世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉 作:ヒツジ(ラム肉
ヒャッハー!
前回、「この世界に必要なのは砕く力だ」と
妙に説得力のある武器哲学を語ったヒャッハー!
ならば次なる獲物へ――
となるのが世紀末的常識。
だが違う!
今日もまた目的はない!
相変わらずである!
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荒野を走る理由は様々だ。
食料の確保。
燃料の調達。
復讐。
縄張り争い。
護衛任務。
略奪行為。
世紀末世界の住民は、
常に何らかの動機に縛られて行動している。
そうでなければ生き残れないからだ。
理由なき移動は自殺。
目的なき戦闘は浪費。
無計画は死。
この世界ではすべてが資源であり、
すべてが有限。
弾薬も。
燃料も。
食料も。
命すらも。
ゆえに人々は考える。
なぜ動くのか。
なぜ戦うのか。
なぜ危険を冒すのか。
合理性こそが生存率へ直結する。
それが荒野の真実。
だが。
「ヒャッハー!!」
例外が存在した。
黒塗りのバイク。
荒野を切り裂く爆音。
そして。
場違いな歓喜の絶叫。
ヒャッハーは今日も走っていた。
理由なく。
目的なく。
計画なく。
ただ気分で。
「ヒャッハー……♪」
鼻歌交じり。
実に上機嫌。
時折加速し、
時折減速し、
時折意味もなく蛇行する。
獲物を探しているようには見えない。
目的地へ向かっているようにも見えない。
ただ走る。
それだけ。
荒野において、
それは極めて異質な行動だった。
遠く。
その姿を観察する者がいた。
岩陰に身を潜めた流浪のハンター。
荒野では珍しくない存在。
「……なんだあいつ」
双眼鏡越しの困惑。
武装は確認できる。
危険人物であることも察せる。
だが。
理解できない。
略奪者なら理解できる。
軍閥なら警戒できる。
狂人なら距離を取ればいい。
だがあの男は違う。
意図が存在しない。
まるで。
荒野そのものをドライブしているかのような気楽さ。
「……関わらん方がいいな」
双眼鏡が静かに下ろされる。
荒野では違和感こそ最大の警告。
説明不能な存在からは距離を取る。
それが長生きの秘訣。
ヒャッハーは止まらない。
気まぐれに進路を変え、
気まぐれに空を見上げ、
気まぐれに笑う。
そこには欲望すら希薄だった。
略奪の熱もない。
戦闘の緊張もない。
ただ存在しているだけの違和感。
荒野の住民たちは本能的に理解していた。
目的を持たぬ者は弱者。
だが。
目的すら不要とする存在は――
別種の怪物である。
理由を必要としない行動。
動機なき暴走。
説明不能の存在原理。
それは狂気ではない。
災害に近い。
やがてバイクは遠ざかる。
砂煙だけを残して。
誰も追わない。
誰も狙わない。
誰も関わらない。
理解不能な存在へ手を出すほど、
荒野は甘くない。
そしてヒャッハーは、
今日もまた目的もなく荒野を走り続ける。
ただ楽しげに。
ただ無責任に。
ただ圧倒的に。
「ヒャッハー!!」
その叫びだけが、
乾いた世界へ深く刻み込まれていった。
まるで。
この世紀末そのものを嘲笑うかのように。