世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉   作:ヒツジ(ラム肉

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第36話 「怪物は二度死なない」

ヒャッハー!

軍閥代表、胸部貫通!!

 

怪物撃破か!?

戦場騒然!!

 

だが甘ぇ!!甘すぎるゥ!!

世紀末世界の支配者層がそんな簡単に終わるかァ!!

 

因果逆流!!

絶望再加速!!

 

そしてヒャッハー最大火力――

理不尽第二形態、解禁であるゥ!!

 

--------------------

 

静寂。

 

それは戦場において最も異常な現象だった。

 

ほんの数秒前まで、

砲撃と爆炎と絶叫で満ちていた空間が、

まるで世界ごと凍結したかのように音を失っている。

 

倒れ伏す軍閥代表。

 

胸部を貫通した致命傷。

 

誰の目にも明らかな決着。

 

質量の怪物。

 

荒野最大勢力の象徴。

 

それが今、地面へ沈んでいた。

 

「…………」

 

誰も言葉を発せない。

 

歓声すら上がらない。

 

理解が追いつかない。

 

あまりにも現実離れした光景。

 

ヒャッハーはその中心で立っていた。

 

血塗れ。

 

呼吸荒く。

 

だが。

 

満面の笑み。

 

「ヒャッハー……♪」

 

実に満足げだった。

 

まるで最高の酒でも飲んだかのような顔。

 

「いやぁ……」

 

肩を回す。

 

ゴキリ。

 

骨が鳴る。

 

「楽しませてくれたぜェ……」

 

倒れた軍閥代表を見下ろす。

 

そこには敵意も侮蔑もない。

 

純粋な評価。

 

純粋な賞賛。

 

「いい怪物だった」

 

その瞬間だった。

 

ガシィッ。

 

異音。

 

ヒャッハーの身体が止まる。

 

「……ヒャ?」

 

腕。

 

背後から絡みつく巨腕。

 

異様な力。

 

異様な拘束。

 

「な……?」

 

ゆっくりと視線を落とす。

 

自らの腹部を締め上げる、あり得ない存在。

 

そして。

 

振り返る。

 

そこにいた。

 

軍閥代表。

 

立っていた。

 

呼吸は荒い。

 

血は噴き出している。

 

胸部には致命的な穿孔。

 

だが。

 

立っていた。

 

戦場絶句。

 

理解不能。

 

「バ……」

 

「バカな……」

 

兵士たちの声が震える。

 

生物として成立しない損傷量。

 

だが怪物は健在。

 

軍閥代表が吠える。

 

「まだだァァァ!!」

 

ヒャッハーの拘束が強まる。

 

異常な握力。

 

異常な執念。

 

「ヒャッハー……」

 

ヒャッハーは笑っていた。

 

驚愕ではない。

 

歓喜だった。

 

「いいねぇ……!!」

 

瞳が輝く。

 

「最高じゃねぇか……!!」

 

理解していた。

 

これは理屈ではない。

 

意地。

 

執念。

 

怪物の領域。

 

軍閥代表が絶叫する。

 

「今だァァァ!!」

 

その意味を、戦場全体が瞬時に理解する。

 

最大の好機。

 

怪物拘束成功。

 

二度と訪れぬ可能性。

 

「撃てェェェェ!!」

 

砲撃。

 

弾幕。

 

ロケット。

 

ミサイル。

 

機関砲。

 

火炎。

 

爆発。

 

ありとあらゆる火力が一点へ収束する。

 

ヒャッハーごと。

 

軍閥代表ごと。

 

容赦なき飽和攻撃。

 

ドォォォォォォォォン!!!

 

閃光。

 

爆炎。

 

衝撃。

 

大気が吹き飛ぶ。

 

衝撃波がダム上部を薙ぎ払う。

 

コンクリートが裂ける。

 

車両が転がる。

 

兵士が吹き飛ぶ。

 

視界が白に染まる。

 

そして。

 

再び訪れる静寂。

 

煙が晴れる。

 

誰もが固唾を呑む。

 

そこにあったのは。

 

崩壊した地面。

 

焼け焦げた残骸。

 

そして。

 

転がる一つの身体。

 

ヒャッハー。

 

ボロボロだった。

 

左半身が消失している。

 

装備は完全破壊。

 

血が溢れ出す。

 

明らかな致命傷。

 

誰もが確信する。

 

終わった。

 

ついに終わった。

 

世紀末最悪の怪物。

 

災害の王。

 

討伐完了。

 

――その時。

 

「……ヒャッ……」

 

声。

 

かすれた声。

 

ヒャッハーの身体が微かに動く。

 

「……ハー……」

 

戦場凍結。

 

「ま……さか……」

 

誰かが呟く。

 

ヒャッハーの震える手。

 

腰のポーチへ。

 

ゆっくりと。

 

確実に。

 

「ヒャ……ッハー……♪」

 

笑っていた。

 

瀕死のはずの怪物が。

 

笑っていた。

 

小瓶を取り出す。

 

見覚えのあるそれ。

 

悪夢の再来。

 

「ま……」

 

「やめろ……」

 

絶望の囁き。

 

ヒャッハー、叫ぶ。

 

「まんたーん!!」

 

飲む。

 

次の瞬間。

 

異変。

 

消失していた肉体が戻る。

 

裂けた骨格が修復される。

 

血流再構築。

 

神経再接続。

 

装備復元。

 

完全再生。

 

怪物復活。

 

「ヒャッハァァァァ!!」

 

絶叫。

 

狂喜。

 

圧倒的テンション。

 

「最高じゃねぇかァ!!」

 

戦場、完全絶望。

 

誰も理解できない。

 

物理法則への反逆。

 

死の否定。

 

「ふざ……けるな……」

 

誰かの震える声。

 

ヒャッハーは笑っていた。

 

止まらない。

 

止まるはずがない。

 

「まだまだァ!!」

 

そして。

 

彼は自らの頭へ手を伸ばした。

 

「……?」

 

理解不能。

 

掴む。

 

モヒカン。

 

ブチィッ!!

 

引き抜いた。

 

絶句。

 

特殊合金製モヒカン。

 

質量兵器。

 

「モヒカンスラッガァァ!!」

 

投擲。

 

高速回転。

 

異常破壊力。

 

戦車直撃。

 

ズドォォン!!

 

装甲貫通。

 

内部爆散。

 

戦場崩壊。

 

ヒャッハー爆笑。

 

「ヒャッハッハァ!!」

 

止まらない怪物。

 

死なない怪物。

 

理不尽の権化。

 

そして彼は気付く。

 

ダム中央部。

 

巨大なレバー。

 

終末装置。

 

ニヤリ。

 

「あ」

 

最悪の閃き。

 

「まだ最高の遊びが残ってやがった……」

 

戦場が凍り付いた。

 

誰もが理解する。

 

この男は。

 

最後まで。

 

ヒャッハーである。

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