世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉   作:ヒツジ(ラム肉

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第4話:目的なき怪物

ヒャッハー!

 

前回、「この世界に必要なのは砕く力だ」と

妙に説得力のある武器哲学を語ったヒャッハー!

 

ならば次なる獲物へ――

となるのが世紀末的常識。

 

だが違う!

 

今日もまた目的はない!

 

相変わらずである!

 

--------------------

 

荒野を走る理由は様々だ。

 

食料の確保。

 

燃料の調達。

 

復讐。

 

縄張り争い。

 

護衛任務。

 

略奪行為。

 

 

 

世紀末世界の住民は、

 

常に何らかの動機に縛られて行動している。

 

そうでなければ生き残れないからだ。

 

 

 

理由なき移動は自殺。

 

目的なき戦闘は浪費。

 

無計画は死。

 

 

 

この世界ではすべてが資源であり、

 

すべてが有限。

 

弾薬も。

 

燃料も。

 

食料も。

 

命すらも。

 

 

 

ゆえに人々は考える。

 

なぜ動くのか。

 

なぜ戦うのか。

 

なぜ危険を冒すのか。

 

 

 

合理性こそが生存率へ直結する。

 

それが荒野の真実。

 

 

 

だが。

 

 

 

「ヒャッハー!!」

 

 

 

例外が存在した。

 

黒塗りのバイク。

 

荒野を切り裂く爆音。

 

そして。

 

場違いな歓喜の絶叫。

 

 

 

ヒャッハーは今日も走っていた。

 

理由なく。

 

目的なく。

 

計画なく。

 

 

 

ただ気分で。

 

 

 

「ヒャッハー……♪」

 

 

 

鼻歌交じり。

 

実に上機嫌。

 

時折加速し、

 

時折減速し、

 

時折意味もなく蛇行する。

 

 

 

獲物を探しているようには見えない。

 

目的地へ向かっているようにも見えない。

 

 

 

ただ走る。

 

 

 

それだけ。

 

 

 

荒野において、

 

それは極めて異質な行動だった。

 

 

 

遠く。

 

その姿を観察する者がいた。

 

岩陰に身を潜めた流浪のハンター。

 

荒野では珍しくない存在。

 

 

 

「……なんだあいつ」

 

 

 

双眼鏡越しの困惑。

 

武装は確認できる。

 

危険人物であることも察せる。

 

 

 

だが。

 

理解できない。

 

 

 

略奪者なら理解できる。

 

軍閥なら警戒できる。

 

狂人なら距離を取ればいい。

 

 

 

だがあの男は違う。

 

 

 

意図が存在しない。

 

 

 

まるで。

 

荒野そのものをドライブしているかのような気楽さ。

 

 

 

「……関わらん方がいいな」

 

 

 

双眼鏡が静かに下ろされる。

 

荒野では違和感こそ最大の警告。

 

説明不能な存在からは距離を取る。

 

それが長生きの秘訣。

 

 

 

ヒャッハーは止まらない。

 

気まぐれに進路を変え、

 

気まぐれに空を見上げ、

 

気まぐれに笑う。

 

 

 

そこには欲望すら希薄だった。

 

略奪の熱もない。

 

戦闘の緊張もない。

 

 

 

ただ存在しているだけの違和感。

 

 

 

荒野の住民たちは本能的に理解していた。

 

 

 

目的を持たぬ者は弱者。

 

 

 

だが。

 

目的すら不要とする存在は――

 

別種の怪物である。

 

 

 

理由を必要としない行動。

 

動機なき暴走。

 

説明不能の存在原理。

 

 

 

それは狂気ではない。

 

災害に近い。

 

 

 

やがてバイクは遠ざかる。

 

砂煙だけを残して。

 

誰も追わない。

 

誰も狙わない。

 

誰も関わらない。

 

 

 

理解不能な存在へ手を出すほど、

 

荒野は甘くない。

 

 

 

そしてヒャッハーは、

 

今日もまた目的もなく荒野を走り続ける。

 

ただ楽しげに。

 

ただ無責任に。

 

ただ圧倒的に。

 

 

 

「ヒャッハー!!」

 

 

 

その叫びだけが、

 

乾いた世界へ深く刻み込まれていった。

 

まるで。

 

この世紀末そのものを嘲笑うかのように。

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