世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉 作:ヒツジ(ラム肉
第31話 「少年突貫」
ヒャッハー!
自律戦車群すら世紀末住民の餌食!!
鋼鉄の暴力が狩猟対象へ変質!!
だが忘れてはならない存在がいた!!
ヒャッハーを討つためだけに生きる少年!!
砲火渦巻く最前線。
爆炎乱舞の死地。
その中心を、ただ一人――
因果の怪物が突き進むゥ!!
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戦場は崩壊していた。
爆発。
炎。
煙。
怒号。
すべてが混ざり合い、
もはやどこが前線でどこが後方なのかすら曖昧だった。
自律戦車群の砲撃。
全軍の反撃。
鹵獲兵器の乱舞。
略奪と破壊の同時進行。
完全混沌。
世紀末世界の本領。
「ヒャッハァ!!」
賊徒車両が横滑りする。
砲撃を掠め、爆炎の縁を駆け抜ける。
その背後。
ドォン!!
着弾。
衝撃波。
車体が吹き飛ぶ。
だがその光景すら、
すでに誰も気に留めなくなっていた。
死は日常。
破壊は前提。
止まる理由にはならない。
そして。
その混沌の只中。
一つの異様な存在が静かに進んでいた。
少年。
視線はただ一点。
ヒャッハー。
ダム上部。
それ以外のすべてを排除した瞳。
周囲では銃撃が飛び交う。
爆発が連鎖する。
だが少年は止まらない。
「……邪魔だ」
低く呟く。
迫る自律戦車。
砲塔旋回。
ギュイ……
照準。
発射。
ドォン!!
砲撃。
だが。
少年の姿は煙の中へ消えていた。
「外した!?」
違う。
踏み込んでいた。
爆炎の直前。
あり得ぬ判断速度。
あり得ぬ身体制御。
煙を突き抜ける影。
重刃刀が唸る。
「――通す」
次の瞬間。
ドォンッ!!
突き。
通常の刺突ではない。
全身の回転。
重量の圧縮。
衝撃の集中。
『重破貫』
分厚い戦車装甲へ叩き込まれる一点突破の暴力。
ズドォォッ!!
貫通。
鋼鉄を引き裂く衝撃音。
砲塔が歪む。
内部爆散。
戦車停止。
「なにィ!?」
周囲が絶句する。
だが少年は視線を変えない。
次。
さらに次。
進路上の障害物。
ただそれだけの認識。
「止めろォ!!」
軍閥兵が叫ぶ。
別の戦車が砲口を向ける。
連射。
爆発。
着弾。
だが少年は止まらない。
回避しているのではない。
そもそも恐怖していない。
必要な動作だけを実行していた。
踏み込み。
回転。
加速。
ドォン!!
再び『重破貫』
履帯粉砕。
機動力喪失。
さらに踏み込む。
刃を叩き込む。
観測機器破壊。
戦車沈黙。
戦場がざわめき始める。
「なんだあのガキ……」
「人間か……?」
違う。
すでに異常領域へ足を踏み入れていた。
少年の脳内からは、
戦場の恐怖という概念が消えていた。
存在しているのはただひとつ。
ヒャッハー。
それだけ。
賊徒たちが気付く。
「あいつ……」
「真っ直ぐ行きやがる……」
砲撃も銃撃も無視。
進路固定。
完全に狂った進軍。
だがその異常は、
どこか既視感を伴っていた。
「あれ……」
誰かが呟く。
「ヒャッハーと同じじゃねぇか……」
その言葉に空気が変わる。
暴力への適応。
理不尽への順応。
狂気への同化。
世紀末世界特有の理解。
少年は突き進む。
爆炎の中。
弾幕の中。
鋼鉄の墓場の中。
そして。
ダム上部。
その光景を見下ろす怪物。
ヒャッハー。
「……ヒャッハー……」
小さく呟く。
だが次の瞬間。
「ヒャッハァァァ!!」
爆発する歓喜。
全身が震えていた。
恐怖ではない。
純粋な喜びで。
「あのガキィィィ!!」
瞳が異様に輝く。
「いいぞォ!!」
笑う。
狂喜。
歓喜。
興奮。
「最高じゃねぇか!!」
彼は理解していた。
戦場の誰よりも早く。
あの少年の異常性を。
ただの生存者ではない。
ただの復讐者でもない。
自分と同じ匂い。
理不尽へ適応した存在。
暴力に順応した怪物候補。
「来いよォ……!!」
ヒャッハーの声が震える。
期待で。
歓喜で。
歓楽で。
戦場では少年の進軍が続いていた。
「止めろォォ!!」
集中砲火。
爆炎。
衝撃。
通常なら肉片一つ残らぬ火力。
だが。
煙の向こう。
揺らぐ影。
まだ立っていた。
「……」
少年の呼吸は荒い。
血が流れる。
身体は限界を超えていた。
だが。
止まらない。
「退かない」
それだけだった。
歩みを再開する。
踏み込む。
そして再び。
ドォンッ!!
『重破貫』
最後の戦車を貫通。
進路。
完全開通。
戦場が静まり返る。
爆発音すら遠のいたような錯覚。
誰もが見ていた。
ただ一人。
一直線に進む少年の背を。
そして。
ついに。
彼は辿り着く。
ヒャッハーダム最上部。
怪物の領域。
ヒャッハーの眼前。
静寂。
異様な静寂。
ヒャッハーは笑っていた。
「ヒャッハー……♪」
心底嬉しそうに。
少年は刃を構える。
視線固定。
震える腕。
だが瞳は揺るがない。
ヒャッハーが告げる。
「いい目だ」
狂気じみた称賛。
「やっと来やがったなァ」
そして。
硬鞭を握り締める。
「楽しませろ」
怪物の要求。
次の瞬間。
両者が同時に踏み込んだ。