世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉   作:ヒツジ(ラム肉

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第33話 「怪物同士」

ヒャッハー!

ついに相対する二つの異常!!

 

ヒャッハー!!

そして――打倒ヒャッハーのみを目的とする少年!!

 

砲火も叫びも霞む瞬間!!

世紀末戦場の中心が「個」へ収束する!!

 

怪物同士の戦いが始まるゥゥゥ!!

 

--------------------

 

戦場の音が薄れていく。

 

爆炎。

 

弾幕。

 

怒号。

 

砲撃。

 

それらはまだ確かに存在している。

だが、ダム上部の一角だけは別世界だった。

 

空気が重い。

 

いや――静かに張り詰めている。

 

視線が集まる。

 

誰もが見ている。

 

自分の意志とは関係なく、

目がそこへ吸い寄せられる。

 

少年。

 

ヒャッハー。

 

距離、数歩。

 

呼吸。

 

吐く息が白く見えるほど、

空気の緊張が冷えていた。

 

少年は重刃刀を握り直す。

 

指が震えている。

 

疲労。

 

損傷。

 

出血。

 

限界。

 

だが、刃は下がらない。

 

ヒャッハーは笑っていた。

 

「ヒャッハー……♪」

 

楽しげな鼻歌。

 

だが目は笑っていない。

 

獣の目だ。

 

玩具を眺める目ではない。

 

「対等」を測る目だ。

 

「来いよォ……」

 

まるで友を迎えるように言う。

 

「楽しませろ」

 

その言葉に、

少年の奥歯がきしむ。

 

「……倒す」

 

短く吐き捨てる。

 

それだけで十分だった。

 

次の瞬間。

 

ドォンッ!!

 

少年が踏み込んだ。

 

初動。

 

迷いなし。

 

躊躇なし。

 

恐怖の計算もない。

 

全身が一つの目的へ収束する。

 

重刃刀が唸る。

 

斬撃。

 

重さで潰し、角度で断つ――

荒野向けの暴力。

 

だが。

 

ヒャッハーは笑う。

 

「ヒャッハー!!」

 

硬鞭が振り抜かれる。

 

ゴシャァッ!!

 

衝突。

 

火花。

 

衝撃波。

 

コンクリの表面が剥がれ、

砂埃が舞い上がる。

 

刃と鉄塊。

 

斬るための武器と砕くための武器。

 

互いに譲らない。

 

少年、連撃。

 

踏み込み、切り下ろし。

 

回転し、横薙ぎ。

 

さらに踏み込み、叩き斬る。

 

だがヒャッハーは弾く。

 

受ける。

 

逸らす。

 

叩き落とす。

 

硬鞭の質量が、

刃の軌道そのものを捻じ曲げる。

 

「悪くねぇ!!」

 

ヒャッハーが叫ぶ。

 

本気の称賛。

 

「だが甘ぇなァ!!」

 

突進。

 

硬鞭の横薙ぎ。

 

空気が裂ける。

 

少年、跳躍。

 

回避。

 

だが足場を削られる。

 

着地の瞬間――

 

ゴシャァッ!!

 

硬鞭が地面を叩く。

 

足元が崩れ、

少年の体勢が揺らぐ。

 

「――ッ!」

 

その隙を逃さない。

 

ヒャッハーの蹴り。

 

ドォン!!

 

腹へ直撃。

 

少年が吹き飛ぶ。

 

柵へ激突。

 

金属音。

 

息が詰まる。

 

視界が白む。

 

だが――

 

少年は刃を手放さない。

 

「……退かない」

 

吐き出すような声。

 

ヒャッハーは腹を抱えて笑う。

 

「ヒャッハッハァ!!」

 

「それだよ!!それ!!」

 

狂喜。

 

戦場の誰かが呟く。

 

「……あの少年……まだ立つのか……」

 

別の誰かが言う。

 

「ヒャッハー相手に……」

 

そして誰もが気付く。

 

この戦いは、

勝敗だけを賭けていない。

 

意地。

 

因果。

 

生存。

 

呪い。

 

すべてが刃に乗っている。

 

少年が構えを変える。

 

重刃刀。

 

通常の刀ではない。

 

刃の中程にも握り。

 

前後二点保持。

 

力の伝達を変えるための姿勢。

 

「――通す」

 

低く呟く。

 

ヒャッハーが一瞬、口角を上げる。

 

「来たァ!!」

 

少年、踏み込む。

 

停止。

 

角度修正。

 

一点集中。

 

次の瞬間。

 

ドォンッ!!

 

『重破貫(じゅうはかん)』

 

突き。

 

刺突ではない。

 

叩き込み。

 

質量を圧縮し、

一点へ衝撃を流し込む暴力。

 

ズドォッ!!

 

直撃。

 

確かな手応え。

 

鈍い衝撃音。

 

ヒャッハーの身体が僅かに沈む。

 

「……ッ!!」

 

少年の瞳が光る。

 

届いた。

 

通った。

 

――だが。

 

ヒャッハーは笑っていた。

 

「効くぜ?」

 

余裕の声。

 

「だがなァ……」

 

少年が息を呑む。

 

「その程度は――想定済みだ」

 

次の瞬間。

 

ヒャッハーの硬鞭が下から跳ね上がる。

 

ゴンッ!!

 

刃の腹を叩く。

 

重刃刀の軌道が逸れる。

 

さらに――

 

拳。

 

ドォン!!

 

顎へ直撃。

 

少年の身体が宙へ浮く。

 

落下。

 

地面に叩きつけられる。

 

肺の空気が抜ける。

 

視界が揺れる。

 

戦場が遠のく。

 

「……!」

 

立ち上がろうとする。

 

だが足が痙攣する。

 

体が言うことを聞かない。

 

それでも――

 

少年は膝で地面を押す。

 

立つ。

 

立ち上がる。

 

その姿を見て、

ヒャッハーが更に笑う。

 

「ヒャッハァァァ!!」

 

「いいねぇ!!最高だ!!」

 

まるで観客ではない。

 

主演だ。

 

「もっと来い!!」

 

「もっと壊せ!!」

 

「もっと足掻け!!」

 

少年は歯を食いしばる。

 

「……黙れ」

 

その声は震えていた。

 

恐怖ではない。

 

怒りでもない。

 

ただ――消えない呪いの重さで。

 

ヒャッハーは首を傾げる。

 

「黙れ?」

 

本気で不思議そうに。

 

「俺はなァ……」

 

硬鞭を肩に担ぐ。

 

「喋りながらの方が楽しいんだよ」

 

次の瞬間。

 

突進。

 

硬鞭が振り下ろされる。

 

ゴシャァッ!!

 

少年、紙一重で回避。

 

地面が抉れ、

砕けたコンクリ片が弾け飛ぶ。

 

少年、反撃。

 

斬撃。

 

叩き斬り。

 

再び突き。

 

『重破貫』

 

だがヒャッハーは動く。

 

わずかに身体をずらす。

 

致命を避ける。

 

そして――

 

硬鞭が叩きつけられる。

 

ゴシャァァッ!!

 

少年の肩が軋む。

 

骨が悲鳴を上げる。

 

それでも刃は落ちない。

 

少年は踏み込む。

 

踏み込む。

 

踏み込む。

 

限界を踏み越え続ける。

 

その姿を見て、

戦場の別の場所で誰かが叫ぶ。

 

「……あのガキ、勝てるのか!?」

 

答えは出ない。

 

出せない。

 

だが一つだけ確かなことがある。

 

この瞬間、

荒野全域の「暴力の物語」が、

この二人に収束している。

 

ヒャッハーは笑っていた。

 

「ヒャッハー……♪」

 

少年は吐き捨てる。

 

「……倒す」

 

両者が同時に踏み込む。

 

衝突。

 

火花。

 

衝撃。

 

金属音。

 

世界が鳴った。

 

そして――

 

ヒャッハーが、

僅かに目を細める。

 

「……面白ぇ」

 

その声には初めて、

遊びではない色が混じっていた。

 

戦場が凍る。

 

怪物が「本気」を出す前の、

最悪の予感。

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