世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉 作:ヒツジ(ラム肉
ヒャッハー!
ついに相対する二つの異常!!
ヒャッハー!!
そして――打倒ヒャッハーのみを目的とする少年!!
砲火も叫びも霞む瞬間!!
世紀末戦場の中心が「個」へ収束する!!
怪物同士の戦いが始まるゥゥゥ!!
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戦場の音が薄れていく。
爆炎。
弾幕。
怒号。
砲撃。
それらはまだ確かに存在している。
だが、ダム上部の一角だけは別世界だった。
空気が重い。
いや――静かに張り詰めている。
視線が集まる。
誰もが見ている。
自分の意志とは関係なく、
目がそこへ吸い寄せられる。
少年。
ヒャッハー。
距離、数歩。
呼吸。
吐く息が白く見えるほど、
空気の緊張が冷えていた。
少年は重刃刀を握り直す。
指が震えている。
疲労。
損傷。
出血。
限界。
だが、刃は下がらない。
ヒャッハーは笑っていた。
「ヒャッハー……♪」
楽しげな鼻歌。
だが目は笑っていない。
獣の目だ。
玩具を眺める目ではない。
「対等」を測る目だ。
「来いよォ……」
まるで友を迎えるように言う。
「楽しませろ」
その言葉に、
少年の奥歯がきしむ。
「……倒す」
短く吐き捨てる。
それだけで十分だった。
次の瞬間。
ドォンッ!!
少年が踏み込んだ。
初動。
迷いなし。
躊躇なし。
恐怖の計算もない。
全身が一つの目的へ収束する。
重刃刀が唸る。
斬撃。
重さで潰し、角度で断つ――
荒野向けの暴力。
だが。
ヒャッハーは笑う。
「ヒャッハー!!」
硬鞭が振り抜かれる。
ゴシャァッ!!
衝突。
火花。
衝撃波。
コンクリの表面が剥がれ、
砂埃が舞い上がる。
刃と鉄塊。
斬るための武器と砕くための武器。
互いに譲らない。
少年、連撃。
踏み込み、切り下ろし。
回転し、横薙ぎ。
さらに踏み込み、叩き斬る。
だがヒャッハーは弾く。
受ける。
逸らす。
叩き落とす。
硬鞭の質量が、
刃の軌道そのものを捻じ曲げる。
「悪くねぇ!!」
ヒャッハーが叫ぶ。
本気の称賛。
「だが甘ぇなァ!!」
突進。
硬鞭の横薙ぎ。
空気が裂ける。
少年、跳躍。
回避。
だが足場を削られる。
着地の瞬間――
ゴシャァッ!!
硬鞭が地面を叩く。
足元が崩れ、
少年の体勢が揺らぐ。
「――ッ!」
その隙を逃さない。
ヒャッハーの蹴り。
ドォン!!
腹へ直撃。
少年が吹き飛ぶ。
柵へ激突。
金属音。
息が詰まる。
視界が白む。
だが――
少年は刃を手放さない。
「……退かない」
吐き出すような声。
ヒャッハーは腹を抱えて笑う。
「ヒャッハッハァ!!」
「それだよ!!それ!!」
狂喜。
戦場の誰かが呟く。
「……あの少年……まだ立つのか……」
別の誰かが言う。
「ヒャッハー相手に……」
そして誰もが気付く。
この戦いは、
勝敗だけを賭けていない。
意地。
因果。
生存。
呪い。
すべてが刃に乗っている。
少年が構えを変える。
重刃刀。
通常の刀ではない。
刃の中程にも握り。
前後二点保持。
力の伝達を変えるための姿勢。
「――通す」
低く呟く。
ヒャッハーが一瞬、口角を上げる。
「来たァ!!」
少年、踏み込む。
停止。
角度修正。
一点集中。
次の瞬間。
ドォンッ!!
『重破貫(じゅうはかん)』
突き。
刺突ではない。
叩き込み。
質量を圧縮し、
一点へ衝撃を流し込む暴力。
ズドォッ!!
直撃。
確かな手応え。
鈍い衝撃音。
ヒャッハーの身体が僅かに沈む。
「……ッ!!」
少年の瞳が光る。
届いた。
通った。
――だが。
ヒャッハーは笑っていた。
「効くぜ?」
余裕の声。
「だがなァ……」
少年が息を呑む。
「その程度は――想定済みだ」
次の瞬間。
ヒャッハーの硬鞭が下から跳ね上がる。
ゴンッ!!
刃の腹を叩く。
重刃刀の軌道が逸れる。
さらに――
拳。
ドォン!!
顎へ直撃。
少年の身体が宙へ浮く。
落下。
地面に叩きつけられる。
肺の空気が抜ける。
視界が揺れる。
戦場が遠のく。
「……!」
立ち上がろうとする。
だが足が痙攣する。
体が言うことを聞かない。
それでも――
少年は膝で地面を押す。
立つ。
立ち上がる。
その姿を見て、
ヒャッハーが更に笑う。
「ヒャッハァァァ!!」
「いいねぇ!!最高だ!!」
まるで観客ではない。
主演だ。
「もっと来い!!」
「もっと壊せ!!」
「もっと足掻け!!」
少年は歯を食いしばる。
「……黙れ」
その声は震えていた。
恐怖ではない。
怒りでもない。
ただ――消えない呪いの重さで。
ヒャッハーは首を傾げる。
「黙れ?」
本気で不思議そうに。
「俺はなァ……」
硬鞭を肩に担ぐ。
「喋りながらの方が楽しいんだよ」
次の瞬間。
突進。
硬鞭が振り下ろされる。
ゴシャァッ!!
少年、紙一重で回避。
地面が抉れ、
砕けたコンクリ片が弾け飛ぶ。
少年、反撃。
斬撃。
叩き斬り。
再び突き。
『重破貫』
だがヒャッハーは動く。
わずかに身体をずらす。
致命を避ける。
そして――
硬鞭が叩きつけられる。
ゴシャァァッ!!
少年の肩が軋む。
骨が悲鳴を上げる。
それでも刃は落ちない。
少年は踏み込む。
踏み込む。
踏み込む。
限界を踏み越え続ける。
その姿を見て、
戦場の別の場所で誰かが叫ぶ。
「……あのガキ、勝てるのか!?」
答えは出ない。
出せない。
だが一つだけ確かなことがある。
この瞬間、
荒野全域の「暴力の物語」が、
この二人に収束している。
ヒャッハーは笑っていた。
「ヒャッハー……♪」
少年は吐き捨てる。
「……倒す」
両者が同時に踏み込む。
衝突。
火花。
衝撃。
金属音。
世界が鳴った。
そして――
ヒャッハーが、
僅かに目を細める。
「……面白ぇ」
その声には初めて、
遊びではない色が混じっていた。
戦場が凍る。
怪物が「本気」を出す前の、
最悪の予感。