世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉   作:ヒツジ(ラム肉

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第5話 「荒野の掟」

 

ヒャッハー!

 

世紀末世界に法律なし!

道徳なし!

常識など砂より軽い!!

 

そこに存在するのはただ一つ――

生き残った者だけが正しいという絶対原理!

 

そして今日もまた、

最も信用ならぬ災害が荒野を爆走するゥ!!

 

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荒野には掟がある。

 

誰が決めたわけでもない。

だが確かに存在する絶対法則。

 

弱い者は奪われる。

遅い者は死ぬ。

躊躇した者は消える。

 

極めて単純。

極めて公平。

 

それがこの世界の理。

 

砂煙の向こう。

一台の輸送車両が進んでいた。

 

装甲は薄い。

武装も最低限。

積載物優先の典型的な世紀末仕様。

 

車内。

 

「……妙に静かだな」

 

運転席の男が呟く。

 

護衛車両なし。

周囲の気配なし。

風の音だけが耳障りに響く。

 

嫌な予感。

 

だが。

 

次の瞬間。

 

バララララララララ……!!

 

爆音。

 

背筋を走る悪寒。

 

「なッ――!?」

 

振り返るより早く現れる黒い影。

 

黒塗りのバイク。

 

溶接跡だらけの装甲。

 

見覚えのある狂気のシルエット。

 

そして。

 

「ヒャッハー!!」

 

絶叫。

 

存在そのものが警報装置のような男。

 

輸送車両の男が青ざめる。

 

「出たァァァ!!」

 

知らぬ者などいない。

 

荒野最悪の遭遇対象。

 

理屈の通じぬ災害。

 

ヒャッハー。

 

バイクが異様な軌道で接近する。

 

常識外れの加速。

無駄に洗練された操縦。

無駄に高い運転技術。

 

「やめ――」

 

言葉は最後まで続かなかった。

 

ドバァァァァッ!!

 

熱水噴射。

 

悲鳴。

 

絶叫。

 

視界を埋める白煙。

 

車体表面を叩きつける高温の暴力。

 

「ヒャッハー!!」

 

狂喜。

 

純粋な歓喜。

 

ヒャッハーは実に楽しそうだった。

 

「消毒だァ!!」

 

意味不明な宣言。

 

輸送車両が蛇行する。

制御を失う。

荒野を転がる。

 

沈黙。

 

砂煙だけが残った。

 

しばしの静寂。

 

そして。

 

「ヒャッハー……♪」

 

満足げな鼻歌。

 

転がった車両へ歩み寄るモヒカン。

 

躊躇なし。

感慨なし。

倫理観など存在しない。

 

「さて」

 

容赦なくハッチをこじ開ける。

 

中身。

 

物資。

 

燃料。

 

食料。

 

弾薬。

 

「ヒャッハッハァ!!」

 

歓喜。

 

「当たりじゃねぇか!!」

 

略奪ではない。

 

世紀末的資源再配分。

 

少なくとも本人はそう思っている。

 

荒野の掟。

 

奪われる側が悪い。

 

生き残れなかった側が弱い。

 

それだけの話。

 

ヒャッハーは物資を担ぎ上げる。

 

重さなど意に介さぬ怪物の動作。

 

「いいねぇ……」

 

空を見上げる。

 

白く濁った世紀末の空。

 

「最高だぜェ……この世界……!」

 

心底楽しそうだった。

 

破壊も。

 

暴力も。

 

混沌も。

 

すべてが娯楽。

 

すべてが祝祭。

 

荒野のど真ん中で笑う災害。

 

誰よりもこの世界に適応した男。

 

ヒャッハー。

 

彼にとって世紀末とは。

 

理想郷である。

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