世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉   作:ヒツジ(ラム肉

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第六章 「怪物は怪物を呼ぶ」
第31話 「少年突貫」


ヒャッハー!

自律戦車群すら世紀末住民の餌食!!

鋼鉄の暴力が狩猟対象へ変質!!

 

だが忘れてはならない存在がいた!!

 

ヒャッハーを討つためだけに生きる少年!!

 

砲火渦巻く最前線。

爆炎乱舞の死地。

 

その中心を、ただ一人――

因果の怪物が突き進むゥ!!

 

--------------------

 

戦場は崩壊していた。

 

爆発。

 

炎。

 

煙。

 

怒号。

 

すべてが混ざり合い、

もはやどこが前線でどこが後方なのかすら曖昧だった。

 

自律戦車群の砲撃。

 

全軍の反撃。

 

鹵獲兵器の乱舞。

 

略奪と破壊の同時進行。

 

完全混沌。

 

世紀末世界の本領。

 

「ヒャッハァ!!」

 

賊徒車両が横滑りする。

 

砲撃を掠め、爆炎の縁を駆け抜ける。

 

その背後。

 

ドォン!!

 

着弾。

 

衝撃波。

 

車体が吹き飛ぶ。

 

だがその光景すら、

すでに誰も気に留めなくなっていた。

 

死は日常。

 

破壊は前提。

 

止まる理由にはならない。

 

そして。

 

その混沌の只中。

 

一つの異様な存在が静かに進んでいた。

 

少年。

 

視線はただ一点。

 

ヒャッハー。

 

ダム上部。

 

それ以外のすべてを排除した瞳。

 

周囲では銃撃が飛び交う。

 

爆発が連鎖する。

 

だが少年は止まらない。

 

「……邪魔だ」

 

低く呟く。

 

迫る自律戦車。

 

砲塔旋回。

 

ギュイ……

 

照準。

 

発射。

 

ドォン!!

 

砲撃。

 

だが。

 

少年の姿は煙の中へ消えていた。

 

「外した!?」

 

違う。

 

踏み込んでいた。

 

爆炎の直前。

 

あり得ぬ判断速度。

 

あり得ぬ身体制御。

 

煙を突き抜ける影。

 

重刃刀が唸る。

 

「――通す」

 

次の瞬間。

 

ドォンッ!!

 

突き。

 

通常の刺突ではない。

 

全身の回転。

 

重量の圧縮。

 

衝撃の集中。

 

『重破貫』

 

分厚い戦車装甲へ叩き込まれる一点突破の暴力。

 

ズドォォッ!!

 

貫通。

 

鋼鉄を引き裂く衝撃音。

 

砲塔が歪む。

 

内部爆散。

 

戦車停止。

 

「なにィ!?」

 

周囲が絶句する。

 

だが少年は視線を変えない。

 

次。

 

さらに次。

 

進路上の障害物。

 

ただそれだけの認識。

 

「止めろォ!!」

 

軍閥兵が叫ぶ。

 

別の戦車が砲口を向ける。

 

連射。

 

爆発。

 

着弾。

 

だが少年は止まらない。

 

回避しているのではない。

 

そもそも恐怖していない。

 

必要な動作だけを実行していた。

 

踏み込み。

 

回転。

 

加速。

 

ドォン!!

 

再び『重破貫』

 

履帯粉砕。

 

機動力喪失。

 

さらに踏み込む。

 

刃を叩き込む。

 

観測機器破壊。

 

戦車沈黙。

 

戦場がざわめき始める。

 

「なんだあのガキ……」

 

「人間か……?」

 

違う。

 

すでに異常領域へ足を踏み入れていた。

 

少年の脳内からは、

戦場の恐怖という概念が消えていた。

 

存在しているのはただひとつ。

 

ヒャッハー。

 

それだけ。

 

賊徒たちが気付く。

 

「あいつ……」

 

「真っ直ぐ行きやがる……」

 

砲撃も銃撃も無視。

 

進路固定。

 

完全に狂った進軍。

 

だがその異常は、

どこか既視感を伴っていた。

 

「あれ……」

 

誰かが呟く。

 

「ヒャッハーと同じじゃねぇか……」

 

その言葉に空気が変わる。

 

暴力への適応。

 

理不尽への順応。

 

狂気への同化。

 

世紀末世界特有の理解。

 

少年は突き進む。

 

爆炎の中。

 

弾幕の中。

 

鋼鉄の墓場の中。

 

そして。

 

ダム上部。

 

その光景を見下ろす怪物。

 

ヒャッハー。

 

「……ヒャッハー……」

 

小さく呟く。

 

だが次の瞬間。

 

「ヒャッハァァァ!!」

 

爆発する歓喜。

 

全身が震えていた。

 

恐怖ではない。

 

純粋な喜びで。

 

「あのガキィィィ!!」

 

瞳が異様に輝く。

 

「いいぞォ!!」

 

笑う。

 

狂喜。

 

歓喜。

 

興奮。

 

「最高じゃねぇか!!」

 

彼は理解していた。

 

戦場の誰よりも早く。

 

あの少年の異常性を。

 

ただの生存者ではない。

 

ただの復讐者でもない。

 

自分と同じ匂い。

 

理不尽へ適応した存在。

 

暴力に順応した怪物候補。

 

「来いよォ……!!」

 

ヒャッハーの声が震える。

 

期待で。

 

歓喜で。

 

歓楽で。

 

戦場では少年の進軍が続いていた。

 

「止めろォォ!!」

 

集中砲火。

 

爆炎。

 

衝撃。

 

通常なら肉片一つ残らぬ火力。

 

だが。

 

煙の向こう。

 

揺らぐ影。

 

まだ立っていた。

 

「……」

 

少年の呼吸は荒い。

 

血が流れる。

 

身体は限界を超えていた。

 

だが。

 

止まらない。

 

「退かない」

 

それだけだった。

 

歩みを再開する。

 

踏み込む。

 

そして再び。

 

ドォンッ!!

 

『重破貫』

 

最後の戦車を貫通。

 

進路。

 

完全開通。

 

戦場が静まり返る。

 

爆発音すら遠のいたような錯覚。

 

誰もが見ていた。

 

ただ一人。

 

一直線に進む少年の背を。

 

そして。

 

ついに。

 

彼は辿り着く。

 

ヒャッハーダム最上部。

 

怪物の領域。

 

ヒャッハーの眼前。

 

静寂。

 

異様な静寂。

 

ヒャッハーは笑っていた。

 

「ヒャッハー……♪」

 

心底嬉しそうに。

 

少年は刃を構える。

 

視線固定。

 

震える腕。

 

だが瞳は揺るがない。

 

ヒャッハーが告げる。

 

「いい目だ」

 

狂気じみた称賛。

 

「やっと来やがったなァ」

 

そして。

 

硬鞭を握り締める。

 

「楽しませろ」

 

怪物の要求。

 

次の瞬間。

 

両者が同時に踏み込んだ。

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