に交わらぬ勢力が、

同じ方向へ砲口を向けていた。

 

戦車。

 

それは荒野における絶対強者の象徴。

 

通常ならば出会った瞬間に敗北が確定する存在。

 

だが今。

 

その常識が崩れ始めていた。

 

「止めろォ!!」

 

ロケット弾が走る。

 

着弾。

 

爆発。

 

だが戦車は止まらない。

 

装甲が爆炎を弾き、履帯が前進を続ける。

 

鈍重。

 

だが圧倒的。

 

質量そのものが迫ってくる恐怖。

 

「クソがァ!!」

 

賊徒車両が加速する。

 

通常なら自殺行為。

 

戦車への突撃など正気の沙汰ではない。

 

だが彼らは躊躇しなかった。

 

世紀末世界において最も信用できる理屈。

 

止まった者から死ぬ。

 

それだけだった。

 

「どけェェ!!」

 

装甲板をガチャガチャ鳴らしながら突っ込む即席改造車。

 

砲塔旋回。

 

ギュイ……

 

照準。

 

ドォン!!

 

直撃。

 

車両爆散。

 

だが。

 

その爆炎の陰から別の影が飛び出した。

 

「今だァ!!」

 

別の賊徒。

 

別の車両。

 

別の狂気。

 

戦車の死角へ潜り込む。

 

「喰らえェ!!」

 

爆薬投擲。

 

装甲へ吸い込まれる黒い塊。

 

次の瞬間。

 

ドォォン!!

 

衝撃。

 

装甲が歪む。

 

履帯が跳ねる。

 

「効いたぞ!?」

 

戦場がざわめく。

 

「やれる……!」

 

空気が変質する。

 

恐怖対象。

 

絶対強者。

 

不可侵領域。

 

それらの認識が崩れ去っていく。

 

「自律制御だ!!」

 

ベテランハンターが叫ぶ。

 

「人間じゃねぇ!!」

 

その一言が戦場の思考を切り替えた。

 

敵ではない。

 

狩猟対象。

 

機械。

 

癖がある。

 

死角がある。

 

対応できる。

 

理屈が通じる。

 

それだけで十分だった。

 

「囲めェ!!」

 

集中砲火。

 

爆炎の嵐。

 

履帯へ。

 

観測機器へ。

 

関節部へ。

 

戦場の知恵が一斉に機能し始める。

 

ドォン!!

 

一台停止。

 

「止まったァ!!」

 

歓声。

 

だがその直後。

 

「ヒャッハー!!」

 

爆音混じりの狂笑。

 

ダム上部。

 

観客席の怪物。

 

ヒャッハーが腹を抱えて笑っていた。

 

「いいねぇ……!!」

 

まるで舞台を眺める狂人。

 

「そうだァ!!」

 

「それでいい!!」

 

戦場全体へ響く声。

 

「壊せェ!!」

 

「奪えェ!!」

 

「喰らい尽くせェ!!」

 

完全に楽しんでいた。

 

自ら放った悪夢が攻略されつつある状況を。

 

戦場ではさらなる異変が起きていた。

 

停止した戦車へ群がる影。

 

賊徒たちだった。

 

「ヒャッハァ!!」

 

狂喜の絶叫。

 

「武装の塊じゃねぇか!!」

 

叩き壊す。

 

装甲を剥ぐ。

 

砲塔を引き剥がす。

 

弾薬を漁る。

 

破壊ではない。

 

略奪。

 

世紀末の本能。

 

「使えるぞコイツ!!」

 

強奪された機銃。

 

引きずり出された弾薬。

 

無理やり自前車両へ接続。

 

理屈なし。

 

規格無視。

 

倫理観崩壊。

 

だが機能していた。

 

「強化完了だァ!!」

 

戦場がさらに歪む。

 

軍閥兵も理解する。

 

「真似ろ!!」

 

「奪え!!」

 

敵兵器。

 

鹵獲。

 

再利用。

 

通常なら高度な技術を要する行為。

 

だがここは世紀末世界。

 

細けぇ理屈は不要だった。

 

ハンターたちも加わる。

 

「なるほどな……」

 

冷静な分析。

 

「中身はただの兵器だ」

 

撃破。

 

解体。

 

強奪。

 

戦車が次々と資源へ変質していく。

 

恐怖の象徴が、狩りの獲物へと堕ちていた。

 

ヒャッハーはそれを見て歓喜していた。

 

「ヒャッハッハァ!!」

 

「最高じゃねぇか!!」

 

戦場はもはや地獄ではなかった。

 

祭り。

 

暴力の宴。

 

理性なき進化の坩堝。

 

そして。

 

その混沌の中で。

 

一つの異質な存在が、静かに前進していた。

 

少年。

 

血塗れ。

 

満身創痍。

 

だが視線は揺るがない。

 

見ているのはただ一点。

 

ダム上部。

 

ヒャッハー。

 

怪物。

 

因果の対象。

 

彼の歩みには迷いがなかった。

 

周囲の戦車も爆発も、

すでに意識の外へ排除されている。

 

「……そこだ……」

 

呟き。

 

重刃刀を握り直す。

 

戦場の誰もがまだ気付いていなかった。

 

この戦争の本当の主役。

 

この世界最大級の異常同士の衝突が。

 

すでに始まりつつあることを。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。