世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉 作:ヒツジ(ラム肉
ヒャッハー!
軍閥代表、胸部貫通!!
怪物撃破か!?
戦場騒然!!
だが甘ぇ!!甘すぎるゥ!!
世紀末世界の支配者層がそんな簡単に終わるかァ!!
因果逆流!!
絶望再加速!!
そしてヒャッハー最大火力――
理不尽第二形態、解禁であるゥ!!
--------------------
静寂。
それは戦場において最も異常な現象だった。
ほんの数秒前まで、
砲撃と爆炎と絶叫で満ちていた空間が、
まるで世界ごと凍結したかのように音を失っている。
倒れ伏す軍閥代表。
胸部を貫通した致命傷。
誰の目にも明らかな決着。
質量の怪物。
荒野最大勢力の象徴。
それが今、地面へ沈んでいた。
「…………」
誰も言葉を発せない。
歓声すら上がらない。
理解が追いつかない。
あまりにも現実離れした光景。
ヒャッハーはその中心で立っていた。
血塗れ。
呼吸荒く。
だが。
満面の笑み。
「ヒャッハー……♪」
実に満足げだった。
まるで最高の酒でも飲んだかのような顔。
「いやぁ……」
肩を回す。
ゴキリ。
骨が鳴る。
「楽しませてくれたぜェ……」
倒れた軍閥代表を見下ろす。
そこには敵意も侮蔑もない。
純粋な評価。
純粋な賞賛。
「いい怪物だった」
その瞬間だった。
ガシィッ。
異音。
ヒャッハーの身体が止まる。
「……ヒャ?」
腕。
背後から絡みつく巨腕。
異様な力。
異様な拘束。
「な……?」
ゆっくりと視線を落とす。
自らの腹部を締め上げる、あり得ない存在。
そして。
振り返る。
そこにいた。
軍閥代表。
立っていた。
呼吸は荒い。
血は噴き出している。
胸部には致命的な穿孔。
だが。
立っていた。
戦場絶句。
理解不能。
「バ……」
「バカな……」
兵士たちの声が震える。
生物として成立しない損傷量。
だが怪物は健在。
軍閥代表が吠える。
「まだだァァァ!!」
ヒャッハーの拘束が強まる。
異常な握力。
異常な執念。
「ヒャッハー……」
ヒャッハーは笑っていた。
驚愕ではない。
歓喜だった。
「いいねぇ……!!」
瞳が輝く。
「最高じゃねぇか……!!」
理解していた。
これは理屈ではない。
意地。
執念。
怪物の領域。
軍閥代表が絶叫する。
「今だァァァ!!」
その意味を、戦場全体が瞬時に理解する。
最大の好機。
怪物拘束成功。
二度と訪れぬ可能性。
「撃てェェェェ!!」
砲撃。
弾幕。
ロケット。
ミサイル。
機関砲。
火炎。
爆発。
ありとあらゆる火力が一点へ収束する。
ヒャッハーごと。
軍閥代表ごと。
容赦なき飽和攻撃。
ドォォォォォォォォン!!!
閃光。
爆炎。
衝撃。
大気が吹き飛ぶ。
衝撃波がダム上部を薙ぎ払う。
コンクリートが裂ける。
車両が転がる。
兵士が吹き飛ぶ。
視界が白に染まる。
そして。
再び訪れる静寂。
煙が晴れる。
誰もが固唾を呑む。
そこにあったのは。
崩壊した地面。
焼け焦げた残骸。
そして。
転がる一つの身体。
ヒャッハー。
ボロボロだった。
左半身が消失している。
装備は完全破壊。
血が溢れ出す。
明らかな致命傷。
誰もが確信する。
終わった。
ついに終わった。
世紀末最悪の怪物。
災害の王。
討伐完了。
――その時。
「……ヒャッ……」
声。
かすれた声。
ヒャッハーの身体が微かに動く。
「……ハー……」
戦場凍結。
「ま……さか……」
誰かが呟く。
ヒャッハーの震える手。
腰のポーチへ。
ゆっくりと。
確実に。
「ヒャ……ッハー……♪」
笑っていた。
瀕死のはずの怪物が。
笑っていた。
小瓶を取り出す。
見覚えのあるそれ。
悪夢の再来。
「ま……」
「やめろ……」
絶望の囁き。
ヒャッハー、叫ぶ。
「まんたーん!!」
飲む。
次の瞬間。
異変。
消失していた肉体が戻る。
裂けた骨格が修復される。
血流再構築。
神経再接続。
装備復元。
完全再生。
怪物復活。
「ヒャッハァァァァ!!」
絶叫。
狂喜。
圧倒的テンション。
「最高じゃねぇかァ!!」
戦場、完全絶望。
誰も理解できない。
物理法則への反逆。
死の否定。
「ふざ……けるな……」
誰かの震える声。
ヒャッハーは笑っていた。
止まらない。
止まるはずがない。
「まだまだァ!!」
そして。
彼は自らの頭へ手を伸ばした。
「……?」
理解不能。
掴む。
モヒカン。
ブチィッ!!
引き抜いた。
絶句。
特殊合金製モヒカン。
質量兵器。
「モヒカンスラッガァァ!!」
投擲。
高速回転。
異常破壊力。
戦車直撃。
ズドォォン!!
装甲貫通。
内部爆散。
戦場崩壊。
ヒャッハー爆笑。
「ヒャッハッハァ!!」
止まらない怪物。
死なない怪物。
理不尽の権化。
そして彼は気付く。
ダム中央部。
巨大なレバー。
終末装置。
ニヤリ。
「あ」
最悪の閃き。
「まだ最高の遊びが残ってやがった……」
戦場が凍り付いた。
誰もが理解する。
この男は。
最後まで。
ヒャッハーである。