世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉 作:ヒツジ(ラム肉
ヒャッハー!
怪物、致命傷!!
だが崩れぬ災害の王!!
勝利でも敗北でもない!!
そこにあるのはただ一つ!!
己の生き様を貫いた男の――
最終演説であるゥ!!
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ヒャッハーは倒れなかった。
胸を貫かれながら。
血を流しながら。
命を削りながら。
それでも。
ダムの柵へ身体を預け,
笑っていた。
「……ヒャッハー……」
呼気が震える。
だがその表情は穏やかだった。
今までの狂喜ではない。
異様な静けさ。
戦場の誰もが言葉を失っていた。
撃てない。
動けない。
理解が拒絶されている。
なぜなら。
怪物が“終わりの顔”をしていたからだ。
「……いい刺しだったぜ……」
軍閥代表の息子を見る。
その視線に敵意はなかった。
純粋な賞賛。
「見事な因果だ……」
息子の歯が軋む。
「……黙れ……」
だがヒャッハーは笑う。
小さく。
満足げに。
「いいんだよ」
血を吐きながら呟く。
「それでいい」
そして。
ゆっくりと視線を移した。
少年へ。
「……坊主」
その呼びかけに,
少年の身体が強張る。
だが。
ヒャッハーの声音は奇妙なほど優しかった。
「長かったなァ……」
少年の拳が震える。
怒り。
憎悪。
それらは確かに存在していたはずなのに。
今この瞬間。
別の感情が混ざっていた。
困惑。
理解不能。
「……何がだ……」
ヒャッハーは笑う。
「全部だよ」
荒野を見渡す。
泥流。
残骸。
焼け焦げた大地。
「この世界も」
「お前の人生も」
「俺のヒャッハーも」
風が吹く。
血臭と硝煙を巻き上げながら。
ヒャッハーは目を細めた。
「なぁ坊主」
「仇討ちってのはよォ……」
少年の視線が揺れる。
「スッキリしたか?」
その言葉。
それは挑発ではなかった。
純粋な問い。
少年の喉が詰まる。
言葉が出ない。
なぜなら。
答えが分からなかったからだ。
憎んでいた。
倒すためだけに生きてきた。
それなのに。
「……俺は……」
声が震える。
「……俺は……」
ヒャッハーは静かに頷いた。
「分からねぇよなァ」
優しい声音。
異様なほど優しい。
「当然だ」
「人間ってのはそういう生き物だ」
血が滴る。
だが怪物は笑っていた。
「正義だの」
「悪だの」
「そんなもんは後付けだ」
戦場の全員が聞き入っていた。
誰も口を挟めない。
「大事なのはなァ……」
ヒャッハーが指を立てる。
「自分で選ぶことだ」
「自分で動くことだ」
「自分で責任を持つことだ」
少年の瞳が揺れる。
ヒャッハーは続ける。
「世界がどうとかじゃねぇ」
「時代がどうとかじゃねぇ」
「他人がどうとかじゃねぇ」
笑う。
静かに。
満足げに。
「自分の因果を受け入れろ」
沈黙。
その言葉の重さが戦場へ沈む。
「それでいい」
「それだけでいい」
ヒャッハーの視線が遠くなる。
空。
荒野。
ダム。
「それがよォ……」
かすれた声。
「ヒャッハーって生き方だ」
誰も動けない。
誰も呼吸できない。
怪物の言葉が世界へ染み込んでいく。
「俺はなァ……」
小さく笑う。
「好きに暴れて」
「好きに壊して」
「好きに笑って」
「好きに死ぬ」
血に濡れた顔で嗤う。
「最高の人生だったぜ……!!」
その瞬間。
少年の奥歯が軋む。
なぜだ。
なぜこの男は。
ここまで満足げなのか。
「……ふざけるな……」
かすれた声。
ヒャッハーが視線を戻す。
「ん?」
「ふざけるなよ……!!」
少年の叫び。
「お前のせいで何人死んだと思ってやがる!!」
「何人の人生が壊れたと思ってやがる!!」
怒り。
憎悪。
感情の爆発。
だが。
ヒャッハーは。
笑った。
穏やかに。
「ああ」
あまりにもあっさりと。
「ああ、知ってる」
戦場が凍る。
「だから言ってんだろ」
口角を歪める。
「悪因悪果だ」
「因果応報だ」
「全部まとめて俺の人生だ」
少年の呼吸が止まる。
言葉が出ない。
ヒャッハーは続けた。
「綺麗に生きる気なんざ最初からねぇ」
「英雄になる気もねぇ」
「救われる気もねぇ」
静かに笑う。
「俺は汚物だ」
その言葉。
それは自嘲ではない。
誇り。
「暴力の時代でしか生きられない」
「そんな世界でしか呼吸できない」
「そんな生き物」
ニヤリと嗤う。
「それが俺だ」
風が吹き抜ける。
ヒャッハーの身体が揺れる。
限界が近い。
誰もが理解する。
それでも。
怪物は最後まで怪物だった。
「だがなァ……」
少年を見る。
優しく。
どこか愉快そうに。
「お前らは違う」
戦場を見る。
生き残った者たちを見る。
「好きに生きろ」
「好きに抗え」
「好きに因果を背負え」
そして。
最後に笑う。
「それが人間だろ?」
静寂。
世界が完全に停止したかのような空気。
ヒャッハーはゆっくりと目を閉じた。
「俺は……」
かすれた声。
「最後の時まで……」
そして。
満面の笑み。
「ヒャッハーでいたぞ……!!」